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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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10-10.迷宮探索(4)

※9/28 誤字修正しました。

 サトゥーです。夢中になっている内に時間を忘れる事は良くあります。MMOのバージョンアップの時など、週末2日分の食料を買い込んで来て、寝る間も惜しんでゲームに没頭したものです。





「ナナ! しばらく耐えなさい。ポチ、タマ、魔刃を! 一気に方を付けます」
「この蔦め! 植物なのか動物なのかハッキリしろと訴えます!」
「魔刃~」「ご~なのです!」

 ナナの挑発に、蔦をタコの足の様に這って駆け寄ってきた棘蔦足(ソーン・フット)が、ナナの体に蔦を絡める。「鋭刃(シャープ・エッジ)」の理術で強化された魔剣が素早く蔦を切断するので、胴体には蔦が巻きつく隙が無い。まったく、そこは、もう少しエロく行って欲しい。

 そんなオレの心の声を他所に、魔刃を生み出したポチとタマの魔剣が、巨大な棘が付いた主蔦を切り裂く。

 棘蔦足(ソーン・フット)の頭にあたるコブの部分に、アリサの「空間切断ディメンジョン・カッター」が突き刺さり、コブを半ばまで切断した。

 横にいるルルの持つ魔力砲から発射された大口径の魔力弾が、半ば千切れていた棘蔦足(ソーン・フット)のコブを完全に吹き飛ばす。

 そこにミーアの「水裂きウォーター・シュレッド」が効果を発揮し、棘蔦足(ソーン・フット)の体表を流れる体液を利用して、ヤツの表皮をズタズタにする。

 最後に魔刃で、棘蔦足(ソーン・フット)の足のような蔦を切り裂いていたリザが、螺旋槍撃を叩き込んで止めを刺した。

「大勝利~?」「なのです!」

 魔物を倒して勝ち鬨をあげる皆の怪我を、生活魔法で清潔にしてから「治癒(アクア・ヒール)」で一気に癒す。戦闘中の怪我はミーアに任せてあるが、戦闘後のケアはオレが担当している。

 今回戦っていた棘蔦足(ソーン・フット)はレベル30もあったが、安定して倒せるようになって来た。

 ここは植物系の魔物が溢れる1の4の9の17区画。通る経路によって同じ区画でも入れる場所が変わる事から、こういう名前になっているらしい。長いので以後17区画と言おう。ここはどの部屋も、天井から垂れ下がる植物の根が発光していて明るい。前に気になって、その植物の根を切ってみたら、光ファイバーのような断面になっていた。きっと根や茎が天然の光ファイバーのようになっていて外光を取り込んでいるのだろう。

 そのせいか、この区画には植物型の魔物が多い。さっきの歩き回る蔦の魔物や、ドリアンサイズのドングリを大砲のように打ち出してくる巨木の魔物、親指位の粒をマシンガンの様に連射する歩くトウモロコシの魔物、スライムのような粘液の触手を繰り出して捕食して来ようとする食虫植物型の魔物など様々なバリエーションの敵が襲ってきていた。どれもレベル20~30の範囲だ。

 興味深い魔物に「歩竹(ウギ)」という竹で出来た鹿みたいなのがいた。この魔物の竹のような本体から取れる繊維を加工すると、抹茶のような色をしたウギ砂糖が抽出できる。さらに角に生えた葉は、ポーション用の安定剤の材料だ。この歩竹(ウギ)と先程も狩っていた棘蔦足(ソーン・フット)の蔦が、中級ポーションの材料になる。蔦は数日経つと腐敗して毒性を持ち始めるので、エルフの錬金術の資料にも現地で調合するようにと注意書きしてあった。

 ときおり、デミゴブリンや草食系の魔物が姿を見せていたが、レベルの低い雑魚は邪魔なので、オレが誘導矢(リモート・アロー)で始末している。

 ひとつ手前の9区画が、罠天国の上に、毒や疫病、麻痺攻撃の得意な小虫系やスライム系の敵ばかりだったせいもあって、この区画にはオレ達以外誰もいない。あまり過去の探索者も来なかったのか、標識碑の数が他の区画の2割ほどしか無かった。





