2-9.悪魔の迷宮(2)
注意!暴力的な表現があります!
虫が嫌いな方はご注意ください。
100万PV突破しました!読んでくれた皆さんに感謝です!
※8/16 誤字修正しました。
サトゥーです。夢なのは諦めましたが、実は現実じゃなくてゲームの中なんじゃないか疑惑が出てきて困惑中です。どうせならマッタリ系のエロゲーの世界が良かったサトゥーです。
迷宮の最初の敵がカマドウマだったのはアレですが、脱出まで助けられる命は助けていきたいですね。
目立たない範囲で、ですが。
◇
「魔核って何だい?」
「魔核はお金になります。魔物の中にあるもので行商人に渡したら色々な物と交換してくれるんです」
リザの答えは聞きたい内容とは微妙に違ったが、なんでも屋のナディさんレベルの回答を期待するのも無理か。
リザが魔物から緑色の血で汚れた玉を取り出す。拳の半分くらいの大きさの赤い玉だ。濁った赤なのでお世辞にも宝石のような用途には使えないだろう。
戻ってきたリザに鞄から袋を取り出して渡す。さらにあまり綺麗でない余り布も渡して血糊を拭わせる。
「魔核はこの袋に入れておけ。それと、この槍を使え」
袋はポチに持たせ、カマドウマの槍をリザに渡す。リザの持っていた短剣はタマに渡す。
装備の交換とか、まさにRPGちっくだな~。
「リザ、次の敵から魔核を回収するときはポチとタマに交互にやらせるから、場所とやり方を教えてやってくれ」
「はい、わかりました」「わかった~、なのです」「あい~」
「そうだポチ」
「はい、なのです」
「無理に『なのです』をつけなくていいぞ?」
「です付けないと折檻される、なのです」
なるほど処世術かと思ったら刷り込まれたか……。仮初の主人役だし矯正しなくていいか。
「わかった、無理に付けなくても怒らないから、好きにしていいよ」
「はい、……なのです」
カマドウマの犠牲になっていた誰かに御座形に冥福を祈ってから部屋を出る。死体の名前だけはメモしておいた。
戦闘前に確認した値と現在の値を比較したが、スタミナが多少変化しているくらいで他の値に変化は無かった。
一緒にいるだけじゃ経験は貯まらないのか?
なら補給部隊や神官なんかはどうやってレベルを上げてるんだろう?
3人のレベルが上げられるなら脱出までの道のりで人数が増えても埋没できそうだったが、そこまでイージーじゃないのか。
ゲームっぽいし、ゲーム的なアプローチをしてみるか?
「タマ、足元にさっきの魔核くらいの大きさの石が落ちてたら1個拾っておいてくれ」
「あい!」
◇
このまま進むと通路が分岐している。
最終的に同じ部屋につながっているが、片方は途中に部屋がある。どちらの部屋にも魔物がいるが、途中の部屋の魔物はレベル10のイモ虫が2匹。そして、その先の通路に人間がいた。……助けるか。
「道が分かれてる~、にゃん」
分岐点が視界に入ってすぐにタマから報告がある。変な語尾でキャラ付けしなくていいから……。
タマを誉めて頭を撫でる。くすぐったそうだ。
ポチが羨ましそうにしているので優しくポンポンと頭を叩いてやる。
2人共、胸の高さくらいに頭があるので頭を撫でやすい。120センチくらいか? リザはオレより少し背が高い……165センチってところだ。
「右の道に行くぞ」
通路を進んでいく。レーダーだと視界に入るはずなんだが?
「上に虫いる~、なのです」
タマが警告する。こんどはポチのマネか?
さて見えない敵をどうやって倒すか?
レーダーで大体の位置を把握して、そちらを見る。
じっと見つめる。
AR表示で魔物の名前やレベルが表示される。
その表示の周囲を無差別に連射する。
パシュシュシュシュ。ボタッ。
途中の一発が当たったらしく芋虫が地面に落ちる。
「タマ、石をぶつけろ」
タマが3つほど石をぶつける。2発ほど当たり、イモ虫の体表で弾かれる。1発だけダメージが通ったようだ。
イモ虫が近づいてくる。
「ポチ、タマ、下がれ。リザ、前に。オレの後ろからヤツを一度だけ突け!」
オレは最小限の蹴りでイモ虫の体当たり攻撃を受け流しながら時間を稼ぐ。
その隙にリザの槍が刺さる! イモ虫の1割弱ほど体力が減った。
それを確認して魔法短銃で2発ほど当てるとイモ虫は死んだ。
「リザ、タマ、魔核の回収は任せた。ポチ付いてこい、この先にもう一匹いる」
タマがポチに投石用の石を渡している。何個拾った?
