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4-6.馬車と御者

※2/11 誤字修正しました。


 サトゥーです。運転免許はあるのですがここ数年はペーパードライバーです。

 都心に住んでいると公共交通機関があれば事足ります。

 自分の車があるとデートの時は便利なんですが……。





「ここには辻馬車しかないよ、馬車なら内壁側の職人ギルドで注文しな」


 門前の共同厩舎の人に話してみたがココでは売っていないそうだ。タクシー乗り場で新車を買おうとした感じだろうか? ちょっと恥ずかしい。


「中古でいいなら商人ギルドに行ってみな。たしか何台か買い手をさがしていたはずだ」


 話していたのとは別の御者さんが割り込んで教えてくれた。

 彼に礼を言って、そのまま彼の辻馬車で商人ギルドまで送ってもらう。アリサとリザには荷物を宿に運んでおくように頼んでおいた。





 商人ギルドまで送ってくれた御者さんは親切な事に仲介までしてくれた。


「商人ギルド以外の人に売る予定はなかったんだが、ヨサーグさんの紹介ならいいだろう」


 ヨサーグは御者さんの名前だ。どうでもいいが商人さんの名前はスニフーンさん。

 彼が見せてくれた馬車は2台。片方は年季の入った幌馬車。中は4畳ほどだろうか? もう一台は箱馬車。高さ2メートル半ほどで天井にも荷物が積める。中の広さは変わらない。

 幌馬車が金貨10枚。箱馬車は金貨30枚。箱馬車の方が頑丈で安全らしいが馬が4~6頭必要になるらしい。幌馬車の方は荷の重さにもよるが、軽い分1~2頭で曳けるらしい。


 安全ならと箱馬車を買おうとしたが重心が高い分、操作が難しいと聞いて止めた。

 車の免許なら持っているが馬車を運転? した事なんてないから慎重に行こう。


 一応購入前に中を見せてもらう。幌馬車の中は、なんていうか普通だ。御者台の下に貴重品入れというか隠しスペースがある。前の持ち主が改造したらしい。


「こちらの幌馬車を買わせていただきたいのですが、馬も一緒に手配できないでしょうか?」


「そうですね、ギルド保有の馬はゴンツ種なら2頭用意できます。ロバなら4頭用意できますが荷の種類と目的地によって向き不向きが変わってきます」


 目的地が迷宮都市で積荷は人間6人と必需品のみだと伝えるとゴンツ種の方を勧められた。重い荷物を運ぶなら速度が落ちてもロバの方がいいと言われた。

 速さを求めるならシュベリエン種という馬が良いそうなのだが領政府に全て買われてしまったらしい。


 馬2頭と幌馬車で相場が金貨20枚のところを18枚まで値切って購入した。

 即金で払うとは思わなかったらしくスニフーンさんも驚いていた。


 普通は手形で買うか、後日、支払いにくるらしい。「せっかちなので実家の者によく怒られるんです」と世間知らずの御曹司っぽい感じに言い訳しておいた。


「サトゥー様、6人で迷宮都市まで行かれるという事ですが、空荷で行くのはいささか勿体無いですよ」


 そうなのだろうか?

 確かに半分くらいは貨物のスペースに使える。しかもオレもアリサも収納力がたっぷりある。


「何かお勧めの商品などがあるのでしょうか?」


「そうですね、迷宮都市なら(クロスボウ)短矢(ボルト)なんかが確実に需要がありますね。セーリュー市の(クロスボウ)は空から襲来する翼竜(ワイバーン)に対抗するために発達したので、他の地方のものより性能が高いので飛ぶように売れるでしょう。他には山羊の皮や毛なども今の季節であれば仕入れ価格が安いので売却益の確保が容易いかと」


「失礼ですがサトゥー様は商業権をお持ちですか?」

「残念ながら持っていません」


 やっぱり許可証とかが必要なのか。


「それは残念ですね、許可証を発行してもらおうとすれば金貨10枚は支払わないといけませんしね」

「結構な額ですね」


「市内での少量での売買なら許可証は不要なのですが、入市税を初めとする関税の減免処置が無いので利益はほぼ無くなってしまいます」


 なるほどストレージに入れて持っていけば関税が掛からないと……。

 でも不正してまで稼ぎたい訳じゃないんだよな。


「他の街に寄らないなら非課税で迷宮都市に持ち込める品もあるんですが、迷宮都市以外では結構な税率なのであまり意味はないんですよね」


「どんな品なのですか?」


「この都市では需要が無い品なので無名ですが、迷宮都市では恒常的に必要とされるんですよ。竜白石という錬金術の素材なんです」


 その名前を聞いた時に、顔に出てしまったのだろう。スニフーンさんに尋ねられてしまったので東街で出会った詐欺師の話をする。


「なるほど、そんなお顔をされるのも当然ですね。ですがココにあるのは商会が品質を保証しますよ」


 小樽一つで金貨10枚の相場通りの額で売ってくれるそうだ。ちなみに迷宮都市では金貨20枚で売れるらしい。

 倍で売れるなら自分で売ったほうが得じゃないのか?