「うっしゃー! やったね! さっきのでレベル27よ!」
「にゃはは~?」
「やったのです!」
「慢心は禁物ですよ。ご主人さまがいてくれてこその成果です」
「肯定。マスター感謝です」
「もちろん、感謝してるってば。狩ってる間は他の敵が来ないし、小休止の後にすぐに手頃な敵がやって来るし、効率厨も真っ青な段取りだもんね」

 アリサの微妙に失礼な賞賛を聞き流す。
 最初にアリを始末した1の4区画だと、敵が弱すぎて皆の訓練にならないので、少し足を伸ばしてみた。この17区画の敵が適度に強かったお陰で、効率的なレベルアップと訓練になったようだ。懸念していたアリサのスタミナ不足だが、本人によると魔法使い系のステータスに極振りしていたのが原因だったらしい。レベルアップ時に調整させる事で、問題ない水準まで上げさせる事でなんとかなった。能力値の上昇まで、任意に割り振れるのはなかなか羨ましい。

 この場所は昼夜がある上に、地面に土がむき出しになっているので、地下という気がしない。しかも、水源があり、高い天井付近には通風孔まであったので、煮炊きしても空気が濁る事がなかった。キャンプ狩りには、この上ない良ポイントと言えるだろう。

 むき出しの地面だと土魔法で魔物を簡単に分断できるので、皆と戦う敵を1匹に限定できるように操作するのが楽だった。アリサの空間魔法で分断しなかったのは、格上の敵と戦っている最中に攻撃用の空間魔法を操るのが大変そうだったからだ。

「そういえば、けっこうな日数が経過していますが、まだ街に戻らなくて大丈夫でしょうか?」
「食料も水もたっぷりあるから大丈夫じゃない?」

 すでに4日経過している。一日2~3レベルしか上がっていないが、突入から10レベル以上アップしているから充分な成果だろう。

 特にルルが生活魔法と術理魔法のスキルを、ミーアが精霊魔法スキルを取得したのが大きい。

 アリサも空間魔法がスキルレベル8になった時点で、火魔法スキルを取得していた。なんでもスキルレベル9以上に上げるポイントが大きすぎて心が折れそうになったので浮気したらしい。現状でも上級魔法が使えるので、戦闘での効率がいい火魔法を選んだそうだ。

 アリサ曰く、火魔法の身体強化は体脂肪を燃焼させてエネルギーを生み出すから、ダイエットに良いそうだ。エルフ達に教えて貰ったと自慢していた。

 オレが解析した限りでは、普通に魔力が燃料になっていたので、体脂肪云々はエルフ達の冗談のはずだ。あまりに嬉しそうだったので言いそびれたが、アリサが暴食を始める前に教えてやらねば。





 この広間の敵を全滅させたので、オレ達は夕食の為に、この4日間拠点にしているログハウスへと向かった。

 樹木系の魔物の素材で作ったログハウスで、初めはリビング兼寝室があっただけだったのを、日々少しずつ増築&改良していったものだ。今では、リビング兼食堂と寝室、キッチン、風呂場、工作室を備えた別荘といった風情の拠点となっている。

 別荘の前庭には、土が付いたままだったトマトや薬草を植えてみた。今度来る時は、花や豆、芋類も持って来て植えてみよう。

 この広間を拠点に据えたのは、水場や風穴があった事と、湧穴ができるような魔物の通路が近傍にない事だ。広間から外に出るための通路も3本あるが、それぞれの通路の両端に、魔法鍵を組み込んだ扉を設置して、さらに三重の罠を仕掛けておいた。タマでさえ途中で罠解除を投げ出したので、防犯には充分だろう。出入りが面倒だと困るので、解錠用の認証魔法具と合言葉で開くようにしてある。扉の支柱には、非実体系の魔物の侵入を防ぐために、簡易版の結界柱を組み込んでみた。

「ただいま」

 オレ達は、口々にそういいながらログハウスに入る。このログハウスには、カカシ・シリーズと同じ監視機構を組み込んであり、侵入者を発見すると「信号(シグナル)」で警報を送ってくれる。迷宮内はマナが濃いようで、クラゲの触手繊維を利用したマナ収集器を作る事で監視機構や警報に必要な魔力を捻出できた。

