2話 「2200年の歳月」
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改稿作業完了
部下には去ってもらい、俺は先程負かした少女に二人きりの話の場を設けさせていた。目の前に座っている少女からは強い警戒心や敵対意識が強く感じられる。
まぁ、寧ろウェルカムで来られたら俺の方が警戒するけどな……。まぁ、どれも直感的な感じなのだが……。
自慢ではないが直感を読み違えた事は今までなかった。ちなみに魔王は俺の背中で涎を垂らしながら熟睡していた。
傍から見れば銀髪幼女にしか見えないが俺より年上であることは忘れないでほしい。騙されてはいけない、彼女はロリババアだ。
「警戒してる?いいわよ、解いてもらってあなた底が知れないし、勝てる気がしないわ……」
「警戒?解くのはお前だろ?俺はお前に警戒なんてしてねぇーよ、いつでも勝てる奴にわざわざ警戒なんてしてられるか」
俺は少女を煽るような口調で見下す。こうする事で怒りを覚えその怒りに吊られる事があるので会話を操作しやすくなる。
「ええ、私が悪かったわ。そりゃあ蹴られたんだから警戒するわよ」
「と、いいつつ警戒を解いたつもりか?その握りしめた拳が敵対の現れだろ?」
「あなたは一体私に何を求めているの?あれほどの脅しを掛けたのだからよっぽどの事を聞く気なんでしょ?私の命を賭けても王国の情勢は教えないわよ」
失神した兵士の剣を拾ってそれを首に当てながら俺に着いて来い、と言うのは脅しなのか?交渉で一歩先を歩く必然の手立てだと思うのだが?
「まぁいいや。今から俺が話すことは公開してもいいし、男の虚言だと捉えてもいい。どう思うかはお前の自由だ」
「裏世界の人間ではない、というが実は裏世界の人間なんですとか?」
「そんなレベルじゃないぜサプライズレベルを言うならな……、俺とコイツってさ数時間前まで封印されてたんだわ」
俺は少女の目を見ながら偽りなく話す。ただ何故封印されたのか、それだけは隠蔽しながら話を続けなければならない。魔王と勇者である事を悟られてはいけない。特に魔王である事だけは何としても隠さないといけない。
魔王をウェルカムする人間なんてどの世界にも存在しないだろう。
まぁ、それはこいつが信じることを前提にしているがな……。信じる確率は三割未満。どう信用させようか……。こいつはこの国ではいい役柄を持っているようだし信頼は欲しいところだ。そして何よりも………。
「教えて欲しいんだよ、今の世界を」
「待って!!どうして封印を!?」
まぁ、聞かれるよな。ここは無難に。
「罪を犯した」
「なるほど……」
案外チョロイなおい!?信じる確立七割に向上。
「なら…えっと……今は何年?」
「聖書歴3367年」
「!?」
「なんだよまぁそりゃあ100年くらいは俺だって覚悟してるぜ?少なくとも俺を知ってる人間はいないだろうけどさ……」
「いや……今はもう年号が切り替わってるわよ?………聖書歴というのは767年前までの呼び名で……それを知ってる人間は学校で歴史を選択した人だけってレベルよ………」
「は?」
767年前だと?確かに町並みは大きく変わっているし、見たことのない物体が浮いたりしてるが……。
「今は新・聖書歴1500年ちょっきしよ。つまり君たちのいた世界から換算で2200年時が流れている事になるけど……」
常にフル回転している俺の思考が始めて止まった瞬間である。
俺の前に立つ少女の名前はアリスと呼ばれている少女でこの国、国名『トルディアナ』。そのトルディアナの王国第十二部隊の第三部隊部隊長を務めているらしい。
何より驚いたのはこの後のアリスの言葉だった。
「人類は魔物を掃討するが後に現れた人間の混成生物魔獣により領地を15%までに奪われ、今ではこの国で暮らしている人間が9割の人類だと言われている。魔獣はこの国に張り巡らされた結界魔法を未だ突破できないでいるが時間の問題だと言われている」
「なんだよ、面白いくらい明確な人類滅亡の危機じゃねぇーか」
「二年前から精鋭で構成された部隊が魔獣から領地を奪還しようとしているが全て失敗に終わっているわ。帰還者は今まで0」
「自ら数を減らしてるじゃん」
「魔獣の討伐は戦果を問わずして莫大な富が与えられるのよ」
「つまりこの国の外で生きて帰ってくるのは至難の業と」
「そうだ」
「だけど、この国以外で暮らしている人間もいると?
「一応、そう言われてるけどこの城付近の領地が13%だからね…」
でかっ!
「というか、アリス」
「?」
「一般人が外に出る事はできるのか?」
「それは不可能よ。王国から認められた精鋭の兵士だけが……」
「おい起きろ……」
俺は背中で眠る魔王に話しかけるがここで困ったことが生じる。
コイツの名前決めないとな……。魔王って呼ぶのは流石にきつい。
まさに人類の外敵だ。裏世界の人間って奴よりやばいかもしれない。
「おい魔王起きろ。それろお前の名前なんて言うの?」
俺は小声で魔王にそう聞くと、魔王はすぐに起きて単調的に答える。
「名前はない。私は魔王。唯一無二の魔王」
「めんどくせぇーな、お前今日から夜な。目が漆黒色だから」
「わかった」
いいのかそれで。
「夜、俺は決めたぜ」
「何を?」
まぁ、仕切り直しは大切だわな。
「おい、アリス。俺を王国の騎士団って奴にいれろ」
「なんだと?いや、確かにトウマほどの力があれば試験に受かれると思うが」
「試験?」
「ああ、毎四季行われている国民兵士検定だ。それが確か明後日行われるはずだ」
「へぇ、そりゃあいい時期に覚醒めたぜ。アリス、俺が話したことはお前の好きにしていいぜ。関わらせて悪かったな」
「あっ、あぁ」
「兵士になったらまた会おうぜ」
俺は魔王を背負ったままその場を後にした。
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