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徒然なるままにっ!!
作:不協和音



第4話 黒い魔物





 ユイノはひとまず修太を連れて神殿の外に出た。
 おそらく、魔法陣を使ってしまった事はもう町長にバレてしまっているだろう。

 そして、町長は今こちらに向かっている筈だ。今、神殿内で町長に会ってしまえば面倒な事になってしまうのは目に見えている。




「シュウ!!早くこっちに来て!!」


 森の中にいる珍しい生き物達を見る度に興味津々で声を上げている修太の腕を引っ張る。



「ちょ、分かったから引っ張るなっての!」


 ユイノに引っ張られながら名残惜しそうに後ろを振り返る修太。

 さっきまで修太が見ていたウサギのような小さな動物は2人を見ながら目をパチクリさせた。






 バレルから北西に位置するバレル神殿からさらに北へ進み、森の中の道無き道を行く。



「ユイノ、おしっこしたい・・・」



 前を歩くユイノに修太が唐突に言い出す。


「はぁ!?」



 半ば呆れ顔で後ろを振り向き、修太の顔を見る。



「んもぅ!早く行って来い!」



 苦笑いの修太の顔を見て、右手をサッと振る。


 ユイノの許しを貰い、近くの木に駆け寄る修太。



「向こう行ってやらんかー!!」



 修太は後頭部にユイノの跳び蹴りをくらい、勢いで木に頭をぶつける。



「いってー!おま、漏れちまったどうすんだー!」



 木にぶつけた顔を押さえながら、ユイノの跳び蹴りが再び来るのを恐れ、渋々森の奥の方へと歩き出した。



「ったく!あのバカは・・・!」



 腕を組みながら一言呟き、修太の行った方向を見つめる。


(早く森を抜けないと夜になっちゃうな・・・夜にはブラックフォルスも出るし・・・)


 不安げに夕暮れ前の薄いオレンジ色の空を見上げる。





 その頃、用を足してズボンのチャックを閉めようとしている修太の背後からガサガサと草木を掻き分ける物音が聞こえる。



「ユイノか?もう終わるから待っ・・・」



 後ろを振り返り、ユイノだと思っていた音に対して声を発するが、そこにいたのはユイノとは似ても似つかない黒い大きな獣だった。



「なっ・・!?」



 獅子のように大きな体、その黒い体毛はこの森の中で闇に溶け込むにはもってこいだろう。

 闇に溶け込み、その鋭い牙で、爪で今まで一体何をしてきたのだろうか?



「グルル・・・」



 低く唸るその声は、その鋭い眼光を放つ瞳で睨み付けている修太に向けられているのは言うまでも無い。


 唸り声を上げている口からは鋭い牙が見え、今にも修太の喉元に食らい突きそうな勢いだ。


 修太はズボンのチャックを閉めるのも忘れその場に固まる。


 その間も黒い獣はジリジリと距離を詰めてくる。


(こりゃ・・マズいよな?・・とにかく何とか逃げ・・!)


