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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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4-4.蚤の市

※2016/7/10 誤字修正しました。
 サトゥーです。物事は試行錯誤する時が一番楽しいと思うのです。
 トライ&エラーでエラーがあんまり多いと心が折れますが……。





「レベルを上げる前に死んでも知らんぞ」
「大丈夫、安全マージンは十分に取るわよ、だって」

 アリサは行く気まんまんみたいなので演説を途中で聞き流して、リザの意見を聞く。

「リザは迷宮都市とか行ってみたいか」
「ご主人様の行くところが私の場所です」
「忠義深いのは有難いんだが、リザの意見が聞きたい。最終的な判断はオレがするから好きに言っていいよ」

 部下に意見聞いてそのまま実行⇒失敗で部下の責任にする上司になったりしない。仕事で部下を持った時にそれだけはしないと心に決めている。無茶なノルマは課すけどな!

「許されるなら迷宮都市に行ってみたいです」

「ちょっと~、いいセリフなんだから聞いてよ~」
「後で聞いてやる」
「ちぇ~、リザさんと扱いが違う~」

 ちょっと不貞腐れたアリサをスルーする。
 迷宮都市へ行くメリットは、リザ達が活躍する場ができる事、差別が少なくなる事(無くなる事はないだろう)、あと、アリサ達がレベルを上げられる事だな。
 デメリットは……無いか? いやいや、ゼナさんやナディーさん達、この街で知り合った人と別れる事だ。あれだけ心配して貰っておいて薄情な事を考えてしまった。

「そうだな迷宮都市とやらに定住する積もりも無いが、観光に訪れるのもいいかもしれないな」
「観光って……そんな元の世界じゃあるまいし」

 いいじゃないか、異世界観光。

「それよりも迷宮都市って何処にあるんだ?」
「知らないわよ?」

 おいっ、王女。

「ちょっと、そんな目で見ないでよ。シガ王国にあるのは知ってるけど、場所までは知らないんだってば」

 本屋に行けば簡単な地図とか買えるかな? オレのマップは最初の荒野とセーリュー伯の領土内しか表示されていない。確証は無いがおそらく行った事のある場所が支配地域単位で表示可能になって行くんだろう。

「ご主人様は馬とか馬車とか持ってないよね?」
「無いよ」
「何処で売ってるのかしら?」

 門前広場の一角に大きな厩舎が並んでいる場所があったからあそこで聞いてみよう。いつもならナディさんに尋ねる所だが、さっき仕事を依頼したばかりだから行っても居ないだろう。

「家を買えるお金があるなら馬と馬車は買えるだろうけど、豊かな旅をするためにも路銀を稼げるような掘り出し品を探しましょう!」

 アリサが蚤の市を指して言う。こいつの心は鋼鉄だな。あれだけスルーしてもへこたれた様子がない。

 蚤の市が開かれているのは昨日の晩に奴隷市が開かれていた東街で一番広い広場だ。
 奴隷商人達の馬車や天幕はそのままだが、夜中に酒や食べ物を売っていた屋台が無くなっており、その場所に机一つ分くらいの小さなスペースに様々なガラクタ、もとい商品を並べた商人たちが何十人と店を開いている。ひょっとしたら百軒以上あるかもしれない。

「ご主人様、突撃する前にお願いがあるの」
「一応聞いてやる、なんだ?」
「2つほど魔法の使用許可が欲しいの。魔波感知センス・マジックウェーブ悪意感知(センス・イービル)なんだけど」

 魔法の効果を説明させてから許可を与えた。前者は「なんとなく」魔法の品がわかる魔法で後者が悪意を持って近づく人を見分ける魔法らしい。
 特に害がなさそうなので許可した。もちろん許可しなくてもオレが見分ければ良いのだが何でもかんでも禁止するのは性にあわない。

