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2-2.生活魔法を覚えよう!

※注意!※

本日2回目の投稿です。「2-1.災害救助と巫女さん」の方も御覧下さい。


※2/11 誤字修正しました。

 サトゥーです、出会いは色々あるのに何故かそこで終わってしまう残念なサトゥーです。

 顔か! 顔なのか!!



 ◇



 昨日は色々あったので夕食後に爆睡してしまった。


 今日は部屋で読書だ!

 ……と思っていたのだが、部屋が暗い。明かり取りの窓があるので読めない事も無いが本を読むには、ちと薄暗い。


 たしか宿の近所にオープンテラスの喫茶店があったはず。

 朝食も喫茶店でモーニングでも食べよう。あるかは知らないが……。


 宿屋1階の酒場は朝食を取る人で混んでいた。昨日くらいから少しずつ客が増え始めているようだ。

 女将に部屋のカギを預けて出かける。出かけ際にマーサちゃんの元気な挨拶が聞けた。朝からハキハキしててオジサン眩しくなっちゃう。


 門前も一昨日にくらべると格段に賑やかだ。幾台もの荷車が門から入ってきている。引いているのは農民の人みたいだ。 牛や馬に牽かせないのだろうか?


 広場を見回すとテラス付きの喫茶店はすぐ見つかる。記憶よりちょっと遠かった。


 喫茶店は食事中心の人は屋内、お茶の人はオープンテラスを利用しているようだ。後で店員さんに聞いたところ自然にそうなっただけで、お店の方でそう決めたわけではないらしい。店内はやや暗いので本が読みやすいテラス側に席を確保する。


 朝食にはフルーツジュースとサンドイッチを注文した。サンドイッチは麦芽パンとハム、野菜、チーズを挟んだものだった。フルーツジュースは柑橘系の味だ。蜜柑よりややクドめ。容器はガラスではなく銅製カップだがよく冷えてて美味しさが引き立つ。生活魔法で冷やしているのかな? 魔法を覚えるモチベーションが上がる♪


 そうそう店員さんは接客しているのが3人。全員女性だ。20歳くらいのふくよかな赤毛さん、16歳くらいのほっそりした栗色の髪に泣きボクロが印象的な娘さん、最後に12歳くらいの腰までの長い黒髪のお嬢ちゃん。


 皆、快活に目まぐるしく働いている。


 その様子を目の端で楽しみながら、生活魔法の入門書を読む。


 生活魔法は地水火風などの属性に分類されない生活に役立つ魔法を集めたものだ。個々の属性で分けられた魔法に比べると取るに足らない弱い効果しかない。その代わり必要な魔力が少なく、攻撃魔法が使えないレベルの者でも扱える。このため便利な呪文が多いにもかかわらず魔法使い達はこの生活魔法を一段低く見るのだ。生活魔法しか使えない魔法使いは呪い士(まじないし)と呼ばれ、魔法の専門職というよりは町の便利屋程度の扱いを受けるらしい。この偏見のため本職の魔法使いで生活魔法を習得しているものは少ないそうだ。入門書では、その扱いを嘆くグチにも似た記述がある。


「おはようございます、サトゥーさん!」


 テラスの外から挨拶される。ナディさんだ。

 昨日のショックで寝込んでるかと思ったけど意外に元気そうだ。カラ元気かもしれないが強いな!


「おはようございます。ナディさん御加減はいかがですか?」

「昨日は助けていただいてありがとうございます。危ないところを助けていただいただけじゃなく、馬車で送ってもらったりして」

「いえ、大事無くてよかったです」


 せっかくなので椅子を勧める。


「それは生活魔法の本ですか?」

「はい、先日購入したので使えるようにならないかと基礎を学んでいるところです」

 生活魔法スキルはLv10まで習得しているので、あとは呪文を覚えるだけなのだが。


「生活魔法を実践するなら得意属性にもよりますが湧き水(ウォータ・スプリング)乾燥(ドライ)がお勧めです。本だと点火(テンダー)を勧めている場合が多いんですが街中で火事でも起こしたら大変ですからね」


