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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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8-2.空からの訪問者

※9/15 誤字修正しました。

 サトゥーです。ゲームにはビキニアーマーを着た女戦士なんていう無理な設定のものもありましたが、さすがに異世界にはビキニアーマーを着た戦士はいないようです。





 空から降りてきた訪問者は、地上ぎりぎりで一度速度を殺してから着地した。

「出迎えご苦労!」

 彼女(・・)が兜を取ると銀髪が流れ落ちるようにこぼれる。天馬(ペガサス)を模したゴーレムから降りると、金属鎧の踵が澄んだ音を響かせる。普通の鉄製の防具じゃないみたいだ。

「姫様!」
「リーングランデ様!」

 広場にいる人達が、「リーングランデ」コールをする。

 空から天馬(ペガサス)型ゴーレムに乗ってあらわれた彼女は、リーングランデ・オーユゴック。勇者ハヤト・マサキの従者だ。レベルは55。スキル構成を見る限り魔法使いよりの魔法剣士のようだ。

 年齢は22歳で、やや釣り目で眉の細いキツイ系の美女だ。
 彼女の着ている金属鎧は、騎士達が着ているような無骨な金属の塊ではなく、女性らしい滑らかなラインを描いている。鎧のカーブに誇張が無いならEカップ近いサイズなのではないだろうか。ナナの鎧も、リーングランデ嬢の鎧を参考にして作り直そう。

 シガ王国の重鎮たるオーユゴック公爵の孫が、なぜサガ帝国の勇者に仕える事になったのかは知らないが、この広場に集まる人達の様子を見るに大人気のようだ。

「すごい人気ですね」
「士爵さまはご存知ありませんか?」

 シェルナさんが胸の前に両手のこぶしを握って、食い気味に聞いてくる。
 彼女の雰囲気に流されるように頷くと、リーングランデ嬢の話を色々と聞かせてくれた。
 リーングランデ嬢は、公爵の孫、次期公爵の四女で、母親はシガ王家から降嫁してきた現国王の娘だ。王位継承権こそ無いものの折り紙つきの血統の良さだ。
 10歳の時から魔法の才能に溢れ、飛び級で王立学院に留学したそうだ。2年で学士号を得て、風と炎の魔法を上級まで修めた才媛なのだそうだ。学士号を取ってからも学院に席をおき、15歳までの3年の間、迷宮都市で魔術を磨き続けるのと並行して研究を続け、失われたとされていた爆裂魔法、破壊魔法の2種類を復活させた天才魔法使いらしい。おまけに、これらの功績で名誉女男爵の位を授かったらしい。
 剣術は迷宮都市にいる間に覚えたそうで、シェルナさんもよく知らないようだ。

 そんな彼女なので、18歳でシガ王国を出奔してサガ帝国の勇者に仕える事になったとき、色々と騒動が起こったらしい。その辺は興味がなかったので、シェルナさんに相槌を打つだけで聞き流した。

 彼女が里帰りするのは2年振りらしい。





 リーングランデ嬢の取り巻きに混ざりたそうなシェルナさんだったので、許可を出してあげた。公爵への報告書の提出が終わった後は、オレ達が滞在する間の各種手配をするように太守に命令されていたそうだが、早めにこなさないといけないタスクは完了しているので、今日くらい休暇をあげてもいいだろう。明日からは各種工房見学の案内をやってもらうので覚悟してもらおう。

 出口で待機していたフットマンに、乗ってきた馬車を呼んで貰う。
 いちいち人の手を使うのが面倒だ。自分で呼びに行くのはNGなので、面倒でも使うのに慣れろとニナ執政官に言われていた。

 馬車で、魔法屋や本屋の集まっている区画に行ってもらう。下町にも魔法屋はあるそうなのだが、取りあえず城に近い場所に行って貰った。

 中にいる人物に気が付いて、やはり下町の店に変えるか迷ったが、不審すぎるので諦めて店に入った。

「おお、サトゥー殿じゃないか」
「ん、トルマの知り合いか?」
「うむ、前に話しただろう? ムーノ市を襲った総勢1万の魔物の大群を――」

 魔法屋の中にいたのは、店主らしき男性とトルマのおっさんだ。店主は魔法屋の店主とは思えないほどの筋肉質の大男だ。ツルハシか大剣でも担いでいたほうが似合いそうな厳つい顔つきだ。

 店主さんは、楽しそうに誇張した話をするトルマをニヤニヤしながら聞き流している。いつもの法螺話とでも解釈しているのだろう。本気にしている様子は無い。

「俺は、キキヌ。生まれは東方の小国だから名前がヘンなのは気にしないでくれ。呼び難かったら筋肉でもオヤジでも店主でも好きに呼んでくれ」
「これはご丁寧に。サトゥーと申します」

 空気扱いされていたトルマが、口で「チッチッチッ」といいながら指を振る。なんだろう殴りたくて仕方ない。

「ちゃんと家名を名乗らないとダメだよ?」

 気軽に話して欲しかったので家名を言わなかったんだが、相変わらずKYなやつだ。

「失礼しました。サトゥー・ペンドラゴンです」
「ほう? 勇者物語が好きなのは判るが」
「彼の主人がムーノ男爵、前のドナーノ准男爵なんだよ」
「そいつあ、災難だったな」

