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  紫の旋律 作者:蒼夜
第一章
8 ユフィスの家へ
 
「ユフィ、今日はよろしくお願いします」
「ああ、よく来たね。待ってたよ」
 
 二日なんて日数あっという間に流れてしまうもので、今日はもうユフィとシルバの決めたお泊りの日だ。
 とりあえず、入り用になるかも知れない細々としたものだけ持ってシルバに連れられユフィの家にやってきた。
 と言っても店の裏手にある最初にシオンが寝ていた場所でもある。
 
「俺、いつもの所でいい?」
「あんたはどこだっていいんだろ」
「ま…寝られさえすれば。シオン荷物貸して、置いてくる。ユフィ、部屋は?」
「あの部屋だよ」
 
 シルバはそれだけ聞くとシオンの手に持っていた荷物を自分の方にもっていきどんどん先に進んでいく。
 
「シルバってよく来るの?」
 
 ふと、浮き上がってきた疑問。
 
「昔よくここに来てたんだよ」
「二人って結構昔からの知り合いなの?」
「そうだね。シルバがまだお漏らししてたころからかな」
「それは…随分小さい頃から」
 
 
 三人が家に集まったのは店を閉めてからだったので必然的に時間はもう夜だ。それでも今日は最後のお客さんがいなくなってからいつもの閉店時間をまたずに店を閉めてしまった。
 そんなにてきとうでいいのか、と思ったけれど。店の営業時間はユフィの機嫌や体調そのた諸々でよく変わるので街の人は別に誰も何も言っていなかった。
 しいて言えば、「今日は一段とはやいね~」という通りがかりのおじさんの言葉だろうか。
 
 


「シルバは気ばっかり強くて昔は手がつけられなかったんだよ」
「そうなんですか?」
「街に一人で出せば必ずどこか怪我して帰ってきてね~。目の上に青たん作って、着てった服もボロボロになって帰って来た時はさすがにびっくりしたもんだよ」
 
 この家のだいたいの構図を教えてもらって今は晩御飯。今までしらなかったけどシルバはユフィに以前しごかれていたために料理が多少できるそうなので、作ってもらって女二人シルバのやんちゃな過去話にずっと花をさかせているところ。
 それを横で聞いている当の本人は恥ずかしさも相まってなのか少しムッとしたように座りながら食べている。
 それを見て正面に座っているユフィはとても楽しそうに、シオンに次から次へと新しい情報を話す。
 
「それって、すごくないですか」
「別に…あのときはちょっとむしゃくしゃしてただけってあの時も言っただろ。いちいち覚えてんなよ」
 
 あまり触れられて欲しくない過去なのかシルバが会話に入ってくる。
 
「本当に、昔からこの子大切なことは何一つ言いやしない。そろそろいったって笑い話だよ」
 
 幼いころから知ってるからなんだか入り込めない雰囲気があるんだ、とその時にふと思った。
 シルバもユフィにはとっても心を許している部分がある。シルバを見るユフィの瞳がとても優しい。
 
「あれは…むかつくガキがいたから、注意したら喧嘩になって。魔法で圧されて…負けたんだよ」
「あんたが、年下に負けたのかい?珍しいね……あぁ、だからそれから修行もしっかりやるようになったのか。そりゃ、その子に感謝だね」
 
 そういってユフィは本当に容赦なく笑いだす。それにつられてシオンも静かに笑う
 
「こいつら…本当に笑いやがった」
 
 さっきより一段とムッとしている、でも別に感じる雰囲気から本当に怒っているわけじゃないとわかる。
 
「シオン~聞いておくれよ。この子ったらそれまで自分には才能があるんだっていってね、私が教えてやるって言ってるのに、必要ない。とかいって本当に高慢ちきな子どもで、だいたい本に書いてあること読めば使えるようになるような子だったから、そんなに教えることもなかったんだけど。その次の日私に頼ってきたんだよ~。実戦の仕方を教えてくれって。まさか、そんなことになってるなんて思いもしなかったよ」
 
