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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
419/540

SS:えんそく

※2015/8/20 誤字修正しました。
※2015/8/20 一部修正しました。

※本日2回目の更新となります。
※今回はポチ視点です。

 今日は楽しい遠足なのです。
 この遠足が終わったら迷宮都市に帰るから、マブダチやシャテイ達ともお別れなので悲しいのです。

 だから、ご主人様やリザが「楽しい思い出を作ってきなさい」って言って、ポチ達を送り出してくれたのです。


「進軍停止! ここで小休止を取る。騎士学舎の上級生は下級生の面倒を見てやれ」

 青いおヒゲのヘイチョーさんが大きな声で叫ぶと、マブダチやシャテイ達が地面に座ってぜーぜー言ってる。

「ふぃー、森の中を歩くのがこんなにつらいなんて思わなかったぜ」
「王都育ちはこれだから……」
「ポチさんやタマさんを見てみろよ。ケロっとしてるだろ?」

 ――ポチ達の事?

 なんとなく褒められている空気を感じたので、タマと一緒にシャキーンのポーズを取った。

「おい、一年! 遊んでないで、ちゃんと休憩しろ。このまま夕方まで森の中を歩き続けるんだ。今は少しでも身体を休ませておけ」

 上級生のキューチョーさんがポチの頭をポンと叩いて、アドバイスをしてくれた。

 ――まだまだ大丈夫なのですよ?

 そう思ったけど、目が合ったタマが閉じた口元の前で「お口にチャック」のポーズをしたので、ポチも沈黙を守ったのです。





 ふかふかの森の土は幾ら歩いても飽きない。
 けんけんぱの遊びをしていたら、シンガリをしている上級生のお姉さんに「マジメにしなさい」って怒られた。

 ――何か変?

 ぴくぴくと耳を澄ます。
 何も聞こえない・・・・・・・

「ポチ~?」

 タマも異変に気が付いたようなのです。

「変なのです」

 ポチも気付いているとタマに頷く。

「何が変なのだ、犬人の一年?」

 上級生のキューチョーさんが聞いてきたので答える。

「森が静かなのです」
「そりゃ、私達が大人数で移動しているのだから、当然だろう?」
「違うのです。ポチ達を付けねらっていた灰色狼の群れも、森の向こうから見ていた目玉バッタの気配も消えているのです」

 ポチがちゃんと説明したのに、上級生のキューチョーさんはポチの頭をポカリと叩いたのです。

「バカな事を言うな――」

 バカって言った方がバカなのですよ?

「――そんな群れや魔物がいたら、護衛騎士様や兵長殿が教えてくれるはずだ」

 キューチョーさんがもう一度、ポチの頭を叩く。

「痛いのです」
「ぶたれたくなかったら、軽挙妄動は慎め」

 キューチョーさんは目元に涙を浮かべながら「この石頭め」と呟いて、ポチを叩いた手をさすさすと撫でる。

「――来る~?」

 タマの方が先に気が付いたのです。
 さすが忍者!





兵蟷螂ソルジャー・マンティスが出たぞ!」
「ちくしょう! 木の洞に潜んでやがった!」
「やばいっ、蟷螂の卵が孵化してるぞ! 小人蟷螂チャイルド・マンティスの群れだ!」
「学生は円陣を組んで互いの背を守れ! 防衛に専念し、決して攻勢に出るな!」

 魔物退治に飛び出そうとしたら、青いおヒゲのヘイチョーさんからダメって命令がきた。

 振り向いたら、タマがいなかった。

「ぴ~ぷ~」

 いつの間にか戻ってきていたタマが口笛のマネをする。

 ――ポチは知っているのです。

 タマがこっそり忍者してきた事を。

 後ろからこっそり近寄っていた戦蟷螂ウォー・マンティスの気配が消えたから間違いないのです。

「兵長! 雑魚の小人蟷螂チャイルド・マンティスは任す!」
「承知いたしました! 我ら10名、たとえここに屍を晒そうとも生徒達は守ってみせます」

 死んじゃ、ダメ。
 ご主人様がいつも言ってるのです。

「兵3、小57~?」
「兵は3匹だけど、小は59匹なのです。他の子におんぶされているのが2匹いるのです」

 タマと一緒に答え合わせ。
 敵が少なくて、ポチの腰で小剣が寂しそうなのです。

「もう、ダメだ……」
「騎士8名と兵士16名だけじゃ、勝てっこない」
「上級生8名、下級生16名を入れればもう少しくらい」

 ポチやタマが一人ずつでも勝てるのですよ?
 その事に気が付いたシャテーが「ポチさんやタマさんなら」って言いかけたところで、キューチョーさんに叱られた。

「一年! 兵長殿の指示を忘れたの? 今の私達にできるのは足手まといにならない事だけよ!」

 ――ぴりぴりしてて怖いのです。

「先輩! キシュレシガルザ姉妹のご助力を仰ぐべきです」

 キューチョーさんが怖い目でこっちをギロって睨んできた。

 ポチは何か怒られる事したですか?

