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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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10-36.黒衣の男

※2014/10/27 誤字修正しました。
※2016/2/10 一部修正しました。
 サトゥーです。大きな作業を行う場合は、するべき事をリストアップして、優先順位を付けていくと捗ります。優先順位を付ける時に、依存性を考慮に入れ忘れると破綻するので注意が必要です。工程Aの完成度チェックをする作業が、工程Aの作成より前にあっても意味がありませんからね。





「如何ですかな? 奴隷商館は王都に数あれど、これほどの品揃えを誇るのは、我がオリエルド商会のみでございます」

 商人の合図で部屋に入ってきたのは10人ほどの美女や美少女達だ。全員、丈の短い薄物を1枚羽織っているだけなので、なかなか眼福だ。
 オレは計画に必要な、とあるスキルを持つ人材を手に入れる為に、王都まで足を運んだ。

「オリエルド殿、我は知識奴隷を買いに来たといったはずだが?」
「ええ、もちろん、そうですとも。この娘達はいずれも、文字の読み書きができますし、それ以外のお努めも、しっかり教育してあります」

 娘達のスキルをもう一度、確認する。シガ王国語のスキルがあるのは、セルシォークの元貴族の娘達だけなので、スキルでは判断できない。セルシォークという国はたしかメネア王女の元婚約者がいた国で、鼬人族に滅ぼされたはずだ。

 順番にチェックし、目的のスキルを持つ娘がこの中にいるのを確認する。
 奴隷商人が娘達のスキルやアピールポイントを順番に説明するのを、気だるそうなポーズで聞く。

「右から2番目と3番目、それから左端の娘、そうだなそっちの赤毛の娘も残せ」
「はい、畏まりました」

 10分ほど掛けて説明が終わったところで、目的の娘とダミーの3人を残して退出させる。ダミーに元貴族の娘達と生活魔法が使える娘を残した。

 奴隷商人が合図すると、娘達は纏っていた薄物を脱いで床に落とす。
 いや、眼福だけど、そういうサービスは求めてないから。

「それぞれの値は幾らだ」
「はい、この元公爵令嬢が金貨300枚となります。小国とはいえ王家の血を継いでおり、スキルも礼儀作法だけでなくシガ王国語と詩吟を持つ優秀な娘です」

 何処と無く気が強そうな娘だ。色白で胸は普通だが、腰はなかなか安産型だ。金髪の豪奢な巻き毛が、色っぽく体に纏わりついている。17歳。レベル4だ。

「こちらの元伯爵令嬢が金貨200枚となります。さきほどの娘よりも血筋では劣りますが、従順で体つきも立派なので色々とお役に立つでしょう」

 こちらの気弱そうな娘は、Dカップ近い立派なサイズの胸をしており、やはり色白だ。銀色の柔らかそうなストレートロングの髪型をしている。瞳はきれいな青色だ。スキルは礼儀作法とシガ王国語の2つ。16歳。レベル3だ。

 ここまでは前座、次が本命だ。

「これは元々レッセウ伯爵のお城で、紋章官をしていた娘です。レッセウ伯に無礼を働いたとかで、奴隷落ちしております。やや体つきが幼いですが、この氷のような透き通った美貌は、将来化けること請け合いです。スキルは紋章学に命名と地味ですが、文字の読み書きは勿論、書類整理にも長けているので、きっと商人殿のお役に立つことでしょう。値段は少々安めで金貨30枚となっております」

 この人生を諦めきったような死んだ魚の目の娘が、この商館にわざわざ足を運んだ理由だ。迷賊に捕まっていた調合スキル持ちの娘達の名前を変えさせて、他の都市に潜伏させようと考えた訳だ。

 容姿は、奴隷商人が褒めるだけあって、なかなかの美少女だ。系統は違うが、アリサやミーア並みの美少女と言えるだろう。胸は薄いが、Aカップ程度はある。髪は薄い金色だ。薄い唇と焦点の緩んだアイスブルーの瞳が、少女の生気のなさを助長している。名前はティファリーザ。15歳。レベル5だ。称号は「オリエルドの奴隷」となっているが、隠し称号に「慇懃無礼」「無礼者」などがある。

 この称号を見ると、別の命名スキル持ちを探した方が良い気がして来る。

「こちらは呪い士の娘で、先ほどの元紋章官と同じくレッセウ伯のお城で、貴族様方にお仕えしていた者なのですが、やはり粗相があったそうで、奴隷に落とされております」
「ふむ、生活魔法が使えるのなら高いのだろう?」
「いえ、そこは金貨50枚程度に抑えさせて頂いております」
「ふむ、連続で何回ほど魔法が使えるのだ?」
「2回ほどと聞き及んでいます」

 この娘は、生活魔法が使えるがレベルが2しかない。おそらくギフトで得たのだろう。先の三人に比べると、劣るが十分かわいいと評していいレベルの容姿をしている。赤毛に焦げ茶色の瞳をした16歳の娘だ。名前はネル。背はオレと同じくらい、胸のサイズはルルと同じくらいのようだ。やや、腰周りが細い気がする。

「紋章官と呪い士、2人で金貨30枚なら買おう。没落貴族の娘は、容姿や血筋はなかなかだが、身の回りの世話をする者が必要になるようなら、不要だな」

 2人の相場の合計が金貨48枚ほどだったので、少し安めに値切ったのだが、奴隷商人は、そのままの値段で交渉が成立した。そのまま「契約(コントラクト)」スキル持ちの担当者がやって来て、奴隷売買が完了する。2人の称号が、ちゃんと「クロの奴隷」になっているのを確認した。

