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第三十二話~いつの間にか魔王になっていました~

大変お待たせしました。

いやぁ、風邪ひいたり雪降ったり大変ですな(´・ω・`)

「いやぁ、大氾濫は強敵でしたね」


「お前は一体何を言っているんだ」


 俺の言葉にゾンタークが真顔で突っ込んできた。

 まぁ今回は完全に俺一人でテレスコを襲ってた魔物を殲滅したからね。

 戦場は満遍なくクレーターだの岩槍隆起だの焦土だので滅茶苦茶だ。あちこちに魔物の肉片だの消し炭だのも転がっている。

 自重せず極大爆破や各属性の最強魔法で蹂躙した結果がこれである。反省はしていない。




 王都に戻った俺は一晩だけ休み、翌日の朝には鎧を新調してクロスロードに戻ることにした。

 マールのミスリルメッシュはまだ修復できていなかったのでお留守番だ。

 俺の鎧は素材こそミスリルだけれども、普通と言えば普通の鎧なのでピッカピカの勇者仕様に拘らなければ王都には在庫があったのだ。


「気をつけてくださいね? 本当に気をつけてくださいね?」


「大丈夫だ。自重せず本気でやってくるから」


 ぶっちゃけ軍の大量輸送のせいでMPが枯渇していなければあの黒獅子も余裕で蹂躙していただろう。痛い目に遭ったのは兵員の大量輸送にMPを費やしてしまったからである。

 空間魔法を修得する前は普通に軍に同行していたので残敵の掃討を軍にしてもらった方が魔力コスト的に良かったのだが、軍に同行してもらうために魔力を大量消費するんじゃ本末転倒だ。正直俺一人で転移して広範囲を更地にしてでも魔物を殲滅した方がよっぽど効率的である。

 よって、今回テレスコには一人で突っ込もうと決めていた。

 俺はさっさとクロスロードの冒険者ギルドに長距離転移を行う。


「おーっす、ウーツのおっさん久しぶり」


「うおっ!? 今どこから沸いた!?」


「人をボウフラか何かみたいに言うなよ。テレスコへの道を教えてくれ」


 突如現れた俺に驚くウーツのおっさんだったが、すぐにテレスコへの道順を伝えるべく地図を持ってきてくれた。

 クロスロードの西門から出て北への街道を道なりに行けば辿り着けるらしい。

 馬で急げば三日くらいらしいが、俺が本気で走れば多分今日中に着くな。またレベル上がってステータスがわけわからんことになってるし。


「じゃ、俺一人でテレスコに行って魔物ぶっ飛ばしてくるから。各所に連絡よろしく」


「は? おいちょっとまt――」


 ウーツのおっさんに一方的にそう告げてクロスロードの西門へと走る。人にぶつかるのもめんどいので建物の屋根伝いに。

 なんというか本気でジャンプすると二階建ての建物の屋根とかに余裕で飛び乗れるようになってきた。完全に人間やめてきてるな、俺。

 城壁近くの家の屋根から城壁へと飛び上がり、そのまま飛び降りて走り出す。

 なんか城壁で兵士が騒いでいる気がしたが、無視した。とっとと大氾濫を収束させて屋敷で休みたい。マールといちゃついたり新しい武器を作ったりしてのんびりと過ごしたいのだ。


 接合剣があれば十分だろうって? 実はそうでもない。

 接合剣は強力だがちょっと魔力篭めて振り回すだけで大破壊を引き起こすので、大氾濫みたいな対多数の戦闘にはともかく通常の戦闘には使い難すぎる。


 神銀棍は接合剣のせいで折角作ったのに出番が無いしな!


