挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
203/539

9-19.石舞台の修行(2)

※9/1 誤字修正しました。

 サトゥーです。ECOは色んな所に浸透してきていましたが、一番身近な所では家庭用の太陽光発電でしょうか。異世界では魔法がありますが、あれはECOなんでしょうか? そもそも、あの魔力って、元はどこから来ているんでしょうね。





「いくわよ、■ (ウィンド)

 まずは、アイアリーゼさんの模範技だ。

 有効化(アクティベート)した精霊視スキルによって、アイアリーゼさんのした事が良く見えた。
 彼女の唱えた、たった1語の呪文で、彼女の周りに無色の精霊たちが集まり、間を置かず緑色の風属性の精霊に変化して、「風」という現象に成り魔法を発動させた。

 威力的には気槌(エア・ハンマー)程度だったのだが、詠唱がすごく短い。

「どう? 発現する魔法は普通の風魔法と変わらないけど、詠唱時間の短さや必要な魔力が凄く少なくて済むって言う利点(メリット)があるの」
「その代わり、精霊のいない場所では無力です」

 アイアリーゼさんの言い忘れたデメリットをルーアさんが補足してくれる。
 精霊のいないところというのが曖昧だが、人工物の中や魔物の住処にはあまり居ないらしい。後者は判る。前の鎧井守の洞窟みたいに魔物のエサになってしまうのだろう。

 発動した精霊視のスキルが見せてくれる視界では、アイアリーゼさんは金を中心とした貴金属系の強い光を放っている。ルーアさんは、寒色系の光が淡く明滅している感じだ。2人を見る限りでは精霊光は一定の色という訳ではなく、特定の幅の色彩が変化するものみたいだ。滝の上を飛ぶ鳥なんかも見てみたが、光が薄くて良く判らなかった。

 オレの体から漏れる微かな光は淡く白い。
 試しに押さえていた精霊光を解放してみたら、目が潰れるかと思うほど強烈な光が周囲を染め上げていく。滝の周りにいた精霊たちが恐ろしいほどの速度で集まって来た。精霊たちが邪魔で良く見えないが、オレの放つ光は寒色から暖色まで幅広い感じの原色で、品の無い極彩色だった。
 ミーアは「綺麗」と評してくれたが、美的な観点で言うなら、アイアリーゼさんの放つ光の方が遥かに高貴で綺麗だと思う。

 おっと、これじゃ周りが見えないな。
 オレは急いで、精霊光を収束させて外に漏れないようにする。目標を見失った精霊達がフラフラと散り始めた。ルーアさんやアイアリーゼさんの放つ精霊光に魅かれた精霊だけが残り大部分は、元の自然界に帰って行く。集まった時にくらべたら、ゆっくりした速度だ。

「もう、自由自在なんですね。すごい適応力ですね。ね、アーゼさま」
「え、ええ」

 アイアリーゼさんは眩しかったのか、目をパチパチさせながらルーアさんの言葉にも生返事だ。

「すみません、アイアリーゼ様。少し確認したい事があって制御を緩めてしまいました」
「は、初めてだから仕方ないわ」

 あれ? アイアリーゼさんの人見知りが発動している。さっきまでオレを見ながら話せていたのに、またルーアさんの方を向いて話している。よっぽど眩しかったのかもしれない。

「そ、それより! やってみて」
「はい、◆ (ウィンド)

 お? 呪文を失敗したのに少しそよ風が吹いている。精霊達が気を利かせてくれたのだろうか?

「あら? 呪文の詠唱は苦手なの?」
「ええ、どうしても上手くいかなくて」
「その割りに、今、風が吹きませんでしたか?」
「精霊が気を利かせてくれたのかもしれませんね」

 ルーアさんの言葉に何となく感じたとおりに答えたのだが、あっさり否定された。

「それはありませんよ。ドライアドみたいな例外を除けば、精霊達に自我というか知性はありません。地脈からマナを受け取って、マナを必要としている生き物まで届ける役割を機械的にしているだけです」

 へー。
 じゃあ、色っぽいウンディーネのお姉さんとかには会えないのか。残念だ。

「そうなの? たまに沢山集まると何か言っているわよ」

 お、アイアリーゼさんから反対意見が。

「そんな事を言っているのは、アーゼ様だけですよ。他のハイエルフの方も言っていなかったんでしょう?」
「うう、それはそうなんだけどっ。言ってるように感じるんだもの」

 ルーアさんに否定されたアイアリーゼさんが、頬を膨らませてそっぽを向いている。ミーアみたいなリアクションだな。
 気のせいの可能性が高いけど、あながち勘違いと決め付けるのも良くない。ゲーム開発時のデバッグでも、「気のせいだ」と断じられたバグはたいてい市場で見つかるからね。

「一度、試してみてもいいですか?」
「もう、サトゥーさんまで」
「やってみて! 絶対聞こえるんだから!」

 2人の許可を貰って試してみる。
 精霊光の眩しさと、精霊達の猛突撃に耐えて精霊乱舞が終わるのを待つ。10分ほどで、俺の周りを精霊達が繭のように囲む。良く見ると空中に静止しているのでは無く、ゆったりと一定距離を周回しているようだ。

 ふむ、何も聞こえないけどな。
 これはアイアリーゼさんの思い込みかな?