「これ! これはきっと掘り出し物よ!」

 ドヤ顔のアリサが指し示すのは魔法の品なのは間違いないのだが鑑定では壊れた魔法道具のようだ。道具名は「月夜の夢羽虫の誘い」とよく分からない名前が付いていて鑑定結果が「▲▲▲が●●●のために□□した●▲を奏でる□●な魔具」と結果が出ている。相変わらず、この世界の魔法道具の説明文は嫌がらせっぽい感じがする。形からして楽器かオルゴールだと思うのだが、装飾が淫靡なので催淫系の道具かもしれない。

「壊れてるみたいだからダメだ」

 そう言うオレに美術品として売り込みを掛けてくる店主をいなしながら店を見て回る。こういうフリマの様な店を巡るのは楽しい。

 オレが前に買った短杖と同程度の品が半額以下で売っていたので2本買ってしまった。買ってから無駄遣いに気が付いたが……そのうち何かの役に立てよう。

 他にはポチやタマの小剣を帯刀するためのベルトや鞘につける飾り紐、リザの槍につける房飾りなんかも買った。どれも銅貨数枚とお買い得だった。
 RPGとかなら革製品は高価なものが多いので、不思議に思って革製品を売っていたニイチャンに聞いてみたら、この季節は越冬しない山羊を沢山潰すので皮の仕入れが安いため革製品も安くできるのだそうだ。

 蚤の市は相場表示よりもかなり安く買えるようなので普通の屋台より買い物が難しい。

 ルルにもお土産用にリボンを一本買った。50センチほどの長さで無地の桜色のリボンだ。今朝ゼナさんに買ったストールより色が淡い。この辺で取れる染料なんだろうか?

 怪しげな小瓶に入った薬品も色々売っていたが、大抵は効果の無いニセモノか単なる栄養ドリンクだった。栄養ドリンクが気になったが鑑定では成分まで出ないようなので買うのは控えておいた。

 石鹸やポマードのような整髪料とかも売っていた。ポマードは匂いがきつ過ぎるので購入は控えたが、石鹸は大銅貨1枚とこの市の品にしては高いものの牛乳石鹸っぽい懐かしい香りがしたのでさほど迷わず買った。1個だけのつもりがアリサが「これはイイものよ!」と必死で訴えかけるので7個あった在庫をすべて買い占めた。

「ご主人様~、これっ! これ買って~」

 アリサが勧める品を見ると……眼鏡だ。レンズが無いのでフレームだけだ。

「何に使う気だ? こんなもの」
「ご主人さまが掛けるに決まってるじゃない! ファンタジー世界にはメガネ男子が足りないのよ! 萌えで世界を満たす最初の一歩よ~~~~」

 わけの判らないアリサの絶叫をチョップで黙らせる。引いていた店主が銀貨1枚と言っていたが、もちろん買わなかった。





 隣の店にはカードの様な……カルタじゃないか。鑑定してみると王祖ヤマトの時代にセーリュー伯の先祖っぽい人に送った品の様だ。魔法の品では無いが固定化の魔法が掛かっているらしい。相場は金貨10枚もする。

「お兄さん見る目があるね~ これは古代魔法帝国の遊び道具だったらしいよ」

 そこに割り込んできたアリサが「へ~ どうやって遊ぶの?」と意地の悪い目で聞く。

 オレは流暢にでまかせを述べる店主の青年をスルーしつつ店の前に積んである紙束に心を奪われていた。30センチくらいの厚みの本や紙片を紐で束ねたものが5つほど無造作に積んであるんだが、そのうちの一つの相場が金貨100枚となっている。他の束は相場が大銅貨1枚程度の価値なのを考えると異常だ。

「その遊び道具は幾らなんだい?」
「これは金貨3枚の価値があるのですが、今日は可愛いお嬢様に免じて銀貨7枚といった所でどうでしょう?」

 カルタに興味を持った振りをして聞いてみる。言い値でも相場の1/7か。転売で儲かりそうだが買ってくれる相手を探すのが面倒っぽいな。
 値段を聞いてアリサの興味が無くなった様だ。懐かしいだろうから欲しがるようなら買ってやったんだが、そこまで欲しいわけでもないようだ。

