3-登場した少年
『葛西』という表札を掲げたその家は、割と大きな洋館だった。
建物と、夫人の趣味だろう、園芸スペースをぐるりと取り囲んだ柵は鉄製。その柵に枝をかぶせる桜は、さほど大きくはないが、しっかりと季節感を漂わせていた。反対側に茂るツツジも、手入れが行き届いている様子だった。
その柵に囲まれた建物は、全体的にクリーム色。2階建ての壁には大きすぎない窓がならんでいた。
そして、インターホンのすぐそばに張られたシールは、警備会社のもの。おそらく、柵のあちこちにセンサーがあるのだろうと思われた。
「こんにちは、刑事さん!」
応対に出た夫人は、人当たりのよさそうな中年の女性だった。
真っ黒に近い短い髪は、今時珍しく、ほとんど染めていないようだ。目鼻立ちはすっきりとして、顔の皺もさほど気にならず、十分に美人といえる容貌だった。
「うちに何か?あの空き巣は、もう捕まったと聞きましたけど…」
怪訝な顔で首をかしげる夫人に、高木刑事は苦笑した。
「ええ、事件は無事解決しました。今日うかがったのは、ここの男の子のことで」
「男の子?……ああ、英明のことかしら?」
夫人がまた首をかしげると、その名前に反応したのか、軽い足音が近づいてきた。そして、玄関に出てきたのは───。
「コナン君!」
思わず声をあげる蘭。一緒にいた小五郎も高木刑事も、息をのんだ。
顔から背格好から、コナンそっくりな少年。違うのは、眼鏡をかけていないことだけだ。
しかし少年は、蘭の声に反応せず、夫人に目を向けた。
「誰?この人たち……」
また息をのむ3人をよそに、夫人も困ったように高木刑事を見た。
「あ、ごめんね。君、英明君っていうのかい?ちょっと、話したいんだけど」
1番に我に返った高木刑事が声をかける。少年は素直にうなずいて笑顔でいった。
「じゃあ、ぼく飲み物持ってくるね!みんな紅茶でいい?」
前半は夫人に、後半は蘭たちに言うと、客人がうなずいたのを確かめ、少年はどこへか消えた。
「自己紹介が遅れましたね。私、葛西茂子といいます」
頭を下げる夫人にあわててふたりが自己紹介を返すと、高木刑事がまず疑問を口にした。
「ご主人はお仕事ですか?」
「ええ、昼間はいつも一人ですわ。だから時間をもてあまして、花ばかり増えてしまうんです」
そういって苦笑する茂子の奥から、英明がティーカップを盆に乗せてきた。
「あ、手伝うわ」
「ありがとう」
習慣的に手を出す蘭に、英明は笑顔で盆を差し出した。
──え……?
手元に感じた違和感に目を丸くする蘭に気付かないかのように、英明は茂子の隣に座った。
「お客さんって珍しいから、嬉しいでしょ?」
「そうね。ちゃんとお茶持ってきて、えらいわ」
「………」
頭をなでられる英明を見ながら、蘭はそっとポケットに手を入れた。 |