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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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233/550

10-6.死の通路

※9/28 誤字修正しました。
 サトゥーです。テーブルトークRPGを遊んだ後にゲーム機用のRPGを遊ぶと、クエストの達成期間が無いものが多くて、クエストの発注者はみんなダメ元で頼んでいるんじゃないかと違和感がありました。





「おおっ! まさに迷宮への入り口って感じね」
「ん」

 門を抜けると下りの階段になっていて、5メートルほど下に降りると、幅10メートル高さ5メートルの半地下の通路になっている。

 セーリュー市の迷宮を思い出したのか、ポチとタマがオレの左右に無言で陣取った。

 天井付近に明り取りの窓があるので、それなりに明るい。松明が無いと歩けないほどではないが、本を読むのは辛いくらいの明るさだ。

 明り取りの窓の向こう側、恐らく地上と思われるが、時折、巡回しているらしい兵士の足が見える。

 通路は蛇行しているのか、どのくらい先に迷宮への入り口があるのか判らない。ここは「死の通路」という名前で、迷宮はもう少し先らしい。

 ヒマだったので、MAPで色々と確認してみる。

 迷宮都市セリビーラの人口は11万人。その内、迷宮方面軍というシガ王国軍が1万人もいる。軍は南西にある広大な城砦の中にいる。平均レベルは8と他の地方の領軍より高い。従士よりやや高いレベルなので精鋭なのだろう。ニナさんから、ここの将軍への手紙を預かっているので、迷宮を探索した後に尋ねないといけない。

 迷宮都市の警備をするのは、この王国軍では無く、セリビーラの現太守たるアシネン侯爵だ。この人とは貿易都市で少し揉めたので、あまり係わり合いになりたくない。貿易都市からの帰還はしばらく先のはずなので、彼が戻ってくる前に、挨拶と無難な贈り物をしておけば義理は果たせるだろう。厄介事は御免だ。

 さて、検索の続きだ。

 探索者は意外と少なくて、5千人弱しかいない。旅行記には毎年千人の若者が、探索者になりに来ると書いてあったのだが、それにしては少ないと思う。彼らは基本的に西側エリアに住んでいるみたいだ。

 先ほどの幼女達のような荷運びジョブの人は、千人ほどいる。荷運び人の多くは、迷宮都市の外で働いているようだ。迷宮での仕事にあぶれて、何か公共工事とかにでも従事しているのかな?

 この先の迷宮入り口にも50人ほどいるが、何をしているんだろう?





 前方から4人の探索者が来る。レベルは7~9と低い。いや騎士がレベル10前後と言っていたから、案外、中堅とか期待の新人とかなのかも知れない。そのうち一人が、大怪我をしているみたいだ。

「血の匂いなのです」
「誰か来る~?」

 蛇行する通路の先から姿を現した探索者達を、ポチとタマが素早く気付く。

「ナナ、アリサとルルを守りなさい」
「了解」

 ミーアはいいのか。と思ったが、ミーアの前にリザが移動していた。

「俺は、『赤い氷』のジェジェだ! 怪我人がいるんだ! 争い事は、またにしてくれ」

 リーダーらしき青年がそう叫んで、手を大きく振っている。厨二っぽい2つ名かと思ったが、パーティー名のようだ。
 怪我人の顔は見えないが、鎧が大きく裂け、傷口に巻きつけてあるシャツに血が染みて滴っている。

「うう、すごい大怪我……」
「ご主人さま」
「ん、サトゥー?」

 アリサとルルが、怪我人を見て真っ青になっている。ミーアが魔法を使っていいか目で確認を取ってきたので、手で制する。

「私は、新人探索者のサトゥーと申します。良かったら、この薬を使ってあげてください」

 そういって肩掛け鞄から、2本の水増し魔法薬を差し出す。彼らのレベルなら、これで充分回復するはずだ。

「すまんが、手持ちが無い。魔核(コア)を売却したリーダーが追いついて来たら支払う。ずうずうしいが、先に薬を貰えないだろうか?」
「ええ、どうぞ」

 元々、無料でプレゼントするつもりだったので、二つ返事で了承して、ジェジェに魔法薬の小瓶を差し出す。

「うん? まさか魔法薬なのか?」
「ええ、そうです。そんな事より、早く飲ませてあげてください」
「ああ、恩に着る」

 一瓶で6割近く回復している。傷口に布を巻いてあるので見えないが、傷は塞がったはずだ。

「では、これで」
「ま、待ってくれ。まだ、代金を支払っていない」
「人からの貰い物なので、気にせずお納めください。また、ご縁があったら、お会いしましょう」

 いつまでも見物してもしかたないので、そう挨拶して、その場を去った。後ろから「1の4区画には迷宮蟻が異常発生しているから近寄るな」と忠告が聞こえたので、手を上げて感謝の意を表しておいた。丁度いいから、今日はそこに向かおう。

 怪我人を見て不安になったのか、ミーアとルルが震えている。アリサもテンションが下がっているが、2人ほどではないようだ。

「2人とも、今日は止めておくかい?」
「だ、大丈夫です」
「大丈夫」

 無理をして気丈に振舞う2人の手を握って歩き出す。
 調子が戻らないようなら、迷宮の入り口まで行って引き返すことにしよう。





 通路の端まで来ると、5メートルほどの高さの大きな扉がある。あれが、迷宮への門だろう。漆黒の扉には、真っ赤な鬼面が浮き彫りにされている。

 門の傍には、奥行き5メートル、幅10メートルほどのカウンターがある。カウンターの後ろにはギルド職員らしき人が数名と、魔法使いを含む高レベルの護衛が4名ほど控えている。

