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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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12-4.王都への旅路(4)

※2014/11/5 誤字修正しました。
 サトゥーです。いつの世も往生際の悪い人間という者はいるようです。生き汚さというのは生死の境では見習うべきものがありますが、責任逃れに足掻くのは止めて欲しいものです。





 オレは封印していた精霊光を解放する。
 まるで中二病患者の台詞のようだが、事実だから仕方ない。漏れないように押さえていた精霊光を解放すると、地表や周囲の空間から凄い勢いで精霊達が集まってくる。
 この飛空艇には精霊視スキルを持つものがオレとミーアしか乗っていないので遠慮は無用だ。

「サトゥー?」

 問いかけて来たミーアに頷く。
 両手を広げたミーアを抱き上げる。どうやら、オレの意図を早々に察してくれたようだ。

「ちょ、ちょっとっ!」

 アリサが何やら慌てた様子で問い詰めてくるが、ミーアが唱え始めた精霊魔法の呪文を聞いてオレ達のやろうとしている事が判ったようだ。

「げっ、その呪文は酷い。ポチ、タマ急ぐわよ! このままだとミーアに良いトコ全部持ってかれるわ!」
「よく判らないけど、急ぐのです!」
「がってん承知~?」

 ポチとタマを両翼に従えたアリサが甲板に駈けて行く。

「ナナとルルは悪いけどここに残って、カリナ様達が甲板に出てこないように押さえてて」
「イエス、マスター」
「あ、あの。か、加速砲は必要ないですか?」
「うん、今回のは雑魚だから、ミーアの魔法で終わるよ」

 ルルがそう問うて来るが、加速砲なんて使ったら地表の被害が凄そうだ。
 オレは不安そうなルルにそう告げて、ミーアをお姫様だっこしたまま甲板に出る。

 後ろでルルに羽交い絞めにされたカリナ嬢が「離しなさい」と喚いているが、聞こえなかった事にした。





 甲板には妙に気合いの入ったミスリルの探索者達が、遠くから接近する突撃槍甲虫ランス・ビートルを待ち構えている。

 先に出発した鳥人族の部隊は突撃槍甲虫の迎撃では無く、従魔の拠点となっていた城砦を押さえに向かったようだ。
 飛空艇に乗っている戦力を考えたら妥当な判断だろう。

「きた~?」
「ちっちゃ早いのです」
「2人とも、良く狙いなさい」

 突撃槍甲虫の隙間を縫って飛んで来た砲撃蛙キャノン・トードの3発の砲弾を、獣娘達の手裏剣、長楊枝、投槍ジャベリンが迎撃する。

「あう、命中したのに……」
「後はむぁ~かせて!」

 質量の差に負けてポチの投げた長楊枝は砲弾に蹴散らされてしまう。
 そこにアリサや他の数人の火杖から放たれた火弾が砲弾を包み込む。ポチの長楊枝で傷ついていた砲弾が火弾の雨を受けて飛散した。

 火杖は魔力の供給だけで撃てるので、詠唱を必要としない分、普通の呪文より早い。
 威力もそこそこあるので、軍用としては巻物より火杖や雷杖の方が需要があるようだ。

「アリサ。ちょっと、頼まれてくれ」
「おっけ~、出番も無さそうだし、皆を鼓舞する美声でも披露する?」
「いや、それは今度の機会にしよう――」

 アリサには雑魚の相手より重要な任務を頼む。ついでにタマにも忍者な用事を指令した。ポチとリザはオレ達の直衛だ。

 そんな会話の間も一生懸命呪文を唱えていたミーアの魔法が、ついに完成する。

「……■■■ 魔風王創造クリエート・ガルーダ

 現れたのは半透明の黄金色に輝く王冠を乗せた鳥人の擬似精霊。
 かつてアーゼさんが召喚したベヒモスと同格の存在だ。

 ほとんどの魔力を消耗したミーアに「魔力譲渡(トランスファー)」を使って回復させてやる。

「おおお、何だあれは?」
「新手か?!」
「盾よ! 我が仲間を守れ! ■■■ 金剛盾発動アクティベート

 急に現れた擬似精霊に驚いたミスリルの探索者達がガルーダに照準を変えてしまったので、慌てて誤解を解いて侘びを入れる。

 こちらを見上げるミーアに頷いて突撃槍甲虫への攻撃を許可する。

「殲滅」

 ミーアの言葉に答えて、ガルーダが空力を無視したように黄金の翼を広げて静止し、翼の先端の羽をCGのモーフィングのように変形させて突撃槍甲虫達の方へと伸ばす。
 数十条の黄金の羽が糸のように細長く伸びて、突撃槍甲虫達を包み込むように刺し貫き、または切り裂いて細切れにしてしまった。

