これは、ある冬の日の切ないラブストーリー。
偶然、見つけたビデオで、僕と君は出会ってしまったんだ―――
今から、五年前。僕が二十歳のことだった。
会社帰り、粉雪がハラハラと降り続ける中、僕は偶然レンタルビデオ店へ行った。
そして、いつもは見ない感動物の方へと足が動く。
その中から、棚のすみっこにあったビデオに目が止まった。
『孤独な少女』―――
何とも言えない題名だ。
パッケージは、ただの真っ白な背景に赤い字で『孤独な少女』。
いつもなら、何とも思わない僕だがその日は何故だか心が躍らされる。
とても興味深い。
その作品を、レジへ持っていくと店員が困った顔をし
「これは、うちの店の物じゃないですね……。誰かが置いていってしまったのでしょうか? 持ちかえって、結構ですよ」と軽々しく言う店員の言葉に、僕は家へ持ちかえった。
あるアパートの一室で、一人暮らし。
家へ帰っても誰かがいるわけでもない。
そして、僕はそのビデオを手に取り、ビデオデッキの中へと差し込み、テレビの電源を入れた。
すると、何と少女がテレビの画面の中から出てきたのだ。
僕は、いきなりの出来事に頭が混乱し、部屋の端の方へといく。
そしたら、少女は礼儀正しく礼をし
「イチゴと言います。少しの間ですが、よろしくお願いします」と丁寧に挨拶してきた。
なので、僕はテレビから出てきた少女 イチゴに
「貴方は、いったい何なのですか? 」と恐る恐る聞いた。
すると、イチゴはシュンとし
「ごめんなさい!そこは言うことが出来ないんです」と困った顔をする。
よく見ると、イチゴは幼い雰囲気で目がクリクリしていて可愛く、髪がサラサラのロングで少し茶色だ。
そんなイチゴを見て、僕の胸はドキドキした。
そして
「何かわかんないけど、よろしくね!僕のことは、澪って呼んで」と自己紹介をした。
すると、イチゴは僕に微笑み
「澪ね!よろしく!」とさっきとは、違う感じで言った。
僕は、そんなイチゴをいつの間にか好きになってしまった。
今日は、もう夜遅いので寝ることにした。
僕のベッドの下にお客様用の布団を敷いてあげる。
そして、僕は寝る前に
「おやすみ!」と言い、目を瞑った。
イチゴは、なかなか寝つけないようで
「ウーン……」と寝返りをうったり、可愛かった。
朝になった。
僕は、いい匂いがして目が覚めた。
ふと、横に目をやるとイチゴが朝ご飯を作っていてくれていた。
そして、僕が目覚めたのに気づき
「澪、おはよう!朝ご飯、作ったよ」と言い、まだ寝ぼけ半分の僕を無理矢理、席へとつかせ
「食べて食べて!」と言う。
味噌汁を口にすると、とても美味しかった。
目玉焼き、ベーコン焼き、ソーセージ……。
どれもかもが、美味しかった。
今日は土曜日―――
仕事がなかった。
なので、イチゴを連れて近くの空き地へ行った。
そして
「かまくら作ろう!」と言い、イチゴと一緒に作った。
途中で手が冷たくなり、霜焼けになりそうだった。
でも、イチゴのため……。イチゴの喜ぶ顔が見たいから……。と思い、一生懸命作った。
作り始めて五時間―――
ちょうど二人くらいは入れるかまくらが完成した。
イチゴは、途中で寒くなり車で待っていた。
僕は冷たくなった手を擦りながら
「イチゴ。完成したよ。一緒に入ろう!」と言い、イチゴの手を引き、かまくらの中へと入った。
かまくらの中は、外とは違い以外と温かかった。
そして、僕はイチゴに告白しようと思った。
横に座っているイチゴが、あまりにも可愛く……。そして、愛しく感じたから。
僕は、勢いよくイチゴに向かって
「好きです!いきなりでビックリかもしれないけど、一目惚れなんです!付き合ってください!」と一気に言いたいことを言った。
すると、今まで笑顔だったイチゴから笑顔が消え
「ごめんなさい……」そう一言だけ呟いた。
でも、僕は何故だか納得がいかず
「僕の何が悪いの? 」とイチゴに問いかけた。
イチゴは、ポロポロと涙をこぼし
「澪のこと嫌いなわけじゃないの……。好きなの。でも、イチゴはビデオの中での人間だから」と寂しく答えた。
僕は、その言葉を信じたくなかった。
だって、イチゴは僕のこと好きって言ってくれたし、僕も好きだから……。
つまり両想い。
両想いなのに、実らない恋はすごく悲しい。