 たしかに、その通りだ。


湧き水(ウォータ・スプリング)なら桶にお湯を入れてから、隣にカラの金属製のコップを置いてから、コップに対してかけると成功しやすいですよ」


 水を水蒸気から集めるのか……。


乾燥(ドライ)なら布を濡らして物干しに干して乾かしやすくしてから魔法をかけるのがいいです」


 なかなか科学的根拠のある話だな。魔法(ファンタジー)のくせに。


「そうだサトゥーさん、短杖は持ってますか? 杖が無いと魔法は使えませんよ」


 何! そんな制限が。

 そういえば、魔法使い達は長杖を持っていたし、生活魔法の人は短杖を使っていた。

 いや、あの兵士は? そういえば神官さんも杖を持っていなかったはず。


「神官というのはパリオン教の神官ですか? 彼らは聖印を杖の代わりにするようです。兵士は杖以外の発動具を使っていたか短杖で魔法を使った後に杖を落としたとかでは?」

「ナディさん、発動具というのは何でしょう? 杖とは違うんですか?」


「発動具というのは指輪などの装身具や魔法書に杖と同じように魔法の発動を補助するための機能を付与したアイテムの事です。杖に比べて効果が低いうえに高価なので使っている魔法使いはあまりいません。魔法剣士みたいに杖を携帯できない職業なら必須でしょう」


 さすが生きたwikiだけはある。一家に一人ナディさん。


 杖か……ストレージに何種類もあるが魔法効果が付与された魔法の杖しかなかったはずだ。効果が強く出過ぎそうで怖いな。できれば最初はシンプルな安物で練習したい。

 でも中央区の魔法屋はしばらく営業しないだろうし、どこで入手するか?


「ナディさん、どこか短杖を買える店を知りませんか?」

「それなら中央区の魔法屋……はさすがに昨日の今日ではやってませんね。西街の錬金術店でも短杖なら買えると思います」


 ナディさんに錬金術店の場所を聞いてマップにメモしておく。

 その後、色々と西街の注意点を聞いてから当たり障りの無い世間話をしてナディさんは仕事に戻っていった。


 お昼時になってテラスまで客が増えてきた。



 ◇



 お昼の味噌味パスタを食べ終わった頃に入門書も読み終わる。

 ……どうして、この町はファンタジーに和テイストを入れたがるのか!


 西街に入って10分と経たないうちに腰に下げていたダミーの巾着から小銭が消えた。賤貨数枚しか入れてなかったんだが、巾着の底が切られて中身は持ち去られた後だ。


 スリ取られた場合はログには出ない。ほんとゲームっぽい機能だよ。


 食品や日用雑貨などの生活必需品を売るエリアを越えると、いかがわしい感じのお店が増え始める。色っぽいお姉さんやガラの悪そうなオッサンがウロウロしている。


 西通りの真ん中くらいに広場がある。錬金術店はこの少し先だ。

 広場ではたくさんの露店が並び、鳥や家畜などのセリが行われている。


 広場の入り口で商人風の男が奴隷市の告知をしている。明日の夕方から3夜連続で行うそうだ。


 よく見ると家畜の脇に首輪に繋がれた奴隷の少年少女がいた。半数くらいは怪我をしているようだ。どの奴隷も目が死んでいる。まだ家畜達の方が元気だ。

 全員買い取って解放したい衝動に駆られるが、自己満足にしかなりそうにないので止めておく。解放して終わりってわけにもいかないしね。……言い訳か?


 広場を抜けると娼館が並んでいる。微妙に時代劇の吉原みたいな感じだ。

 やっぱHなのは本職のお姉さんが一番だよね。嫌々される奴隷より、性風俗に誇りを持ってるプロ相手の方がイイ。

 今夜は綺麗なお姉さんのいるお店に行ってみよう! キャバクラっぽい店はあるのだろうか? 泡のお風呂よりはHな会話を楽しむ方が好きなのだが……。


 盛大に脱線してしまった。

 錬金術店はこの娼館通りの真ん中くらいにあるみたいだ。薬の需要が高いのかね~。


 ナディさんの忠告通り西通りの真ん中をあるいていたお陰か、路地にひっぱりこまれる事も無く無事に錬金術店に辿り着いた。いや、スリには遭ったから無事じゃないか……。


「こんにちは。営業してますか?」


 店の中に入るとカウンターの向こうに小人がいた。いっておくが可愛くない。推定1メートルほどの小さい(じじい)だ。ノームか? ホビットか?

