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反省



 復活したアーリアと店を回り、目星を付けてからは他愛ない会話をしながら待ち合わせ場所である闘技場へと向かった。
 他愛ない会話…会話と一口に言ってはいるが、その中で彼女が心此処にあらずという状態が何度も起きたので生返事や会話が噛み合わない等々、色々と苦労があったが割愛しておくとしよう。
 紆余曲折あったが目的地に着けばアルス、ユニの姿があった。

「おぉ~い! こっちこっちー」
「アーリア~、エミヤさーん」

 どうやら早い段階で自分達を待っているという状況だったよう

「つか、案外お早い合流で~。いやはや何処かでシッポリしてるかと思ったのにぃーん☆」

 こちらを見やりながら何を思ったか、ユニが自分の身をその手に抱いて何やらクネクネと身悶え始め、

「し、しししぼっぽ…シッポリなんかするわけないでしょぉおっ!」
「ぎゃぁああっまたアンコ出るアンコ出るぅううっ!?」

 宿屋の再現…思わず感心してしまう程の俊敏さで接近したアーリアによる、アイアンクローで絞られるユニ。
 とりあえず、悲鳴を上げるのを眉間を押さえながら聞き流す…どうにも、通りを行く傍目からはさぞかし、大変賑やかな面々だと捉えられている事だろうな。

「エミヤさん、そちらの方はどうでしたか?」

 そんな穏やか? な事を考えているとアルスが訊ねてきた。
 彼女もこの手の状況を流すのも少々手慣れてきた感がある…まぁ、良い傾向、だろうと思う。

「目処は付けてきた。とりあえず、二人が落ち着いたところで向かおうと思ってはいるんだが…」

 アルスにそう答えながら、二人の方を見やってみるが、

「もぉお…大袈裟よ、ユニ。まだ半分も力入れてないのに☆」
「のぉおお…っ!!」

 これではどれくらいで落ち着くかは判らんな。

「あははっ…ユニもどうなるか分かってるのにやるんですよねー」

 そう、楽しげに笑う。
 その笑みは年相応のあどけなさが見えた。

「…? どうかしましたか、エミヤさん?」

 それを眺めているとアルスは小首を傾ぎ、こちらを見やってきた。
 その姿が…

「…いや、」

 摩耗した中でも未だ色褪せない、


"…? 士郎、どうかされたのですか?"


 あの戦いの中に確かに在った、

「何でもないさ」

 数少ない、

"「? そうですか」"

 その穏やかな日常で"彼女"が見せたそれと重なっ

「ってぁああっ!? アーリアぁっ、ユニがだらーんってなってるからそれ以上だめぇえっ!!」

 こちらを見やっていたアルスの視線がふと逸れた瞬間、ギョッとしたかと思えばそのままアーリア達の方へと走り出すのを見送る。
 その後ろ姿から視線を外すと徐に中空を見やり、目蓋を閉じて

「…何を考えてる。未熟者、女々しいぞ戯けめ」

 そんな自分を一通り罵った。

「…"視"たのは軽率だったか」

 ルイーダの宿で起き抜けに彼女の魂を"視"た、あの時の自分を滅したい衝動に駆られる。が、それはもう後の祭りでしかなく過去は変えられない。

「はぁ…」

 久しく着きもしなかった溜め息を吐き、目蓋を開くと…

「あ、ああ危うく何か、お花畑の向こうでうちに手を振ってる人達んトコに行くところだったよ!」

「良かった、回復が間に合って…アーリア、今回はちょっとヒドいよ?」
「何でよ、ユニが悪い! わたしは悪くない!」

「でも、本当に《ホイミ》必要だったんだからね?」
「そーだそーだぁ」

「うっ……う、うぅーっ…わたし悪くないもんっ! 元はと言えば言われる状況作ったアルスが悪い、ユニが悪い!!」

「えぇっ? ユニは兎も角、わたしが何で悪くなるのっ?!」
「そーだそー…あるぇー? 何でうちだけが悪者扱いになるのさ。アルス? アルスだって、それいいかもって言ったよね? 言ったじゃんかっ!!」

「いい"かも"ってちゃんと言った!」

「…」

「言ってんじゃん!」
「言ってない!」

「…クッ」

「「…っ?!」」

「そう、そうなの……クッククッ」

「…あ、あーりあ?」

「クククッ」

「…あーりあさ~ん?」

「そうなの、そうなのね……心の準備が出来てなくてあたふたする羽目になったのは結局…クッ、クックククックハッ」

「「ビクッ!」」

「…あ~ る~ す~…」

「ひっ」

「ゆ~ に~…?」

「ひっ、ひいぃいいー!? だ、だだだから、"かも"だよ。"かも"って言ったっ、断定してない! わたし無実!!」
「ちょっ、こらっうちに"この"アーリア押し付けるなぁあっ一緒に仕置きされなさいってのぉお!!」

 いつの間にやらアルスも加えた三つ巴の状況と相成りそうな言い争いを止めるべく、その歩を進める…デフォルメされた虎のストラップが柄に付いた竹刀をその片手に投影して。









「うぅ…」

 ひりひりする頭を撫でつけながら、

「さて…少しは頭が冷えたかな?」

 木剣とは違う、何だか木のような木とは違うような? そんな節くれだった剣を手に腕を組むエミヤさんの前でわたし達三人は座らされてます…何か、足揃えて膝折りに!

