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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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7-19.誰も知らない夜

※8/11 誤字修正しました。

 サトゥーです。宗教に縁の薄い日本に住んでいると、宗教の違いで戦争をする国が不思議でした。異世界でもやはり宗教戦争とかもあるのでしょうか?





 オレ達を乗せていた船は、公都の夜景が見える場所で停泊している。大会の開催時期で港が混雑するので、順番待ち中だ。公爵から物資搬入船を最優先にする命令がでているらしく、他にも沢山の船が停泊している。

 船長さんが、明日の朝一番に入港する権利を勝ち取ってきてくれたので、明日は順番待ち無しに入港できそうだ。
 さっきまで、皆で夜景を見ていたのだが、年少組がウトウトしだしたので、先に部屋に戻らせてある。
 軽い足音がしたので振り返るとアリサが居た。

「やっぱり、行くの?」
「ああ」

 変な雰囲気を出してくるアリサに短く答える。

「短角程度の相手にアンタが遅れを取るとは思わないけど、絶対に油断しちゃダメよ?」
「ああ、判ってる。むしろ、短角魔族が出現する前になんとかする為に行くんだよ」

 爆弾持ったテロリストみたいな連中がいたんじゃ、落ち着いて公都見物もできないからな。それに楽しみにしているスクロール工房見学を邪魔されてたまるか。

 しかも短角を持っている連中の素性が怪しい。「自由の翼」とかいう名前の秘密結社で構成員の過半数は貴族の子弟のようだ。爵位を持つ者はいないようだが、公爵の直系の者まで混ざっていた。裏で鼬人族が暗躍していそうな気もするが、構成員は人族のみだった。

「良い事、絶対に怪我せずに帰ってくるのよ? あんたは勇者じゃないんだから、絶対に無茶しない事! かすり傷一つ付けて帰ってきたら、2度と一人で行かせないわよ!」
「わかってるよ、無理はしない。変な強敵が出てきたら『いのちをだいじに』で行くよ」

 尚も過保護気味に心配してくるアリサだったので、2人に共通性のあったゲームの有名なプレイ方針で安心させる事にした。アリサが、ようやく「そう、それでいいのよ」と頷いてくれたので出発する事にした。

「アリサ、今晩は河賊なんかの襲撃があるかもしれないから、仲間内でも夜番をしておいてくれ、何ならカリナ嬢達を部屋に呼んでもいい。彼女がくればラカも付いてくるからな」

 アリサの事を過保護とは言えない。オレも大概だ。





 さてアリサに伝えていなかった事が、少しある。

 まず、短角を所持する自由の翼だが、未所持者も入れると構成員が300人近い大所帯な事だ。特に30レベルを超えるような者はいない。ヤマト石でバレそうな気もするが、全員2つ以上の所属先を持っていたので、表向きの所属が優先されるのだろう。

 彼らの本拠地だが、どうやら、公都の地下数百メートルの所にある謎空間にあるようだ。マーキングしておいた者が、突然マップ圏外に出現したので拡大したところ、別エリア扱いの場所だとわかった。ジオフロントか迷宮でもあるのだろうか?

 もちろん、地下だけで無く、他にも地上に数箇所の事務所らしき建物がある。

 さらに、3人ほど「状態異常:悪魔憑き」が居た。構成員の幹部に2人と、テニオン教の聖職者が1人だ。前者は兎も角、後者はどうして憑依されたのだろう? 3人共、地下空間にいるみたいなので、短角回収後になんとかしよう。

 密偵スキルのお陰か、哨戒していた蝙蝠人族の人に見つからずに公都に潜入できた。
 もちろん、門からでは無く、天駆スキルで外壁を越えて侵入した。

 今回は夜間潜入ミッションだったので、銀仮面セットでは無く漆黒仮面セットだ。服もローブでは無く騎士服から飾りを取ったような服にしてある。魔族討伐ではなく窃盗目的なので、目立たない方がいいだろうと考えたわけだ。

 さて、夜は長いとは言っても、地下に人が集まりつつあるようなので、地上の短角持ちをさっさと襲撃しよう。

 まず一人目。裏路地の占い士からだ。ノックもせずに店に入る。鍵は掛かっていたが、問題なく解錠できた。宝箱解錠のスキルでもなんとかなるもんだ。

「誰? 今日は店は休みだよ」

 銀髪の色っぽいお姉さんが、そう吐き捨てるように告げるが、気にせず接近して気絶させる。店に彼女しかいないのは確認済みなので、金庫から短角を回収して立ち去る。念の為、扉の鍵は閉めておいた。

 そして4人目までは、問題なく回収できたのだが、最後の5人目が不味い。よりによって、公爵の三男だ。なんとか城内には侵入できたのだが、看破や監視、索敵などのスキルを持った見張りがごろごろいる。今も、巡回する歩哨達から身を隠している所だ。

 獣人の歩哨は居ないようだが、一応、「消臭(デオドラント)」の魔法で匂いを消してある。

 密偵スキルレベル10を信じたいところだが、歩哨の密度が高くて安心できない。前に索敵を覚えた時のように気配を消そうとして行動すれば隠形系のスキルを獲得できないだろうか?

