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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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9-7.雑草の街道

※8/16 誤字修正しました。
※8/16 一部加筆修正しました。
 サトゥーです。小中学生の頃は理科の実験が大好きでした。中でも電気分解で水素と酸素を分離する実験には心が躍ったものです。魔法道具の作成には、その頃と同じワクワクがあるような気がします。





 人口200人ほどの最果ての村を通り過ぎて半日も経たない内に、街道は雑草で埋もれて見えなくなった。

「聞いてた通りの状態ね。本当にこの道を行くの?」
「ああ、取り合えず刈ってみるよ」
「まかせて~」「頑張るのです!」

 オレがそう告げながら馬車を降りると、ポチとタマの2人も馬車の道具入れの中にあった草刈り鎌を持って追いかけてきた。シャキーンと書き文字を背負いそうなポーズをしてから、シャカシャカシャカと草叢を掻き分け始めた。

 いや、君たち、ここは魔法でね?
 あまりに2人が、やる気に満ちて愉しそうなので止めるに止められない。飽きるまで待つか。

「マスター、作戦の参加許可を。草刈式装備への換装を具申します」

 ポチとタマの草を刈る姿のドコがナナの琴線に触れたのかはわからないが、宝物庫(アイテムボックス)から取り出した長柄の草刈り鎌を渡してやる。

「ご主人さま、3人はやる気の様ですが、草刈り鎌で刈っていたのでは、山裾まで辿りつくまでどれほど掛かるかわかりません。先程の村の者達を雇って切り開くか、油を撒いて燃やすしか無いのでは?」
「山火事になったら大変だから焼くのは無しだ。ポチ達が飽きたら魔法で切り開くよ」

 そういえば、ムーノ市に来るときにミーアが森に道を作ったという話を聞いていたので確認してみたが「無理」と返事が返ってきた。たぶん短い距離しか無理なのだろう。

 雑草に紛れて薬や料理の素材になる物があるようなので、アリサとミーアに集めて貰う。ルルとリザには、お昼の下準備を頼んだ。

「何かな~、ソレは?」
「ん? 竈だよ」

 昔見たマンガで、ピザを焼くのに竈を使っていたので、土魔法と火魔法を駆使して作ってみた。我ながら即席にしてはいい出来だと思う。作りが単純とはいえ、カップメンを作るより早くできるとか素敵過ぎる。

 乾いた笑みを浮かべて地面にヘタリ込んだアリサを横目に、宝物庫(アイテムボックス)の中で寝かせておいたピザ生地を取り出す。
 プタの街で滞在中に作っておいたトマトソースを取り出してピザ生地に塗っていく。トッピングはチーズは当然として、ベーコンやサラミを並べたスタンダードなピザに、スライスしたトマト、アスパラ、ナス、パプリカなどの野菜をたっぷり使用したピザの2種類を準備した。

 薄いピザ生地なので、ハラヘリっ子達の食欲だと足りなくなりそうだ。サイドメニューに、サイコロステーキやポテトフライなんかも用意しようか。

「のびる~?」「あちちなのです」
「うはは、バカうま~」
「ん、おいし」

 やけにハイテンションな年少組は、ピザがお気に召したようだ。ポチとタマの2人は垂れたチーズでベトベトになっているので、後で顔を洗わせないと。
 ルルとナナも気に入ったようだが、4人ほどでも無いようだ。リザは1切れ目を食べ終わった後は、ノーマークのサイコロステーキ攻略に取り掛かっている。本当にブレないな。

 美味しそうに食べてくれるのは嬉しいが、食べ過ぎになりそうなアリサだけは途中で止めた。恨めしそうな顔をされたが、リバウンドの怖さを説いたら判ってくれたようだ。前のダイエットは大変だったからな。
 だから、アリサ。ピザを食べるポチ達に向けるその視線は止めてあげて欲しい。





 ポチ達も満足したようなので、昼からは魔法で道を切り開く事にした。

 まずは、風魔法の「風刃(エア・ブレード)」を街道沿いに地面すれすれに放つ。
 短杖の先から放たれた風刃が、雑草を地上10センチほど残して切り払っていく。途中の少し隆起した地面や道沿いの潅木も切り裂いて、風刃が進む。最終的に正面200メートルほど先の所にあった、5メートル強の小高い断崖に当たって止まった。

「アンタねぇ、やり過ぎってモンをいい加減学習しなよ」
「ん、自然破壊」

 よほど呆れたのか、いつもより砕けた口調でアリサがボヤく。オレをアンタ呼ばわりしたせいか、リザに叱られて反省のポーズを取っている。

 街道沿いの木を切ってしまうのは予想の範疇だが、断崖まで真っ二つに割れて崩れ落ちたのは想定外だった。

 このまま馬車を進めたら、見えない段差や柔らかい場所で馬が足を挫きそうだったので、土魔法で整地する事にした。

 今回は使うのは「土壁(ウォール)」ではなく、そのものズバリの「整地(フラット・ランド)」という魔法だ。軍隊の工兵達だけでは無く、民間でも良く使われる魔法らしい。公都の最初の魔法屋で買った巻物の魔法だが、これまで使う機会が無かったものだ。

 整地範囲を街道のコースに設定して魔法を行使する。地面が草の下に隠れているせいで、本当に整地されているのか判らないので、マップで地形を確認した。問題なく平らのようだ。

 切られた雑草が足を取るようで、馬車の速度は出ない。車輪も少し滑ってしまうようだ。どうせ開拓しながらだと、時速数キロ程度の速度しか出せないので、ゆっくりと走らせるように指示した。

 オレが先行して魔法を使い、徒歩のポチとタマが、切断された雑草の中から薬草やハーブなんかを拾い上げている。街道にはみ出た潅木や倒木は、リザとナナが退けている。アリサとミーアは、集まった素材の仕分け作業をして貰った。

