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瑞穂の日常

瑞穂の日常『お風呂で団らん』

作者:九条 樹
「瑞穂~」
 お母さんだ、台所からかな?
 勉強中だった私は息抜きも兼ねて部屋を出る。
「どうしたの?」
 お母さんは晩御飯の準備中のようだ。今日はおでんか。
 おでんってご飯のおかずにならないからあんまり好きじゃないんだけどなぁ。
「さっきお父さんから電話があって、帰るの遅くなるんだって」
 ってことは晩御飯が遅くなるってことか。
 時計を見ると4時半。少しお腹空いてきたのに何時になるんだろう?
「風呂沸かしておいたから琢磨と一緒に先に入ってて」
「今から?お父さんそんなに遅くなるの?」
「7時までには帰ってくるって」
「じゃ、ご飯食べてからにするよ」
 せっかくお風呂に入っても、ご飯食べたりして髪に匂いがついたりしたら嫌だし。
「琢磨~、瑞希は琢磨とお風呂入るの嫌なんだって~。琢磨嫌われちゃったね」
 料理をしているお母さんの足元で、ちょろちょろしていた琢磨に向かってとんでもないことを言いだす。
 な、なんてこと言うのよ!
「そんなこと言ってないでしょ。今から入るのが嫌だって言っただけじゃない」
「琢磨、お姉ちゃんやっぱり嫌だって」
 なんでそうなるのよ!
 琢磨を見ると今にも泣きだしそうだ。
 仕方ないのでお風呂に入ることにする。
「琢磨、お姉ちゃんと一緒に入ろうか」
 琢磨の手を取ろうとするとお母さんの足に隠れる。
「みずほ僕のこときらい?」
 瑞穂じゃなくてお姉ちゃんでしょ!って言いたいところだけど、今怒ったらダメよね。
「嫌いなわけないでしょ。お姉ちゃん琢磨と一緒にお風呂入りたいなぁ~」
「ホント?」
 私は琢磨と同じ目線になるように跪き、大きく首を縦に振りながら「本当よ」と言う。
「じゃ、仕方ない。一緒に入ってあげる」
 なんでいきなり上から目線なのよ。
 でもまぁここは素直にお礼を言っておこう。
「ありがとう」
 そう言って琢磨の手をひき脱衣所へ向かう。
 それにしてもお母さんはなんであんな言い方するのよ。
 普通に『ごちゃごちゃ言わずに入りなさい』でいいじゃない。

「琢磨、頭洗ってあげよう」
「今日は頭いい」
「何言ってるの。いいわけないでしょ」
「今日はお母さんが洗わなくていいって言ったもん」
 お母さんがそんなこと言うはずないじゃない。子供ってほんとにすぐばれる嘘をつくよね。
 私も小さい頃は同じだったのかな。
 結局嫌がる琢磨の頭を無理やり洗って二人で湯船に浸かる。
「そうだ!みずほ。僕お鮨が食べたい」
 え?何?いきなり……
「お鮨?」
「お母さんがお鮨食べたいならみずほに頼みなさいって」
 この前のお小遣いを当てにしての事か。
 あれだけ貰ったんだからお鮨くらい別にいいけど。
「琢磨お鮨食べたいの?」
「うん」
「おお、お鮨か、それはいい考えだ。今日の晩御飯はお鮨にしよう」
 え?何?ってお父さん!
「お、お父さんなんで入ってくるのよ!」
「なんだ?入っちゃ悪いのか?俺の家だぞ」
「今私が入ってるじゃない!」
 昔っから平気で入ってくるけど、一体どういう神経してるのかしら。
「お風呂は1人で入らないといけないルールでもあるのか?」
「そういうわけじゃないけど、お父さんは男でしょ」
「何が言いたいか分からん。男と一緒だとダメなのか?」
「当たり前でしょ」
 もうなんなのよ。このおやじは!
「琢磨も男じゃないか、琢磨はいいのか?」
「琢磨は子供だからいいのよ」
「じゃぁ俺も大丈夫だ」
 意味分からないし。
「大丈夫なわけないでしょ。お父さんは大人じゃない」
「瑞穂は俺の子供だ。だから俺が子供の瑞穂と入るのは問題ない」
 なんの屁理屈よ。
「そんな変な理論は通りません!」
「瑞穂はわがままだなぁ」
 っていうか今何時?帰ってくるの早すぎじゃない?
「きゃ、なんで湯船に浸かってくるのよ、狭いじゃない」
「じゃ瑞穂が出ればいいじゃないか」
「嫌よ、私が先に入ってたんだからお父さんが出て行ってよ」
「もう、うるさいわね。なに喧嘩してるの!お隣まで聞こえるわよ」
 お母さんだ。あまりに大声で言い合いしてるからか、脱衣所まできたんだ。
「違うのお父さんがいきなり入ってきて…… 」
 ってお母さん?何してるの?
 もしかして服脱いでませんか?
「もうみんな喧嘩はやめなさい」
 風呂のドアを開けながらお母さんが私とおやじを諌める。
「おう美佐子も入ってきたか」
「お母さん、なんで入ってくるのよ」
「え?入っちゃだめなの?」
「私が先に入ってるじゃない!」
「なによ、ここのお風呂は1人しか入っちゃいけないって決まりがあったの?」
 ダメだ、この夫婦と話してたら頭がおかしくなる。
「ちょっと狭いわね。お父さんもうちょっとそっちに寄ってよ」
 こんな狭い湯船に4人も入れるわけないじゃない。
 たまらず私が湯船から出る。
「お、美佐子ここ空いたぞ。ここに座れ」
 電車の席が空いたわけじゃないのよ!なにほのぼのと言ってるのよ。
 仕方なく私は後でもう一回入ることにし、琢磨を残して風呂を出ようとした。
「おい!瑞穂待て」
「な、なによ!」
「怒ってるのか?」
 当たり前でしょ。
「別に」
「ならいいが、鮨食べに行くから着替えておけよ」
 まさかこんなことしておいて私におごらせるつもりじゃないでしょうね。
「今からお鮨食べに行くの?今日はおでんじゃなかったの?」
 そう言ってお母さんの方を見る。
「そのつもりだったけど、瑞穂がお鮨おごってくれるって言うからお鮨を食べに…」
 お母さんの最後の言葉が終わる前にドアを思いっきり閉めてやった。

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