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7-幕間4:ポチと絵本

 サトゥー視点ではありません。


 本日2回目の更新です。

※8/12 誤字修正しました。

 大好きなものはご主人さまと肉なのです。


「あら? ポチはわたしの事は嫌いなんだ」


 違うのです。アリサも好きなのです。


「ポチはタマの事きらい~?」

「そうですか、私は肉より優先順位が下なのですね」


 タマもリザも待ってほしいのです。


「そっか~ ポチちゃん、みんなより肉の方が好きなんだ。残念だな~ せっかく美味しいステーキが焼けるようになったのに」

「遺憾の意を表明します」

「ヒドイ」


 あう、ルルも違うのです。ナナもミーアも待って欲しいのです。

 でも、肉は美味しいのです。美味しくて幸せなのです。


「じゃあ、ポチは私達はいらないのね。さようならポチ」


 違うのです。待ってなのです。





「いかないで~、なのです!」

「うわ、ビックリした。どうした、ポチ。変な夢でも見たのか?」


 キョロキョロ見回すと、ご主人様の膝の上でタマが寝ています。

 ここは野営場所?


 夜番の間に寝てしまっていたのです。


「みんなが意地悪するのです」

「それは夢だよ。みんなポチの事が、大好きだから大丈夫だよ」


 ご主人様がポチを優しく抱き寄せて頭や背中を撫でてくれます。気持ち良いのです。あまりの気持ちよさに、そのまま眠ってしまいそうになったのです。


 シュタッ! のポーズで気合を入れて目を覚ますのです。ご主人様に夜番をまかせっきりにするなんて奴隷の風上にも置けないのです。ご主人様の膝の上でタマが寝ているのが見えたけど、きっとタマは寝た振りをしているのです。きっと、そうなのです。