 単に神銀で作っただけの剣とか用意するべきか。大物用に刀身のデカい大剣も作ろうかな。

 ああ、時間があるなら大剣はオリハルコン製にするのも良いかもしれない。大剣なら重い方が良いだろうし。

 手加減用にお手軽簡単な射撃武器も欲しいな。俺の魔力だと魔法とか使ったら色々と消し飛ばしてしまいそうだし。

 元の世界ではチームに分かれてお互いに銃で撃ち合う所謂『FPSファーストパーソンシューティング』もやりこんでたからね、自分とかマール用に銃とか作りたい。完全に趣味の領域だけど。

 拳銃に関しては割とリアルな感じに分解できるガスガンとかも持っていたので、構造はなんとなく思い出せる。

 でも普通に銃を作っても面白くないな。折角のファンタジーだし魔法を撃ち出す銃とかにしてみるか。

 しかしそれはそれでファンタジー通り越してSFになりそうな気がしないでもない。レーザーガンでZAPZAPZAPとか。

 鞭とか蛇腹剣とかパイルバンカーとかドリルとか浪漫な武器も作りたいな。問題は素材とか作動原理とか色々あるけど。


 そんなことを考えながら俺はテレスコに向かって全力疾走する。風除けのためにウィンドシールドも展開済みだ。

 比べるものが無いから今ひとつよくわからないが、新幹線並みのスピードが出てるかもしれん。

 走り始めて三時間ほどでテレスコに辿り着いた。途中で小さめの魔物の群れをいくつか見つけたので消し飛ばしておいたが、なかなかの速度だったと思う。


 テレスコの街の城壁はクロスロードよりも堅牢で、厚みがあるようだった。

 ゲッペルス王国との国境に近い街だからだろうか? 理由はどうでも良いか。

 厚みがあるために兵力の展開をしやすいようで、クロスロードよりも多くの戦力を城壁上に配置できるようである。

 今も弩砲や投石器などの大型兵器や城壁上に展開した弓兵が街に群がる魔物達に激しい攻撃を加えているようだった。

 魔物の主力は二足歩行する獣のような奴らだ。粗末な武器で武装しているようだが、中には石を投擲しているようなやつもいる。

 他には数が少ないながらも飛行型の魔物やサイクロプスのような大型の魔物もいる。

 ただ、激しい抵抗によって大型の魔物や飛行型の魔物は城壁に近づけないでいるようである。サイクロプスなんて弩砲の良い的だろうしな。

 魔物達は城壁から少々距離を取った場所で右往左往している。絶好の砲撃チャンスだった。




「で、朝からいないと思ったらお前はこんなことをやらかしてくれていたわけか」


「なんか文句あるのか?」


 俺の言葉にゾンタークは溜息を吐きながらこめかみを押さえた。カレンディル王国の面子とか色々あるんだろうけども面倒くさくなったんだもの、仕方ないじゃない。

 今回はボスっぽいのも出てこなかったし、右から左へと順番に極大爆破や属性魔法で隙間無く吹き飛ばすだけで全てが終わった。

 地、水、火、風、四属性魔法のレベルも最大の5まで上げて試し撃ちをしたのだ。

 地の最強魔法は広範囲に岩槍が隆起する、という言葉は生温いか。爆発的に発生する魔法だった。

 激しい土煙を上げて次々と地面から突き出てくる岩槍、粉々になって吹き飛ぶ魔物達。まるで地面が牙を剥いて広範囲を咀嚼するかのような魔法だ。


 水の最強魔法はバスケットボールほどの水球を生み出すものだ。実に地味である、発生した直後だけは。

 この水球を魔物の群れの中央に撃ち込んでみたところ、一瞬で蒸発するかのように水が消え去った。首を傾げた瞬間、これまた広範囲の魔物が一瞬で全身を凍らせて砕け散った。

 よくわからないが、広範囲のモノを瞬間冷却して粉砕する魔法らしい。恐ろしい。


 火の最強魔法は極大爆破によく似た魔法だった。広範囲を焼き尽くす握り拳大の火球を発射するものだ。

 極大爆破と違うのは、爆発した後もその場に高温の炎が荒れ狂う部分である。極大爆破は爆発して範囲内の対象を吹き飛ばしたら綺麗さっぱり効果が消える。

 というか燃えているうちに上昇気流が発生したのか火炎旋風が発生して更に広範囲の魔物を焼き払っていた。こっちの方が極大爆破より恐ろしい魔法のような気がしないでもない。


