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4-7.サトゥーのヒミツ

※8/16 誤字修正しました。



 サトゥーです。自己分析や自己啓発なんて就職活動の時にやったきりです。


 自分を見つめ返すって何か気乗りしないんですよ。





 ベッド脇に鞄を置いてベッドに腰掛ける。

 アリサが自分達のベッドに着ていた外套を脱ぎ散らし、おもむろに中の服まで脱ぎ始めたので頭を(はた)いて止めさせる。


「痛ったあ~ 何よ、わたしに欲情したんじゃなかったの?」

「それは10年後にしてくれ」

「そんな~ 貴重な少年の体を蹂躙する機会が……」


 無駄口を叩きながらも服の乱れを直したアリサが向かいのベッドに腰掛ける。


「昼に言ってた相談事ね? 何かあったの?」

「どこから話したものか……」

「全部言っちゃえば? 王様の耳はロバの耳~ってね」


 それは最後に全部バレてしまう話では無かっただろうか?


「じゃ、言いにくい事を除いて言ってみたら? 他言無用って命令したら言えなくなるんだしさ~」


「そうだな……」


 オレはこちらに来たときに遠距離から攻撃できる使い捨てスキル? で鱗族を集落ごと全滅させてしまったという風に少し話を変えて説明した。

 結構硬い口調で話したのだが、なぜかアリサは苦笑いだ。


「どうした法螺じゃないぞ?」

「それはわかるんだけど、ユニークスキルはわたしたちの切り札なんだから、ちゃんと伏せなきゃ」


「すまん、注意する」

「それで相談の内容は何? その滅ぼした鱗族がリザの一族だったとか?」


 アリサがベッドの上で膝を抱きかかえながら聞く。新しいスカートは裾が長いので下着が見えることも無いので安心だ。


 リザの一族はここから離れた湿地帯の部族だし、何年も前に鼬人族との争いに敗れて滅びたと焼蛙肉パーティーの時に言っていた。家族で彷徨っていた時に人族の奴隷狩りにあったらしい。竜の谷には恐れ多くて近寄れなかったとも言っていた。


「いや違う、一つの部族を過失で滅ぼしてしまったのに罪悪感を感じなかったり、罪悪感を感じても気持ちを切り替えるだけでスイッチをON/OFFするみたいに、あっさり割り切れてしまうんだ。まるで誰かに心を操られているかのように……」


 アリサに精神魔法を掛けられて心を操られてなかったら、気にも留めなかったかもしれないが……。


「前世なら被害妄想乙! って切っちゃう様な話ね」

「被害妄想とはちょっと違うな、『罪悪感』を真空パックして押入れに放り込むような感じ……説明が難しいな」


「ふ~ん? もともと冷血だったとか?」

「プログラマーをしてたから効率的にモノを考えるのは好きだが、冷血と言われた事はないな。作ったゲームがネットで叩かれたら数日凹むくらいはする」

「へ~、ゲーム開発者だったんだ。どんなの作ってたの?」


「今度話してやる。それよりも」

「ON/OFFの切り替えの原因がしりたい?」


 オレの言葉に被せるようにニシャニシャと微妙な笑顔で言うアリサ。


「たぶんだけど能力値のMND(精神力)が高いんじゃない?」

「確かに高いが……」


VIT(耐久力)が高いと殴られても打たれ強いでしょ? MNDはそれの心版よ。もっとも、わざわざ意識したら罪悪感に苛まれるでしょうけど、マゾでもなかったらすぐに消えちゃうわね」


 そうなのか?

 何者かの干渉じゃなく、単なるステータスの値の問題なのか……。





「では次だ」

「おうけ~い、ばっちこ~い」


 茶化すアリサだが、こんなのでも相談相手がいるのは心強い。


「さっきの理屈だとINT(知力)が高いと物覚えが良くなるはずなのに、以前より物忘れが激しい気がするんだが、これはどういう事だと思う?」


「や~ね~、その若さで健忘症~?」


 チョップを入れようと構えるとすばやくガードするアリサ。

 行儀の悪い姿勢でワタワタと焦る姿が可愛かったので制裁するのは止める。


「冗談よ、INTが高いと理解力や記憶力が上がるんだけど、均等ってわけじゃないの。INTが高くて物忘れしないなら、うっかりモノの学者は居ない事になるわよ?」


 バカな……。

 オレにはノーベル賞に最も近い教授と言われていた恩師がいた。彼のうっかりエピソードが、オレの脳裏を走馬灯のようによぎる。


「……という事は、本当に被害妄想だっただけか?」


「みたいね~」


 アリサがベッドに寝転がりながら笑う。


 元はと言えば、こいつの精神操作のせいで疑心暗鬼になったんだが……。

 そう思わないでも無いが、さすがに大人気ないので口にはしない。





「なあアリサ」

「何? ベタベタしてほしい?」

「それは遠慮する」


 こいつは余計な一言が多い。


「そもそもレベルとかスキルって何なんだ?」

「RPG的な意味なら、そのままよ?」

「RPG以外の意味では?」

「さすがに知らないわ。神様に会ったときに聞かなかったし、転生してからは呼びかけても答えてくれないしね」


「知ってる範囲でいい」

「そうねスキルは圧縮された経験や知識かしら? スキルを持ってると『なんとなく』どうしたらいいか分かったりするでしょ? 勘とかに近いかな。例えば料理とかスキルが無くても作れるけど、スキルが高い人は同じ材料や道具を使っていても、もっと美味しい食事を作れるの」


 なるほど……しかし、鑑定スキルや相場スキルはかなりハッキリ判るんだが?