「これで、もう眠くないのです」

「眠かったら寝ててもいいんだよ?」

「大丈夫なのです」


 でも、さっき食べた夜食の「アシパラニクマキ」というのが美味し過ぎたのがいけないのです。満腹で幸せで――。


 はっ!? 危険があぶないのです。思わず居眠りをしそうになったのです。

 アリサも言っていたのです、満腹と眠気は最強の敵だって。


 こういうときは読書なのです。


「ご主人様、御本を読んでほしいのです」

「ん? アリサが古本屋で買ってきた本か? ポチも読めるようになったんじゃないのかい?」


 それとこれとは違うのです。ご主人様に読んでもらうのがジュウヨウなのです。


「じゃあ、一緒に読もうか」

「はい、なのです!」



 ■――――――――


 むか~し、むかしのそのむかし。

 7柱の神様が世界樹と一緒に、神様の世界からやってきました。


 神様は世界樹を大地に植えて、沢山の人々に知恵と言葉を与えたのです。


 そして人々は幸せに暮らしましたとさ、めでたし、めでたし。


 ――――――――■



「違うのです、そんな話じゃないのです」


 ご主人様が適当なのです。これは断固抗議するべきなのです。

 ポチがポカポカ叩いても、ご主人様は笑うだけで痛がってくれないのです。

 今日のご主人様は意地悪なのです。


「降参、こうさん~ ちゃんと読むから許してよ」

「意地悪はダメなのです。次が最後のちゃんすなのです」

「了解。ちゃんと読むね」



 ■――――――――


 人々は平和に暮らし、8本の世界樹の麓で豊かに繁栄していました。

 ところが、いつの頃からでしょう。世界には9柱の神様がいたのです。


 8柱目の神は竜の神様。

 7柱の神様達が世界樹と一緒にやってくる前からいたのです。

 竜の神様は、お寝坊さんで、世界がすっかり変わるまで眠っていたのです。


 目を覚ました竜の神様は、たいへん吃驚(びっくり)したのですが、小さな事に拘らないおおらかな神様だったので、快く7柱の神様達を認めて仲良く暮らしました。


 でも9柱目の神様は違ったのです。


 ――――――――■



「ご主人様、どうして『人』じゃなくて『柱』なのです?」

「さあ? そういう単位としか覚えてないよ。鳥は『羽』だしネズミは『匹』だろ? そんな風に数える対象によって変わるんだよ」


 さすがはご主人様なのです。よくわからないけど、わかったような気がするのです。


「ありがとなのです。続きを読んでほしいのです」


 ご主人様に本をぐいぐい押し付けたら「痛いよ」と言って笑ってくれました。ご主人様の笑顔が見れて、嬉しいのです。



 ■――――――――


 9柱目の神様は他の世界から旅をしてきた魔神だったのです。

 魔神はとても我侭で、自分が一番じゃないと我慢ならなかったので、他の神様とよく喧嘩をしていました。


 魔神は、他の神々が様々な人族や幻獣に囲まれているのがうらやましくて仕方がありません。

 ある時、寂しかった魔神は、自分を崇めさせる魔族を作ったのです。魔族は創り手の魔神と一緒で、他の種族を苛めて回ったのです。


 困った神様達は、魔神に魔族が暴れないようにしてほしいと抗議にいきましたが、まったく聞き入れてくれませんでした。


 残念無念、こうして世界は滅びたのです。


 ――――――――■



「もう、ご主人様が苛めるのです。絵本はちゃんと読まないと、めっ、なのです」


 ご主人様が叱られているのにクスクス笑っています。

 本当に、反省しているですか?


「反省してる、こんどこそちゃんと読むから」

「絶対なのです。指きりするのです」


 指切りをして、約束したのです。

 ご主人さまの指は細くて綺麗なのです。


 今度アリサに自慢するのです。



 ■――――――――


 ある日、悲劇が起きました。

 暴れん坊の魔族が、よりにもよって眠っている竜神と竜族たちに手を出してしまったのです。心地よい眠りを邪魔された竜たちの怒りは激しく、魔族たちは竜の息で一人残らず焼かれてしまったのです。

 そして、困った事に、その時に他の種族も一緒に焼かれてしまいました。


 魔神も竜神様に追いかけられたのですが、逃げ足の速い魔神は100年の間逃げ続け、ついに竜神様も飽きて竜の谷へと帰ってしまったのです。


 神様達はやりすぎだと、竜神様に意見しに行ったのですが、竜神様は寝惚けていて、尻尾の一振りで神様達を山の彼方へ放逐してしまったのです。


 こんな事があったので、魔族は竜族に近寄らず、こっそりと他の種族を相手に弱いものいじめをするようになったのです。


 一番弱くて苛められていた人族が、幼い女神様に魔族と戦える力が欲しいと願いました。


 幼い女神様は、とても困りました。

 なぜなら、幼い女神様には戦う力などなかったからです。困った女神様は他の神様に相談しましたが、皆首を振ってうんうん唸るばかりで何もしてくれません。


 幼い女神様は、一番強い竜神様に相談に行きました。もちろん、竜族の力は借りられません。そんな事をしたら暴れる魔族より大きい被害が出てしまうのです。


 竜神様は、初めは渋っていましたが、幼い女神様が持ってきた人族の遊び道具やお酒を気に入って、一つの魔法を教えてくれたのです。


 それは勇者召喚の魔法。


 希望の魔法だったのです。


 ――――――――■



「ポチも召喚されたいのです! そして勇者になるのです!」

「そうだね、ポチならいつか勇者になれるよ」


 むぅ、ご主人様が適当に答えているのです。

 ポチには判るのです。


 イカンのです。とってもイカンなのです。


 ご主人様がパタンと絵本を閉じてしまったのです。


 ダメなのです!

 ここからが勇者が活躍するお話の本番なのです。

 抗議したくてグリンと首を巡らせて、ご主人様の顔を仰いだけれど、ご主人様はこっちを見ていなかったのです。ご主人様? ポチはこっちなのです。


「おはようございます、ご主人さま」

「おはよう、ルル。リザとナナは昨日の特訓で疲れているから寝かせておいてやろう、今日はオレも朝食を作るのを手伝うよ。ポチ、何かリクエストはあるかい?」


 ご主人様のゴハン!

 それはジュウヨウでステキなのです。


 りくえすとなんて、考えるまでも無いのです。


「肉!」


 元気よく宣言したら、ご主人様が笑ってくれたのです。


 今日も、とってもいい日なのです!


 アシパラ肉巻き。「アスパラ」じゃないのは誤字ではありません。ポチが間違って覚えています。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  >それは勇者召喚の魔法。  >希望の魔法だったのです。 この表現の仕方、素晴らしいと思います。
[一言] 只の閑話のようで、重要な情報が散見しているよな?
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