SS:男爵の宝物
※サトゥー視点ではありません。
「もう、お父様ったら。また、その色紙をご覧になっているのですか?」
「おお、ソルナか」
いつもの様に、私室で1人色紙を眺める父男爵に、少し呆れ顔のソルナ嬢。
この色紙は、彼の家臣がオーユゴック公爵の都から送ってきた物だ。大きな手形と何やら見たことの無い文字が描かれている。
「この力強い手形を見なさい。まるで世界を担うかのようじゃないか。そして、この躍動感あふれる古代文字! あいにくと難しすぎて読めないが、きっと含蓄のある言葉なのだろう」
満足そうに1人頷く父の姿に、微笑が零れたのも最初のうちだけ。
まさか、一月経った今でも、毎夜眺めるとは、娘のソルナでも予想できなかった。
それは、世界の救世主、サガ帝国の勇者マサキの色紙だった。ペンドラゴン士爵が、どのような伝手を辿って入手したのかはわからない。
誰にも読めない、その色紙には、古代文字で、こう書いてあった。
『ムーノ男爵さん江
YES! ロリータ、NO! タッチ
勇者ハヤト・マサキ』
彼らの中で、古代語を読めるものが居なかったのは不幸中の幸いであろう。
※2013/09/24 の活動報告に掲載したSSの再収録です。