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SS:オリオンと噂

※サトゥー視点ではありません。

 ムーノ男爵嫡男のオリオン君視点のSSです。


※1/2 誤字修正しました。


 永らく音信不通だった父上からの手紙が届いた。


 なんと魔族の姦計で、あやうく男爵領が滅ぶ寸前だったらしい。丁度、その時にムーノ市に訪れた商人とその護衛兵士達のお陰で、壊滅を免れたと書いてあった。


 商人の護衛程度が魔族と戦えるものなのか?

 父上は、その商人に騙されているのではないか?


 その疑いは、父上がその商人を名誉貴族に叙爵したと聞いてより深くなった。





 ニナ・ロットル? 知らない名前だが、同時に届いた父上からの手紙に新しい男爵領の執政官をする事になった名誉子爵らしい。


 エセ貴族の名誉子爵なら、食い詰めて男爵の部下になる事も厭わないのだろうが、貴族としての階位は相手の方が上。領主は伯爵扱いされるとはいっても、よくも男爵の部下になろうなどと思えたものだ。


「ニナ・ロットル? もしかして鉄血のニナか?」

「いや、オーク喰らいのロットルだろう?」

「そうなのか? 次期公爵の愛人じゃなかったっけ?」


 少し名前を出しただけなのだが、級友達は皆、ロットル執政官の事を知っているようだ。有能な者なら、辺境の我が領土よりも公都で職を捜した方が良いと思うのだが。





 ソルナ姉様から手紙が届いた。

 ふざけた事に、平民と婚約したと手紙に書いてあった。


 馬鹿な。


 父上は男爵。それも領土持ちの貴族だ。扱いで言えば伯爵にも相当するのに、どうして貴族の男ではなく、平民なのだ。


 ソルナ姉様には、貴族としての矜持や義務について、熱く書き記した手紙を送った。これで、改心してくれるといいのだが。





 ロットル執政官から手紙が届いた。


 あの商人上がりの名誉士爵が、カリナ姉様に懸想しているらしい。成り上がりの名誉士爵の分際で、主家の姫君を嫁に求めるとは身の程知らずにも程がある。


 手紙には、2人の仲を取り持つ協力をしてほしいと書かれてあったが、とんでもない話だ。


 もしかして、ロットル執政官は、その名誉士爵と組んで男爵領を乗っ取ろうとしているのだろうか?


 父上は人を疑う事を知らない方だ。


 私が、何とかして士爵の化けの皮を剥がなくては!





 父上の名代として公爵様に招待された夜会で、初めて件の名誉士爵と出会った。今までも何度か、面会の申し込みがあったのだが、適当な理由を付けて断っていたのだ。


「サトゥー・ペンドラゴンと申します。以後、お見知りおきを」

「うむ、オリオン・ムーノだ。サトゥー士爵、よしなに頼む」


 ふむ、野心という言葉と対極にありそうな無欲な顔だが、詐欺師ほど善人に見えるというからな。騙されるわけにはいかん。


 その翌日から、友人達から聞かされたのは、あの名誉士爵の所業だ。夜会で知り合った娘達の家に、ずうずうしくも押しかけ、お茶会という名目で、誰彼構わず縁談の申し込みをしていると言う。


 なんたる事だ!


 カリナ姉様だけは、何としてでも守らねば。

 公都にいる限り、決してあの男の良いようにはさせん。


 私は、拳を握り締め、部屋に差し込む夕日にそう誓った。


※2013/09/15 の活動報告に掲載したSSの再収録です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 狡い大人と嫉妬に狂った男達の言葉にコロコロ転がされるオリオン君……騙されやすい上に頭が堅いというお人好しな父親よりも厄介な気性の持ち主かも?
[一言]  永らく音信不通だった父上からの手紙が届いた。 音信不通で、その間の留学の学費や滞在の生活費はどうしたのでしょうね? 魔族の執政官が、余計に介入されないように何も問題ないかのように仕送りを…
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