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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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SS:サトゥーの検証

※2015/8/19 誤字修正しました。
※2015/8/18 一部修正しました。
 王都でタマとポチに集めて貰ったハツカネズミが入ったケージを片手に、ユニット配置で防疫実験室へとユニット転移する。
 ここは外界と完全に隔絶した場所にあるので、転移でしか入れない。

 白衣に袖を通し、檻の中から「理力の手マジック・ハンド」を使ってハツカネズミを一匹取り出す。
 ハツカネズミはチューチューと鳴きながら、部屋の様子をキョロキョロと見回す。

「チュー?」
「悪いが、実験に付き合って貰うぞ」

 警戒心の薄いハツカネズミの口を開けさせて、オレの血が混じった上級魔法薬――神酒ネクターをスポイトで飲ませる。
 ハツカネズミが悲鳴のような濁った鳴き声を上げて、ぐったりと気絶する。

 小さな身体では少し濃かったらしく、ハツカネズミの体力やスタミナが枯渇寸前だ。
 ハツカネズミの口に砂糖水を含ませてやり、最初に入っていたケージとは違うケージに入れる。
 心なしかハツカネズミの寝顔が幸せそうだが気のせいだろう。

 オレは神酒ネクターを水で10倍に希釈し、次のハツカネズミに飲ませてみる。
 嫌がるものこそいないが、ぐったりと倒れるハツカネズミが何匹かいた。

 10匹ほど試したところで実験を終了し、3つめのケージに収納する。


 次の実験準備を進めていると、ケージの中にいるハツカネズミ達が起き上がってこちらを見ているのに気が付いた。

 気のせいか、ハツカネズミの視線に知性を感じる。

 一番最初に実験したハツカネズミの横にAR表示された種族名が「賢者鼠」に変わっていた。
 二番目に実験したハツカネズミの方は10匹中3匹だけが「賢者鼠(下級)」になっていた。他の7匹はハツカネズミのままだ。

 実験に使っていないハツカネズミにオレの血を飲ませてみる。
 ペロペロと小さな舌でオレの血を舐めるが、身体に変化はない。

 続けて新しく作った上級魔法薬に俺の血を垂らし、様々な配合比率で作った偽神酒を残りのハツカネズミ達に与えてみる。
 やはり、血を飲んだハツカネズミと同様に変化はない。

 どうやら、問題があったのは神剣の神気に侵された腕から流れた血にあったようだ。
 夜遊びした先で、ハイ・ヒューマンとかが生まれるのを心配しなくて済みそうで安心した。

 これで気軽に旅先の歓楽街にお邪魔できそうだ。





 次の実験は「邪念結晶イービル・フィロソフィア」だ。
 瘴気でできた結晶に、生き物を近付けたらどうなるかを実験しようと思う。

 もちろん、ハツカネズミの実験をしたのとは違うエリアにある実験室だ。
 今回の実験には小バエを使う。

 ハエを邪念結晶に近付けると、みるみる巨大化して魔物へと変化へんげした。
 そのままオレに襲い掛かってきたので、指先の延長に作り出した魔刃で魔物を真っ二つに切断する。

 断面から白っぽい魔核が転がり出てきた。
 瘴気が生き物を魔物に変える要因になっているのは間違いなさそうだ。

 オレは邪念結晶をストレージに収納し、危険な実験を終了する。

 魔人薬に使う破滅草や自滅茎は、瘴気を集める植物に違いない。
 つまり、破滅草や自滅茎を各地で栽培したら、魔物の発生率を下げられるのではないだろうか?

 誰かに研究を委託したいが、破滅草と自滅茎は単体でも毒草なので普通の農民に育てさせるのは危ない。
 それに魔人薬の材料である事を知る誰かに悪用されそうだ。
 これらの草の特徴を引き継いで、悪用されない新種を発見あるいは品種改良で作り出す必要がありそうだ。

 この辺は信頼できる研究者を見つけないと難しいだろう。
 システィーナ王女あたりなら嬉々として研究に取り組みそうだが、一国の王女に危険な毒草の品種改良をさせるわけにもいかない。

 エルフの植物学者あたりに依頼するのが良いかもね。





 オレはユニット配置で次の実験室へ向かう。
 空間魔法の「空間拡張エクステンド・スペース」を使って広さを確保し、地面に3メートルほどの厚さの腐葉土を敷く。
 本来なら畝を作るのだろうが、その辺の知識は殆ど無いのでそのままだ。

 今度の実験は、神気に浸った血を吸って巨大化したサツマイモの栽培だ。

 巨大サツマイモだが、種別的には「ハイ・スイートポテト」でも「神芋」でもなく只のサツマイモのままだ。
 ストレージから取り出した巨大サツマイモの葉付き蔦を苗として使う。

 土に植えて水を蒔く。

 特に変化はない。
 巨大サツマイモの時のように植えた途端に成長するような異常種ではないようだ。

 経過観察をする為に、魔法で作った木人形ウッド・パペットに畑の管理を命じ、しばらく置いておく事にした。
 光魔法で光源を出してあるので、光合成は問題ないだろう。





『ご主人様、何処にいるの?』
「実験室だ」

 アリサが「無限遠話ワールド・フォン」で連絡してきた。
 中継器もなしに、よくこの距離まで・・・・・・届いたもんだ。さすが魔法なだけある。

『ふ~ん、そっち遊びに行っていい?』
「構わないが、距離があるからオレの方で転移してやるよ」
『やったー! ミーアも一緒だから一緒に転移してね』
「わかった」

 オレは休憩用の展望室に移動し、アリサとミーアを招き寄せる。

「へ? あわわわわ――」
「サトゥー」

 ぴょーんと三メートルの距離を飛んできたミーアを受け止めてやる。
 突然の無重力・・・に戸惑うアリサを「理力の手マジック・ハンド」で捕まえて、吸着ソファーまで導く。

「な、なんで無重力なのよ」
「虚空」

 アリサの質問に、展望室の外を眺めていたミーアが短く答える。
 そう、ここは宇宙空間に作った防災用の実験室だ。

 さっきまでいた実験室は重力魔法で地上と同じ1Gの重力がかけてあったが、ここは歓待用の休憩室なので無重力のままだ。

「うっひゃー、地球はどこに見えるの?」
「見える距離に惑星はないから見えないと思うよ」

 アリサの質問に答えながら、チューブ入りの飲み物を出してやる。

「ねぇねぇ、チューブから出して、空中に浮かぶジュース球からストローで吸っていい?」
「ああ、ここには精密機械がないからいいよ」
「やったー!」

 この実験衛星は地上で作った岩塊をストレージに収納し、虚空に来てから出したシンプルな建造物なので水分くらいで痛んだりはしない。

 アリサがジュースの球を浮かべて、嬉しそうにストローを突き刺して飲み始めた。
 それを見たミーアもマネをしている。

「はぁ、これでやりたい事リストがまた一つ消化できたわ」

 ジュースを飲み干したアリサが、満足そうに吐息を漏らす。
 ニヤリと笑ったアリサがピースサインを出して「もう一杯!」とリクエストしたので、新作のフルーツ牛乳を出してやる。
 本当はコーラを出してやりたかったが、一人の時に実験して盛大に失敗したのでこちらにした。

 せっかくなので他の子達も招いてみる。
 ふわふわと空中遊泳しながら、皆でジュースを飲んだり、無重力球技で遊んだり、各々の好きなように非日常に楽しんだ。

 オレも久々に童心に帰って弾けてみたよ。
 たまにはこういうのも、いいね!
※2015/8/18 コーラの部分を修正しました。

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