 それで通じるとか、どれだけ勇者好きだったんだよ、ムーノ男爵。

「いえ、最終的に選んだのは自分ですから」
「まあ、同好の士にしかわからんから大丈夫だろう」

 なるほど、キキヌ店長もムーノ男爵の同類だったのか。
 適当に雑談に花を咲かせてから、本題の魔法書や巻物のラインナップを聞いた。

 かなりグルリアン市の魔法書や巻物と被っていたが、さすがは大都市の魔法店だけあって、充実している。

「この本はいいですね」
「そうかい? 数年に一冊しか売れないような本だが気に入ってくれたならなによりだ。魔法道具の鑑定書を読むのに必須の辞典だが、鑑定スキル持ちにしか売れないから本棚の肥やしだ」

 これで、ストレージ内の魔法の品が読める。
 魔法書は、さっきシェルナさんが言っていた爆裂魔法と破壊魔法の解説書があった。魔法書の方は軍関係者にしか売れないという話だったのだが、公爵さまに発行して貰った許可証のお陰で問題なく購入できた。

 他にも「魔法道具と刻印魔法」「魔法道具につかう30の定番回路」「基礎から学ぶ杖と触媒」「宝石と魔核(コア)」といった心惹かれるタイトルの本があったので纏めて買い求めた。

「若様、この本はどうだ?」

 キキヌ店長が出してきたのは、「回転とロマン」「回転と往復運動の出会い」「回転が生み出す新しい魔法」といった、無闇に回転をプッシュする書籍だった。作者が、例の魔法コマの作者の人だったので購入する事にした。なぜかキキヌ店長が呆れた顔をしていたのが気になる。買うとは思わなかったんだろうか? 自分で勧めておいてそれは無いと思う。
 他にも何冊か購入したが、スクロールの作り方という本は無かった。

 その代わり、巻物は潤沢だ。
 トルマがここにいるのも、実家に居辛かったので御用聞きを買って出てやってきたのだそうだ。

「ここで買わなくても、うちの工房で貰えばいいじゃないのか?」
「おいおい、トルマ。人の店の上客を取らないでくれよ」
「トルマさんの実家では、とびっきり変な巻物を貰うからいいんですよ」

 変な巻物というか、買えないような特殊な魔法をオーダーメイドで作ってもらう予定なので、店買いできるような品は先に買っておくつもりなのだ。

 一般に売買できる売れ筋のラインナップと言うのは、他の都市の品と変わらないようだったが、軍事用の戦術系魔法が色々買えた。大抵は魔法使いが不足しているときの代用や、魔法使いが、自分の使えない属性の魔法を保険用に携帯するためのものなのだそうだ。

 セーリュー市の迷宮で炎魔法使いの子爵さんが使っていた、火炎嵐(ファイアーストーム)なんかもあった。この中級魔法があれば、魔王との戦いも、もっと楽だったのだろうか?

 初級の巻物は安かったが、中級の巻物は金貨数枚もしたので、保険に持っていてもそうそう使えないのではないだろうか? 低レベルでパワーレベリングするのに使えそうかと思ったが魔力が足りなくて発動できないから無理だと思い直した。

「商品の方は、そのまま持って帰るかい? 宿の場所を言ってくれたら夕方にでも配達するぜ?」
「でしたら、ウォルゴック伯爵邸までお願いします」
「おや? うちの実家か宿にでも滞在するかとおもったんだが、ウォルゴック伯と知り合いかい?」
「はい、少しご縁がありまして」

 キキヌ店長に配達を頼む。支払いもそのときでいいらしい。金貨を大量に運ぶとかが大変だからツケが基本なのかもしれない。





 あの後、トルマの案内で市内の魔法屋や本屋を巡った。
 トルマの「この街は私の庭のようなものだからね」という台詞を生暖かい視線でみていたんだが、誇張無く事実だった。変な路地や、他人の家の庭を通り抜けたり、裏道というよりは悪ガキが好むようなコースを辿って街の方々を歩き回った。乗ってきた馬車は帰したので、遠距離のときは辻馬車だ。

 下町の古本屋で、トルマが偏屈そうな爺店主から言葉巧みに秘蔵の本を出させてきた。こういう交渉は上手いな。昔はエロ本を買おうとして何度も通っていたらしい。トルマのおっさんらしい。

 もちろん出てきた本は、エロ本じゃない。空間魔法の魔法書だ。もっとも中級までの呪文を羅列したもので、効果の説明や理論なんかの記述がまったくなかった。バイナリからの逆アセンブルみたいな事をすればいいかと自分を納得させて購入した。
 マニア向けの使用済みの巻物も売っていたので、呪文書になかった数本の巻物を買っておいた。後で呪文の書を編集しないといけないな。





「あら、こちらステキな少年ね」
「本当、もう少し筋肉が付いたら、もっとぐっとくるようになるわよ?」

 どうしてこうなった。

「あらヤダ。ちょっと触ってみてよ、鋼のような筋肉よ」
「本当、腹筋まで割れているわ」

 オレの体をまさぐる手をやんわりと退ける。

「あら、イケズね」
「なかなか力持ちね」
「おいおい、サトゥー殿ばかりにサービスしてないで、私も構って欲しいね」
「あらヤダ。トルマさん妬いてるの」

 散々、案内させた挙句、そのままサヨナラするのはあんまりなので、メシでも奢ろうと誘ったのですが、なぜか、こんな店に案内されてしまった。

 オカマバーは予想外だった。

「だって、女の人のいる店に行ったら、ハユナに怒られるから」

 だそうだ。

 心配したシェルナさんが迎えに来てくれなかったら、午前様になっていたかもしれない。
 帰ったオレを迎える皆の視線が痛かったので、明日は皆と一緒にショッピングに行く事になった。オーユゴック市はわりと暖かいので、春物の服を買うのもいいかもしれない。
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