 風の最強魔法は一番エグかった。広範囲の敵を巻き込みながら切り刻む突風を発生させるのだ。

 不可視、かつ広範囲。10数メートル、奥行き100メートルくらいの空間が丸ごとミキサーにでもかけたかのような惨状だ。率直にグロい。

 他の属性の最強魔法に比べると比較的容易に範囲を絞ることが可能だ。殺傷能力が高く、回避も困難で範囲の調整も可能、とかなり使い勝手が良い。

 ああ、あと風魔法レベル4でついに念願の『飛行』の魔法を覚えた。速度とかいまいちだったので、練習とか工夫をしてジェット機くらいの速度で飛べるようになろうと思う。


 そんなわけで俺は極大爆破や各種属性魔法の試射という名の蹂躙で魔物どもを吹き飛ばし、さっさと王都に帰ってゾンタークに報告をしたのである。

 そして俺の報告を受けたゾンタークは溜息を吐きながら事後処理のための人員を手配し、俺の転移門を使ってテレスコまで飛んで来たわけだ。

 何故ゾンターク自らがついてきたのかと俺も首を捻ったのだが、ゾンタークの妹がテレスコの太守に嫁いでいるのだとか。

 早い話がゾンタークはテレスコの太守の義兄にあたるわけだ。なるほど、色々と話を通すなら適任だろう。


「で、俺帰ってもいい?」


「……一応太守に挨拶があるのでついてきてくれると嬉しいんだが」


「それ、お前の義弟だって話じゃないか。というか魔物を掃討しただけで十分だろ? いつまでもこんなところに居られるか! 俺は帰るぞ! あ、報酬は後日適当によろしくな。なんなら鉱石とか錬金素材の現物払いでも構わんぞ。ケチったら暴れるけど」


「はぁ……わかった、今更勇者殿を敵に回すような根性は我が国には無いから心配するな。暫くは国内の掌握に時間がかかるだろうから、報酬に関しては時間がかかるぞ」




 胃の辺りを押さえるゾンタークと別れ、俺は早々にテレスコを後にした。今度ゾンタークにはマール謹製のよく効くポーションを贈ってやろう。すごいまずいの。

 最早我が家として定着した王都アルフェンの屋敷の門前へと長距離転移し、玄関へと歩きながら鎧や接合剣などの装備をストレージに放り込む。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


 ちょうど階段の手すりを拭いていたフラムが俺に気付いて出迎えてくれた。

 艶のある黒髪、凛とした意志の強そうな顔つき、しっかりと隙無く着込んだメイド服。いつの間にかすっかりメイドが板についているな。

 俺が預けた剣は流石に帯剣していないか。メイド服のまま腰に提げるわけにもいかないだろうし、仕方ないかね。

 何か上手い方法でも考えてみるとしよう。


「ただいま、マールは?」


「錬金工房に行ってみたり、リビングに行ってみたり、寝室に行ってみたりと落ち着かない様子でウロウロしてますよ。今はリビングで寛いでいるかと」


「そうか、ありがとう」


「どういたしまして」


 自然に笑みを浮かべるフラムに一瞬どきりとする。あの晩以来フラムはたまにこういう自然な笑みを浮かべるようになった。

 どうにも、よくわからない。

 一応話しあって水に流したこととは言え、こんな風に俺に接することが出来るものだろうか。

 ううむ、この負い目だけはフラムと付き合う以上ずっと感じることになるんだろうな。何はともあれ上手く付き合っていくしかない。

 もっと色々話していかないといけないな。


「どうしたんですか?」


「いや、なんでもないよ。ありがとうな」


 もう一度そう言って俺はフラムと別れ、リビングへと向かう。

 そこには落ち着かなさげにお茶を飲んでいるマールがいた。俺の顔を見るなりマールの顔が輝く。


「ただいm「おかえりなさい! 怪我は無いですか!? 無事ですか!?」大丈夫です心配いらな痛い痛い」


 突撃してきたマールが俺の全身をくまなく調べてくれる。

 マールさんや、怪我していなくても痛いボディチェックはどうかと思うんだよ。それって怪我してたら超痛いってことやん?