「ふん、ミスリルの探索者が全て強い訳ではない。荷運び役が何の役に立つ」

 荷運び?

「ポチは荷運び得意なのですよ?」
「だ、そうだ。一年は黙って座っていろ」

 ご主人様にも「ポチは力持ちだね」って褒められた事あるのです

「で、でも、このままじゃ!」
「騎士を目指すなら、上官の命令は絶対だ! 今、手を出すなら、騎士学舎を放校される覚悟でいろ!」

 ケルテンのお姫様がキューチョーさんに叱られてしょぼんってする。

「学生! すまん! そちらに小人蟷螂チャイルド・マンティスが5匹向かった! 兵を回す余裕がない。応援を送るまでの間、お前達で生き延びてくれ!」

 ――獲物?

 タマと目を合わせて頷く。
 そして、タマと一緒に飛び出そうとしたら、キューチョーさんにキッと睨まれた。

「下級生は円陣のままだ! アッゾ、オルソ、ウルツ、エフナの4名は小人蟷螂チャイルド・マンティスと一対一で時間を稼げ。大丈夫、お前らならできる! 他の者は私に続け! 一匹ずつ順番に減らしていくぞ!」

 ――出番無し?

 残念なのです。





 小人蟷螂チャイルド・マンティスの小さな鎌が上級生の足を斬り裂いた。
 血が出てすごく痛そうなのです。

「ポチ・キシュレシガルザ卿、そしてタマ・キシュレシガルザ卿」

 ケルテンのお姫様がマジメな顔でポチとタマを見た。

「ケルテン侯爵家六女デュモリナの名においてお願いいたします。先輩や国軍の方々を救ってください」

 ポチも助けたいけど、命令は絶対なのです。

「上官命令は絶対~?」

 タマも同じみたい。

「そこを曲げてお願いいたします。責は全て私が負います。ですから、どうか――」

 お姫様の目から涙が……。

「頼むよ、ポチ。学院を追い出されるなら、俺も一緒に追い出されるからさ」
「お願いしやす、ポチの姉御にタマの姉御! 自分もお供しますから!」

 マブダチとシャテーも一緒にお願いしてきた。

 ――ここは決断の時なのです。

 アリサが言っていたのです。
 ギをみてザルソバは勇気なのです。

 ポチは皆を助けて、ご主人様から叱られるのです。
 お肉抜き3日は地獄の日々だけど、マブダチやシャテーの頼みは断れないのです。

「ポチ、やろ~?」
「はいなのです」

 タマが一緒なら、無敵でサイキョーなのです。

「沢山のはタマに任せたのです」
「あいあいさ~」

 ポチは大きめの兵蟷螂ソルジャー・マンティスを倒すのです。

「うおっ、ポチさんが消えた?」
「タマさんもいない――あそこだ!」
「タマさんが沢山?」

 後ろから聞こえてくる声は、すぐに戦いの音に埋もれる。

「なんだ? 小さいのがいるぞ!」
「新手の敵か?!」
「赤い光?!」
「まさか魔剣か?」

 今日の装備は小剣「タケミツ・ソード」だから魔剣じゃない。
 妖精鞄もお屋敷においてきた。

 でも、大丈夫。
 兵蟷螂は柔らかいから。

「さすが、魔剣だ。あの硬い兵蟷螂の首を一撃で斬り裂いたぞ」

 騎士の人が驚いてるけど、魔剣を使っているのは騎士の一番偉い人だけ。ポチは違う。

 二匹目の蟷螂の鎌を掻い潜り、足をズンバラリンって斬る。
 傾いた体を駆け上がって、後ろ首をドシュッって刺して終了。

 最後に、木の上に隠れていた暗殺蟷螂に向かって、じゃ~んぷあんどすぷらっしゅ。
 緑の血がドバッと広がる。

 ポチは幹を蹴って安全圏に。
 もう、タコに墨を掛けられて泣いていたポチじゃないのです。





 ちょっとしたトラブルもあったけど、野営地でタマの獲ってきた猪肉でばーべきゅーしたり、火炎虫を倒してきゃんぷふぁいやーしたりして、とっても楽しい遠足だったのです。

 今度はご主人様や皆も一緒に遊びに来たいのです。

※補足するまでもないと思いますが、ポチが言い間違えたのは「義を見てせざるは勇無きなり」です。

※2015/8/20 上級生との会話を追加。

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 「デスマーチからはじまる異世界狂想曲」書籍版5巻は8/20発売となります。
(店舗によっては既に発売しているようです。購入報告ありがとうございます!)
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