表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
65/181

第62話




「くそ、また行き止まりか」


 すでに中層へ入って数時間経過しているが、入り口の辺りを行ったり来たりしているだけのような気がする。


「申し訳ありません。また、私の地図が間違っていたようです」


 憤る俺にエミィが恐縮して謝罪する。俺は慌ててエミィをフォローする。


「いや、エミィが悪いんじゃない。おそらく何か仕掛けがあるんだ。一度、作った地図を見直してみよう」


「かしこまりました」


 少し歩いて小部屋に出た。部屋の中を見渡して見覚えがあるので、何度か来たところなのだろう。


「この部屋には来たことがあるよな?」


「えっと、・・・はい。何枚かの地図にこの部屋が記入されています」


 そこを基点に地図を精査してみる。わかったことはこの中層の通路は常に変化しているということだ。


「それでも、矛盾するのは通路の壁だけみたいだな」


 隣接する通路と部屋の関係は変わっていないので、急に壁が現れたとしか考えられないような現象だ。


「うん?もしかして本当に壁が現れてるのか?」


 ふと、そんな考えが浮かんだ。例えば、『ぬりかべ』のようなモンスターが道を塞いでいるのではないか?


「エミィ、地図に空白はないか?」


 意図的に迷わせているのなら、おそらく『守護者』の部屋のある辺りだけにはたどり着けないように邪魔されているはずだ。

 つまり、空白部分こそ『守護者』の部屋だ。


「はい、あります。でも、ここに行く為の道が見当たらないんです」


「とりあえず、出来るだけ近づいてみよう」 


『持ち主よ、迷宮に潜りはじめて2日と3時間が経過している。又、中層に入って6時間ほどになる。休息を取るべきだ』


 『叡知の書』に指摘されて焦っていた自分に気づく。

 最後に休憩したのは、グリフォンを地上に連れていった時についでに取った数時間の睡眠だろう。


「そうだな。ありがとう。ここで一時間ほど休憩を取ろう。ルビー、食糧を出してくれ」


 ルビーから食糧を取りだし、みんなに配る。

 俺は『叡知の書』に先程まで考えていた事を聞いてみた。


「『叡知の書』。迷宮の壁を動かしたりするモンスターに心当たりはないか?」


『ふむ、レプラコーン等が有力だろうか。戦闘力はないが動きが素早くいたずら好きだ』


 レプラコーンは小さなおじさんの姿をしているらしいがそんな奴、1度でも見かけたら覚えているだろう。

 壁が動くのではなく、壁を動かすモンスターがいるということか。

 その後、しっかりと休息を取り地図の空白部分に最も近いであろう場所まで向かった。


「ここか」


「はい、おそらくこの壁の向こうが空白部分です」


 壁を触るが変わった所は無いように見える。予備の剣を使って壁をガリガリと削ってみるが、表面がわずかに削れただけで、とても穴を開けることはできないようだ。

 どうも、この迷宮の建造物は重要な物を保護するようにできているらしい。

 今削った壁も、グリフォンが守っていた階段もおそらくつるはしを全力で打ち込んでもびくともしないだろう。

 非破壊建造物とはますますゲーム的だが、魔法で可能なら確かに便利だ。

 壁を壊して迷宮を進まれては、相手も面白くないだろう。


「つまり、空白部分に行く方法があるって事だな」


 今いる通路が最も空白部分に隣接している。直線距離で約100mほどだろうか。

 

「よし、手分けして調べよう。エミィとアイラは通路の端から奥に向かって行ってくれ」


「はい、わかりました」


「頑張ります」


「よし、俺とジルは奥から調べるぞ」


「主よ」


 ジルが神妙な顔でこちらを見ている。


「どうした、ジル?」


「すごいことに気がついたんじゃが」


「すごいこと?」


 ジルが仰々しく頷き口を開けた。


「わらわのゴーストで壁の向こうを調べてみればいいのではないかのぅ?」


「あっ!?」


 ゴーストで調べてものの五分ほどで、壁の可動レバーを見つけ出した。

 壁の向こうには小さなおっさんが4,5人いた。レプラコーンだ。

 突然壁を開けられたためびっくりして固まっていたがすぐに散り散りに逃げ出した。

 後で中層を調べ直すと、どうやら他にもいくつかギミックがあった。

 それらを解き明かして最終的にたどり着くのが壁の中のレバーらしい。

 レバーのある壁には鍵穴があり、どうやら鍵を入手するのがこの中層の正しい攻略の仕方なのだろう。

 そんなこととは知らずに俺は、壁の中のレバーを【操力魔法】で動かして、中層の迷宮を突破した。


「で、こいつが中層の『守護者』か?」


『うむ、ストーンゴーレムだ。攻撃、防御に優れた魔動モンスターだ。迷宮での『守護者』は勿論、魔術師の工房でも配置されていることがある』


「強いのか?」


『勿論強い。岩の体は先程もいったが攻撃にも防御にも非常に役立つ。このサイズのストーンゴーレムを倒すのはかなり骨が折れるだろう。むろん、』





『動けば、だが』


 俺達が正規のルートで中層をクリアしてこなかったせいで、ストーンゴーレムが起動していなかった。

 せっかくなので、そのままルビーに飲み込んでもらった。

 何かに使えるかも知れないし、俺はまだゴーレムを作ったり、操ったりできないので色々試してみたい。

 壁の先には『守護者』の部屋しかなかった。迷宮部分はさんざん探索したのでヤクゥの兄貴はおそらく下層にいるはずだ。



 中層はなんだか不完全燃焼で終わってしまった。

 下層には、どんな仕掛けがあるんだろうか?

 説明のしっかりしたゲームになれているせいだろうか?

 どうも、中層での謎解きが分かりにくい気がしてしまう。

 おそらく問題が難しいのではない。問題を見つけるのが難しいのだ。

 これは、上層にあった致死性の鱗粉の罠とは別の系統の意地の悪さだ。

 


 俺はうんざりしながら下層に降りていった。

 暗闇を抜けるとそこは『街』だった。


「はぁ?」


 一体いつ俺は迷宮を出たのだろうか?

 天井はなく、青空が広がっている。壁に青空の絵を描いているのか、それとも魔法の類いだろうか。

 意を決して一歩を踏み出すと、街の入り口に立っていた女性がいきなり声をあげた。


「ようこそ、ここはセルヴァの街です」


 最初、俺はこの人が俺に声をかけたとは思っていなかった。だって、彼女は『こちらを見もせず』急に声をあげたから。


「あの、もしかして俺にいってますか?」


 周りを確認して俺達以外に人がいないことを確認してその女性に話しかけた。


「ようこそ、ここはセルヴァの街です」


 返ってきたのは、先程と同じ言葉。


「おいおい、冗談じゃないぞ」


 どうやら、本格的にゲームじみてきたようだ。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