 先ほどの扉や罠で充分だとは思うが、念の為だ。

「お湯沸いたわよ」
「ああ、すぐ行く」

 アリサが呼びに来たので、この別荘の守護者用に作成していた青銅製の自動甲冑(リビングアーマー)をシートの上に置いて風呂に向かった。

 最近の湯沸しは、火魔法を覚えたアリサがやっている。最初の内は火力調整を間違えて風呂場を半焼させていたが、今では安定して沸かせるようになった。

「みんな待ってるんだから、早く脱ぐ脱ぐぅ~」

 脱衣所まで作るのが面倒だったので、リビングで服を脱ぐ必要がある。もたもたしていると、アリサの魔手に捕まってしまうので、早着替えでタオルを腰に巻いたスタイルに変身して風呂場に入る。

 総檜のような趣の木製の浴槽の前には、皆がアリサ同様の浴衣一枚で待っていた。先に入ればいいのにと思わなくも無いが、リザとナナが「一番風呂はご主人さま(マスター)のもの」と言って譲らなかったので、オレが最初に入る習慣ができてしまった。

 リザとナナに左右から掛け湯をして貰ってから、湯船に足を入れる。ゆっくりと浴槽の縁に背を預け、丁度いい湯加減のお湯に心身をリラックスさせる。

 ここの水場は、精霊が多い。魔物の餌にするためなのか、単に地脈の噴出し口なのかは判っていない。湯に浸かっているだけで、マッサージされたように体が楽になるのは、案外、精霊達が揉み解してくれているのかも。

 体が温まったところで、アリサ以外の年少組の頭と背中を洗ってやる。前はアリサやルルも洗ってやっていたんだが、ルルは湯あたりを起しそうなぐらい真っ赤になるし、アリサも興奮しすぎて鼻血を出して目を回していたので自分でさせている。

 じゃんけんで一番手を勝ち取ったミーアが、シャンプーハットを被って待機していたので、素早く洗髪用の石鹸で泡立てていく。この洗髪用石鹸は、エルフの里の錬金術のツーヤ氏にレシピを教えて貰ったやつだ。元の世界のシャンプーほどでは無いが、普通の石鹸より泡立ちも良く頭皮に優しい逸品だ。シャンプーハットはポチ用に作ったのだが、なぜか今ではミーアとナナのお気に入りになっている。

 順番に幼女達の髪を洗った後、湯冷めした体を、ポチ達と百まで数えて温めなおしてから風呂から出た。湯に浸かってほんのり透けるナナの浴衣に目を奪われないようにするのが、なかなか大変だった。





「明日の朝に、一端、地上に戻ろうと思う」
「え~、30レベルまで上げてから戻りましょうよ」
「そうしてやりたいのは、山々なんだが、宿を5泊で契約しているから明日までに戻らないと馬車や馬が売られちゃうんだよ」

 不平が出たのはアリサだけ、だったので戻る理由を告げて説得した。馬車はともかく、馬が売られたらかわいそうだ。馬も長旅を共にした仲間だしね。

「それに刻印板を設置しておけば、すぐに戻ってこれるだろう?」

 その一言が決め手だったようで、アリサの説得に成功した。

 帰る前に、地上へ持ち帰る戦利品の選別だ。

 魔核(コア)のうち、この17区画で手に入れた大量にある真っ赤な大型魔核(コア)は予備の魔法の鞄ホールディング・バッグに入れてログハウスに置いていく事にした。アリや雑魚の小さく白っぽい魔核(コア)は、水増し薬作りの時に大量に消費したが、まだ百個以上残っている。この魔核(コア)だけを小袋に入れて持ち帰ろう。

 魔物の素材は、何も持っていないとかえって疑惑の視線を集めそうなので、無難に迷宮蟻の胸殻と背甲を各10枚と蟻の爪10本、あとは迷宮蛙の肉を持ち帰る事にした。どれもギルドの買取表にあったものだ。

 ちょっと思いついて、買取表に無い黄奇蜥蜴の肉も持って行く事にした。へんな触手のある黄色いイグアナみたいなトカゲだったが、焼くと脂肪分の少ない鶏肉のような味がして旨かった。





 1の4区画で見つけた隠し部屋まで、「帰還転移(リターン)」の魔法で戻る。もちろん、部屋に魔物や探索者がいないかは、事前に「遠見(クレアボヤンス)」の魔法で確認した。転移先の状態を確認するには、マップで調べるよりもこちらの方が手軽なので最近多用している。

