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デスマーチからはじまる異世界狂想曲 作者:愛七ひろ
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1-1.デスマーチから始まる天変地異

※2016/12/17 初見の方へ(特に漫画版から来られた方へ)
 本作のweb版は小説を初めて書いた頃のまま改稿していないので、描写不足や無駄な説明文が大量にありますのでご注意下さい。
 読みやすい文章をご希望であれば、BOOKWALKER等の試読版か書籍版をご覧下さい。

※2014/6/30 誤字修正しました。
 星が流れる。
 幾つも、幾つも。
 流れ星を見たことがあるだろうか?
 その儚さに目を奪われる者、願いを唱える者、人それぞれだと思う。

 だが、空を割って隕石が落ちるのをその目で見たことは無いのではないか?
 轟音とともに空を切り裂き、その質量と圧倒的な速度で大地を打ちつける様を。

 中にはテレビや動画サイトで見たことがある者もいるかも知れない。……それでもそれが間近に降り注ぐのを見たいと思った者は居ないはずだ。

 そう今、目の前の大地に百近い隕石が次々に落ちている。

 否。

 人事の様に言うべきではないだろう。その天変地異を起こしたのは、紛れもなくオレ自身なのだから。

 10分ほど前の考え無しの選択が今、流星となり大地を抉って行く。
 流星は十数キロ先に突き刺さり、そこにいるであろう「敵」を蹂躙し、視界の片隅にあるレーダーの(ドット)が消え、落下地点では命が消えている。

 そして殆どの流星が大地に消えた頃、ようやく遅れていた落下音が届き、少し遅れて地響きが振動となって伝わる。

 大地を這うような土埃の波が届く寸前……。

 突然、天罰のような激痛が襲ってきた。

 脳天を割るように。

 体をバラバラに引き裂くように。

 その痛みに意識を手放した直後、オレの体は土埃の波にさらわれた。


 ◇


 時は少し遡る。

 オレは遅れに遅れているプロジェクトを納期に間に合わせるために休日出勤していた。いわゆるスマートフォン用のゲームアプリやPC用のブラウザゲームなどを大手から依頼されて作成する下請け外注会社のプログラマーをしている。

 いかにブラックな会社とはいえ普通1人に2プロジェクト以上割り振られることは無い。しかし仕様変更とバグの多さに後輩の若いプログラマーが納品間際に失踪してしまったのだ! 嘆かわしい!
 離職率の高い職場故、この会社にいたプログラマーは後輩氏とオレの2人のみ。急な補充など見込めるはずもなくオレは自分のプロジェクトだけでなく後輩氏の炎上プロジェクトの後始末までする羽目になっていた。

「よし、全部のクラスの入出力とコメントの記入完了っと、あとはオートドキュメンタでソースコードからドキュメントと相関図を作成してから本格的なバグの洗い出しだな~」

 すこし伸びをして首をコキコキと鳴らす。
 周りを見回すと休日とは思えないほど全員出勤しているいつもの職場だ。隣の席でデバッグ外注の責任者がブツブツと独り言を言いながら作業をすすめているが、誰も奇異の目を向けない。そんな余裕などないのだろう。まわりのデザイナーやプランナーは死んだような虚ろな目で黙々と自分の作業を進めている。

 コーヒーを入れて戻ってくると、すでにPCは作業を終えておりデバッグに必要な資料が出力されている旨が表示されていた。

 それにしても資料もなく作業して炎上しない訳が無い。

 OJTする暇も無く実践に投入された後輩氏に文句を言っても仕方ないか。半年前に後輩氏が入社したときには4人いたプログラマーがいまやオレ一人というのは、会社としてどうかとは思うが。

「さ・・、鈴木さん、WWの方の難易度が初心者には難しいから直せってクライアントからクレームが来たんですがどうしましょっか」

 佐藤って言いかけたなコノヤロウ。半年もチーム組んでるのに間違えかけるな!