そして、僕は疑問だったことを打ち明けた。
「イチゴは、いつまでここにいるの? 」
すると、イチゴの目から次々と涙が溢れてき
「明日の夜十一時です……。それまでが、タイムリミットです……」と言い、シュンとしてしまった。
そんなに早くに別れるのだなんて、思ってもいなかった僕は急に悲しくなり、かまくらから飛び出してしまった。
あとからは
「澪、ちょっと待ってよ!澪」と追いかけてくるイチゴの声が聞こえる。
でも、その声もいつしか聞こえなくなってしまった。
僕は、急に自分のしたことがどんなに辛かったのか。そして、イチゴにとって自分のしたことは間違っていないのか。
そう考えてしまう。
そして、僕は元来た道を足早で戻った。
すでに、十時三十分だった。
戻るにしても、イチゴと一緒にいれる時間はせいぜい二四時間だ……。
今さらだが、自分のしたことに後悔する。
三十分程で、さっきイチゴと作ったかまくらの前へ着いた。
中を覗くと、イチゴの姿があった。
「イチゴ」と呼ぶと、イチゴは
「澪〜!」と言い、僕の胸へと飛び込んできた。
そのイチゴの体は、とても冷えきっていて冷たかった。
けど、僕の心にはしっかりイチゴからのぬくもりで温まっていた。
そして、家へと戻った。
一時だ……。タイムリミットまで、二二時間―――
寝る時間までもが、おしく寝たくなかったが朝ご飯を作るために早く起きたせいかイチゴが眠たそうにしていたので、寝ることにした。
二人、一緒にベッドで寝た。
寝る前に、僕はイチゴに
「おやすみ」と軽くほっぺにキスをし、目を瞑った。
小鳥達のさえずりで目が覚めた。
時計を見ると、九時を回っていた。タイムリミットまで一五時間―――
あと少ししかない。
そして、まだ眠っているイチゴを無理矢理起こし
「あと、一五時間しかないよ!」と言った。
すると、イチゴの体がビクッと反応し
「えっ? 本当? 早くしなきゃ」と言い、着替え始めた。
イチゴに
「どこに行きたい? 」と聞くと
「街に行ってショッピングしたい!」と言うので連れていった。
あるアクセサリーショップの前で、イチゴが立ち止まって綺麗なハート型のネックレスを眺めていた。
僕は、そのネックレスをイチゴにプレゼントしよう。と思い、手に取り
「プレゼント用にしてください」と言い、買った。
そしたら、イチゴが
「それ誰にあげるの? 彼女? 」と聞いてきたので
「イチゴにだよ」と言い、手渡した。
すると、イチゴは
「ホント!ワーイ!」と喜んでくれた。
イチゴの笑った顔が見れて嬉しい。
だんだんと日が沈み、イチゴとの時間が刻々と迫っている。
時計を見ると、八時だ。タイムリミットまで三時間しかない。
そして、イチゴに
「早く乗って!」と言い、車へ乗させた。
一時間くらい経って、山に着いた。
イチゴに満天に広がる夜空を見せたかったのだ。
僕との思い出の最後に、いい思い出にしてほしかったから―――
イチゴは、やはり僕の予想通りに
「綺麗だね〜」と言い、喜んでくれた。
僕は、思い出にとイチゴとツーショットを撮ることにした。
でも、イチゴは
「きっと現像した時には、イチゴ写ってないと思うけどいいの? 」と最後まで僕のことを心配してくれている。
僕は
「大丈夫だよ。イチゴとこの夜空を見たってことを、一生忘れたくないから。撮ろう」と言って、ツーショットを撮った。
いつしか時間は、過ぎていき残りのタイムリミット五分となってしまった。
最後にイチゴのぬくもりがほしくて
「ギュッとさせて……」と言い、最後の五分間はずっと抱きしめていた。
そして、もう残り時間がないと言う時、イチゴが
「私を愛してくれてありがとう。澪とは、会えなくなっちゃうけどイチゴは生きてるから。忘れないでね。じゃあね……」と僕の唇に軽くキスをし、イチゴは僕の目の前から消えていってしまった―――
それから、五年後。
今でも、あの日のことは忘れられない。
あの後、写真を現像しに行ったが、やはりイチゴの姿はなかった。
そして、イチゴがいなくなり一人寂しく家へ帰ると、イチゴが出てきたビデオも消えてなくなっていた。
でも、僕は今でもイチゴのことを愛しています。
どこかで生きてるから……。
そして、また会えるのを信じているから――― |