 帰りにすれ違った奴隷を見て、奴隷商人に一杯食わされたような気になった。その奴隷は、命名スキルを持ち、相場は僅か金貨2枚しかしなかった。この奴隷商館には、3人の命名スキル持ちがいたのを知っていたのに、少し失敗した気分だ。

 一方で、生活魔法が使える奴隷は、ネルとさほど値段が変わらなかったので、魔法使いは容姿では無く能力で判定されるのだろう。

「それではクロ様、奴隷がご入用の際には、ぜひ当商館へおいでください」
「ああ、その時は真っ先に寄らせてもらうよ」

 揉み手をしながら見送る奴隷商人に社交辞令を返し、店の前に手配させておいた辻馬車に乗り込んで宿に向かった。





 宿の部屋に入り、宝物庫(アイテムボックス)から、ワンピースとサンダルを取り出してベッドに置く。衣擦れの音に気がついて後ろを振り返った。

 なぜ、君達は服を脱いでいる?

 まあ、いいか。この子達の裸なら、さっきの奴隷商館でも見たしね。生活魔法で洗わせる必要が無い程度には清潔だ。

「こちらの服に着替えろ。この宿はすぐに引き払う」
「承知しました」
「はい」

 女の子が服を着替えるのをまじまじと見るのも何なので、宿を引き払う旨を記した手紙を書いて、テーブルの上に置く。もちろん、宿代は先払いしてある。

 着替えの終わった2人を連れて、2つの中継地点を経由して蔦の館の地下室へと転移した。途中の中継地点は、閃駆で王都に向かった時に、だいたい300キロ毎に設置してある。勿論、王都の近くにも転移用のポイントは作っておいた。

 王都ではクーデターは発生していない。未然に防いだのか、そもそもクーデターが起こるかもしれないという考え自体が杞憂だったのかは判らない。念のため魔人薬のある場所を調べたが、普通に軍施設の薬品庫の中だったので、ただの備品の可能性がある。

 太守やギルド長から報告が届いているはずなので、わざわざオレが出しゃばる必要はないだろう。





「転移魔法……無詠唱……、ご主人様は、サガ帝国の勇者様なのですか?」
「違う。我が無詠唱を使える事を他言する事を禁ずる。これは命令だ」

 承諾の返事を返す2人の首から、隷属の首輪を外す。2人は犯罪奴隷という扱いだったので、隷属の首輪を付けていた。

「え? どうして外れたっすか?」
「そんな、高位の魔法使いでも、専用の鍵なしには儀式が必要なのに……」

 驚く2人を連れて、応接間に行く。

「クロ様、お帰りなさいませです。その者達が例の人材ですか?」
「そうだ」
「クロ様、お帰りなさいませ」
「ポリナ、調合スキル持ちの5人以外を中庭に集めろ。レリリルは、館内に残っている娘達がいないかチェックしろ」

 ポリナの差し出すお茶を受け取りながら、指示を出す。奴隷2人は、この場でお茶を飲んで待機しているように命令して、オレも中庭に向かった。





「探索者達よ、集合しろ。お前達が、迷宮内の安全を保つのだ」

 そう宣言して、武装した47人の探索者達を連れて迷宮に転移する。もちろん、長杖を持って、ダミーの詠唱まで付けた。

「ここは、第一区画だ。魔物はまず出ないが、迷宮出口への大階段とここの間の護送を頼む。隊長には第一陣の護送を頼んだ」
「あいよ、クロ様。ちゃんと迷賊達の所から逃げ出してきたって言うよ」

 その言い訳に信憑性を持たせる為に、この2日間ほど入浴をさせていない。彼女達、探索者の装備は、迷賊たちから取り上げた物だ。比較的程度の良い蟻鎧や骨鎧を与えてある。隊長には、面倒な任務を頼む代わりに、特別に蟻羽の銀剣という魔法剣を与えた。これは蟻の羽をベースに作る武器で、レシピ通りの加工をする事で、透き通った銀色の剣になる。魔力を通していない状態では、鉄剣よりやや脆いが、切れ味の鋭い魔法の武器となる。トラザユーヤの資料にあったもので、迷宮都市では、それなりにメジャーな魔剣らしい。大体、金貨30枚くらいの品だ。ナナシで作ったので、作者名は鋳造魔剣同様に空欄になっている。
 鋳造魔剣よりコストが安いが、作成に手間が掛かるので、頼まれない限り二度と作る事はないだろう。

 続けて人数の多い運搬人達を2回に分けて転移する。最後に主人が生存している奴隷達を転移した。彼らには個別に護衛を付けて5つのグループにして、迷宮を脱出させた。

 迷宮経由で解放した者達には、当座の生活資金として、大銅貨5枚ずつを与えてある。少し少ない気もするが、ポリナに言わせると与えすぎらしいので、それ以上与えるのは止めておいた。

 さて、蔦の館には、調合スキルを持つ5人を除いて、8人の探索者と多くの奴隷達が残っている。

 残った奴隷達は、主人無し状態になっているので、主人になって欲しいと頼まれている。独り立ちできそうな職人系のスキル持ちは解放して、残りの者は何か手に職を付けさせてから解放しようと思う。

 探索者で残ったのは、シガ王国の貴族や他国の貴族だった娘達だ。迷賊の所から脱出したという噂が立つくらいなら、死んだほうがマシだと泣き叫ぶので仕方なく置いてある。

 さて、次のステップに進もうか。

※活動報告に詳細を記載していますが、次回は10/27(日)更新予定です。

※2016/2/10 迷賊から救出した人達の内訳を修正しました。
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