 振り返るとディレクター兼プランナーのメタボ氏がいつものように困った顔で聞いてくる。
 しかも、厄介事が発生してるのに、どこか嬉しそうだ。どうしてこう開発者にはMなのが多いのか。

 WWは現在鋭意開発中のPC用ブラウザゲーム「WAR WORLD」の略称。ちょっとソーシャルな交流機能を追加したオーソドックスなストラテジーゲームだ。

「あれ以上難易度下げたらメインターゲットが遊んでくれないからイヤだって言ってなかったっけ?」

 そう現在の難易度はクライアントと何度も会議を重ね決めたものだ。あの無駄な時間は本当に無駄だったのか。やるせない。

「前にボツったキャラ初回作成時のみマップ全索敵と3回分くらいのマップ殲滅ボムをボーナスにつけてやるのでいいんじゃない? 使わずにクリアしたらレア称号プレゼントとかにして得意な連中には自分から使わない方向へ持って行っとけば?」

「もう時間もないし、それで行っておきますか~。じゃ鈴木さんそれで実装よろしく」
 メタボ氏は相変わらず気楽に言ってくれる。

「ちょい待ち。今はスマホのMMO-RPGの方のデバッグが押してるから、先にクライアントにOK貰っておいてよ。下手に組み込んで拒否られたら直す時間も無いしさ」
「おk。すぐ確認の電話いれま~」

 メタボ氏は巨体を揺らしながら携帯片手に喫煙エリアに消える。

 そこからは独り言を呟きつつ黙々と作業を進める。
 途中メタボ氏からGOサインが出たり、ジャンクフードで空腹を誤魔化しつつ夜は更けて行く。

 後輩氏の残した無数のケアレスミスを深夜まで修正し、デバッグチームに後を任せる。
 そういや名前なんだっけ? いつもMMOとかロープレとか呼んでたから正式な名前が出てこない。そうだ「FREEDOM FANTASY WORLD」だ。WWの旧名「FANTASY WAR WORLD」と紛らわしいから誰も呼ばなくなったんだっけ。思い出してみれば仕様書にはFFWとか略号が入ってた。あとでWWの方から「FANTASY」が取れたので今では紛らわしいと言う程ではないが、いまさらだ。

 WWの修正作業をしつつ、FFWのデバッグチームからのバグ発見報告に順次対応していく……。今日も徹夜か。

 翌朝までチェックは続き、キセキ的にMMO-RPGのクライアントプログラムは納品された。

 勿論まだバグは残っているだろうが、ネット配信には「アップデートパッチ」という伝家の宝刀があるので心配はいらないだろう。ユーザーからの罵声が聞こえてきそうだがオレは眠い。デバッグチームの作業中に修正したWWの実行パッケージをメタボ氏に社内メールで転送して、机の下の安住の地で30時間ぶりの安眠についた。

 ああ、至福。社畜と笑わば笑え。いまは睡眠こそジャスティス!


 ◇


 明晰夢という言葉をご存知だろうか?
 自分で夢であると自覚しながら見ている夢のことだ。

 オレは今、荒野にいる。

 ポルさんの名セリフを言ってみたいが止めておこう。

 そう荒野だ。アメリカのグランドキャニオンあたりを想像してもらうのがいいか。

 なぜ夢だと分かるのか?

 さきほど机の下で眠りに付いたのを覚えているのが一つ。もう一つは視界の右下にある4つの『アイコン』と右上にある『メニュー』と書いたガジェットが見える所だ。

 それは先ほどまで作業していたWWのものと同じ。

 だがしかし! デスマーチ中の睡眠時に夢の中でデバッグするのはこれが初めてじゃない。さすがに仕事部屋や自室じゃなく荒野なのかは謎だが……。

 部屋が乾燥でもしてたのか、そんな感じの理由だろう。

 なんとなくメニューを指でタップしてメニュー画面を開いてみる。近未来モノでよくある半透明ウィンドウが視界に表示される。……我ながら想像力が貧困な事だ、間違ってもプランナーやデザイナーには成れないな。

 メニューはタブに分かれ、「INFO」「MAP」「ユニット管理」「ストレージ」「交流」「ログ」「設定」といったいつもの項目に「ステータス」「装備」「魔法」「スキル」といったWWには存在しない欄が増えていた。

 昨夜はFFWのデバッグも並行していたせいで混ざったか。

 まぁ夢に整合性を求めるのは間違っている

 ステータスを見るとレベル1、HP、MP、能力値の各値は全10ポイント。これはボーナスポイントを割り振らない場合の基本ステータス値だったりする。そういえば最後にチェックしたキャラ作成テストの値がこれだった気がする。