 第1区画に戻る手前の十字路付近で、オレ達を囲むように接近する合計30人ほどの迷賊を発見したので、視界に入るはるか手前に「誘導気絶弾(リモート・スタン)」の3連射で始末しておいた。死にはしないだろうが、1人あたり2~5発ほど叩き込んだので、しばらく悶絶している事だろう。

 途中に適当な小回廊を迂回する事で、悶絶した迷賊に遭遇(エンカウント)する事もなく、無事に迷宮から脱出する事ができた。

 オレ達は迷宮の外で驚きを以って迎えられたのだが、その驚きはアリサの期待とは少しベクトルが違ったようだ。
 迷宮内で快適に生活していたようです。

 下記のスキル変化は暫定です。10章の登場人物を作成した時に下記の記述は削除するかもしれません。

●主人公達のレベル、スキルの変化

 アリサ……レベル27
      スキル:
          「不倒不屈(ネバー・ギブアップ)
          「全力全開(オーバー・ブースト)
          「自己確認(セルフ・ステータス)
          「能力鑑定(ステータス・チェック)
          「技能隠蔽(ハイド・スキル)
          「宝物庫(アイテムボックス)
          「空間魔法(Lv8)」
          「火魔法(Lv1)」(new)

 リザ………レベル27
      スキル:
          「槍」
          「刺突」
          「強打」
          「魔刃」
          「魔刃砲」(new)
          「螺旋槍撃」(new)
          「瞬動」(new)
          「解体」
          「調理」

 タマ………レベル27
      スキル:
          「小剣」
          「投擲」
          「2刀流」(new)
          「魔刃」(new)
          「索敵」
          「解錠」(new)
          「罠解除」(new)
          「罠発見」(new)
          「騎乗」
          「解体」
          「採取」

 ポチ………レベル27
      スキル:
          「小剣」
          「強打」
          「兜割り」(new)
          「魔刃」(new)
          「射撃」
          「投擲」
          「索敵」
          「解体」
          「瞬動」(new)

 ルル……レベル26
      スキル:
          「射撃」
          「狙撃」
          「護身」(new)
          「生活魔法」(new)
          「術理魔法」(new)
          「詠唱」
          「操車」
          「礼儀作法」
          「調理」
          「調合」
          「奉仕」(new)

 ミーア……レベル20
      スキル:
          「小剣」
          「弓」
          「水魔法」
          「精霊視」
          「騎乗」
          「精霊魔法」(new)
          「護身」(new)

 ナナ………レベル27
      スキル:
          「片手剣」
          「盾」
          「受け流し」
          「挑発」
          「騎乗」
          「理術」
          「拉致」(new)
          「捕縛」(new)
       理術:
          「魔法の矢(マジック・アロー)
          「短気絶(ショート・スタン)
          「(シールド)
          「身体強化(ライト・ブースト)
          「信号(シグナル)
          「探知(ソナー)
          「防護柵(フェンス)
          「自走する板フローティング・ボード
          「魔力感知(センス・マジック)
          「鋭刃(シャープ・エッジ)
          「防護陣(シェルター)
          「(プロテクター)」(new)
          「偽装情報(フェイク・パッチ)」(new)
          「魔法防護陣(マジック・シェルター)」(new)
          「(空欄)」(new)
          「(空欄)」(new)
          「(空欄)」(new)

――――――――――――――――――――――
 名前:サトゥー・ペンドラゴン
 種族:人族
レベル:34
 所属:シガ王国ムーノ男爵領
 職種:見習い探索者
 階級:士爵
 称号:食卓の魔術士
スキル:
    「片手剣」(new)
    「生活魔法」(new)
    「術理魔法」
    「回避」
    「練成」
    「鍛冶」
    「木工」
    「調理」
    「算術」
    「相場」
    「社交」
    「紋章学」
 賞罰:
    「ムーノ男爵領蒼輝勲章」
    「ムーノ男爵軍一等勲章」
    「オーユゴック公爵領蒼炎勲章」
      ◆
    「ムーノ市民栄誉勲章」
    「グルリアン市民栄誉勲章」
    「プタ街民栄誉勲章」

※サトゥーのステータスは、交流欄での公開値です。本来の値は秘匿されています。
+注意+
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