 AR表示では妖精族としか出ていない。もうちょっと見ていると地妖精(ノーム)と表示された。


「冷やかしなら帰れ」


 あら、冷たい。

 ……ダジャレじゃないよ?


「短杖を買いたいんですが、在庫ありますか?」


呪い士(まじないし)か。安いのと、高いのと、すごく高いのがあるがどれにする?」


 ざっくり来たな~。


「安いのと高いのを見せてください」


 店主は木製の短杖と銅でできた短杖を出してくる。短杖は英国の超有名な魔法少年が持っていたようなシンプルなワンドだ。分からないならオーケストラの指揮棒をちょっと太くしたような形を想像してほしい。

 じっと見つめると各短杖の性能がAR表示される。木製の方が「魔法発動補助+3」「魔法効果拡大-2」で相場が大銅貨2枚、銅製の方が「魔法発動補助+3」「魔法収束補助+2」「魔法効果拡大+1」で相場が銀貨3枚。

 正直なところ性能が見えても違いがわからないな。


 銅製の方が性能が良さそうだが、木製の方が魔法使いっぽいから、こちらにしておこう。


 安いほうを選ぶと店主はやや不満気(ふまんげ)だ。


 せっかくだから薬も色々買ってみるか?

 そうだ錬金術といえばポーション作成だよな。


「調合の入門書とか器具はありますか?」


 店主がニヤリと嗤う。カモが来たとでも思われているのか。


「薬品調合の入門書、応用書」「解毒薬と毒薬の本」「病気と医療の本」など5冊ほどに豪華なケースに入った調合器具セット、薬草などの採取セット、初心者用の薬品調合用の試料セットなど「これでもか!」と言わんばかりに積み上げる。


 ……ん? 試されているのか?

 魔力付与台が「魔力付与台風模造品」になっている。他は本物っぽい。


「この魔力付与台は他の種類はありませんか? どうも趣味に合わないのです」


 あからさまに偽物扱いしない。それが大人の対応だ。


「ふむ、物の分からん素人ほど道具にケチをつけよる」


 若干嬉しそうだ。顔に出ているわけじゃないが雰囲気が若干軟化した気がする。


 今度は付与台を3つ出してくる。


 装飾の施されたいかにも高級な道具っぽいものと使い古された感じの道具、最後が明らかに偽物の安っぽい道具だ。高級なほうはわざわざ魔法で加工してあり手を(かざ)すと手の動きに合わせて緑色の弱い光が道具の表面に(とも)る。言うまでもないが高そうな方も偽物だ。


「では、こちらを」


 もちろん使い込まれたほうを選ぶ。


 相場だと全部で金貨15枚か。それにしても安い短杖買うような駆け出し呪い士(まじないし)がそんなに金があるように見えるんだろうか?


「そうかそちらを選ぶか……。これだけあれば中堅錬金術士になるまでは調合素材以外なにも買わなくてすむぞ」


「おいくらでしょう?」


「金貨10枚だ」


 え、相場より安すぎないか?

 オレの驚きを見てニヤリとする店主。


「やっぱり鑑定スキル持ちか」


 ドヤ顔の店主に言いたい。そんなスキルは持ってないと。


>「鑑定スキルを得た」


 対抗しなくていいから……。


「本当に金貨10枚でよろしいんですか?」

「ああ、あんたみたいに目利きのできる人間が錬金術を修めてくれると助かるからな」


 よく考えたら値切りスキルのお陰だったりして?


 代金を払って本とかを受け取る。さすがに鞄に入りきらないな。

 本を両手に抱えたまま一旦宿まで帰る事にした。

 店主に礼を言ってから店を出る。


 またやる事が増えてしまった。

 生活魔法を覚えたら次は錬金術で薬作りだ!


誤字報告ありがとうございます。

とっても助かります~。


やった~!

初めて日間ランキングに載れました!

読んでくださる皆さんのお陰です、感謝です!!

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