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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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10-26.晩餐と人脈

※2016/8/9 誤字修正しました。
 サトゥーです。高校の時の担任に「社会に出たら人と人の繋がりを大切にしなさい」といわれた覚えがあります。本人は単なる定型文的な訓示として言ったのでしょうが、実際に社会に出てから、折に付けて、その言葉を思い出します。





「はじめまして、ペンドラゴン士爵様。わたくし、王都と迷宮都市の間で商いをさせて戴いているオグーショと申します」
「このオグーショは、高級食材だけでなく、王都の書物や雑誌なんかも扱っていてね。食材関係や書物関係が欲しければ、この者に頼めば大抵のものを仕入れてくれる」

 シーメン子爵の晩餐会では、子爵の友人という幾人かの貴族と、お抱え商人を紹介された。貴族達は公都の貴族の親類縁者で、迷宮都市では、それなりに顔が利くという事だ。
 お抱え商人は、「宝物庫(アイテムボックス)」持ちの使用人を複数抱えている上に、ゴーレム馬車を所持しているそうで、急ぎの依頼でも応えられますと、自信満々だった。たまに色々な商品の仕入れを頼んでおけば、オレが希少な素材を使っていても、周りが勝手に仕入先を想像してくれるだろう。

 ゴーレム馬車は、公都でも見たが、ゴーレムの馬が馬車を引くタイプと、馬車自体がゴーレムの2つのタイプがある。彼の馬車は後者のようだ。

「ほう、ゴーレム馬車ですか」
「ええ、馬車自体がゴーレムになっていまして、盗賊や魔物が現れてもびくともしないのです」
「それは凄いですね。王都では、ゴーレム馬車に乗る方は多いのですか?」

 オレが興味を示したのに気を良くしたオグーショ氏が、色々と話してくれた。

「そうですね、上級貴族の方や裕福な者には珍しくありません。ただ、その多くが、王祖ヤマト様の時代に作られた中核部品を使用しているので、商品として出回る事は稀です」

 オレの自走馬車みたいに、乗り手の魔力を使うものは稀なのだそうだ。魔法使い達が自家用車として持っていたりするらしいが、魔法使いも疲れるのは嫌みたいで、弟子達に操車させているそうだ。

 なぜか、そこでオグーショ氏が、わざとらしいほどの間を作る。
 そこに聞き手に回っていた、事情通のソーケル男爵の甥だか従兄弟だかいう青年が話に入ってきた。

「5年ほど前に、キリク伯爵領の遺跡で発見されていただろう?」
「流石はソーケル卿。博識でいらっしゃる。ペンドラゴン士爵様、ソーケル卿が仰った遺跡で、ゴーレムの心臓と呼ばれる動力機関が複数発見されたのです。その心臓はキリク伯から王家に献上され、毎年1つ、大きな勲功のあった貴族に下賜されているのです」

 おそらくオグーショ氏は、わざとキリク伯爵領の話をせずに、ソーケル卿が話に交ざり易いように間を空けたのだろう。こういう配慮は見習いたいものだ。

 それにしても、良い話を聞いた。
 リビングアーマーを地上の屋敷の警護用に配置しようと思っていたから、危なく騒ぎになる所だったよ。

「それは凄いですね。そのような遺跡は良く発見されるのですか?」
「遺跡の発見は、実に稀です。その前に発見されたのは、ゼッツ伯爵領の山中ですが、30年近く昔の話です」

 この間見つけた海底遺跡の話は、秘密にした方が良さそうだ。

 前に闇オークションに出品された飛空艇の空力機関は、山奥に墜落していた所属不明の飛空艇の残骸から回収したものらしい。所属不明という時に言葉を濁していたので、本当に不明という訳ではないようだ。





 (つつが)無く晩餐が終わり解散となったのだが、馬車に乗り込む前に館の執事さんに呼び止められて、シーメン子爵の応接室に寄る事になった。ルルには悪いが、もう少し馬車で待っていて貰おう。少し心配だが、ルルにバカなちょっかいを出す者はいないらしい。西ギルドで大男を倒した武装メイドの話は、貴族の使用人達の間でも有名なのだとミテルナ女史が言っていた。

「ペンドラゴン士爵、呼び戻してすまないね」

 子爵はそう一言詫びてから本題に入った。

「君は、この迷宮都市の太守と面識はあるかね?」
「はい、貿易都市で少し」
「その言い方だと、何か問題でも起こしたようだな。あの男は、元々、アシネン侯爵家の傍流の男爵家の跡取りだったのだが――」

 子爵が教えてくれた話は、トルマメモの情報で既に知っていた。ただし、既知の情報に、幾つかの注釈が加えられた。彼は侯爵家の継承権を持っていた侯爵夫人に婿入りする事で、侯爵になれたそうだ。

 その為、愛人を囲う事もできずに、男色に走ったり、ギャンブルに溺れたりしているそうだ。

 最近のお気に入りは、貿易都市の地下で行われている闘技場での賭けらしい。非合法な剣奴同士の殺し合いをさせているそうだ。しかも、殺し合いを盛り上げる為に、わざわざ演出家まで用意しているというから驚きだ。

