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3-6.勇者と忌み色の娘

※2018/6/11 誤字修正しました。


 サトゥーです。勇者はゲームの中だけで十分なサトゥーです。


 勇者の出てくるゲームを何本作った事か……。





「そうか2人目はサガ帝国の勇者なのか」


 関わりあいたくないな。うっかり接触すると魔王討伐に組み込まれそうだ。


「そうよ、18歳とは思えない年不相応のフケ顔の癖にイケメンで、マッチョで体毛が濃いの」

「いや容姿はいいから、どんな性格のヤツなんだ?」

変態紳士(ロリコン)よ。初めて会ったときは『YES!ロリータ、NO!タッチ』とか奇声を上げて従者の女性に殴られてたわ」


 アリサが白い目で言う。


「お前も同類(ショタ)じゃないのか?」

「昔はそうだったけど、今は違うわ! 今だけは全力で少年に愛を囁けるのよ!」


 囁くだけにしてくれ。


「……というか少年嗜好(ショタ)の人からしたら15歳は範囲外なんじゃないのか?」

「あら! そんな事ないわ! だって喉仏も出てないし、この時間なのに顎もツルツルで変声もまだでしょう? さっき見たけど足だって脛毛なんて無くてツルッツルッじゃない!!!!」


 アリサが掛け布団を蹴散らし立ち上がって吼える。

 色々見えるから裸で仁王立ちは止めてくれ。というか服を着ろ。


「主張はわかったから、命令される前に何か着てくれ」

「はぁ、はぁ、分かったわ」


 エキサイトしすぎたのか息も絶え絶えに答えながら服を着る。座りなおすときにオレの膝の上に来るな。

 ……なんとなく貞操の危機を感じる。


「話が逸れすぎだ、勇者の性癖じゃなくて性格の方が知りたい」

「そうね~ 直情型の正義バカって感じ? 人に『あれは悪です』って言われたら疑いもせずに対決に行くタイプ。もっとも周りに参謀タイプのメガネっ子が居たから、貴族や官僚に利用されて戦争の道具になったりはしないと思うわよ?」


 苦手なタイプだな。

 友人にもいたが、ああいうタイプはこっちの都合を聞かずに巻き込んでくるからな。いつも振り回されてた気がする。


「勇者って言うからには強いんだろ?」

「みたいね~ 戦っているのは見てないけど、召喚された時に既にレベル50だったらしいわよ」

「会ったときにスキルを確認しなかったのか?」

「もちろん確認したわよ。レベル61で、剣と槍の基本スキルに威力や手数を増やすスキルまで色々持ってたわ。興味があるなら今度覚えてる範囲で書き出しておくけど?」

「ああ、頼む」


 夜が明けたら紙とペンを買ってくるか。


「でも、固有(ユニーク)スキルは知らないわよ?」

能力鑑定(ステータス・チェック)で見えなかったのか?」

「うん、見えなかった。サガ帝国から支給されている聖鎧の能力らしいけど、どうせならスキルも隠せばいいのにね~」


 まったくだ。コストの問題か、相手の油断を誘うためか?

 理由はこの際どうでもいいか。


「でも本人がヒントを教えてくれたわ。聞きたい?」

「ああ、聞きたい」

「『俺のユニークスキルは矛盾だ』って」


 これじゃ答え言ってるのと同じよね~ とアリサが笑う。

 韓非子の方の話ならいいけど、辻褄を合わなくさせる能力だったら厄介だな。


 よし、戦うような状況になったら全力で逃げよう!





