朝。Jrは、目が覚めた。ベッドから這い出すとカーテンをそっと開けてみたよ。明るい日差し。これから新しい一日が始まろうとしている。
このセカイは、色で満ち溢れている。甘いキャンディーのピンク色。大好きなチョコレートの茶色。お絵描きする時は赤いけれど、空にある太陽は黄色く見える。黄色いのは、Jrの傘。ママのエプロンは薄い水色で、パパの車は青いんだよ。そしてJrが、今着ている服はみどり色なんだ。Jrは、部屋の中を見渡した。パパもママもまだグーグー寝ているじゃないか。つまらない。Jrは、台所にあったバナナマフィンをむしゃむしゃと食べごくりとミルクを飲むと、家の外に出てみたよ。ぴんと耳を立て、鼻をひくひくと動かしてあたりを見回すと、向こうから新聞配達のナイトピグが自転車をちりりんと鳴らしながらやってくるのが見えた。
「やぁ。おはよう」
そう言うとナイトピグは、Jrの家のポストに新聞を突っ込んだんだ。
「おはよう」
Jrは、元気良く返事をしたよ。ナイトピグはすぐに隣の家に行って新聞を突っ込んだ。Jrは、その後姿を追いかけたよ。ナイトピグはどんどん新聞を配っていく。
「なんだい? 坊や」
「どうして全部の家に新聞をあげないの」
「そりゃ新聞を取っていない家もあるからだよ」
それだけ言うとナイトピグは行ってしまったんだよ。なるほど……とJrは、納得した。 間もなくJrの目にジャージ姿のばか先輩が飛び込んできた。まだ春の初めで寒いのにばか先輩ときたら、真夏みたいな格好なんだ。
「何してるの?」
「ははは。練習だよ」
「練習?」
「僕は、陸上部の選手なんだ」
それだけ言うと、ばか先輩はスニーカーの音を響かせて去っていった。陸上の選手か……。きっと強いんだろうなってJrは思ったよ。Jrの鼻先になんとも言えぬよい香りが漂ってきた。Jrは、くんくんとにおいに誘われるように歩いていったよ。辿り着いたのは、ふくろうのパン屋さんだ。丁度、パンが焼きあがったところらしい。
「やぁ。坊や。早起きだね」
「おはよう」
パン屋の主人は、引っ込むと奥から焼きあがったパンを運んで来た。一番乗りのお客さんがやって来て、焼きたてのパンを買っていく。Jrは、主人の働く様子をじっと観察していたよ。
「そうだ。坊やにこれをあげよう。失敗作だけどね」
主人がへんてこな形に焼けてしまったくるみのパンをくれたんだ。
「今度は、ママと来てね」
「ありがとう」
お店を出ると、Jrは早速パンにかぶりついた。焼きたてのパンは、熱々で口の中一杯にくるみの香りが広がってあっと言う間にJrは食べ終えてしまったよ。
「だめじゃん!」
突然、Jrの後ろで急に大きな声がした。振り返ると、だめちゃんが仁王立ちになっているじゃないか。
「立ち食いは、だめなのよ。お行儀が悪いでしょ!」
Jrは、怖くてうわぁぁぁんって泣き出してしまったんだよ。
「坊や、泣いちゃだめっ!」
大きな声で言われると、よけいに怖い。Jrは洋服の袖で目をこすりながら、だめちゃんを見上げた。そしたらだめちゃん。
「あああ、あたしったら小さな子を泣かせてだめだめーっ!」
自分の頭を小突いているじゃないか。今度は、自分に対して怒っているみたい。
「坊や。びっくりさせてごめんね」
だめちゃんは言ったさ。
「ううん。ボクが悪いんだよ」
だめちゃんとJrの上に弾むような声が降ってきたよ。
「だめちゃん。おはようー」
わる子ちゃんが、道の向こうで手を振っている。
「わる子ちゃん。おはようー」
だめ子は、手を振り返すとJrを見て言った。
「じゃぁね。坊や。早くママのところに帰らなきゃ、だめだよ」
そうしてだめちゃんは、わる子ちゃんと一緒に学校に行ってしまったんだ。Jrは、一緒に学校までついて行きたかったけど、だめちゃんに怒られると怖いのでやめたんだよ。 Jrが、だめちゃんと別れて歩き始めると、またまたばか先輩が軽やかに通り過ぎて行った。それから、さっき新聞配達をしていたナイトピグが、かごが空っぽになった自転車を走らせていく。街が慌しく動き出したとJrは感じたよ。公園の近くを通ると、旅ハムがテントを丸めて旅支度をしているところだった。旅ハムは、Jrに気づくと話しかけてきたよ。
「君は、マーガレット通りのお家のジュニアピグちゃんだね」
「ボクの事。知ってるの?」
「うん。昨日はあのへんを回っていたからね」
そう言えば、この旅ハムさんに一度会ったような気がする。昨日、ママのところに来ていたお客さんに違いない。
「もう冒険はすんだかい」
Jrは、旅ハムをじっと見つめたよ。旅ハムはにっこりと微笑んでいる。
「ボクの事を見ていたの?」
旅ハムは、いいやと首を振った。
「起きて坊やがいないと、ママが心配すると思うよ。そろそろおうちに帰ろう。そこまで一緒に行ってあげるから」
Jrは、素直にうんとうなずいたんだ。これからも冒険の機会は、たくさんあるんだからね。
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