「これでカレンディル王国はひと段落ついたが……ミスクロニア王国は無事なのかね。すぐに向かうか?」


「それは多分大丈夫だと思います。ミスクロニア王国には勇者が三人いますから」


 俺の言葉にマールはあっけらかんとした様子でそう答えた。

 三人も勇者がいるのか。

 俺と同じくらい強かったりするんだろうか? もしそうなら余裕だろうな。


「どんなヤツなんだ?」


「私の父と、有力貴族の長男と、元冒険者の女性ですね。」


「えっ? マールのお父さんがなんだって?」


「私の父も勇者です」


 嫌な予感しかしない。

 ミスクロニア王国に行ったら『娘を嫁にしたくば俺を倒してみろ!』みたいなことにならないだろうか。いや、なる。何故か確信を持てる。

 接合剣みたいな凶悪すぎるヤツじゃなく普通の剣も作っておこう。今まで敬遠していたが、防具も作っておくべきかも知れない。


「なんとなくタイシさんの考えていることはわかりますけど、大丈夫だと思いますよ。母が許さないでしょうから」


「恐妻家なのか」


「はい、父は母に頭が上がりません」


 勇者で王族と言えどもやはり夫婦の力関係とかは一般家庭と変わらないのかね。

 とりあえず俺もソファへと腰を落ち着ける。マールはよほど心配していたのか俺にぴったりくっついている。愛いやつめ。

 そうしているとメイベルがお茶を持ってきてくれた。


「お帰りなさいませ。ご無事で何よりです」


「おう、無事に終わったよ。今晩は米とご飯の進むおかずを頼む。あと、風呂入ったあとマッサージも頼むわ」


「わかりました!」


 嬉しそうですねメイベルさん。まぁいいんだけどさ、気持ちいいし。

 あとはもうひたすらマールといちゃついて過ごす。

 膝枕してもらったり耳掻きしてもらったりキャッキャウフフしたりしているうちに晩御飯になった。


「こ、これは……!」


 紛う事なきとろろ昆布が食卓に出てきた。

 しかも白米を三角に握り、それに巻きつけた――そう、そこにはとろろ昆布おにぎりがあったのだ。

 今日のスープにもとろろ昆布が入っている。


「遂に完成いたしました。これは実に良い物ですな」


「完璧だ、ジャックさん」


 ちなみに白米は白米で別に出てきている、おかずはアジっぽい魚の干物を焼いたモノだ。温野菜のサラダもある。

 まずとろろ昆布おにぎりをいただく。

 まだ温かいおにぎりを手に取り、かぶりつく。

 とろろ昆布だけではなくちゃんと適度に塩もまぶしてあった。温かいご飯ととろろ昆布の旨み、程よい塩気が口の中に広がる。

 ああ、やはりおにぎりは日本人のソウルフードだ。少し涙が出そうになった。

 醤油や味噌、海苔や納豆なんかも無いだろうか。

 確か昆布はゲッペルス王国からの輸入品だという話だったな。もしかしてゲッペルス王国には和食っぽい文化があるんだろうか。是非調査しよう。


「気に入っていただけたようで何よりですな」


 ジャック氏の言葉にハッとする。いつの間にか二つ目のとろろ昆布おにぎりに手をつけていた。

 いかんいかん、感動のあまり我を忘れかけていた。


「ああ、素晴らしい出来だ。ありがとう、ジャックさん」


 俺の言葉にジャック氏は執事の鑑のような完璧な礼をして応えた。

 とろろ昆布おにぎりはマールも気に入ったらしく、夢中になって食べていた。なんとなく小動物っぽくて可愛い。

 とろろ昆布入りのスープや魚の干物も実に良かった。

 まぁスープの方はどことなくコレジャナイ感が漂っていなくもなかったが、美味かった。


 食事を終えてマールと一緒に風呂に入る。

 一応この後に使用人達にも入ってもらう予定なので致すまでは至らなかったが、存分に洗いっこをしていちゃついた。

 勿論その後は身体を拭くのもそこそこに二階の寝室に直行した。こんなにゆっくりゆったりとした気分で致すのは数日振りである。


 今回は始原魔法を一切使わずにしようと事前に決めていたが、どちらからともなく結局使ってしまった。

 なんと言えばいいのだろうか。心と身体だけでなく、魂までも一つになるような快感がある。

 流石に基礎体力に差が出ているので、どうしてもマールが先に参ってしまうのだけれども。

 半ば失神するような感じで寝てしまったマールの頭を撫でながら、久々にマールのステータスを確認してみる。


 名前:マール(偽名) マーリエル=ブラン=ミスクロニア

 レベル:25

 スキル:礼儀作法2 詐術1 危険察知3 演奏1 懐柔3 射撃2 剣術3 始原魔法3 錬金術3 水魔法2 風魔法2 魔闘術1 二刀流 王族のカリスマ(信)

