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幕間:ポチとタマのアルバイト

※サトゥー視点ではありません。(タマ視点)

※1/24 誤字修正しました。


「おい、そこのお前! 雇ってやるから付いてこい」

「別にいらないのです。それに今日はお休みなのです」

「せっかく雇ってやるって言ってるのに、生意気だぞ」

「むりじ~はダメ~?」


 ポチと遊んでいたら、犬人の子供達に声を掛けられた。同い年くらいなのに、何か偉そう。


「ごめんね。こいつ、口が悪くてさ」

「ゴンは、可愛い子に意地悪な言い方しかできないダメなヤツなんだ。許してやってよ。僕はケン、こっちの背の高いのがハンっていうんだ」

「なんだよ、2人して」


 背の高さで大中小、ハン、ゴン、ケン。3人とも犬人族の男の子。


「可愛いって言われたのです」

「ポチかわいい~」


 ポチは可愛い。でも、3人の男の子は、どこか汚れていて可愛くない。


「どうかな? 日当は払えないけど、ちゃんと荷物運びをしてくれたら、御飯をご馳走するよ」

「ごはん! 肉なのです?」

「にく~?」


 今日は、ご主人様がばーべきゅーするって言ってた。今から楽しみ。


「分かった。僕達も男だ。今日は肉を奮発するよ!」

「やったー、なのです!」

「いいのかよ、ケン。そんな安請け合いして」

「一人でいい格好しやがって」


 いつの間にか、盛り上がる3人と一緒に迷宮に行く事になってた。ポチを一人で行かせるわけにもいかないもの。だって、お姉ちゃんだから。





「ゴン、戻って、一人でそんなに前に出たら危ない」

「へへ~んだ、ゴブリンの一匹や二匹に、びびってんじゃねえよ」

「待ってよ、ゴンにケン。あんまり急いだら運搬人の女の子達が追いつかないよ」


 ポチと顔を見合わせる。さっき3人が倒した跳ね芋(ホッピング・ポテト)が入った大袋をポチと2人で持っているだけだから、別に大丈夫。


「大丈夫なのです」

「らくしょ~?」

「そ、そうなんだ」


 背の高いハンの方が、息が上がってる。大丈夫?


「うわ、物陰に2匹いた。ハン、お前も一匹引き受けろ。ケン、オレが倒すまで2匹を捌いていてくれ」

「了解。これはきついね」


 ゴブリンがキーキーいいながら、3人の男の子達に飛び掛る。

 投石で援護したかったけど、迷宮に入る時に「後ろから石を投げちゃダメ」って言われたから投げれない。


 だから、応援しよう。


「がんばれ~?」

「頑張れなのです!」

「「「おう!」」」


 ゴブリンに噛まれるたびに、血がぴゅーぴゅー出て、すごく痛そう。見ていられないのか、ポチが手の平で目を覆って顔を伏せている。


「手伝う~?」

「だいっ、じょうぅぶ、だ! 安心しろ」


 あんまり大丈夫そうじゃない。


「おいっ、そこの犬人! 救援は必要か?」

「助かる! 2匹取ってくれ」


 え~、さっきいらないって言ったくせに。

 他の探索者達が来たら、素直に手伝ってもらってる。ちょっと複雑。


「分かった! ウササ、右端のヤツを」

「了解!」


 ありゃ? ウササにラビビ。ぺんどら育成隊の卒業生達だ。シュピッのポーズでご挨拶。


 うう、誰も気が付いてくれない。


「すごい、あっと言う間に1匹倒しちゃったよ」

「知らないのか? あれが『ぺんどら』だよ。青いマントを着ているから、卒業したエリート達だ」


 数が減ったゴブリンを、犬人の男の子達が血を流しながら倒しきった。とっても痛そう。ポチが包帯で止血してあげてる。


「ありがとうございます」

「気にするな、困ったときはお互い様だ――えっ?」


 あ、ウササがやっと気がついた。もう一度、今度はシュタッのポーズでご挨拶。


「え? タマとポチの姐さん? 何しているんですか、こんな所で」

「あるばいと~?」

「荷物運びのお仕事中なのです!」


 ウササが変な顔をしている。お腹痛いのかな?