 ん? 職種とか賞罰とかFFWのパラメータに存在しない項目があるのは何でだ? 何か混ざったな。
 年齢15歳……潜在心理でもう一回学生生活でもしたいと思っているのか?
「職種:管理職」って、今や一人も部下いませんけどね!
 それにしても「所属:なし」と書かれてるのは転職したい気持ちの表れなのか……。

 実に意味深な内容だ。……ああ休暇が欲しい。

 特殊能力(アビリティ)とかに「ユニット作成」とか「ユニット配置」とかあるのはWWが混ざってるせいだろうけど、「メニュー」はわざわざ特殊能力(アビリティ)欄に書く必要があるのか?
 さらに欄の最後にある「不滅」ってなんだ? 夢って不思議。

 装備はポロシャツにチノパン、スニーカー。さっきの服装じゃん。ストレージはサイフと携帯と黄色い箱が印象的なバランス栄養食が1箱。そういえば寝る前に食おうとしてたな、結局眠気に負けてしまったので机に放置したままだ。

「魔法」や「スキル」は空欄。
 スキルといえばステータス画面にスキルポイント10とあったが割り振るスキルが無いのが悲しい。

「設定」を開いてマップとレーダーを基本表示に追加する。マップは広域の地図と自分のいる位置を表示してくれる。レーダーはマップとほぼ同じだが索敵済みエリアの敵味方中立を問わずユニットを全て色分けした点で表示してくれる。

 レーダーには自分を示す小さな白い点のみ。自分の周囲100mほどが原色で表示されている他は未探査を示すグレーで塗りつぶされている。

「うむ、見える範囲に敵が居ない。暇だ。せめて草原なら寝転んで惰眠を貪るのに」
 ゴツゴツした地面に寝転がる趣味は無い。

 右下の4つのアイコンを何気に見つめる。「全マップ探査」が1つと「流星雨」が3つ。メタボ氏との打ち合わせで適当にでっち上げた初心者救済策。

「全マップ探査」は名前の通りマップ内の全ての範囲が索敵済みになる。また全てのユニットの弱点を初めとする詳細情報の閲覧が可能になる。
 もっともある程度の知識がないと情報が多すぎて活用できないんじゃないかと思うがメタボ氏の強い意向で実装された。

 ためしにスマホみたいに指でタップして実行してみる。
 レーダーが全て索敵済みになり無数の敵が赤い点で表示される。レーダーの倍率を下げて広範囲を映す。
 敵が多すぎてマップの上半分が赤くしか見えない。……敵、多すぎじゃん?

 自軍の「ユニット」は多数を相手にしやすいのを選ばねば!
 寡兵で大軍を撃破するのって燃えるよね!


 ◇


 ……そんなことを考えていた時代がありました。

「ユニット作成」……作成可能ユニットなし。
「ユニット配置」……作成済みユニットなし。

「レベル1のキャラで突撃しろとでもwww」
 さすがは夢。理不尽にも程がある。

 ちらっと右下の「流星雨」アイコンをみる。

 これは「流星雨」で殲滅しろという天の意思では!

「流星雨」は徹夜のハイテンションでパラメータを設定したのでキャンペーンシナリオのラスボスや隠しボス以外なら一撃で倒せるだけの無茶な威力がある。

 初心者には「クリアできないマップはこれ使ってゴリ押ししてね」というメッセージを送りたい。

 押しちゃう?
  >はい
   YES
   ヤルッツェブラッキン

 最後のはなんか違う。
 まだ徹夜ハイが残っているのか、アイコンの一つをタップする。

 ……静寂が痛い。
 すごいのを期待してたのに、何も起こりませんよ?

 ちょっと哀しくて、その場に不貞寝した。ゴツゴツした地面で背中が痛い。
 そして空を向いた視線に、それが目に入ったわけだが……。



 おまたせ。

 ようやく冒頭のシーンに戻るわけだ。

 本名、鈴木一郎。キャラ名、サトゥーの異世界生活はこんな感じで始まった。

はじめて小説を書いてみました。
書くのって難しいですね。








※注意※
 メニュー以外のサトゥーのユニークスキル(特殊能力/アビリティ)は物語終盤付近まで出番はありません。
+注意+
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