「そういう訳で、アシネン侯爵は自由になる金に飢えていてね。その資金を供給しているのが、腰巾着のデュケリ准男爵だ」

 なるほど、それでワイロ好きなのか。

 デュケリ准男爵は、アシネン侯爵に資金を提供する対価に、迷宮都市での魔法薬や魔法道具の販売を独占しているらしい。もちろん、探索者ギルドは別だ。

 市外からの持ち込みは、国王の勅命なので制限できないらしいが、市内で魔法商店や錬金術屋を開業するには太守の許可がいるため、商売敵が増えるのをシャットアウトしているらしい。露店での小規模な売買までは規制していないそうだが、目立つ売り上げを出すと彼の子飼いの探索者崩れの部下達が実力行使に来るらしい。

「デュケリ准男爵には、気をつけ給え。彼は大金を稼ぎ、家格を上げるためなら、何でもする男だ」

 この迷宮都市では、アシネン侯爵の後ろ盾があるから好き放題しているらしい。

「君のような有為の人材が、あのような男に害されるなど考えたくもない。君が私の知人である事は、あの男も承知しているはずだ。おそらく手を出してこないだろうが、あの男は、利に聡い。取り込まれないように注意したまえ」

 料理の腕を振舞うのもやめた方がいいのだろうか?
 少なくとも、デュケリ准男爵の口に入らないように注意しよう。

 春の王国会議での再会を約束して、オレは子爵邸を出た。
 ルルの待つ馬車の所に男性がいたので、少し驚いたが、ミテルナ女史の兄らしい。ルルに、ミテルナ女史の近況を尋ねていたそうだ。色々と差し入れしてくれたそうなので、お礼を言っておいた。





「ほへ? 准男爵対策?」
「ああ、この都市で厄介ごとに巻き込んできそうな人物なんだ」
「う~ん、そんな小物は放置でいいと思うけど?」

 オレのベッドで横になっていたアリサに相談してみる。この館には、皆の私室を用意したのに、夜中は何故かオレの部屋に全員揃っている。オレは話しながらも、アリサが背後に隠した棒アメを取り上げる。寝る前の間食はダメだとアレほど注意したのに、困ったものだ。

 ベッドの向こう側では、ルルがポチ達に泣きつかれている。出かける前に約束していたハンバーグを期待して帰ってきたのに、ルルが不在でミテルナ嬢が用意していた質素なメニューだったと切々と訴えている。ルルを御者にしたオレのせいなので、ルルと一緒にポチ達に謝っておいた。

 アリサには、シーメン子爵から聞いた内容を掻い摘んで話す。

「ふ~ん、薬品とか魔法道具を牛耳ってる人なんだ」
「ああ、そうだ」
「その人って、探索者達からの評判最悪だったわよ」

 それは、そうだろう。魔法使いが少ない以上、命綱になる魔法薬が、彼のせいで入手困難なのだから。

「いっその事、変装して謎の商人として暗躍してみたら? あの無茶な性能の魔法道具とか魔法薬を売れば、駆逐できるんじゃない?」

 好戦的なやつだな。駆逐してどうする。

「そんな事して睨まれたらやっかいじゃないか」
「だから変装するのよ。ペンドラゴン士爵じゃなくて、謎の黒衣の商人ボッタクルとかになればいいじゃない」

 名前が間違っている。
 それは暴利を貪る事を宣言する名前だ。

 だが、変装してクロの名前を使って、魔法道具屋をするのはいい考えかもしれない。クロとして飛空艇や自走馬車を普及させれば、オレが入手していても目立たないしね。

 ちょっと、このアイデアを煮詰めてみよう。
 オレは、ベッドに横になり、メニューのメモ帳に新しいページを追加する。その案のメリットとデメリットを箇条書きにして検討する事にした。気が付いた時には、幼女まみれになっていたが、何時もの事なのでスルーする。





 翌日の昼過ぎ、オレはお茶会に参加するためにアシネン侯爵邸に来ていた。

 御者をしてくれているルル以外の面々は、イルナとジェナの2人を連れて、今日も迷宮でパワーレベリング中だ。

 お茶会のメンバーは、アシネン侯爵夫人は当然として、昨日の晩餐でも会ったホーエン伯の弟の奥さんを初めとした貴族の奥方や娘さん達が集まっている。ほとんどが既婚者で、侯爵の2人の娘さんと、20歳過ぎのゴハト子爵令嬢だけが独身者だった。子爵令嬢は、ふくよかでふくよかな人だ。馬車に乗るときは2人の使用人に押し上げて貰うらしい。

 他に特筆すべきメンバーは、デュケリ准男爵の奥方だ。あの旦那と違い、准男爵夫人の方は、薄幸の少女といった風情だ。太っていてアラフォーで無ければ、「美少女」と評したい感じだ。なんでも、病弱な跡取り息子がいるらしい。

 なぜか、ドリル・ツインテの王女さまは参加していなかった。あの元気そうな王女に似合わないが、体調不良なのだそうだ。侯爵三男のポッチャリ君も来ていないが、そっちはどうでもいい。

「まあ、これがカステイラですの?」
「王都で食べたホットケーキよりも美味しいですわね」
「お母様、もう少し食べたいです」

 カステラは好評のようだ。抹茶味まで用意してきた甲斐があるというものだ。

 そして、オレ以上に、得意そうなのが、アシネン侯爵夫人だ。カステラの第一人者を自称するくらい、鼻高々になっている。

 このまま平和に終われば、良いお茶会だったのに。
 なかなか、そうは行かないようだ。
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