人が沢山亡くなります。それと、続編はしばらく出ません。
反逆者の弟
戦争の歴史に比例し、俺の旅路も果てしない。
否。果てにはまた戦争がある。
故に求めるだろう何度でも。
兄弟殺しの忌まわしき歴史が、此度の争いにて絶えてしまうことを。
穢れの度合いを競う歴史に、願わくば、勝者が出ぬよう俺は祈る。
金髪の旅人は、土を踏みしめ、戦争がため歩む。
出会った少女に手をさしのべ、いつからか兄と妹として、恩人同士として、国と国を渡り歩くようになった。
反逆者の弟
数百年の間、繁栄と衰退の歴史を繰り返した、彼らが祖国ガネリルは、先代の死により、新たな王を向かえていた。
若き国王、髪に銀を湛えたガーリック。王座に比べれば体は小さいが、金の王冠が、彼は王に相応しいと主張している。
彼以上に相応しい者がいたであろうことはさておき、ガネリル国は、新しい統率者を歓迎していた。
座ったままの状態で、王の赤目は人ごみを眺めた。
「……先代が死に、息子だった俺はこの若さで、婚礼もなく王位を継いだ。認められねーと騒ぐ愚者も多い。けど俺はそれこそ認めない」
不敵な笑みを浮かべて、国王になって初めての『指図』をするガーリックの回りには、すでに尊敬の眼差しがあった。
「民草、てめえらは俺への侮辱を許すな! 俺が死んだら全員死ぬと思え。故に全員が国王! 一人が死ねば全員死ぬと忘れるな。先代から継いだこの言葉をもってして、俺は王位を継承したこととする」
拍手と喝采を受けながら、ガーリックは、疲れきったかのように長いため息をついた。
先代の言葉を引用したのは、一重に思い付かなかったためである。
「ミケル、ユリシーズ」
国王は二名分の名を呼び、その二人を傍らに立たせた。
「俺の弟、ユリシーズ」
銀髪をまとめあげた、風格あるユリシーズは、返事をするでもなく頭を下げるでもなくその場に立っていた。彼の威圧感は、ガーリックを無駄に親しみやすく感じさせただろう。
「及びミケル」
「はい!」
明るいながらも弱々しい返事に、ガーリックは子どものような笑みを浮かべていた。
「二人を帰す約束は取り消しだ。憎きオリフィア国を相手取るため、ここに残ってもらう。頼んだぜ?」
「はい」
「了解致しました」
そして、人間くさい国王が最後に名を呼んだ青年は、聞こえないのだろうか俯いたままだった。
「ミータン」
再び名を呼ばれて、青年は顔を上げた。
「ああ、何だ?」
「いや後で呼ぶ。……反逆者の兄を持つと大変だな、今日は休め」
「はいはい、国王陛下。ご心配痛み入ります。ちゃあんと君に忠誠を誓うよ、臣下として、ね?」
ミータンは躊躇なく国王に背を向け、手で軽い挨拶をしながらその場から去る。国の頂点にそれができるのだ、ミータンも決して位は低くない。
ガーリックのため息を受けたミータン。彼には、形容しがたいわだかまりがあった。
廊下に出ると、窓から見える海がとても美しく、それはミータンの心を蝕んだ。
ミータンは大臣である。ハムレットでいうならばポローニアスだ。
彼は大臣には向かない。戦場に出向き、軍を率いるべき存在だ。それか政治の権利を全て手に持ち、凡人には理解できないやり取りに口を染めるか、どちらかだ。
つまり、将軍か、国王。
いやいや王位を継いだガーリックに、ミータンは同情していた。同時に、過去に抱いた王座への野心を忘れられずにいたのである。
国王として戦場に出向けばいいのだ。ミータンにはその資格があった、そしてに断る理由はない。ミータンは国の中で、誰よりも王に向いている。
しかし彼は、どうしてもそうできない原因を持っていた。
原因、もとい、兄を持っていた。
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