11-出てきた名前
蘭は庭の園芸スペースに出た。それに気付いた茂子も部屋を出て、ふたり並んだ。
「わぁ、すごい綺麗に咲いてますね。手入れ大変そうですけど」
「そうでもないわ。子育ての片手間だもの」
「そうですね。英明君、大人しそうな子ですしね」
「そうそう。言うことはちゃんと聞いてくれるから。この子たちも育てやすいわ」
そういって花びらをなでる茂子を見つつ、蘭は内心のちょっとした落胆を隠した。
(んー、だめか。ひっかかってくれない)
コナンは本来、『大人しい子』とは程遠い。そこをちょっと突いてみたのだが、どうやら見事に『英明』を演じるコナンに、茂子は本物の英明を完全にダブらせているらしい。
『あの人、思い込んでいるんじゃないかしら。江戸川君を、本当の息子だと』
昨夜の電話での、哀の言葉を思い出す。
「でも、やっぱり女の子はいいわ。花に興味をもつのは、女ばかりだものね」
「そうですか?」
適当に相槌をうちながら、……蘭は決意していた。
(──だめよ、それじゃ。誰にとっても良くない。何も残らないもの)
部屋に戻ってきた蘭に、子供たちはなかなか気付かなかった。ただ、英明だけが近寄ってきた。
「…ねぇ、聞いていい?」
「何?……また何か相談?」
後半部分、無意識に声をひそめる蘭に、彼は首をふった後、数拍黙った。そして。
「…好きな人っている?」
目を点にする蘭。そして質問の意味を理解すると。
「…っえ!?い、いないわよ?別に!」
「……そっか」
赤くなって否定する様子は、説得力皆無。彼は当たり前のように「いるんだ」と受け取った。
「なになに?どうしたの?」
「蘭さん、顔赤いですけど、どうしたんですか?」
ゲームに熱中していた探偵団が寄ってきた。さすがに蘭の慌てようには気付いたらしい。
「あなたが赤くなるということは、あの人関連かしら?」
「えっ…べ、別に?」
いつのまにか寄ってきていた哀の推測に、ますます慌てる蘭。傍から見ているとかなり見物だ。
「ああ、新一お兄さん?」
歩美が出した名前に、英明は少し驚いたように振り向いた。
「新一お兄さん?それ誰?」
「蘭さんの恋人さんですよ」
「園子ねーちゃんは、ダンナだっていってたぞ!」
「違うってば!!」
今度こそ真っ赤になった蘭に、英明はぽつりとつぶやいた。
「…じゃあ、言わないほうがいいか」 |