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第115話




 早速、『エバー山脈』に行く準備が始まった。

 相手は空を飛ぶモンスターだ。空中戦に慣れていない俺達だけでは万が一と言うこともある。

 グリフォンが迷宮で守護者に選ばれるほどのモンスターだと言っても、数の暴力に敗北することもあるだろう。


 加えて、どうしても数日は『エバー山脈』で寝泊まりすることになる。

 その間のフローラお嬢様の身の回りの世話をギーレンに頼んだりとフレイも忙しそうにしていた。

 全ての準備を終えて、『エバー山脈』に出発したのは5日後だった。


 今回の同行者は、アイラ、エミィ、ジル、ジーナ、ルビー、フレイ、そしてリーランと『ゴブリンサモナー』が1匹同行している。

 『ゴブリンサモナー』達はあれから召喚の特訓と『ゴブリンテイマー』の狩りへの同行でレベルアップでし、1度に30匹ほどのゴブリンを召喚することが出来るようになっていた。

 ただ、まだゴブリン以外を召喚すると消耗が激しいらしい。

 とはいえこれで行軍速度が格段に上昇する事になる。


「見えてきました。あれが『エバー山脈』です」


 視界に映る山は、日本人のイメージする山ではなく、剥き出しの岩肌と反り立つ崖が組合わさったような山だ。

 申し訳程度に植物が点在し、この高度から見れば所々に人が作った橋や道があるのが見える。


「ここからは高度を下げて近づこう。日が落ちる頃にたどり着くようにゆっくりと進もう」


 調べて分かったことは、鳥系モンスターは基本的に『鳥目』だと言うことだ。

 ハーピーは、人の上半身を持つからか、夜でも空を飛ぶことがあるらしいが目撃例の少なさからあまり好んで飛ぶ訳ではないらしい。


 その為、拠点展開の安全性を確保するためにあえて『エバー山脈』には夜間に乗り込む事になった。


「山の周辺には蟲系や植物系のモンスターが群生していることもある。注意しろ」


 夜は蟲系、植物系のモンスターの時間のようだ。

 ハーピー達に捕食される立場の彼らは夜間にこそ活発に活動する。

 


 だから俺達は、鳥達が寝静まり始め蟲達が起き出す前に接近する事にした。

 『エバー山脈』に拠点を作り終える頃には、山に朝日が射し始めていた。


「よし、後は頼む」


「グギャッ」


 先ほど『ゴブリンサモナー』によって呼び出されたゴブリン達とジルの呼び出したスケルトン達に警備を任せて、一眠りすることにする。





「おぉ、早速か」


 外が騒がしいく目が覚めたのでテントの外に出てみると、数羽のハーピーが網の中で暴れもがいていた。


「キィーーーーーーー」


 凄まじく甲高い声をあげているハーピー。

 漫画やアニメでは、美しい歌声を持つとか言われていたがこの世界では違うようだ。


「うるさぁい」


 眠そうに目を擦りながら出てきたのはリーランだ。

 寝間着を気崩して肩が露出している。とてとてっと俺に近づいて腹の辺りに抱きついてくる。

 頭を撫でてやると気持ち良さそうにして顔を埋めてくる。


「キィーーーーーーー」


「・・・うるさい」


 リーランはそういって一番叫んでいたハーピーを睨み付ける。

 すると、一瞬でハーピーが氷漬けになった。

 一緒に捕らえられていたハーピー達がパニックを起こして叫び出す。

 結局、捕獲したハーピーは全て氷漬けになってしまった。


「駄目じゃないかリーラン。あのハーピーは叫ばせて仲間を呼んで貰うつもりだったのに」


「ごめんなさい。でも、うるさかったから」


 リーランも身内以外には容赦がない。全く、エミィといい誰に似たんだか。

 リーランには勝手にモンスターを殺さないように言い聞かせた。

 氷付けのハーピーは止めを指して討伐依頼の方にドロップアイテムを提出することにする。

 ハーピーのドロップアイテムは『ハーピーの鉤爪』だった。


 その後、新たな群れが拠点付近に現れたので【風魔法】で乱気流を生み出し、風の檻を作り出す。

 