 そう思って聞いてみたが途中の町の関税と運搬費用で薄利になってしまうので旨味が少ないとの事だった。


「もし売れなかった場合は商人ギルドに持ち込んでくれれば、ここで買われた値段で買い取ります。ご希望であれば品質保証書に裏書しておきます」


 大量に買わされそうになったので、あまり商品を買いすぎて水や食料が載せられないと困ると断った。


 結局、竜白石の小樽6個と山羊の皮を100枚、羊毛100束、軽弩(ライト・クロスボウ)を10丁と短矢(ボルト)を1000本ほど買った。


 値切っても全部で金貨70枚もしたので仮契約手続きだけをして、支払いは明日商品と引き換えとなった。





 今、オレは幌馬車に乗ってセーリュー市の外にいる。……とは言ってもさっそく出発したわけじゃない。


 仮契約手続きを終えて事務所から出るときにスニフーンさんに、馬車を操縦した事が無いので教えてくれる人を紹介してもらえないか相談してみた。そこに帰りの足として待っていてくれたヨサーグさんが、「それならワシが教えてやる」という流れで教えてもらう事になったわけだ。


 ヨサーグさんのお手本と操作の基本だけ教えてもらって練習を始める。


>「操車スキルを得た」


 といつものようにスキルが手に入ったので1レベルまで獲得して有効化(アクティベート)する。……操縦スキルじゃないのか。


 ぎこちないが一応操縦できる。練習しながら操車スキルを1レベルずつ上げていく、レベル3あたりでヨサーグさんほどではないが問題なく馬車を御せるようになったので、そこでレベルを上げるのを止めておく。


「やっぱり若いヤツは覚えるのが早えな」

「ヨサーグさんの教え方がいいんですよ」


 スキルでズルをしているとは言えヨサーグさんの教え方は上手い。一度失敗させてから失敗した原因と失敗しない心がけを教えてくれる。教官とか教師向きかも知れない。

 特に自動車の様に馬車を扱おうとして馬が生き物なのを忘れるなと何度怒られたか……。


「操車はこんなものでいいだろう」

「ありがとうございます」


「次は馬車の(くびき)から馬を放すのと固定するのを教えるぞ。これが上手いか下手かで馬の疲労が大きく変わってくる。馬を大事にしたいならこれだけは手を抜くんじゃないぞ」


 操縦を教えていた時よりも真剣に教えてくれるヨサーグさん。よっぽど馬が好きなんだろう。厳しい教えの甲斐あって1時間ほどでヨサーグさんから合格点を取れた。


 結構時間が掛かったと思ったが、ヨサーグさんに普通は半日くらいかけてようやく及第点だ、と感心された。


 ヨサーグさんはセーリュー市で辻馬車の仕事を始める前は、商団(キャラバン)の荷馬車の御者をしていたらしい。馬車の護りには剣や弓よりも(クロスボウ)や槍の方がいいとか、飲料水は供給地点が使えるとは限らないので、必ず次の街までの分を載せていった方がいいとか、休憩時に馬に水を飲ませる時に岩塩を食わせるのを忘れないようにしろなど色々な心得を教えてもらった。





 馬車でヨサーグさんを商人ギルドまで送る。彼の馬車は商人ギルドに置いたままだったので取りに行ったのだ。

 ギルドまでの道でヨサーグさんとセーリュー市の風俗店の話で盛り上がった。彼は巨乳好きらしい。

 色々教えてもらったお礼に明日の晩にオレの奢りでお勧めの店に行く事になった。最近まわりがロリロリしていたので、ちょっと楽しみだ。





 幌馬車で門前宿に帰る前に仕立て屋で、服を受け取る。ちょうど納品に来ていた噂の凄腕職人に出会えた。見知った顔だったのに驚いたが、初日に出会った行水の(きみ)(笑)だったので気恥ずかしかった。彼女の方も覚えていたのは意外だったが、特に何かが発展するわけでもなく商品の着心地の良さなどの礼を述べておいた。





 馬車を門前宿の中庭に乗り入れる。ちょうどマーサちゃんが居たので馬車を買ったのを伝える。駐車スペースや厩舎に余裕があるので大丈夫だそうだ。ただし宿代以外に駐車代などが必要になるそうなので後で女将に追加料金を払わないといけない。


「おかり~?」

「なのです~」


 マーサちゃんと話していると、中庭の植木の陰からポチとタマが走ってきた。タマはお帰りと言いたいのだろう。2人に遅れて他のメンバーも物陰から出てくる。小間使いの少女(ユニ)も一緒だった。彼女は亜人に偏見が無いのだろうか?


 アリサ達は中庭の植木の陰で遊んでいたらしい。いやその表現は違うか。例の学習カードを使って文字を覚えていたのだそうだ。


 最初はマーサちゃんが教師役になって教えていたらしい。

 途中から「文字を上にして置いたカードを読み、裏面を見て正しかったら自分のモノにする」という遊びをアリサが提案してゲームっぽく勉強できるようにしたそうなのだが、そういったゲームに馴染みの無かった他のメンバーがハマってしまったらしく非常に白熱してしまったらしい。


 すでに2時間近く続けているそうだ。勝率はアリサが一番強く、続いてポチ、ルル、ユニ、タマ、リザの順との事だ。


 馬の世話を皆に任せ、アリサだけを連れて部屋に戻る。ルルの表情が少し曇っていたが、そのへんの誤解は追々解いていけばいいだろう。


 相場スキルや交渉、値切りなどのスキルが使えるのでかなり有利に商人との取引が上手く運んだようです。


 文字をカードで覚えていたシーンでポチが2位だったのは文字では無く絵として記憶して当てていたので文字の読み書きができるようになるのはしばらくかかりそうです。


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