 あと、アレも違うよな? そう思ってアリサに確認する。


「契約スキルみたいに能動的に効果が発揮されるのは?」

「そうね契約スキルは、魔法スキルの一種よ。呪文もあるし契約時には魔力も使うしね。でも基本は他のスキルと一緒よ? 契約スキルが無くても呪文を唱えて豊富な魔力があれば行使できるわ。ただし魔法スキルと一緒で、スキルが無いと必要な魔力がすごく増えるし、成功率も激減するから現実的には無理なんだけどね」


 スキルの熟練度についても聞いてみた。


「スキルレベルの目安はね、レベル1が初心者、レベル3が一人前、レベル5が熟練者、レベル7が達人、レベル9が天才ってところね。レベル10まで行ったら神業クラスの技の冴えでしょうね~ 見たことないけどね~」


 そうだったのか、最初の頃のスキルは大体スキルレベル10まで上げたからな……道理で相場の把握が正確だったり、値切りがほぼ成功するはずだ。


「ユニークスキルにはレベルが無いのか?」


「無いわよ。転生する時に神様がいってたけど、ユニークスキルは神の力の欠片だから成長する事は無いって言ってた。使いこなせるようになれとも言われたかな~」


 神の力の欠片?

 確かに流星雨はその名前に相応しいが、それ以外は微妙だな。


「何?! その微妙な表情は?」


「いや神の力の欠片って言う割には、オレのユニークスキルは微妙だと思ってな……」


「そんな顔するほど微妙なの?」


 信用の証と言うわけではないが、「メニュー」について教える事にした。

 アリサは見た目や言動よりも頼りになりそうだし、教えておいた方が役に立ちそうな気がする。


 もっとも詳細に教える気は無い。不都合の無い範囲で大体の機能を語る。


「アリサや勇者達のギフトと変わらない性能だから教えるが、オレのユニークスキルはメニューと言う」

「まあ言いたいなら聞くけど、秘密にした方がいいよ?」


 アリサが忠告してくる。


「かまわない、ただし他言無用だ。『命令』しておくぞ」

「おっけ~ 墓の中までもってくぜいっ」


 アリサがベッドに膝立ちになって、偉そうに自分の薄い胸をドンと叩く。


「メニューはアリサの自己確認(セルフ・ステータス)能力鑑定(ステータス・チェック)技能隠蔽(ハイド・スキル)無限収納(インベントリ)をくっ付けたようなスキルだ」

「さすがユニークスキル、チートね~。でもユニークスキルにしては普通過ぎない?」


「まったくそのままじゃないよ。任意のスキルにスキルポイントを割り振れるけど、アリサみたいに全スキルから選べるわけじゃない。すでに経験して取得したスキルだけが対象だ」

「うわ、ユニークスキルなのに劣化版なの?」

技能隠蔽(ハイド・スキル)に関してはメニューの方が優れている。任意のスキルを隠せるみたいだ」

「そうみたいね~」


 どうもその点をアリサは予測していたみたいだ。


「だって、街で鑑定スキル使ってたんじゃない? 視線の動きが不自然だったし、判断が的確すぎたわよ~」


 こ、こいつ、どこかのエージェントか?!


「人間観察は得意なの。あと危機感知のスキルも持ってるんじゃない? 当たり屋をかわした動きも凄かったけど、気が付いたのがそもそも凄いわよ」


「それもメニューの一部だ。レーダーを表示して近くの人の位置がわかる。他にはマップ表示というのもある。いわゆるオートマッピング機能だな。歩いた範囲が記入されていく。迷宮で大活躍だったよ」


「なるほど、本当に『メニュー』ね。説明なしに最初からそんなユニークスキル持ってたら、ゲームの中に入り込んだとか思わなかった?」

「むしろ夢の中だと思ってたよ」


「まあ、信じられないわよね~」としたり顔で頷くアリサ。





 ついでにレベルについてもアリサ先生の講座を開いてもらった。


「……というわけでレベルは戦ったり仕事したり学習したり、とにかく能動的に新しいことをするたびに経験値がたまっていくの。一定値まで貯まるとレベルが上がるわ。とくに魔物と戦うと上がるのが早いみたい」


 魔物云々は祖国の兵士や騎士が話していたそうだ。

 ふつうの獣を狩るよりも、はるかに成長が早いらしい。


「ほう? 理由はわかるか?」

「さっぱりよ、魔物と戦ったことないもの」


「でも」と続けるアリサ。


「ご主人様なら分かるんじゃない? リザさん達に聞いたけど迷宮にいた1日の間に、10レベルも上がったそうじゃない。わたしが必死で勉強した7年分の成果より多いのよ?」

「たしかにそう考えると異常な成長率だな」


「でしょ~。だから生存率を上げるためにも迷宮都市でレベル上げしたいのよ~」


 昼にも言っていたな……。

 そういえばあの時に変な事を言っていたな。


「ところで魔王の季節って何だ?」

「この辺ではそう言わないのかしら? わたしの国では約66年周期の魔王が襲来する時期をそう呼んでるの」


 読み返してみるとタイトル詐欺な気がしてきた……。


 初稿では主人公のユニークスキルを全て開示していたんですが、流れに説得力が無かったので1つだけアリサに教えて見ました。

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