 カウンターの一角では、『赤い氷』のリーダー氏とギルド職員らしき中年男性が、魔核(コア)の買取金額で何やら揉めている。

 そのカウンターの反対側、30メートルほどの空間に子供達が座り込んでいた。

 10~14歳くらいの人族の子供達で、男女比は同じくらい。奴隷はいない。皆レベル1~3くらいだ。接ぎの当たった丈の短い服を着て、草で編んだサンダルを履いている。中にはズボンだけの子やサンダルすら履いていない子供もいるようだ。全員、探索者では無く荷運び人だ。武器や防具を装備する者は皆無だった。

「こども~?」
「子供がいっぱいなのです」
「むぅ?」

 ポチ、タマ、ミーアが不思議そうに顔を傾げている。別に示し合わせた訳では無いと思うが見事に揃っていて、微笑を誘う。アリサが「出遅れた」という口惜しそうな顔をしていたが、ここは見なかった事にしてあげよう。

 さて、その子供達だが、一声も発しないのに目だけはオレをロックオンしている。ちょっと、怖い。

「何しているのかしらね?」
「目が怖いです」

 アリサも不思議そうだ。ルルが気味悪そうにしているが、まったく同感だ。
 子供ばかりだったので、ナナが拉致しないか心配だったのだが――

「幼ければ良いという訳ではないと否定します」

 ――という事だった。彼女なりの判断基準があるのだろう。

「ご主人さま、職員の方がお呼びです」

 リザに促されるまで気が付かなかったが、職員の人が手招きしている。

「何でしょう?」
「失礼ですが、新人探索者の方ですか?」
「はい、今日からお世話になります。サトゥーと申します」
「あら、ご丁寧に。登録時に聞いたと思いますが、迷宮で手に入れられた魔核(コア)はここで買取いたします。他にも、そこの壁に張り出してある魔物の部位の買取もここで行いますが、そこの募集の張り紙は常時出ているわけでは無いので、迷宮突入時にあったからと言って、出てきた時に残っているとは限らないのでご注意ください」

 立て板に水といった感じの職員の言葉を聞いて初めて気が付いたが、確かに掲示板らしき大きなボードが立ててあり、そこには沢山の張り紙がしてある。大部分は、職人や屋台の主なんかが依頼主のようだ。ギルドからの依頼みたいなのは無かった。張り紙には、下半分が空きスペースになっていて日付と名前や記号らしきものが書き込んである。

 どうやら、狙う人がいる場合は、このスペースに書き込むのだろう。

 張り紙の横には、少し身なりのマシな子がいる。職員の人によると字が読めない探索者が少なからずいるので、文字の読み書きができる商人の子供達がここで読み上げや代筆をして小銭を稼いでいるらしい。

「こちらの、迷宮蛙の肉や甲虫系の魔物の外殻は、常時募集があるのでお勧めです。迷宮蛙は、イボイボの毒蛙の肉を間違えて持ち帰る人がいるのでご注意ください」

 職員の人がお勧め依頼を教えてくれる。オレの後ろで、リザが「あれは美味です」と呟きながら、頷いているのが気配で判る。セーリュー市の迷宮での焼肉パーティーを思い出しているのだろう。

 そうだ、ついでに聞いてみよう。

「ところで、あの子供達は何なんですか?」
「ああ、荷運び希望の子供達ですよ。あそこで、探索者のパーティーに雇われるのを待っているんです。2時間で外の子達と交代なんですが、自分から売り込むのは禁止しているんです」

 壁に反響して煩いですからね、と彼女は付け加えた。
 それにしても荷運びなら、あんな子供より大人の男性とか獣人とかを雇った方がいいんじゃないだろうか?

 そんな話をしている所に、迷宮の扉が開いて10人ほどの探索者のパーティーが出てきた。平均20レベルの戦士のみのパーティーだ。その内の3人ほどの獣人が、荷運び人のようだ。

「よう、ベナ。取り込み中悪いが、灰色蜘蛛の肉の買取は、まだあるか?」
「ごめんなさいね。今朝、『梟のヒゲ』が持ってきたから、当分買い取り依頼は出ないと思うわ」
「ちっ、またしても、あいつらか。仕方ねえ、ベナ、この肉を焼いてくれ。おい、小僧ども、お前等にも振舞ってやる。食う前に『ドゾン様カッコイイ』か『ドゾン様ありがとう』か好きな言葉で俺様を賞賛しろよ」

 熊みたいなヒゲ面の探索者がそう子供達に宣言すると、耳が痛くなるような歓声が上がった。

 ポチやタマも食べたそうに列に並ぼうとしていたが、オレが声を掛けるとすぐに戻ってきた。欠食児童達のご馳走を奪うのは可哀相だしね。

 オレ達は、それぞれの木証を迷宮門前のギルド職員に見せて、迷宮に足を踏み入れた。重厚な迷宮の扉を開けたポチとタマに、ギルド職員から驚愕の視線が向いていた。

 はて? 何だろう?

 次回、ようやく迷宮内で戦闘です。

 職員の視線は思わせぶりですが、特に伏線というわけではありません。たんに重い扉を軽々と開けていたポチ達の怪力にびっくりしていただけです。
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