extra–2 女達のセントウ
書きたくなってやった。後悔していない。
というわけで、番外編です。よろしければお楽しみください。
「第一回、ゴブリン村、女だらけのドキドキ会議~」
いつもの私らしからぬテンション。しかし仕方ありません。これが様式美というものらしいので。
ここはゴブリン村、人間用の浴場。なんの偶然か、今ここの風呂を使う女性達がほとんど集まっているのだ。
「アイラ姉、どうしたの?」
リーランが不思議そうに私を見ています。しかしめげません。
「今、この場にいるのは女性だけです。いつもは殿方に遠慮して言えないこと言い合いませんか、ということでしょう?」
エミィが助け船を出してくれます。でも、元々この場を設けたのはエミィじゃないですか。
それを、こういうのは古株が進行役を務めるものです。とか言って私に押し付けたんです。
「なんじゃ、お主らこそこそとなにかしよるとは思っておったが、そんなことを考えておったのか」
ジルもやれやれと肩をすくめます。仕方ないでしょう?
エミィの口車に乗ったとはいえ私もみんなと話す場が必要だと思ったんですから。
「先日、ジーナが御主人様の寵愛を頂きました」
ジーナが一斉に見られてうん?と首をかしげます。
私たち、古株3人衆(アイラ、エミィ、ジル)は知っていたので何でもありませんが、他の娘達(ラティア、フレイ、ピノ)には衝撃が走りました。
「そ、そうなんですか?そうですよね、ジーナさんおっぱい大きいですし」
ラティアさんは自分の慎ましいお胸をさすってため息をついています。
「あ、あの節操なしめ!! 私にはまだ手を出していないというのに」
フレイさんはひとしきり憤慨して落ち込んでいます。落差の激しい方です。
「ほ、ほほ、まぁ、ヒビキさんも殿方です。時には大味な物を好まれることもあるでしょうぅぅぅ」
リザードマンのピノは無理に笑おうとしてシャーッといつもの音を出します。
その笑顔が上手くいっているかは私には判断できません。
「チョーアイってなに?」
リーランはぱしゃぱしゃと足で水面を蹴りながら尋ねる。
「バカだなぁ、チョーアイって男の人が女の人に大好きって伝えることだぞ」
兄ちゃんがいってた。とヤクゥがえへんとお姉さんぶっています。
「ジーナはお兄ちゃんに大好きって言ってもらったの?」
「えっと、そうだな。ご主人に、お前が必要だ、と言っていただいたな」
純粋な目で見つめられるジーナは恥ずかしそうに答える。いつもは凛々しい彼女のその姿はとても可愛らしい。
ジーナの言葉にみんな恥ずかしそうにしている。
「くふふ、恥ずかしがる必要などなかろう。わらわも主に甘い言葉のひとつやふたつささやかれておるしのぅ」
私たち3人で愛していただく時、ジルはいつも最後まで意識を保っている。
どうも御主人様の血を吸って体力回復を行っているみたいだ。私にもやり方を教えて欲しい。
しかし最近、行為中の吸血の回数を決められているみたいで不満そうにしていた。
エミィも一度、大量のポーションを担いで寝室に突撃してたのを見たけどそれ以降みないからご主人様に止められているんでしょうね。
「そ、そもそも、寝室周りにいつもお前らがいるから、その、なんだ、」
ピノがうんうんと頷いている。寝室に忍び込もうとしたことがあったんだろう。
「仕方あるまい、うちの主は気まぐれじゃからのぅ。わらわ達ですら寝室付近で待機しておらねば仲間はずれになる」
ゴブリン村に住むようになって、贅沢にも私たちにも部屋が与えられた。
その為、宿の時には無かった悩みが出てきました。
それは、
夜になってベッドに入っても御主人様がいない。
と言うことだ。
その事に気がついて夜中に御主人様の部屋にふらふらとやって来てみると、薄着のエミィと下着姿のジルと廊下でばったり出会ってしまった。
考えることは同じのようで、意を決して部屋に入ると御主人様が笑顔で迎えてくれた。
その日以来、毎夜エミィ達と廊下で集まって御主人様の部屋に入るのが日課になっている。
明確な集合の時間なんて決めてはいないが、少しでも集合に遅れると残りの2人で御主人様の部屋に入ってしまいその日はお預けになってしまう。
ジルは皆勤賞に近い。その分昼間眠っているのは少しずるいと思うが、戦闘ではしっかりと御主人様のお役に立っている。
私も少しは彼女の要領の良さを学ばなければいけません。
「そもそも、ヒビキはお前達に毎日夜伽を命じているのか?」
ゴブリン村最大の禁忌にフレイが切り込んできます。
「ご、御主人様は毎晩抱くくらいがちょうどいいんです」
エミィが答えますが、
「それは答えになっていませんね」
ピノが加勢してきます。
「主はわらわ達3人の相手をなんなくこなすぞ?その凄まじさはジーナにでも聞けばわかるじゃろ」
フレイがジーナに確認を取っています。ジーナは顔を真っ赤にして、すごかった、と呟いています。
確かに御主人様はすごいです。
「待ってください。そもそも、奴隷の私たちが夜伽を命じられて何がいけないんですか?」
その通りです。今、御主人様に抱いていただいたのは奴隷組の4人。
抱かれていない他の人たちは御主人様の奴隷ではありません。
「つまり、あの男は奴隷にしか欲情しないと?」
「違うじゃろうのぅ、主は良く美人に見とれてエミィに怒られておる」
「怒ってません!!」
いえ、怒っています。御主人様はいつもエミィの嫉妬にビクビクしています。
「つまり、どういう事です?」
ピノがジルに聞いています。どういう事なんでしょう?