 しかし、こんな方法じゃ、時間がかかって仕方が無いな。当たり前だが、街道自体が真っ直ぐ山脈へと伸びているわけでもないし、平坦な地形でも無いので起伏もある。特に、丘や低めの山や谷なんかがある辺りは、それらを迂回するように道が伸びていたようだ。

 他に妙案もなかったので、そのまま街道を整備しながら歩き、10キロほど先にあった小川の(ほとり)に野営する事にした。
 野営予定地から1キロほどの所に、デミゴブリンが20匹ほどいたのだが、草木を切り裂く音に怯えたのか、すごい速さで逃げ出していたので、今夜は安全だろう。

 夕飯の準備をルルに任せて、オレはいったん開拓を始めた場所まで戻って幅100メートルほどを「土壁(ウォール)」でデコボコにしておいた。これで、突然街道が生まれたとか変な噂がたったりしないだろう。





 その夜、途中まで作ってあった空力機関が、組みあがった。

 だが、制御が難しい。

 完成後の試運転に少しずつ魔力を注いで浮かすところまでは持って行けたのだが、その先が不味かった。

 一定の魔力を超えた時点で、グリンとばかりに回転して地面に落下し、そのままの勢いで近くの樹木へと突っ込んでしまった。

 どうやら、空力機関を構成する個々のフィンの出力が一定じゃ無い上に、いわゆるパワーバンドにもバラつきがある事が判った。そのせいで普通の魔法道具のように魔力を通すだけでは上手くバランスが取れずに回転したり、急加速したりするという事がわかった。

 出力を調律する制御回路なんかが必要となるようだが、手持ちの資料にはそういった仕組みは載っていなかった。空力機関の説明にも制御が難しいとかは書いていなかったんだが、ひょっとしたらこの資料の著者は、実際には空力機関を組んだ事がなかったのではないだろうか。

「もっとも、制御しようとして、できない事は無い、かな?」

 樹木にぶつかって外枠が割れてしまったが、フィンや魔法回路自体は無事だったので、再チャレンジしてみた。一応、空力機関を30秒ほど浮かべるのには成功したが、ずっと集中しないといけないので面倒すぎる。これなら、「理力の手(マジック・ハンド)」で持ち上げる方が、まだマシだ。

 他の本に何かヒントが無いかを探すうちに夜は更けて行く。





 翌日、オレ達は空の旅に出る事になる。

 もちろん、画期的な方法が見つかって空力機関の制御に成功したわけでは無い。
 ちょっとした発想の転換――と言うのもおこがましいか。

 魔法がダメなら科学を使えばいいじゃないか!

 そう気が付いただけだったりする。
 ちょっと魔法の道具が作れるからと言って、魔法に頼りすぎていた。普通に気球を作る事で空の旅を実現したわけだ。

 もっとも、思いついてからが大変だった。

 はじめは熱気球を作ろうと思ったのだが、人と馬の数を考えてそれは断念した。ちょっとばかり重過ぎる。

 そこで、飛行船のように軽い気体を風船に詰める事にした。
 ここで困ったのが風船の材料だ。試算したところ、箱舟に人や馬を乗せて浮かべるには相当な大きさが必要になりそうなのだ。
 ストレージを探ったら、大怪魚の寄生虫の部位が使えそうな感じだ。特に生命強奪でレベル50まで成長していた個体はかなり巨大化していたので、これを使うとするか。

 手頃な加工場所が無かったので、公都までひとっ飛びして地下迷宮の広場を利用した。いつも作業していた場所では無く、もう少し下の階層で床面積の半分ほどが水に浸かっている場所だ。
 ここで飛行船の風船作りと、浮力を得るのに使う水素を作る事にした。

 寄生虫の部位を加工して風船を作ったのだが、長さは十分すぎるくらいあるものの、あまり大きなモノは作れなかった。なので、直径1メートルくらいの小さな風船を大量に作って、大きな網に詰める事にした。

 水素の作成には「浄水(ピュア・ウォーター)」、「放電(ディスチャージ)」と「電気操作エレクトロニック・コントロール」なんかの魔法を使った。「気体操作(エア・コントロール)」の魔法も利用して分離した気体が混合するのを防いでいたので、割と順調に進む。

 せっかくなので、分解で得た酸素も別の風船に保管しておいた。

 一度だけ、操作をミスして風船を爆発させてしまったが、咄嗟に「風盾(エア・シールド)」の魔法を展開したお陰で、少しびっくりしたものの服が燃えたりとかの被害はなかった。頑丈な迷宮で良かった。わざわざ、遠出した甲斐があるというものだ。
 予想よりも水素爆発の勢いが凄かったので、箱舟用に大怪魚の皮と鎧井守の骨を組み合わせて作った耐火耐爆の天井を用意した。大怪魚の皮は、前に肉を取った時に切り取った分だ。皮下組織が分厚いので、今回は表皮のみを使用している。
 試しに水素風船を、もう1個爆発させてみたが、問題なく防げるようだ。

 夜が明ける前に、空力機関の実験をしていた場所に戻って、箱舟を周辺の樹木に固定してから、風船を接続する。

 オレは、飛行船を見たときの皆の反応を想像しながら野営地へと向かった。
※水素の爆発力を過小評価していたので修正しました。
※屋根の素材を大怪魚の皮に変更しました。

※感想の返信について
 感想返しが追いつかないので、個別返信ではなく活動報告で一括で返信させていただいています。


※作者からのお願い※

 誤字報告は、メッセージでは無く感想欄でお願いします。メッセージだと週末にピックアップするときに漏れやすいのです。
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