「さすがにちょっと高いな。こちらの紙束は何かの読み物なのかい?」
「価値の無いものなんですが、せっかくの紙なので焚き付けに使うのも勿体無いので、こうして束で売ってるんですよ」

 さりげない感じで店主に話しを振ってみる。
 とある資産家の所蔵品を整理した時に出た不用品らしい。売り物になりそうな本をより分けた後の、走り書きや落書きなんかだけの紙を束ねただけのものらしい。

「幾らだい? 両面に何か書いてある紙がほとんどみたいだけど、子供達に文字の練習をさせるのに使う分には問題ないだろう」
「そうですね、1束銅貨3枚でいいですよ。全部買ってくれるなら大銅貨2枚まで負けましょう」

 全部買うことにした。不要な紙はルル達に文字を覚えさせるのに使おう。
 鞄から出した袋に紙束を詰めてリザに預ける。半分持とうとしたがリザに拒否された。

「お客様、文字を教えるんだったら、こちらの品はいかがですか?」

 そう言って彼が差し出したのは、表面にシガ王国語の単語、裏面にその単語に対応する絵が描かれているカードの束だ。絵はモノクロだが特徴を強調してあるので何を書いてあるか良くわかる。「水」を差すカードは何を書いてあるのか良く分からなかったが、そういうのは少数みたいだ。
 100枚1組になっている。1枚1枚丁寧にペンで書いてある。これだけ書くのは大変なはずだが相場は銀貨1枚になっている。

「面白いカードだね」
「ボクが考えたんですよ、故郷の子供達に文字を教えようと思って」

 彼が言うには元々は端材に墨で書いていたらしい。これは売れそうだと思った彼は知り合いになった絵師に頼み込んで1セット作って貰い、商会に売り込みにいったらしいのだが、製作コストと売値の折り合いが付かなかったらしい。製作コストが銀貨4枚かかるのに商会が示した金額は銀貨1枚だったそうだ。

「これは一枚一枚書いてもらってるのかい?」
「ええ、それはもちろんそうですが……」

 版画にすればコストさがるんじゃないか?
 アリサに手を引かれて邪魔された。口の前に人差し指を立てている。

「なんだ?」
「版画を提案しようとしなかった?」
「ああ。……何かまずいのか?」
「城にいた時も版画は見たこと無いの。迂闊に技術を教えるのは危険よ?」
「鋳物があるのに、版画は無いのか?」
「技術って、そんなものらしいわ」

 一度失敗した事のあるアリサが主張するんだ、版画を提案するのは止めておこう。
 商談中に内輪の話をしていた事を詫び商談に戻る。

「すまない、難しい話が嫌だったみたいでね」
「こちらこそすみません、興味を持ってくれる人が少なくて……」
「1セット買いたいんだが幾らだい?」

 興味を持つ物が少ないのか? 確かに売れそうなのに。
 彼は1セット銀貨4枚を提示してきた。原価じゃないか。

「いいのかい? それじゃ儲けはないだろう?」
「いいんです。この商品の良さが判ってくださる方に買ってもらえるなら」

 ちょっと黄昏ている彼を見かねた。
 せっかくのアイデアを腐らせるのは勿体無い。

「次に作るときどんな工夫をするんだい? 需要はあるみたいだから、後は値段だね。安い素材を探すか、安く量産する方法をさがすか、色々試行錯誤するのは楽しいよね」

 代金を払って受け取った時にいらない一言を言ってしまったかと思ったが、モノを作る仕事をしている者同士通じるものがあったのか、彼の瞳に力が戻るのを目の端に確認しつつ次の店に向かった。

 印章などがあるので厳密には版画が無いわけではありません。絵画として飾るような用途としては版画が発達していないだけです。

 ちょっと冒頭の会話にアリサの趣味を出す為にパロディネタを入れて作ってみたんですが、二次に引っかかりそうなので削除したら今度は話しの繋がりが微妙になってしまいました。後で微修正するかもしれません。
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