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僕が君に出来ること。
作:夢太



彼氏彼女〜中学生〜


杉山の頭に激痛が走った気がした。ハッとして顔を上げると担任がこっちを見ていた。
「俺の授業で早々と寝るな!」クラスのみんなが笑った。
杉山の足もとにチョークがあった。これを当てられたのかと、チョークを拾い上げようとした時に頭に激痛が走った。
「痛っ!」思わず声が出て顔を上げると担任が杉山を見ていた。黙ったまま担任は新しいチョークを取り出し黒板に文字を書いていった。数名が笑っている。
杉山はユメとの昔の事を思い出している間に寝てしまい、その思い出の最後を迎えた瞬間に思考は睡眠になりチョークを当てられる夢を見てしまっていた。
「正夢だ・・・。」杉山はつぶやいた。夢と現実で2回杉山はチョークを当てられた。
なかなか経験なんて出来ないであろう正夢をこのようなくだらない事で経験してしまうなんて勿体無いと杉山は苦笑した。ふと、ユメを思い出し、ユメの方を見ると目が合ったがすぐに杉山からそらされた。杉山には意味が解らなかった。授業中なので何も言えず、頭を少し掻いて、窓の外をボーっと見た。太陽はいつも通り、太陽から見える所は全部照らしていた。好き嫌いなく、太陽は偉いなぁ。と杉山はぼんやりと思った。

杉山は中学に入ってすぐに恋をした。ユメの事を忘れてはいなかったが、この年代によくある、年上へのあこがれからだった。3年生の上級生に一目惚れだった。
杉山は塾に通っていたが結局は近所の中学校へそのまま入学した。勉強より遊ぶ方が勝ってしまっていた。杉山は特別カッコいいという容姿では無かったが、3年生の石井佳織は案外すんなりと杉山を受け入れてくれた。同年代よりも大人びていた杉山はあまり頼るという事をしてこなかったが、杉山よりも大人な佳織に杉山は甘える喜びを知った。
次第にそのあたたかさに包まれる心地よさにユメへの思いは追いやられ思い出す回数も減っていった。
そんな幸せな時間も佳織の卒業と高校入学によって杉山から剥奪された。
佳織が中学生の時は毎日のように会っていたが、当然、会う回数は減った。
その事が、もう甘える事が当たり前になっていた杉山には不満で、何度か会うたびにストレスから喧嘩になったりしていた。そして、佳織は杉山に疲れたと言い、別れる事になった。
数ヶ月後に杉山の耳に入った噂では、佳織は年上の彼氏が出来たという事だった。
その噂を聞いて佳織に甘えすぎて、自分の事ばかりしか考えて来なかったからだと反省した。
初めて彼氏、彼女としての形式で育まれた恋愛はこのようにして始まり終わった。

それから、中学時代に杉山は2度告白された。1人は同級生で、もう1人は1つ下の下級生だった。2年生の時に同級生の宮間沙耶に放課後呼び出された。
「あの・・・、杉山君の雰囲気がカッコいいなって思って、だんだん好きになってしまって・・・。」少し上目使いで沙耶は杉山に言った。
「ごめん・・。」杉山は即答した。雰囲気ってなんなんだ?そしてその上目使いが気持ち悪いと一瞬で杉山は思った。学校中では可愛いなどと言われていた子だったが、それを知った上でのぶりっ子な感じが杉山にはどうしても、受け入れられなかった。
この告白は学校中で話題となった。クラスの女子や会った事もない女子からフッた理由を問いただされ、沙耶が可哀相だの色々言われた。杉山は本当に鬱陶しかったが耐えた。
『杉宮事件』などと下らないネーミングがつけられたが、2週間程で話題も終わった。
下級生の方の告白は杉山が3年生の時だった。この時も放課後で、ひと気のない廊下に呼び出された。
林加奈という子だった。この子もかわいらしい感じで、背の小さい子だった。
「杉山先輩・・急ですみません・・。何度か廊下とかですれ違う度にだんだんあこがれの先輩になっていって、気が付いたら好きになっていました。よかったら付き合ってくれませんか?」加奈も上目使いで言ったが、明らかに背が低かったので仕方ないかと杉山は思った。
「ごめん・・・。僕は今は受験勉強に集中したいし、君の事はよく知らない。そう言ってくれて嬉しいけど、付き合ったりは出来ない。」この言葉も杉山はわりと早めに言った。
「・・・・・わかりました。忙しい時にすみませんでした。受験頑張って下さい。失礼します。」言いだすまでに時間をかけて、俯き加減で加奈は言って振り返り2、3歩進んだ。そこでもう1度振り返った。
「あの・・・、恥ずかしいんで今日の事は内緒にしてもらえないですか?」少し赤くなった目で杉山を見て言った。
「最初から、誰にも言うつもりはなかったよ。」少し微笑んで杉山は言った。
「・・・ありがとうございます。」加奈は笑ったが下手な笑顔で、唇をギュッと締めてまた振り返り歩いて行った。
この告白は杉山も加奈も誰にも言わなかったので学校に広まる事は無かった。
杉山は佳織に振られてから恋愛には慎重になっていた。そこに沙耶の告白騒動があり、無意識に憶病になり、さらに慎重になっていた。告白で付き合うのも付き合わないのも個人の自由のはずなのに、なぜ全くの他人が外から文句を言ってくるのかが理解できないし、理解したくも無かった。杉山は自分から好きになって、そしてしばらく友達として過ごし、ある程度、どのような人なのかがわからないと恋愛の対象にはしなかった。
それから中学卒業までは恋愛も無く、周りと同じように受験勉強に励んだ。
遊びや恋愛に少し傾いていた杉山がもう1度勉強に熱を入れるのは難しかったが、このままではいけないと何度も自分に言い聞かして、それなりの成績が取れるまでになった。
この頃にはユメの事はすっかり忘れていて、記憶の隅から出て来る事は無かった。
親との関係も微妙にギクシャクし出して、何を言われてもうんざりしたり、今まで何とも思わなかった友達の言動にイライラしたりしていた。だが、そんな期間も長くは無く、受験が終わると元通りになり、解放感から、またよく遊ぶようになり皆に流されかけたが、また勉強が大変になると思い直し、勉強と遊びの比率を考えて卒業まで過ごした。












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