 考えを巡らせていたその時、黒い獣はいきなり前足で地面を蹴る。

 黒い体は地面を駆け、勢いをつけ修太へと真直ぐに跳ぶ。


 瞳は修太を捉え、最大限に開かれた口からは修太を噛み千切ろうとこれでもかと鋭く主張している。


 修太は咄嗟に左斜め前へと転がり込む。


 跳び上がった黒い獣にはちょうど死角となり、攻撃をかわす事が出来た。


 しかし、黒い獣は着地と同時に体勢を立て直し、再び修太に襲いかかる。


 修太は足元にあった20cm程の修太の腕ほどはあろうかとゆう太い木の枝を手に取り獣へと向き直す。


 黒い獣が修太へと覆い被さる様に迫ってくる。


 修太は慌てずにその大きな口を見据え、一気に木の枝と一緒に腕を口の中にねじ込む。
 そして、自分の腕を引き抜き、黒い獣から転がるようにして距離をとる。


 黒い獣は口の中に縦に入った木の枝が邪魔で口が閉じられず、もがいている。


「へっ・・、人間をナメんなよ!ば〜か。」

 してやったりとその場で立ち上がりながら修太は黒い獣の方を見る。


《バキバキッ!!》


 黒い獣は修太がねじ込んだ枝を噛み砕いていた。

「あー・・・そうくるわけね・・・」


 言い終わる前に修太は元来た道を走り出す。


 今までに無いくらい必死に。


 そのあとを怒り狂った黒い獣が追いかけて来るが、修太は振り向いて確認している余裕もない。




 夕暮れ時の森はとても静かだった。そして、こんな静けさはブラックフォルスが活動を始めているとゆう事をユイノは知っていた。


(おかしい・・・いくらなんでも遅過ぎる・・・)


 なかなか修太が戻って来ないので、ユイノは森の中を捜し歩く。

 その時、ユイノはある光景を見てしまう。


 草を掻き分け必死に走る修太の後方を怒り狂ったブラックフォルスが追いかけているのを。


「・・こんのっ!」


 見るや否や森を駆け抜け、修太を追いかけ食らいつこうとするブラックフォルスへの顎を蹴り上げる。


「グギャッ!」


 突然の第3者の攻撃により、無防備だったブラックフォルスは体勢を崩し、ユイノを睨みながら低く唸る。


 「ユイノッ!!」


 修太もユイノに気づきその場に立ち止まる。

 ユイノはブラックフォルスに注意しながら修太をチラッと見る。

「シュウ、怪我は!?」


 見たところ大きな怪我をしている様子じゃない修太は大丈夫と言ってブラックフォルスに視線を移す。


「こいつ、何なんだ?」


 ブラックフォルスは体勢を立て直し、ユイノと修太を交互に睨み付けながら唸り声を発する。


「ブラックフォルス、この森で最も獰猛な魔物よ。」


 修太とユイノを交互に睨んでいたブラックフォルスはやがつユイノの方へとゆっくりと視線を固定する。



「どうすんだよ・・?」



 修太は、体勢を低くし牙をむき出しにしているブラックフォルスを確認しながら横のユイノに意見を聞く。



「大丈夫よ、こいつら火を極端に怖がるから」



 修太が火なんてどこにあるんだと言おうとした刹那、ブラックフォルスがこちらに向かって口を大きく開けてユイノを噛み千切ろうとした。



 ユイノは余裕でその攻撃をかわし、再び向かってくるブラックフォルスに右手をユラリと上げながら呟く。



「良かったね、シュウ・・私が居てさ。」



 同時にユイノ右手からは炎が放たれる。

 ブラックフォルスは炎に驚き、直ぐさま体を反転させ森の奥へと逃げ出す。


 それをユイノは逃さなかった。

 ブラックフォルスを追い、右手に再び炎が宿る。先程よりも強く燃え上がる炎。


「インフェルノ・・!」


 そしてためらいもなく右手を炎ごとブラックフォルスへと押し付ける。


 炎は瞬く間にブラックフォルスを包み込む。

 ブラックフォルスはしばらくのたうち回っていたがやがて動かなくなり、そこに残ったのは焦げ臭い動物の死骸だけだった。


「す、すげー・・・」

 ユイノはパタパタと服についた砂を払うとトコトコと修太の元へ歩き出す。


「さ、早く行くわよ。」

 夜になるともっと危険だからと付け足し、唖然とする修太を急かす。

「あっ、そういえば。」


 修太を引き連れるように前を歩きだすユイノが何かを思い出し、いきなり振り向く。


「アンタ、前閉めといた方がいいわよ?」


「げっ・・!」


 今の今までズボンのチャックが全開だった修太の下半身を指差し、再び前を向き直し歩き始めるユイノ。

 そんなユイノの後を急いでチャックを閉め直した修太が追う。


「こ、これは、あれだからな!あいつがいきなり襲って来たからだからな!!」


 修太の話をハハハと笑うユイノと笑っているユイノに言い訳をする修太の2人は再び森の中を歩く。














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