「キ、キキキ!?」


「キキィーー!?」


 混乱しているハーピー達にゴブリン達が網を射出する。

 バリスタを改造した投射器によって発射された網は、見事にハーピーを捕獲する。


 今回、捕獲できたのは6羽。

 ハーピーを拠点から少し離れた所に連れていき木造の檻に入れて放置する。

 しっかりと泣き叫んで仲間を呼んで貰う為だ。

 30分ほどで同じくらいの規模の群れが現れたので同じ手順で捕獲していく。

 昼食までに20匹ほどのハーピーが集まった。


 捕らえられたハーピーの大合唱は物凄い音量だ。

 ルビーの【統括者】で大人しくさせて俺とアイラで1羽ずつ支配していく。

 精霊樹アルラウネの蜜で作った餌の効果も大きいだろう。

 よだれを垂らして見ていたゴブリン達にも昼食の時に振る舞ったので昼からの更なる働きに期待しよう。


 昼食を済ませてまったりしながら、支配下に置いたハーピー達とコミュニケーションを取る。

 

「キュルルゥ」


 俺の羽繕いが気持ち良いのか、先程までとは違った声で鳴く。

 ついでに爪の手入れまでしてやれば次からは自分から尾羽を振って寄ってくる。

 可愛いものだ。


 午前中に捕まえた分の支配は済んでいるので午後からの狩りはスムーズに行われた。

 ハーピーの群れによって追い詰められた鳥系のモンスターが次々と網に捕らえられていく。


 内訳は、

 

 ホーンバード・・・・・・・11羽(立派な角を持つ鳥。全長1mほど)

 ソードフェザー・・・・・・13羽(剣のような羽を持つ鳥。全長2mほど)

 ハーピー・・・・・・・・・43羽(午前中に捕まえた数も含む)




 そして、大捕物となったのがテンペストイーグルというモンスターだ。

 全長10mほどの巨体に似合わず急制動、急加速を繰り返し、その名の通り嵐のような突風を叩きつけてきた。

 スケルトンが数体、その身を犠牲にして防いでくれたが一撃でバラバラにされて吹っ飛んでいった。


 その動きと攻撃力の秘密は、【風魔法】にあった。

 テンペストイーグルは、『疾風勇者』のように【風魔法】を纏って突撃してくる。

 ハーピーを捕らえた時のように【風魔法】を使っても自らの【風魔法】で弾いてしまう。


「アハハッ、こういうのを待ってたんだぁ!!」


 フレイのテンションが無駄に高いが、グリフォンに騎乗しながら器用にハルバートを使って攻撃している。

 俺も【風魔法】での撃墜は諦めて、水弾で攻撃を仕掛ける。

 テンペストイーグルの全身がしっかりと濡れたの確認してリーランに声をかける。


「リーラン、こいつを凍らせてくれ!!」


「うん、分かった!!」


 まだ上手くグリフォンを操れないリーランは今、俺と相乗りしている。

 俺はテンペストイーグルにグリフォンを急接近させ、【操力魔法】で直接羽ばたきを押さえ込もうとする。

 しかし、まるで重機のようなテンペストイーグルの力が相手では一瞬動きを鈍らせるのが限界だった。


「今だ!!」


「凍れ!!」


 しかし、その一瞬に合わせてリーランがテンペストイーグルの翼を凍らせる。

 水に濡れた翼はまばたきする間に凍りつき、【風魔法】だけでは支えきれない巨体が地面に向かって落ちていく。


「ゴブリン隊、捕獲しろ!!」


 すぐさまゴブリン達がテンペストイーグルに取りつき、拘束していく。

 ルビーも捕縛に参加しており、テンペストイーグルの体は既に半分ほど飲み込まれていた。


「ルビー、食べちゃダメですよ」


 アイラが上空からルビーに指示している。

 ルビーはやや大きくプルプル体を震わせて答えている。

 あれは、

 心外だ!!と言っているようだ。


 グリフォンを地面に下ろして、テンペストイーグルの元に向かう。

 既に、ルビーの【統括者】によってある程度自由を奪っている上に、網や縄で何重にも縛られていては身動きも取れないだろう。

 リーランに頼んで氷を溶かしてもらい、テンペストイーグルを支配下に置く。


「ふぅ、結構粘られたな」


 支配下に置くまでにハーピー達の軽く3倍はかかった。

 最後の決め手が餌だったのもなんとなくへこむ。


 

 テンペストイーグルが落ち着いた頃には辺りが暗くなり始めたので今日はここまでにした。

 夜の守りは、ゴブリン、スケルトンに加えてハーピー達が居るので、夜に活発に活動する蟲系のモンスターはここには近づいてこないだろう。

 今夜はゆっくりと眠れそうだ。




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