 幸い? オレを見つけようとする「敵」には事欠かないので、条件は満たせるはずだ。

 前の時は自然から異物を探し出すのを目的にしていたわけだが、今回はその逆だ。自然体になって、心身を周りの空間に溶け込ませて一体になるのをイメージする。

 真逆とは言え、似た手順を経験していたせいか思ったよりも簡単にスキルを手に入れられた。

>「潜伏スキルを得た」
>「隠形スキルを得た」
>「忍び足スキルを得た」

 忍び足スキルは、潜伏と隠形スキルを有効化(アクティベート)して、足音を忍ばせて回廊を進んだ時に手に入った。底に柔らかい革を使った靴のお陰もあるに違いない。

 4つのスキルと魔法の複合技のお陰か、潜入ミッションに成功して公爵三男の居室にたどり着いた。中を窺うと、30過ぎの肥満男が手鏡に向かってブツブツと小声で喋っている。始めは独り言かと思ったが、手鏡が魔力を放っているので、通信系の魔法道具だろう。耳を(そばだ)てると――

「では、テニオン神殿からセーラを誘拐――いや、招待できたのだな」

 不穏な単語が来たな。確か「状態異常:悪魔憑き」の聖職者の名前がセーラだった。

「うむ、我もそちらに向かいたいのだが、公務が忙しくてな、儀式に参加できそうにない。いや、結社をないがしろにしているわけでは無い。わかった、儀式までにそちらに向かう。門を操作出来る者を待たせておけ」

 そう手鏡に告げ終わると、それを抱えて本棚の前に行く。彼が何か操作すると本棚がスライドして隠し部屋が現れた。どうしてファンタジー世界の住人は、こういう仕掛けが好きなんだろう?

 隠し部屋の中で結社の服装に着替え始めたので、さっさと気絶させて短角を回収した。結社の服を仕舞っていた宝箱に、合言葉の表や何か計画書があったので、回収しておく。
 公爵三男は結社の制服のままで気絶しているが、そのまま放置する事にした。こいつの着ている制服を奪って潜入するのがセオリーなのだろうが、この服は着たく無い。

 この隠し部屋から城の地下室というか下水道らしき通路へと続く隠し通路があるので、利用させて貰う。

 黴臭い。

 おまけに、さっきからネズミがちょろちょろしている。使い魔とかだったら見つかっていそうだが、レーダーや危機感知に引っかからないので普通のネズミだろう。

 途中、何度か蜘蛛の巣を模した警報装置があったが、罠発見と危機感知の前では何の障害にもならなかった。むしろ、鼻が曲がりそうな下水横の通路を進むほうが辛かった。あまり「消臭(デオドラント)」の魔法を使って痕跡を残すわけにも行かないので我慢した。

 下水を進む途中で、結社の制服を強奪して着替えた。秘密結社の制服らしく顔や体型が隠れるようになっている。服を奪った相手が女性だったので、下着のまま放置するのも憚られたので、前に盗賊から巻き上げた服とマントを着せて縛っておいた。帰りに解放してやろう。





「青い空に」
「自由の風が吹く」

 合言葉を確認してくる女性に、符丁で答える。
 他にも何人か結社の人間が集まっている。ここに居る人間は、誰も短角を持っていない。

 さっきから平構成員とは違う服を着た階位の高そうな人間が集まって、何か揉めている。

「どうしましょう、三男殿がまだ来られません」
「あの方の事だ、どこかで疲れて休憩しているのかもしれん。儀式まで時間も無いことだ、先に送ろう」

 どうやら、さっき気絶させてきた公爵の三男を待っていたようだが、儀式とやらの時間が迫っているらしい。先程から、三男から奪った書類に目を通していたんだが、本気か疑いたい内容だった。生贄を捧げて魔界から聖遺物――文脈からして短角を召喚する儀式だそうだ。

 今日の犠牲者は、さっきの三男野郎が言っていたセーラ嬢だろう。悪魔憑きとなっていたので、既に犠牲になった後とも考えられる。

 オレは構成員たちについて地下空間へのゲート発生装置の所に行く。前に見た鳥居型を想像していたのだが、むしろストーンヘンジ型に近かった。

 装置が発動するとオレ達は、地下空間へと移動していた。経過時間の無いタイプだな。

 こっそり「全マップ探査」の魔法を発動して、地下の構成を確認した。ここは「豚王の迷宮:遺跡」と出ていた。現役の迷宮では無いようだ。アリサの国にあった「枯れた迷宮」と同様の場所なのだろう。枯れているとはいえ、多少の魔物が残っていたりしてもいいのにまったく存在しなかった。普通の虫や小動物くらいしかいないようだ。

 結社の人間は、この回廊の先に集まっているようだ。ここに来た主目的である短角を持つ人間や悪魔憑きの3名もそこにいるので纏めて処理できそうだ。
 グルリアン市で、構成員っぽい人間を出しておくべきでした。ちょっと唐突感がありますね。


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