「凄まじい……」
「アレが階層の主を倒した召喚魔法か」

 微妙に誤解を含む発言が飛び交う。
 悪いが彼らの相手をするのは後回しだ。

 鳥人族の部隊が向こうの拠点に辿り着いたタイミングで、砦を内側から突き破ってアノマロカリスのような姿の飛長虫フライング・セントビートという魔物が姿を現した。

 こいつはさっきまでの従魔と違い、調教テイムされていない。
 状態「睡眠」で眠っていただけの魔物だ。どうやって、砦に運び込んだのやら……。

「ミーア」
「ん」

 ミーアの指令を受けたガルーダが猛禽のような素早さで飛長虫を襲う。
 周辺を飛ぶ鳥人達を襲おうとしていた飛長虫が、羽を揺らめかせて泳ぐような動きで上昇してきた。

「あの魔物は一度戦った事があるけど、『怪光線ミスティック・レイ』という遠距離攻撃をしてくる。オレ達はともかく飛空艇が危ないから、余り近寄らせないで」

 実は飛長虫との交戦経験は無い。情報の出所がマップ情報なので、そういう事にした。
 ミーアはともかく、周りに他の探索者達がいる状況だからね。

「使う?」
「いや、黄金の羽で痛めつけるだけでいい」
「ん」

 ミーアが聞いてきたのは上級の擬似精霊達が持つ奥の手の事だ。
 ガルーダの場合「天嵐テンペスト」と呼ばれる大技があるが、威力が高い上に派手すぎるので控えさせた。

 最後の美味しいところくらいは、一生懸命呪文を唱えている魔法使い達に任せよう。

「飛空艇より高い位置まで引き上げて、空中で静止できるかい」
「やる」

 ミーアの声なき指令に従ってガルーダが、飛長虫を空中に縫いとめる。
 時折、飛長虫から怪しいギザギザの光線が放たれたが、ガルーダの黄金の羽が絡みついているせいか、こちらには一度も飛んでこなかった。

 そして魔法使い達の呪文が終わる。
 実際の所、飛長虫の体力は6割方削り終わっているので、このまま2、3分放置すれば終わるのだが、せっかく目立ってくれるのだから最後くらいは譲ろう。

「ペンドラゴン卿。準備ができた。あの召喚獣を下がらせてくれ」
「問題ありません。召喚獣ごと撃ってください」

 魔法使い達の護衛の探索者達の問いかけに、そう答える。
 擬似精霊は体力がゼロになっても、魔力を失って元の小精霊に戻るだけだ。

「…… ■■■ 長距離火炎槍ロングレンジ・フレイム・スピア

 幾条もの渦巻く炎の槍が飛長虫に穴を開ける。
 ガルーダに触れた炎は抵抗レジストされたのか、その瞬間に消えてしまう。

「…… ■■ 聖蒼杭ホーリー・パイル
「…… ■■■■ 神槌(ディバイン・ハンマー)

 少し遅れて放たれた巨大な蒼い杭が飛長虫に突き立ち、飛長虫の傍に出現した輝くハンマーがその体をバラバラに砕いた。

 甲板が歓声に包まれる。

 ようやく解放されたカリナ嬢が飛び出してきたが、すでに彼女の戦う敵はいない。
 地団駄を踏むのは非常に眼福だが、大人気おとなげないから止めて欲しい。
 カリナ嬢に遅れて出て来たナナに、ちょっとした用事を頼んでおいた。

 オレの横でミーアがガルーダを送還させる。

 創造したのだから破棄では無いかと思うのだが、属性を持たない精霊に還元して元いた場所に送り戻すから「送還」なのだそうだ。
 珍しくアーゼさんが熱く語っていた。
 ああいうアーゼさんもレアで良い。