「2人とも『ぺんどら』の人と知り合い?」

「いえす~」

「知り合いと書いてダチなのです!」


 あ、小鬼がいる。


 するりんと移動して、ポーチから取り出した小剣で、さっくりと倒す。影小鬼(ゴブリン・アサシン)は、いつのまにか近くに来てるから危険なの。


「えっ? タマちゃんが消えた?」

「あ、あそこ!」


 気がついたラビビに手を振る。


「そんな影小鬼の接近に気がつかないなんて!」

「しょうじんするる~」


 注意してないと危ないよ?


「その剣はどこから?」

「気にしたらまけ~」

「そ、そうなんだ」


 あれ? 何か地面が震動してる?


「タマ、何か来るのです」

「いしんでんしん~?」


 この震動は、六本足。どた、どたたった、だから、兵蟷螂か鉄鋼蟻かな?

 足音の間隔が、ちょっと広いから兵蟷螂のはず。


「たぶん、兵蟷螂の足音~?」

「さすがタマなのです! きっと当ってるのです」


 でも、みんなの顔色が変。間違えたかな?


「どしたの~?」

「ポチさんとタマさんこそ、どうしてそんなに冷静なんですか!」

「いつもの御二人ならともかく、普段着に小剣一本じゃ敵うわけないじゃないですか!」


 そう? 兵蟷螂って弱いよね? ね?

 ポチも不思議そうな顔をしている。


 他のみんなは抱き合って、その場で青い顔をして「どうしよう?」とかドウヨウしてる。勝てないなら、逃げた方がいいよ?


「お前ら逃げろ、カマキリ野郎がくるぞっ!」


 4人くらいの大人の男の人が駆け抜けていった。


 あ~、い~けないんだ~

 とれいんダメ、絶対!


「そ、そうだ逃げないと」

「逃げよう、早く立てよ。ゴン、手伝って。ハンを2人で運ぶんだ。ポチちゃんとタマちゃんも、ぼうっとしてないで一緒に逃げよう」


 倒さないの?


「倒しちゃうのです!」

「おっけ~」


 曲がり角から姿を見せた兵蟷螂は1匹だけ。ポチと視線を合わせて頷きあう。


「ぽち~」

「たま~」


 2人で小剣に魔力を通す。


「魔刃」「ご~」「なのです!」


 リザみたいに赤い光を残しながら、兵蟷螂の前足をポチと2人でシュパシュパと切っちゃう。関節に上手く小剣を当てると簡単に斬れちゃうの。


 足を斬り終わったら急停止して反転。

 今度は地面に転がった兵蟷螂の背中を駆けて、脆い首をさっくりと切り落としちゃおう。


 てぃっ。


「しゅ~りょ~」「なのです!」


 2人で勝利のポーズを取る。





 兵蟷螂の肉は美味しくないので、あんまり嬉しくない。


 ウササやラビビにも手伝ってもらって、魔核と蟷螂の甲殻を持ち帰った。迷宮の出口で、職員のお姉さんに金貨を一杯貰ったので、皆で肉をいっぱいいっぱい食べた。


 もちろん、犬人の男の子達も、一緒。

 屋台で買った蛙肉の串焼きは、とっても美味しい。


「いつか僕達も、2人みたいに強くなってみせるよ」

「負けないのです!」


 ポチは男の子達に負けない勢いで、肉串を食べ始めた。肉はベツバラだけど、あんまり食べ過ぎるとご主人さまの晩御飯が食べれないよ~?


 晩御飯のばーべきゅーは、ムテキにサイキョーでした。まる。


※補足

 孤児院建設後~フロアマスター討伐に出発までの間のお話です。


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