 称号:疾風の剣姫 フェンサー 錬金術師 聖女 勇者の恋人 勇者の従者 淫魔 初級魔術師 初級錬金術師 ベテラン冒険者 冒険者 剣士 ダメ男製造機 駆け出し冒険者 家出娘 ミスクロニア王国第一王女(王位継承権二位)

 賞罰:なし


 出会った時はたったのレベル2だったのにいつの間にかレベル25だ。

 剣術のレベルがこの短期間に3まで上がったのは不断の努力の賜物だろう。いや、魔闘術や二刀流まで覚えるとなると、勇者の父親から素質を受け継いでいるのかもしれんけど。

 錬金術や魔法は正に素質があったんじゃないだろうか。始原魔法の修得から入るという裏技を使ったにしても驚異的な速さだと思う。

 レベル3の技能を持っている人材というのは、大体その道のプロとかエリートと呼ばれる人々だ。そう考えるとレベル3の技能を複数持っているマールはやはりとんでもない逸材なんだろうと思う。

 そういえばミスクロニア王国は昔から勇者を厚遇していて、貴族や王族にはその血が混ざっているって話だったか。これが王族の血というやつなのかね。

 称号欄のカオスさには突っ込まない。突っ込まないったら突っ込まない。

 ついでに自分のステータスも確認してみるか。


 【スキルポイント】177ポイント(スキルリセット可能)

 【名前】タイシ=ミツバ  【レベル】64

 【HP】813 【MP】4438

 【STR】1687 【VIT】1656 【AGI】1565

 【DEX】461  【POW】928

 【技能】剣術5 格闘5 長柄武器5 投擲5 射撃1 魔闘術3

     火魔法5 水魔法5 風魔法5 地魔法5 純粋魔法5 回復魔法5 始原魔法2

     結界魔法3 空間魔法5 生活魔法 身体強化5 魔力強化5 魔力回復5 交渉2 調理1

     騎乗5 鍛冶5 気配察知5 危険察知5 鑑定眼 魔力眼 毒耐性3


 見事なインフレ具合である。

 STR、AGI、VITが異常に高いのは身体強化LV5の効果だろう。1LVごとに50%ずつ対応した能力値が上がるようなので、今の俺のSTR、AGI、VITは3.5倍になっているのだ。

 逆算してみればSTRもAGIもVITも500弱くらいだということがわかる。補正のかかってないDEXとほぼ同じくらいだな。

 初期のDEXが確か30くらいだったはずだから、63回のレベルアップで上昇したのは約430、POW以外の能力値も多少のばらつきはあるけどほぼ同じような感じと考えて良いだろう。

 平均上昇値は1LVごとに7くらいだろうか。平均7、この数字には実は覚えがある。


「サイコロ二個振った時の平均値か……?」


 多少のばらつきはある。大雑把に暗算しただけだが、大体あってるように思う。

 しかしPOWの伸びはこの仮説に当てはまらない。他の四つに比べると異常な伸びだ、確か初期値も高かったけど。

 確か初期値で130くらいあったと記憶している。63回の成長で790くらい上昇してるのか。単純に割れば大体1LVあたり13弱。

 サイコロの数が増えてるのか? 単純にサイコロが倍になれば平均値は14くらいのはず。ちょっと低いな。うーむ、わからん。

 わざわざ別の法則を使うとは考え難いから何か補正のようなものがついて――ああ、そうか! もしかしたらサイコロ二個に補正がついているんじゃないか?