「この座り方は道に直は痛いです」

 履物の布越しに道の砂利が足に当たって地味に痛い。

「これは"正座"と言う。格式ばった所での礼儀作法の一つでもある。が、主に反省させる時に使われるモノでもある」

 は、反省でですか?

「ナルホド。た、確かに…何だかこう、身に積まされる感、があります…?」

 闘技場の出入り口の真ん前で往来の脇なのも合わさってるし、道行く人がチラチラ見てくるからもう、色々とキツいですよっ。
 アーリアなんか座らされて早々、かなり辛いみたいでずっとプルプルしてるし、

「あの~…何で、うちだけ更に膝の上に買った荷物?」

 ユニなんか道具で買った物を抱えさせられてて、ヒリヒリする頭を撫でつけられないという状態…聖水9個とかそこそこ入ってたよね、アレ。

「今回の主犯だからな」

「……エミヤんがその特殊な嗜好を嫌がるうちに無理矢理押し付けて何か悦に入ってる件につい」
「ほう…これはこれは。まだまだ、お灸の一つをご所望なのかね?」

 何か途轍もないモノを背負ってエミヤさんが木剣みたいなのをユニに向ける。

「い…いっ、いぃいいえいえいえっ! そそんなぁまたまたご冗談を~…うちはもう、山より高ぁく、海よりも深ぁーく反省してますです。勿論ですとも、はぁいっ!」

 剣先を向けられてビクッとしてたユニは途端に変に真面目な表情と共にそう口にし、何処からか何かこう、"キリッ"という音まで聞こえてきたけど…何だったんだろ?

「ふむ、その割りには反省の色があまり見えん……とりあえず砂時計を追加だ」

 特にわたし達には無かった砂時計を何処からともなく取り出さされ、ユニの前へ。
 しかも、砂が落ちたままの状態…そこからひっくり返さないのがその容赦の無さを窺えさせます。

「ぅ、うぅ…うわぁああ~んっエミヤんがうちをイジメるぅーっ!!」

 ユニ、少し涙目。
 こんな感じでユニの頭にはわたしやアーリアとは違って、単瘤が二つにひっくり返されてない砂時計が一つ…でも、

「…んだよ。…っとした、茶目っ…じゃんブツブツ」

 まだ余裕そうだなぁ。

「空を見るがいい、陽はもう頂点を過ぎているだろう?」

 エミヤさんの指の先を追い、手を翳して太陽を見る。
 確かに陽の光は少し傾いてた…あー、

「そう、ですね…」

 エミヤさんの仰りたい事、よっく分かります。
 うん、フォロー出来ないや。

「ああ、そうだ。そして、本来ならばもう防具屋へと赴き、既に用も済ませられたはずだ」
「なら、今からでも遅くない! こんな事してないでさ、さっさと行こうよぉー?」

「はっはっはっ…どの口が言うか」

 何とか説得を試みようとしたユニの前に更なる砂時計追加するエミヤさん…しかも、最初のよりもちょっと大き目のをスッゴくイイ笑顔と共に。
 ああ、ユニがどんどん墓穴を掘ってく…そうしてロマリアの街の中心、闘技場の前に、

「エミヤんの鬼っ、鬼畜っ、まさに外道ぉおおー!」

 と…まぁ、こんなユニの悲鳴が轟いたとさ。
 その少し後でわたしとアーリアが罰を解かれたんだけど、

「ぁ、あ…あっ、あし、足がっ」
「あっアーリア大丈っひぁああああ…」

 足が痺れて満足に動けなくても、特に症状がキツいアーリアを支えようとした所で態勢を崩した彼女がその拍子に、同じく痺れてるわたしの足に縋っちゃってまぁ、

「ぁっ、あ、あ、アルスっ、ごめんなさいぃい」
「気、気にしなひぁあああ~」

 何度も思いっきり声を上げちゃいましたよ。
 いやもう…

 "正座"恐るべし? うん。

 完全に腰砕けなっちゃって。
 跡形も残滓もなく、文句なしに痺れが治まるまでずっと、アーリアと抱きかかえ合ってました。
 そして、

「さて、ユニはまだそのままだぞ」

 その言葉を始めにユニの小さい砂時計はひっくり返され、それが落ちてから二つ目のがひっくり返されていく。
 サラサラサラと落ちていく細やかな砂…見守るわたし達も何だかもどかしいのに、"正座"したままのユニはどう見えるか。