 そのまま精霊達から漏れる微小なマナを受ける。
 これは有意の信号なのだろうか? そう認識した瞬間に、何かがカチリと嵌るような感覚と共に、小さな小さなざわめきが聞こえてきた。

 確かに何かを伝えようとしてきているが、残念ながらそれ以上は判らなかった。100メートル先の雑踏の声を聞き分けようとしているみたいな感じだ。スキルも取得できなかったし、精霊の声を聞き取るには、何か条件とかがあるのかもしれない。

「何かを言っているみたいですけど、何を言っているかは判りませんでした」
「そうなのよ! 一度で良いからお話ししたいわ」
「サトゥーさん、冗談とかでは無くですか?」

 困惑気味のルーアさんに、冗談じゃない旨を伝えておいた。





 さて、精霊使役の方は、残念ながらダメダメだった。
 予想はしていたけど、呪文の詠唱と同じく、精霊使役も詠唱が上手くいかなかったのだ。

 一度、見本を見せようとするアイアリーゼさんのポカミスで、ルーアさん諸共ずぶ濡れになったが、その時に精霊魔法スキルが手に入ったので特に文句は無い。ルーアさんに怒られてショボンとするアイアリーゼさんが可愛かった。

「そういえば、この精霊光って、どういう理屈で強弱が変わるんですか?」
「さあ?」
「ちょっと、アーゼさま」

 頬に指を当てて首を傾げるアイアリーゼさんにルーアさんのツッコミが入る。説明はルーアさんがしてくれた。

「人の場合は、魔力総量の違いと言うわけでも無いですし、実はあまり良く判っていないんですよ。地脈なんかの場合は、流れの濃いところからは強めの光が漏れていますね。源泉付近は特に激しく光っています」
「そうだったわ。たしか、そこの滝つぼの底も源泉の一つよね」

 え?!
 アイアリーゼさんの言葉を聞いて思わず視線を落とす。確かに精霊視を有効にすると滝つぼの底から光が漏れている。
 水が濁っているというわけではないのに、それほど強い光では無い。

「源泉と言ってもピンキリですからね」

 オレの落胆するような表情を見たのか、ルーアさんからフォローするような言葉が出た。

「そういえば、源泉って何なんですか?」
「地脈の噴出孔かな?」
「そうですね、この大陸だと、竜の谷が破格の規模ですけど、それ以外にも百箇所以上はあります。この滝つぼくらいの小さな源泉だと総数はちょっと把握できていません」

 竜の谷の源泉か、確か支配しちゃっているんだっけ。案外、オレの精霊光はそれが原因かもしれない。ルーアさんの話では、都市や迷宮なんかは、この源泉の上に築かれているものが多いらしい。小さな源泉は、魔物や幻獣の住処になっていたり、魔法使いの塔が建ったりしているそうだ。
 ふむ、この話からするとトラザユーヤの迷路は源泉の上に築かれていそうなんだが、竜の谷と違って支配できなかった。一人が支配できる源泉は一つまでとか制限があるのだろうか?

 ちょっと気になって、後ろの世界樹を精霊視で見てみた。
 樹木本体が眩く輝いている。しかも目を凝らすと、幹の周りから同心円状に光の輪が波紋のように広がって行っている。

「綺麗でしょ?」
「はい、とても。あの世界樹も源泉なんですか?」
「いいえ、違うわ――」
「アーゼさま」
「――あれは、地脈じゃなく、虚空から、って言っちゃダメだったんだっけ?」
「まぁ、サトゥーさんなら構いませんけど、外の世界で吹聴しないで下さいね」

 ルーアさんの言葉に頷く。それを確認したアイアリーゼさんが続きを話してくれた。

「虚空にはエーテルの流れがあるのは知ってる?」
「すみません、無学なもので」
「あら、知らないなら学べばいいのよ。エーテルって言うのは――」

 アイアリーゼさんが、得意げにエーテルの説明をしてくれたが、地水火風の4大元素に続く第5の元素がどうとか、ややこしい話をバッサリカットすると、要は太陽から吹き出る大量のマナを宇宙空間で媒介する物質という事らしい。

「――でね、世界樹は、そのエーテルに枝葉というか根というか、とにかく端末を伸ばして、エーテルの流れからマナを吸い上げる機能があるの。そうして回収したマナを地中深くに送り込んで、大地の地脈を活性化させているのよ。あの世界樹の光は、マナが天から地へと流れる時に漏れた分を精霊達が拾っている姿なの」

 なるほどね~
 巨大な魔法装置といった所か。しかし、アイアリーゼさん。先程までとは打って変わって、説明がずいぶん流暢だった。

「その事を欲の深い者に知られると、ボルエナンを始めとする世界樹のある森を狙う国が跋扈してしまいそうなので秘密にしているのです」

 いわば大出力の太陽光発電ユニットみたいなものだからな。独占したら、凄い事が出来そうだ。2人には絶対に口外しないと約束した。「強制(ギアス)」や「契約(コントラクト)」で縛られても構わないといったのだが、「そこまでしなくていいですよ」と苦笑されてしまった。

 結構本気だったんだが、エルフの人達は危機感が薄いのだろうか?
 そう思ってルーアさんに確認してみた。

「本当に、世界樹を私物化して世界を破滅させようとしたら、神々から天罰が落ちますから最悪の事態は無いと思いますよ」

 そういえば、神様が実在する世界でしたね。

 でも、まあ、誰にも口外はしないように注意しよう。そう心に刻み込んだ。

+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