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8-15.決勝当日

※2/11 誤字修正しました。



 サトゥーです。シェイクスピアの有名作品のセリフに「to be or not to be」というのがありますが、高校に入るまでずっと格闘マンガのキャラのセリフが原典だと思っていた黒歴史があります。勘違いって、誰にでもありますよね。





 今日は朝からタマの様子がおかしい。


 やたらと部屋を行ったり来たりしてると思ったら、ポチやアリサに絡むというか、くっついて床をゴロゴロとジャレあっている。


「どうかしたのか? タマ」

「ん~? 何かムズムズする~」

「プンプンなのです! 今日のタマはおかしいのです」


 おや? ポチも珍しく怒りっぽいな。

 タマが、オレの膝の上に座っていたミーアを押しのけるように割り込んできて、膝の上で丸くなる。どうしたんだろう? 強引に割り込んでくるなんて珍しい。


「士爵さま、本日の決勝戦は観戦に行かれないのですか?」

「ええ、決勝戦後の祝賀会で料理を振舞ってほしいと依頼されているので、もう少ししたら登城する予定です」


 なんでも、複数の貴族達から、公爵の家令に問い合わせがあったそうだ。ここ数日の間にあった陛下が臨席する舞踏会や晩餐会は高位貴族しか参列できなかったので、オレは参加していない。さすがに参加しない晩餐会や舞踏会の料理を作れとは言えなかったのだろう。

 その点、今日の祝賀会は優勝者や貴族だけでなく、本戦出場できた武芸者と公都の有力者も招かれるそうなので、前の舞踏会の時のように数品の料理を出してほしいと依頼があったのだ。


 今日の決勝には陛下も臨席されるので、カリナ嬢も弟氏と一緒に列席している。


 タマは、背中を撫でられているうちに落ち着いたのか、難しい顔のまま眠ってしまった。


 公都が震撼したのは、そんな時だ。





 地震があったわけではない。

 例えるなら潜水艦のアクティブソナーのような、探査魔法の信号が一度だけ通り過ぎただけだ。

 ただ、その威力が尋常ではないらしい。


「何? 今の」

「信号?」

「何かゴーンってきたのです!」

「マスター、戦闘準備を」


 オレだけでなく、半分くらいのメンバーが、さっきの信号を認識したようだ。

 恐らく、タマが情緒不安定だったのは、この前触れを感じていたのだろう。


 リザがこの間渡した新装備を装着し始めている。少し遅れてポチとナナも着替え始めた。目が幸せだが、そのまま眺めているわけにもいかないので、ルルに頼んで、ナナの前に衝立を置いてもらう。


「タマも着替えなさい」

「あい~」


 マップには魔族が出現している。闘技場の上空だ。

 闘技場にはリーングランデ嬢や王子と聖騎士達に加え、レベル40超えの者達が20人近くいる。間の悪い魔族だ。オレが介入するまでも無く抹殺決定だろう。


「何が起こったの?」

「また、魔族だ」

「え~、また~」


 本当に、そろそろ自粛してほしいものだ。


 アリサ達も、この間作った新装備に着替えておいてもらう。リザ達より薄手だが、お揃いの白い革鎧だ。リザ以外の者達は、鋳造魔剣に替えてある。この間、オークションで売ったのとは見た目がかなり違うし、銘がサトゥー・ペンドラゴンになっている。


 魔族は「召喚魔法」「精神魔法」「火炎魔法」が使えるみたいだ。時間をかけると色々召喚しそうなので、早めに処分しよう。


 皆が着替えを始めてしばらくして、警報の鐘の音が公都に響き渡った。





 公都の貴族の館には、魔族の襲撃に備えて地下シェルターが存在する。このシェルターは貴族達が自身の安全の為に設置したものだけあって、異常に頑強だ。上級貴族の家にあるものは、なんと外壁なみの強度がある。

 警報の鐘の音に少し遅れて、館付きのメイドさんが、避難誘導に来た。


「アリサ」

「ほい、ほ~い」

「皆で、地下シェルターに避難していてくれ。本気でヤバそうなら例の信号を送るから、後先考えずに地下迷宮に緊急転移してほしい」

「あいあい」


 対魔族対策はコレでいいか。

 リザ達に、もう一つのやっかい事の対処を依頼しておく。


「リザ」

「はいっ!」

「セーラ嬢の馬車が、悪漢に追われている。ミーアやナナと一緒に馬で保護に向かってくれ」

「了解しました」

「了解です、マスター」

「ん」


 自由の翼の面々が、セーラ嬢を誘拐しようとしているみたいだ。

 オレが直接助けに行ってもいいのだが、変にフラグが立っても困るからリザ達に任せた。リザ達の実力なら余裕だろう。セーラ嬢は、この屋敷に向かって逃げているようなので、リザに大体の道順を教えておいた。





 オレは公爵城に行くからと地下シェルターへの避難を断って出かける。

 適当な路地裏で、ナナシ銀仮面の勇者バージョンに変身して、闘技場に向かう。


 とりあえず、状況把握の為に新魔法の「遠耳(クレアヒアリス)」と「囁きの風(ウィスパー・ウィンド)」を発動する。焦点は、これから向かう闘技場だ。


『魔族よ、いや魔王よ、貴様の命運もこれまでだ』


 この声は王子だな。レベル71の上級魔族だが、魔王じゃないぞ?


