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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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SS:魔槍のリザ

※今回はリザ視点ショートストーリーです。

※2015/08/18 誤字修正しました。

 シガ八剣――。

 それはシガ王国から魔族を排除する最強の剣。

 幼い頃、父から教えて貰った言葉だ。
 まさか、自分がそのシガ八剣と手合わせをする事が叶うとは――ましてや勝利する事が叶うとは思いもしなかった。

 未だにご主人様の本気を引き出す事さえできぬ私が……。

「魔槍のリザよ、我が伯爵家に仕えさせてやろう。俸禄は人族の騎士と同じだけ与えてやる」
「リザ殿、一手お手合わせ願いたい。身どもはジィ・ゲイン流のカジロ――」
「王国軍の騎士になる気はないか? 従士ではなく正騎士として迎えよう」

 そんな私の下に勧誘や決闘の話が次々とやってきた。
 その度にご主人様のお手を煩わす事になってしまい、身が縮まる思いだ。

 ご主人様は今回の事をどう思っておられるのだろう?
 他人に騒がれるのがお嫌いなご主人様に疎んじられていないか、それが心配だ。

 乱れる心を鎮めようと、お屋敷の庭で一人槍の型稽古を行う。

 魔刃の赤い光が暗い庭を照らす。
 かつては難しかった魔刃も、今では息をするのと同じようにできる。

 一年前の私にそれを伝えても、きっと一笑に付されてしまうに違いない。

 私はそんな雑念を振り払い、基本の型に集中する。

 ――突き、払い、薙ぐ。

 基本の型が終わると、迷宮都市での戦いで付け加えた我流の型を加える。

 くるりと身を翻して尻尾で足払い。
 身を沈め両足だけでなく、尻尾まで使った全身のバネを駆使して、全力の突きを放つ。

 私が型を終了し、剣の納刀にあたる動作をすると、庭の一角に気配が生まれた。

「相変わらず、見事だね」
「ご主人様――」

 誰も居なかったはずの木立の陰から、現れたのは私達のご主人様だ。
 タマの隠形の技は微かに気配が感じられるが、ご主人様の隠形は自然すぎてまったく気付く事ができない。

「もしかして、音がご迷惑でしたでしょうか?」
「そんな事ないよ。他の子達は幸せそうな顔で眠っているからね」

 おずおずと切り出した私を安心させるように、ご主人様が優しい口調で話してくれた。

 そして、その優しさのまま、ご主人様が残酷な言葉を口の端に乗せる。

「もしリザがシガ八剣に興味があるなら、話を受けてもいいんだよ?」
「もう、私は不要なのでしょうか――」

 ――なんて、卑怯な言葉。

 お優しいご主人様が否定してくださる事を見越して、こんな言葉を口にするなんて。

「まさか。リザがいないと寂しいよ」

 その言葉に、私はそっと安堵の吐息を漏らす。

「それでも、リザのしたい事を優先して欲しいんだ。本当にリザが望むなら、オレはその意思を尊重したい」

 優しさは時に毒となる。
 ご主人様は本当の意味で、誰も必要としていないと判るから。

 ――それでも。

 それでも私はご主人様と共にありたい。

 私の決意を受けて赤く光る相棒の魔槍に誓う。

 いつか、孤高なご主人様に頼りにされる存在に、私は――。

 ――なってみせる。

 最後までその言葉を口に出来たかは覚えていない。
 だけど、きっと。

 私の槍は知っている。
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