 そんな事を考えていたせいか、ミーアが少々お冠だ。

「むぅ」
「ミーア、お疲れ様」

 ミーアに労いの言葉を掛けて、お姫様抱っこ状態から解放しようとしたのだが、降りる様子が無い。

「ミーア?」
「疲れた」

 なら、仕方ない。
 アリサがユニークスキルを使ったときもこんな感じだし、たまにはいいだろう。





 ガルーダの召喚はエルフの秘技と言って煙に巻いておいた。
 精霊魔法の呪文を聞いていた魔法使い達も、「セベルケーア殿の魔法とは違うが、古代の文献にある呪文の音韻に近い」とか薀蓄を語って話の真実味を補強してくれていた。

 もちろん、その古代文献とやらは迷宮都市に戻ったら見せて貰う約束を取り付けてある。
 対価はストレージに溢れるほどストックしてある顔面樹の枝だ。
 なんでも杖の素材に良いらしい。

 さて、そんな瑣末事はおいておいて、オレ達の現状だ。

 片方の砲塔が死んでいるが船の航行には支障はない。飛空艇内も怪我人は出たもののミーアを初めとした回復魔法使いの活躍で全員元通りだ。

 砦を探索していた鳥人の部隊に数人の殉職者が出てしまったらしいが、砦にいた実行犯達の大半は捕縛できたようだ。
 何人か逃げられたようだが、そちらは問題ない。

 オレがそんな現実逃避をしている間も、目の前のビスタール公爵閣下はオレや船長に向かってがなり立てている。
 どうも、彼の家臣たちが彼を殺そうと企んでいた事に納得行かないらしい。

 鳥人族の部隊が捕縛した家臣たちを見ても見覚えのない者達だとシラを切ったり、砦が政敵のオーユゴック公爵配下のロイド侯の狩猟館だった事から、自分を嵌める為に仕組んだ罠だと主張している。

「マしター、ただいま~」
「マスター、ご下命を果たして参りました」

 シロとクロウがパタパタと貴賓室に入って来た。
 ビスタール公爵が暴言を二人に投げかける前に、証拠物件を携えたナナが入室してきた。

「マスター、逃亡しようとしていた賊を捕らえて参りました」

 ナナが連れて来た男を床に投げ出す。

 さっき、ナナに頼んでシロとクロウの二人に捕まえさせたヤツだ。
 ナナの理術で飛行能力を強化された二人をオレの「遠話(テレフォン)」で誘導して捕縛させた。
 もちろん、二人だけでは危ないので、実際の捕縛と拘束はアリサの空間魔法で地上に降ろされたタマが行った。

「ゲ、ゲルフ……何者だ? その男は!」

 その男を見た公爵が驚きのあまり、思わず名前を呟いてしまっていたが、聞き耳スキルのあるオレ以外には聞こえていないようだ。
 この男の正体は公爵の部下の中でも結構上位の者だ。肩書きが「公子相談役」となっている。

 ――という事は実子に狙われたのか。
 こういうドロドロした話には係わり合いになりたくないね。

「現場から逃亡した首謀者らしき男です。公爵閣下のお知り合いですか?」
「このような者は知らん」

 彼が予想通りシラを切ってくれたので、男の身柄を艦長に押し付ける。

「この男の身柄は艦長にお任せして宜しいですか?」
「うむ、任せたまえ」

 シロとクロウの頭を撫でながら、公爵の様子を窺う。
 憤懣やるかたなしといった表情だが、この場で直接的な行動をするほど愚かではないようだ。

 王都までの僅かな期間に男を始末しようとするかもしれないが、それはこっそり邪魔しよう。

 お家騒動で、国有の飛空艇や有事の際の貴重な戦力たるミスリルの探索者達に加え、諸侯の直系の姫――カリナ嬢の事だ――まで危険に晒してしまった公爵の失点は大きい。
 彼がそれをどう挽回するかには興味がないが、関係ないオレ達を逆恨みしないで欲しいものだ。

 結局、3度ほど公爵が放った刺客をこっそりと排除する羽目になった。忍者タマに任せると目立ちそうなので、理力の手とミーアの擬似精霊「精霊鼠エレメンタル・ラット」に活躍して貰った。
 失敗の報告を聞いた公爵の歯噛みが聞こえてきそうだ。

 そんな人間模様に頓着する事無く、オレ達を乗せた飛空艇が王都の郊外にある空港へと入港した。
※次回更新は、6/15(日)です

※6/9 カリナが地団駄するシーンに少しだけ加筆してあります。

 いつもより長めでしたが、早く王都に入りたかったので途中で切りませんでした。

 感想返しが遅れていてすみません!
 11章の人物紹介も時間が確保できず未着手です~
+注意+
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