 状況は混沌としているようだが、闘技大会の決勝だけあって、国内有数の強力な者が沢山いるので蹂躙されているわけではないようだ。


『勇気ある戦士達よ、協力しあって魔物達を討伐するのだ。魔法使い達よ、攻撃魔法より、戦士達への強化魔法を優先しろ』


 今度はリーングランデ嬢だな。

 魔族は、兵隊用の魔物を召喚したのか、王子以外の人々は魔物の排除に追われている。レベル40台の魔物が、10体以上も召喚されている。高レベルの探索者や騎士、武芸者なんかが徒党を組んで戦っているみたいだ。聞こえてくる喧騒が、すごく生き生きとしている。よっぽど戦うのが好きなんだろうな。


『結界だ、防御結界を張れ』

『だめだ! 通路が崩落している、脱出路を確保しろ』


 どうして陛下の影武者を始めとした貴族達は逃げていないのか不思議だったが、そういう事らしい。遠耳と囁きの風って便利だ。

 一般客は通路が無事だったのか、外に向かって殺到している。踏み潰されて死んだ人間はいないみたいだ。血の気の多い人間ばかりだったようなので、心配無用のようだ。


 オレは、天駆と縮地で、闘技場の近くにある尖塔の一つの天辺に降り立つ。

 魔族は、頭部が2つあり、黄色い肌で、肩から水牛のような2本の角が生えている。頭が2つという事は、黄金の猪王みたいに同時に魔法を使ってくるんじゃないだろうか。


 リーングランデ嬢や手柄を立てたい人間には「空気読め」と言われそうだが、闘技場には知り合いもいそうなので、さっさと始末しよう。

 まずは、大物の上級魔族を光魔法の「光線(レーザー)」で倒すか。


 そう決断するのを待っていたかのように、空間を割ってそれは現れた。


 水面から浮かび上がるように光の波紋を生みながら、流線型をした銀色の宇宙船のようなモノが現れた。

 船首には、青い鎧の男――勇者ハヤト・マサキが立っている。アリサに会ったときはレベル61と言っていたが、今はレベル69まで上がっている。


『俺様、見参!』


 その言葉に挑発のスキルが篭められていたのか、飛行型の魔物が勇者に向かっていく。


『ほう勇者ハヤト、ワラワの前に現れるとは、死ぬ覚悟ができたのデスか?』

『いつまでも、昔の俺様だと思うなよ! 今日こそ雪辱を果たさせてもらうぜ!』


 今なら「光線(レーザー)」で一瞬なんだけど。撃ちにくいな。


『ひかえろサガ帝国の狗め! 勇者がサガ帝国の専売ではない事を証明してくれる』


 王子だな。任せておけばいいのに。


『≪踊れ≫、クラウソラス!』


 さっきの≪踊れ≫は、何かの合言葉だったみたいだ。王子の手から離れた聖剣クラウソラスが青い光を放ちながら、黄色魔族を襲う。おお~ 前に博物館で見た絵は、誇張はあるものの嘘じゃなかったんだな。


 あ、弾かれた。

 弱いなクラウソラス。


『聖剣が泣いてるぜ、王子様。そいつは古の大魔王――黄金の猪王の筆頭幹部だ。数百年生き延びた最上級魔族なんだよ。死にたくなければ、下がっていな。≪歌え≫アロンダイト』


 勇者の持つアロンダイトが、勇者の合言葉を受けて激しい聖光を放つ。

 オレの聖剣にも、ああいう合言葉はあるんだろうか? 魔法道具の説明書のお陰で読めるようになったのが、近代に作られた魔法道具だけだったので、聖剣とかはまだ読みきれていない。合言葉くらいなら読み解けそうだから、ヒマを見つけて調べよう。


 船から現れた勇者の仲間達が、勇者に強化魔法をかけていく。興味本位で「遠見(クレアボヤンス)」の魔法を使ったのだが、止めておけば良かった。


 僧侶らしき、ゆるふわタイプの巨乳美女が強化魔法を使う。目の下のほくろがいいね。

 弓兵らしき長耳族の女性が、勇者に接近する魔物を迎撃する。1射した矢が途中で10本ちかくに分裂して魔物に襲い掛かっている。赤い光が漏れているのを見る限り魔法の矢なのだろう。


 弓矢を逃れた魔物達が銀の船の上に着地したが、身軽な軽戦士と双剣の戦士の2人が瞬く間に排除している。彼女達も耳族だ。虎耳族と狼耳族の二人だ。虎耳がポニテ、狼耳がショートヘアの色っぽい美乳美女だ。


 最後に出てきたのが、長杖を持った豪奢な金髪の爆乳美女だ。カリナ嬢に匹敵しそうだ。何か長々とした呪文の詠唱を始めている。


 要は従者全員がグラマラスな美女軍団なわけだ。


 リア充爆発しろ。


 どうしよう。

 トルマ並みに空気を読まずに片付けるべきなんだろうか。


 撃つべきか撃たざるべきか、それが問題だ。





 このままサトゥーに攻撃させると、敵の強さがわからないので、別キャラ視点の話を1~2話はさみます。


 黒歴史はサトゥーのものです。作者のエピソードじゃないです。本当ですよ?

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― 新着の感想 ―
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