 その時のことを思い出しているのか、それとも今のシルバの態度が面白いのか。さっきよりも一段と楽しそうに声を出して笑うユフィ。
 
 シオンの座っている場所はいわゆるお誕生席の位置。口の字の机を三人で囲むようにして座っている。なので、二人の様子は正面を向いていれば目に入ってくる。
 
「お前の両親もあの時はさすがにびっくりしてたね~」
「そうだな。俺が何してもあんまり動じない人達だったけど」
「安心のひとつでもさせてやればいいのにムスッとしちゃって…そうそう今のそんな顔してたっけね。変わらないね。甘えちゃって」
「は!?」
 
 その言葉にびっくりしたのはシルバ。
 
「あんた昔っから両親が来るとムスッとしてて。なのに周りうろちょろうろちょろ。微笑ましかったね~。」
「これは…違う、ほら!もう食べ終わっただろ!!シオンはシャワーでも浴びてこい!」
 
 とうとう耐えられなくなったらしいシルバが吠えて色々な指示をどんどん飛ばしだす。そしてそれを見るユフィはやっぱり優しい瞳でシルバのことを見ている。
 どこかで見たことあるその優しい瞳。どこでみたんだっけ。
 
「じゃ、お言葉に甘えて……」
「シオン使い方は大丈夫かい?着てるものはこっちで洗うから入れとくんだよ」
 
 心配してユフィが声をかけてくる
 
「大丈夫です~!ありがとう」
 
 一度部屋に戻って持ってきた荷物の中からパジャマになりそうな、持ってきた普段着を取りだす。
 最初はいくらユフィの家とは言っても他人の場所だから少し緊張してたけど、とても楽しい。お店にいるときは確かに時間はあるけどこうやっていつまでも話してるわけにはいかないから。
 もし、向こうの世界の友達の家とかに泊まりに行ったらこんなだったのかな。
 
 
 
「お先にいただきました」
 
 濡れた髪の毛を紐で縛って居間らしき所に戻るとユフィとシルバが机に座って何か話していたみたいだった。
 
「お帰り、シオン」
 
 そういって笑いかけてくれるのはユフィだ。
 
「じゃ、俺入ってくる」
 
 椅子から立ってシルバはシオンの横を通りすぎていくそのときに少し立ち止まったかと思うとおもむろに髪の毛に触れる。
 
「ちゃんと乾かさなきゃ、風邪引く」
「…うん」
「行ってくる」
「いってらっしゃい」
 
 シルバがいなくなると、ユフィがこっちこっちという様に腕で合図してきて座るように促す。
 
「あの子、シオンには甘えてるみたいだね」
 
 綺麗に整えられた机の上にはさっきまでなかった花瓶に花が添えられてる。頬杖をついてさっきのシルバに向けていた様な優しい瞳でシオンを見ている。
「甘えてるんですか?」
 
 どこが甘えられてるのか…いまいちわからない。
 
「あの子はね、本当は優しい子なんだ。ちょっと人づきあいが苦手なところもあるけど…シオンが来てからあの子、すごく楽しそうなんだよ。良かったら、これからもよろしくね。私はあの子の母親のように愛情を注いでいるつもりだけど、ああやって甘えてはくれないから」
 
 そういって遠い眼をして優しい瞳をしてるユフィを見て思い出した。
 ユフィの瞳は、母が…弟を見るときの愛情のある瞳。慈しみ深い、慈愛に満ちている瞳。 
 
「シオン。あの子の両親はもういないんだ」
「…え」
 
 そんなこと聞いたことない
 
「だから、あの子が今、本当に信用してるのはシオンだけなんだ」
「そんなことない!ユフィの方が」
 
 ずっと小さいころから一緒にいるんだから。ユフィの方が!
 
 ユフィは小さく首を横に振った
 
「私はあの子の両親を見殺しにしたんだ。私が、殺したようなもの」
 
 まるで自分をあざけるようにユフィは続ける。
 
 


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