「オスが魅力的なメスに目移りするのは当然じゃ。それを主はしっかりと我慢してわらわ達にぶつけておると言うことじゃ」
つまり御主人様が私達だけを抱くのは、私達が御主人様の所有物だから、ということでしょうか。
「しかし、私は惜しい時があった!!ってなんだ、惜しい時って!?」
フレイが自分でいった言葉に自分で怒っています。
確かに御主人様は一時期、フレイにベッタリでした。
あれは確か、フレイのお嬢様の護衛騎士を決める決闘の時だったでしょうか。
「うぅ、私は一緒にお風呂に入ってもなにもされませんでしたぁ」
ラティアがお湯の中に沈んでいきます。でも、彼女は御主人様とお風呂が一緒になっても気にしてなかった気がしますが。
「お主には、恥じらいが足りんのじゃよ。たとえ閨を共にした男でも湯殿を共にする時はこうやって隠して艷を見せねばのぅ」
いいながらジルが手で体を隠してポーズをとります。同性の私から見てもドキドキする色気です。
「なるほど勉強になるな。こうか?」
ジーナも大きなお胸を隠してビシッとポーズを取るのですが、なぜでしょうか格好いいと感じてしまいました。
「こう?こう?」
ラティアもポーズを取りますが、可愛らしい印象しかうけません。
「なに?なに?遊んでるの?」
リーランとヤクゥまで遊びと勘違いしてポーズを取ります。
2人にはあとで男の人の前ではやらないように言い聞かせないと行けません。
無邪気な子供は時に恐ろしいです。あぁ、あんなところまで丸見えじゃないですか。
「どいつもこいつもなっとらんのぅ、こうじゃ、こう」
ジルがまた、しなを作って新しいポーズを取ります。
おぉ、小さな歓声があがりみんなでポージング大会が始まってしまいました。
私もこれを機に更なる色気を追求しようと思います。
大会は大盛り上がりで続けられました。
その結果、私たちは確かに手に入れたのです。
「ゴホッ、ゴホッ」
「うぅ、頭がぁ、ジルのバカァ~」
「体がベトベトじゃぁ、主よ~体を拭いてくれぇ~」
「ゲホッ、の、喉がぁ」
「う~ん、ずびばぜん、お水をいだだけげまずが~」
そう、長時間裸でポージングなんてしてたら風邪をひくのも当然です。
私、エミィ、ジル 、フレイ、ラティアは風邪を引いてしまいました。
「一緒に入ってたのにお前らは大丈夫なんだな」
そう、ジーナとピノは風邪を引いてませんでした。
ちなみにリーラン、ヤクゥは途中で飽きてお風呂をあがっていたので問題ありません。
「うん?あれしきで風邪なんて引かないだろ?」
「私は、種族的に水棲ですので」
ピノはわかりますけどジーナはおかしいです。
なんで、あれで風邪も引かないんですか?
「状態異常の【風邪】は治しておいたから後は低下した体力の回復でなおると思うけど、今日は1日安静にしてなさい」
御主人様が触れてくれると、すっと体が楽になりました。
ありがとうございます。御主人様。
ピノがヤテルコさんに呼ばれて部屋を出たあと、ジーナが私たちに追い討ちをかけてきます。
「ふむ、先輩方がこの様子では、今夜は私がご主人の相手をするしかないか。うん、早速昨日の練習の成果を試すとするか」
「練習?お前達、昨日は風呂で何してたんだよ?」
「ああ、それは秘密らしい。なに、ご主人はどんと構えていてくれれば大丈夫だ」
そういいながら、ジーナが御主人様を寝室に引っ張り込んでいくのを私たちは指をくわえて見ている事しかできないのです。