 サイコロ二個の平均値が7ということならプラス6すればほぼPOWの平均上昇値と等しくなる。よし、なんかスッキリした。

 後はこの有り余ったスキルポイントをどうするか。

 スキルリセットとか必要ない勢いでスキルポイントが溜まったからなぁ。

 四属性魔法の他にも騎乗とか気配察知、危険察知も5にしたし、投擲を新たに取って5にした。

 何故射撃じゃなくて投擲なのかというと、俺のこのSTRとAGIを考えれば直接ぶん投げる投擲のほうがダメージが高そうだと思ったからだ。乱戦で魔物をぶん投げて群れを倒すのにも役立った。

 しかしそんなに使ったのにも関わらずまだ177ポイントもスキルポイントが余っている。

 喫緊の問題も無いし、次に取るべきスキルをゆっくり吟味していこうと思う。

 流石にレベルアップも鈍化してきたし、今後大氾濫と同じように大量の魔物と戦うような事態もそうそう起きないだろうからレベルアップは暫く打ち止めと考えても良いと思う。

 つまり、このスキルポイントを使い切ったら終わり。それくらいの気持ちで居た方が良い。人跡未踏の秘境に行けばなんかすごい魔物とかも居るのかもしれないけど。

 自分のステータス欄にも称号メニューがあるので、開いてみる。


 【称号】

 異邦人 魔術師 剣士 拳士 駆け出し冒険者 期待の星 純粋魔術師 武術士 トロール砕き 冒険者 勇者 中級魔術師 結界師

 ベテラン冒険者 尋問官 処刑者 カレンディル王国公認勇者 剣聖 拳聖 武聖 淫魔 駆け出し鍛冶師 鍛冶師 上級鍛冶師 鍛冶匠 至高の鍛冶匠

 神銀の創出者 魔剣匠 上級魔術師 破軍勇者 英雄 剣神 拳神 武神 殲滅者 極大魔術師 魔王 防波堤 魔王殺し 竜殺し 空間魔術師

 轟地の魔術師 煌水の魔術師 爆火の魔術師 豪風の魔術師 エレメントマスター


 なんか凄いことになっていた。よく見れば取得順に並んでいるようである。

 スキル取得で得るもの、功績などにより得るもの、誰かからつけられたものなど結構まちまちっぽい。

 称号がステータスとかに及ぼす影響とかはなさげなので、これは放っておこう。称号コンプリートとか目指すわけじゃないし。

 しかし勇者や魔王殺しはわかるが、魔王の称号があるのはどういうことだ?

 あの闇から出てこようとしたモノが魔王ってのは判るが……いや、称号取得の時系列的にアレを殲滅する前に魔王になってるよな、俺。

 レベルか……? 確か最初の魔物の群れを殲滅したあたりでレベル50になってた気がする。レベル50になったら称号的に『魔王』になるってことかもしれん。

 あの闇から出てこようとしていたのはレベル50以上の何かだったから、魔王殺しがついたってことか?

 説明が出ないかと称号を押してみたら新しいウィンドウが表示された。


 【魔王】:レベル50達成で獲得。大量の魂を喰らい、その魂を肥大化させた者。

 【魔王殺し】:レベル50以上に達した『魔王』を倒すと獲得。

 【淫魔】:身体的接触により他者から魔力を吸収することによって獲得。

 【処刑者】:罪状のついた人間を五人以上殺害で獲得。

 【防波堤】:『大氾濫』を押し止めた者に贈られる称号。

 【エレメントマスター】:四大属性魔法を極めることによって獲得。混沌魔法の取得が可能となる。


 なるほどなー。

 称号については判ったけども、大氾濫の原因究明に関して役立つ情報ではないな。

 この混沌魔法ってのは気になるけど。スキル欄にはそんなものはない。つまりこの混沌魔法とかいうのは魔闘術と同じで自分で修得しなきゃならん技術ってことなのか。

 ちなみに最初からスキル取得欄になかったスキルはスキルポイントでレベルを上げることが出来ない。俺の魔闘術が3のままなのもそのせいである。

 ううむ、混沌魔法に関しては今後考えていこう。なんとなく複数の属性魔法を合成して放つような感じじゃないかとは思うけどな。火と地で溶岩の魔法とか、風と水で雷の魔法とか使えるかもしれん。

 寝よう、明日からまた色々しなきゃならないし。


 あ、メイベルにマッサージしてもらうの忘れてた。

「どうしたんですかメイベル、ご主人様に用なら明日になさい」


「うぅー……ご主人様がマッサージして欲しいって言ってたのに」


「残念なのは解りますが、明日になさい。今日はマール様に譲らないといけませんよ」


「今日は?」


「今日は、です」

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