9-早朝の問い
──不思議な夢をみた。
覚えのない道を歩いていたのは、小学生ではない自分。そして着いたのは、葛西家と同じような大きさの洋館。ただし、手入れが十分ではない家は少々くたびれている。
そして、その間中、誰かの声が自分を呼んでいる。
──…! ──…ち!
その洋館の門につけられていた、表札は───。
『工藤新一という名前に、心当たりある?』
あの少女の言葉が、脳裏によみがえる。
「……誰なんだよ」
自分の名前は、『江戸川コナン』のはず。なのになぜ、『工藤』と刻まれた表札の家に帰っていたのか。…あの声は誰のもので、なんと呼んでいたのか。
(工藤新一って、コナンの何なんだよ!?)
やっと…本当の自分を見つけたと思ったのに。
足を動かしているうちに、階下に降りていた。目の前には『父親』。
「おや早いな。どうかしたか?」
「……聞いておきたいことがあって、さ」
首をかしげる昌好。
「──本物の英明君は、どうして亡くなったの?」
目をみはる昌好に構わず、彼は答えを待った。……否、答えられるかを、待った。
なぜ自分が驚いたのかさえ、昌好にはわからなかった。
この子に、自分たちの嘘が見抜かれていたから? ──いや、違う。
ただ一言で済むはずの答えは、なぜか喉から出てこなくて。…胸が苦しい。急激に喉がかわく。
彼はしばらく待っていたが、やがてちいさく息をつくと、背を向けた。
「………っ!」
「また、いずれ聞くと思う。その時は、ちゃんと教えてね」
振り返った彼の顔には、怒りも困惑もなく。少しだけ憐憫が混じっているものの、「困ったもんだなぁ」といった顔だった。
例えるなら、微笑ましい夫婦ゲンカに苦笑しているような。
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