部屋に居るのは先ほどのイモ虫と同じヤツだ。
さらに地面には若い女と奴隷らしき少年の死体がある。さきほどのカマドウマの時と違って食い荒らされていない。
「ポチ、部屋に入ったらやつの側面から石を投げつけろ。石が無くなったらリザ達の所に戻れ」
オレは無造作に部屋に入り魔法短銃を撃つ。ポチは指示通り石を至近距離から2つ投げる。
石をぶつけられたイモ虫がポチを向いて毒液を吐く。間一髪、イモ虫の側頭を蹴って方向をズラす。イモ虫は、その蹴りで死んだ。
石を投げ終わったポチは通路へと走った。
ただし、反対側の通路へ、だ。
テンパって道を間違えたのだろう。
「ポチ止まれ!」
オレはすぐ追いかける。イモ虫を迂回した分遅れた。
「うわ~~~来るな、来るな~~~~!」
うん? 誰だ? ポチの声じゃない。通路に居た男か!
レーダーで見る。位置がヤバイ。
「ポチ止まれ!」
よし、今度はちゃんと聞こえたようだ。ポチが戻ってくる。
レーダーからさっきの男の光点が消えた。
それにしても若い男は何故逃げたんだろう?
ポチを魔物と間違えたか?
それともさっきの部屋でイモ虫の犠牲になっていた2人に負い目があったか……。
「ご主人様! 大丈夫ですか!」
「大丈夫?」
リザとタマが走って追いかけてきた。
「ああ、大丈夫だよ。さっきの部屋に戻って魔核を回収しよう」
「ごめんなさい、なのです」
ポチが耳をペタンと倒して謝ってくる。シッポも股の間に入ってる。
「ポチ、逃げてもいい。だけど慌てたらダメだ。わかったな?」
「……はい」
ポチの頭をポンポンと叩いてやる。
部屋に戻るとリザとタマが巨大イモ虫を解体している。
死体2人の名前をメモしつつ、何か役に立ちそうな物が無いか……ポチに調べさせる。
……だって死体に触りたくないじゃない?
「服も剥ぐ、ですか?」
ポチが聞いてくるが、さすがに服はいらないだろう。今更ながらに気がついたが獣娘達は靴を履いてない。
「靴は取ってくれ。服はそのままでいい」
ポチが回収したものを渡してくる。少年奴隷の死体は何も持っていなかったが、女性の死体は小銭入れと指輪やネックレスなどの宝飾品を持っていた。ストレージに遺品フォルダを作成し、その下に名前フォルダを追加してそこに遺品を入れておく。遺族がいたら後で渡してやろう。思いついて2人の髪を一房切って遺品に追加しておいた。
靴はポチとタマに履かせる。
一番体格のいいリザには次まで待ってもらう。この先にいる巨大毛虫の部屋には、さっきの若い男の靴が残っているはずだからそんなに待たせないだろう。
◇
威力が弱くても攻撃させてみる試みはどうやら成功のようだ。タマとリザは1レベル、ポチは2レベルも上がっていた。
どうもスキルはレベルが上がると勝手に覚えるらしくポチには投擲スキルがタマには採取スキル、リザは解体スキルが付いていた。
解体スキルは持っていないな……今度、魚でも捌くか。
いや、リザのスキルに違和感が?
槍は白く表示されているのに解体はグレー表示になっている。ポチやタマのスキルもグレーだ。
まだ有効化されていないんだろう。有効化されれば一気に戦力強化されるんだが……。
能力値も増えているが、STR15(18)みたいな表記で値も即上昇するわけではないみたいだ。
出口まで100部屋以上あるし、おいおい解き明かしていくか!
オレは獣娘達を連れて次の部屋に向かった。
>称号「調教士」を得た。
最後の方のおかしな点に気がつかれたでしょうか?
次の回の始めの方で主人公が答えを!