7-迷路の中で
「わー、ほんとにそっくりだね!!」
「いや、コナン君より少し子供っぽい気がしますよ」
「生意気でもねーぞ!」
少々…いやかなり興奮気味な声は、おなじみ少年探偵団のもの。もちろん、ここには哀と阿笠博士の姿もあった。
蘭の連絡で葛西家を訪れたこの5人。行方不明のコナンにそっくりの子がいる、という話に興味をもって会いにきてみたのだが、今や完全に彼で遊んでいた。
表向きの理由はそれ。実の所、蘭としては期待することがあった。彼らと会うことで、少しでも記憶が戻れば……と思ったのだ。最悪何の変化もなくても、この1週間『両親』以外にほとんど会っていないらしい彼の、気分転換になればと思った。
茂子夫人は別段嫌な顔をするでもなく…というか、幼い客人たちをとても気に入ったらしい。英明に「じゃあ、遊んでもらってなさい」というと、キッチンから盆を持ってきた。
「さぁさ、ジュースよ。お菓子が少ししかなくて、ごめんなさいね」
クッキーとオレンジジュースを持ってきた茂子に、子供たちは一斉にテーブルへと集まった。
大喜びでクッキーを食べはじめた子供達を、おかしそうに見る茂子。彼女を横目に見ながら、哀はさりげなく英明に近寄った。
英明はといえば、随分ハイテンションな探偵団に、半ば気圧されている。
『多分、コナン君に間違いないと思うの。でも、記憶をなくしてるみたいで……』
昨夜、電話で言われた蘭の言葉が頭をよぎる。
「……ねぇ」
声をひそめる哀。同時に、目も少し細めた。
「本当に、何も覚えてないの?」
「何も……?」
ポカンとする英明。しかし、やがて何か思いついたらしく、鋭く目をすがめた。
その顔は、コナンそのもので。哀は一瞬、本気で記憶が戻ったのかと思った。……次の台詞で我に返ったが。
「……君は知ってるんだね。オレが──いや、『コナン』が何者なのか」
「何者?」
「『コナン』は、ただの小学生じゃない。…そうだろ?」
目をみはる哀に、彼は少し苦しそうに、眉間に皺をよせた。
……彼が何より不可解に思ったのは、なぜか自分を息子にしたがる、あの夫婦の思惑ではなく───自分自身だった。
『両親』の話や態度に不信感を抱いたとき、『自分がいた痕跡』を確かめようととった方法さえ、今思えば奇妙だ。──小学生の発想じゃない。
この家の中の状況や夫婦の性格を見通し、わずか3日ほどで『葛西英明』を演じられるようになったこの適応力も。
そして1番不気味なのは、自分が誰かもわからないまま、事実を冷静に分析し、その上でこの家に居続けていられる、自分の神経と精神力。
「あの蘭っていう人もあの子たちも、『コナン』をただの子供だと思ってるみたいだから、黙ってた。けど、君は知ってるんだろ?『コナン』が、本当は何者なのか」 |