 膝の上の攻防は劣勢だ。

 見た目が子供なので殴ったりできないのが辛い。飛びかかってきたら掴んで放り投げるくらいはするんだが……。

 アリサめ、眠い振りをして凭れかかってきたな。


「坊や、聞きたい事は、もう終わりかしら?」

「キャラブレしてるぞ?」


 アリサが、オレのアゴを指で撫でる。


「お兄ちゃんっ、もう眠いの。朝まで手を握っててくれりゅ?」

「あざとい!」


 膝の上から掬い上げてルルの横に転がす。


「聞き忘れていたが、どこでオレの正体に気がついた」

「あえて言うなら最初から」


 ショックだ。上手く立ち回っていたと思ったのに。


「その日本人顔だもん、まず疑うって」

「それだけだと断言するには弱いだろう?」


「2つめは『いただきます』ね。こっちでそんな挨拶聞いたこと無いもの」


 アリサが2本目の指を立てそう言う。


「3つめは『タンパク質』よ。栄養素なんてヤマトさんの時代の文献に少し出てくるだけで今では知ってる人もほとんど居ない。それに思いっきり日本語で『タンパク質』って言ったのにスルーしたでしょ?」


 迂闊だった……。


「4つめは」

「まだあるのか!」

「次で最後。私が日本人だとカミングアウトした時に動揺したでしょ? あそこはポーカーフェイスかニッポン人とはなんだ? くらい聞かなきゃ~」


 ハッタリに引っかかったのか……。


「ごめん、もう一個あったわ」


 彼女はオレの下着(トランクス)を指差し、「洗濯表示タグが付いた合成繊維のトランクスなんて、この世界じゃ絶対ないもの」と笑う。





「次だ、アイテムボックスの中身を言え。寝ている間に取り出したナイフや毒で殺されたら堪らん」


 危なく確認を忘れるところだった。


「えっとね~ 『精神魔法』なんかの魔法書が5冊」


 ベッドの上に積み上げていく。


「この本を売れば自分を買い取る事もできたんじゃないのか?」


「奴隷の持ち物だもの、取り上げられて終わりだわ。それに忌み嫌われる精神魔法の魔法書なんて出したら何をされるか……」


「別の魔法を覚えれば良かったんじゃないのか?」


「これしか手に入らなかったの。魔法が使いたかったから独学で覚えたわ」


 その気持ちはよくわかる。


「あとはさっきの水差しと服が数着だけど、全部出す?」


「ああ、出してくれ。さっきの水差しはいい」


 アリサが出していく服を見て頭が痛くなってきた。浴衣にセーラー服、作りかけのメイド服……。なんでも自作したそうだ。裁縫スキルは無かったが転生前の特技だったらしい。


 魔法書もタイトルだけメモしておき、すべてアイテムボックスに戻させた。


「取り上げないの?」

「魔法書は今度読ませてもらうが、取り上げる気は無い」


 不思議そうに小首を傾げるアリサにキッパリと言う。

 幼女サイズのセーラー服やメイド服なんて持ってたら変態扱いされるからな。





 気を取り直して最後の疑問を聞いておく。


「自分だけでなくルルまで買わせたのはどうしてなんだ?」

「お姉ちゃんなのよ。ルルはわたしの異母姉なの」

「だから一緒にいたかったのか……」


 アリサがベッドに広がっているルルの髪を撫でながらしんみりと語る。


「それだけじゃないの。ご主人様はルルを見ても蔑まなかったでしょ? 故郷じゃ使用人たちにまで醜いと陰口を言われていたわ」

「こんなに美少女なのにな……」

「わたしもそう思う。それにわたしも同類だったの。わたしの紫の髪って珍しいでしょ?」


 アリサが自分の髪を両手で持ち上げてこちらを見る。


「ああ、お婆ちゃんのオシャレ染め以外では見たことないな」

「な、なんてものと一緒にするのよ……」


 がっくりと脱力していたアリサだが、すぐに気を取り直して続ける。


「紫の髪や目は不吉なモノとされているの、理由まで知ってる人は少ないけど、何か悪い事があったら全部の責任を押し付けられる感じね」


 だから売れ残ったのか? 称号の「亡国の魔女」はそのせいなのだろうか?


「奴隷になった理由を聞いてもいいか? これは命令じゃない。言いたくないなら言わなくていい」


 少し迷っていたアリサだがポツポツと語り始めた。


 主人公は1-6で肌着を買っていますが、着心地が良くないのでトランクスと交互に着替えています。


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