「あ、あのぉ…そろそろ足の感覚がー?」
「そうか…なら、砂が落ちきるまで下手に動かさない事だ。爪先など少しでも動かせば…砂が落ちきるまでのもどかしさのあまり、号泣する羽目になるぞ」

「わぁーお……ね、そろそろ本格的に泣いていい?」

 そうして三つ目の砂時計。
 往来での鬼畜外道呼ばわりに一つ目の倍の大きさのを追加され、それが落ちる中でのそんなやり取り。
 それを肩を寄せて抱きかかえ合ってたアーリアがエミヤさんに構ってもらえるユニを羨ましげに見てて、

「いいなぁ…」

 と、呟いたりしたのが聞こえた。が、ユニとエミヤさんの状況が状況なだけにその感想は違う…と、あなたの親友を自負するわたしはそう心の中で思います。
 口には出しません…だって、また収拾つかなくなったらヤだもん。

「ちょっ…あの、足がっ、うちの足がまるで他人様のみたいのなんだけどっ!?」

 砂が落ちきり、正座から解放されたユニは全く自分通りに動かない足に驚愕し始める。
 うんうん…分かる、分かるよユニ。

「何、しばらくすれば感覚は戻る」

「そ、そう。ま…まぁ、これがずっと続くわけ…っっ~~~~!!???」

「そうそう、言い忘れていたな…"正座"は長く座れば座る程、足の感覚が麻痺していく。それに比例して足の感覚が戻った時、感じる痺れも度合いも…」

 エミヤさん…

「ぁ、あ…あ、あぁ…」

「強くなる」

 それ、今言う?
 とりあえず、ユニのあまりの硬直具合に駆け寄って触れようとしたら、

「い、いぃ今、ふっ、触えちゃあめっ!!」

 と呂律の回ってない言葉で止められました。

「ぅ、くっ…ふ」

 そんな、

「あ、ぅ…うう…っ」

 プルプルと身悶えて、

「っふ、ぅっ…ぅう、うぅー…」

 まるで産まれたての子鹿とか子馬のように痺れが伝わる感覚に声を我慢する、かなり貴重なユニの姿。

「あ、あぁあアルス、ちょっ手、いや腕貸して腰支えて」

「ぅっ、う…ぅ、うん分かった…」

 少し、我に返るのに時間が掛かってしまい、誤魔化す為に慌てたのがいけなかった。
 支える拍子に、

「ぁ」

 爪先がユニの足に当たった…瞬間、

「っほ…、ほぁあああああっっ!!???」

 絶叫。

「わあぁあああっごっ、ごめんっ…、ごめんなさいごめんなさいぃいい!!」

 そんな耳元での大絶叫に、元々少し混乱したわたしは色々と慌ててしまい、

「うんっうんっ! 分かった分かったから痛くない痺れてヒリヒリピリピリするだけだからだからそこ触っちゃやぁあああー~~~っっ!!」

 自分でどういった症状かを体験したというのにもう、

「っひぃ、ひぎぃ…っ」

 触りまくりました。

「ひぃあっ、うっ、ううっぐっ…」

 そんな、触っちゃっダメなのに痺れてる足をさわったり擦ったりと。

「…は、っはあ…っ!?」

 そして我に返って、その事に気付いた時には、

「…ぁ、あっ…ぁ、ひ…あひっ…」

 ユニはなんだかもう、涙とか何だかでボロボロの有り様に。

「あひ、あ…し…だみぇ、っぴ…り、ぴり…ひ、りひり……いあ、もぉいあらぉ…もぉ、せいざはやらぉ」

「え、えと…よ、よしよし?」

 何かすんごく幼くなっちゃってた。
 いや、言動だけでなく、雰囲気まで幼くなってむせび泣くユニを落ち着かせる為、彼女の頭を優しく撫で撫でする事にする。

「ひっく…ぅ、っく…」

「ぇ、えと…」

 こんなユニの状態に、どうしようとアーリアやエミヤさんの方を見るが…

「流石に、あそこまでの仕打ちは私には出来ん…」

 何やら深刻そうにしててって…いや、あれは思わずですから。

「ア、アルスには全く悪気はないんですよ? 本当に。ですが、その、何と言いますか…少し、天然と言いましょうか」

 アーリアは判っててくれてる…でも、誰が天然だよっ?

「まぁ見ればそれは判る。もし、あれが打算的にやったものなら……少々、アルスへの見方が変わるな」

 ううっ…ヒドイ。
 二人して好き勝手に言うのを耳にしつつ、ユニを背中をポンポンとしながら頭を撫でてる。

「ぅ…」

 彼女はもう、何かこう、ギュッと子供が抱き付くみたいにわたしに抱き締めてきてます。
 そんな姿に何だかちょっと胸が高鳴ったような気がしたのは内緒…いや、何かの間違いに違いない。

 …違いない、よね?
 ストック終了。

 筆もストップ。




 …もしかしたら、完結まで書き上げてから投稿しないとダメなのか? 私は。
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