第十三話~久々の米食を堪能しました~
国王との謁見を終えた夜。
俺とマールは用意された来客用の寝室で寛いでいた。
嬉しいことにこの部屋には風呂がついていたので、久々の風呂を堪能した。
浄化魔法でも確かにすっきりはするのだが、やはり身体を芯から温める風呂の気持ちよさには数段劣る。
勿論風呂では存分に洗いっこやなんかをして心ゆくまでいちゃついた。
風呂は良い、本当に良いものだ。
マールはいつもポニーテールにしている髪の毛を下ろし、濡れた髪を布で丁寧に拭いている。
俺はポニーテールのマールも好きだが、髪を下ろしてセミロングになったマールも大好きだ。風呂上りの濡れた髪が色っぽい。
今は賢者モードだから目を楽しませるだけだがね。
「タイシさん、私のことを聞かないんですか?」
「んー? 本名とか王女様とかその辺か?」
髪を拭く手を止め、神妙な表情で聞いてくるマール。
そんなマールに対する返答は、予てから決めてある。
「マールはマールだからな」
「えっ?」
「俺の、大切な人だよ」
マールは惚けたような表情をした後、俺に飛びついてきた。
俺はマールを抱きとめ、まだ少し湿っている頭を撫でる。
「私は自分の都合をタイシさんに押し付けて、嘘を吐いて巻き込んだ悪い女ですよ」
「そうだな。でもいいんだ、マールがいい。お前が居なかったら俺は俺じゃなくなってた」
マールの胸で泣いたあの夜のことを思い出す。
あの夜、マールにすべてを受け入れてもらったから、俺は俺を保てたと思う。
「俺も、お前をすべて受け入れたいんだ」
ひとしきり泣いた後、マールはポツリポツリと全てを話し始めた。
自分がミスクロニア王国の第一王女で、第二位の王位継承権を持つこと。
隣国ゲッペルス王国の王子であるメルキスと政略結婚させられそうになり、ミスクロニア王国の宝物殿にある隠し通路から逃げようとしたこと。
その時うっかり宝物殿にあった神託の宝珠という魔法道具を割ってしまい、その効果を受けたということ。
「しんたくのほうじゅ?」
「はい、使用者に良き未来を手繰り寄せるための神託を与えてくれるという魔法道具です」
携帯型コンロのような魔動具でも、守りの指輪のような魔力付与でもない。
神から人へと下賜された正真正銘のアーティファクトととも呼べる品。それを魔法道具と言うのだそうだ。
神託の宝珠は効果こそ知られていたものの、手に持って祈ってもダメ、念じてもダメ、利用方法がわからずミスクロニア王家でずっと死蔵されてきた品であるらしい
まさか破壊することが使用方法だとは誰も思わなかったのだろう。
「それで、どうなったんだ?」
「声が聞こえたんです」
「声?」
「はい、頭の中に直接響くような声です」
いやなよかんがする。
ぼくそれしってるきがする。
「…なんて言ってたんだ?」
「カレンディル王国のクロスロードという街にある冒険者ギルドに、タイシという黒髪黒目の男が現れるので性的な意味で食うように、って言ってました」
「ほう、マールはそれを信じたのか?」
「まさか、最初は疑ってましたよ。でも他に行く宛てもありませんでしたし、その声に何度も助けられてクロスロードに辿り着いたんです。それに、その…」
「なんだ?」
「タイシさんを見て、一目惚れしたので…」
マールは顔を赤くして俺の胸に顔を埋めた。
愛いやつめ、だが俺は確かめなくてはならない。
メニューを開き、今まで努めて無視していた項目を押す。
『む? やっとコールしてくれたか。忘れられたかと思っていたぞ』
相変わらず頭の中に声が響いてくる。
久々に聞いた声だ。まだ一ヶ月は経ってないと思うが。
『そうだな、二十日くらいといったところか』
マールを俺に引き合わせたのはお前だな。
『うむ、良い娘だろう。なかなか苦労したのだよ』
マールが俺に惚れたのは?
『それは単純に彼女の趣味嗜好だ。君の言葉を借りるなら直球ど真ん中ストライクというやつだな。私は一切弄っていないと誓おう。私自身が神だから何に、と言われても困るが』
そうですか、キューピッド凄いですね。
『それほどでもない。ただ、それ以降は何も手を加えていないぞ』
ああそうかよ、くたばれこの出歯亀野郎。
ムカついたので神コールを一方的にブチ切りしてやった。
マールがあの名状し難い存在に誘導されてきた、というのは事実のようだ。
気に食わない。あの得体の知れない声に俺とマールの出会いが汚された気分だ。
マールや俺の行動や感情は弄っていないと言っていた。信じるに値するかどうかは判らないが、信じるしかない。
「タイシさん…」
マールが潤んだ瞳で俺の顔を見る。抱きしめられて昂ぶってきたらしい。
ぺろぺろと俺の首筋に舌を這わせてくる。
なんかもうどうでもいいや! マール可愛いよマール!
「ぬあー! また負けた!」
「ふふふ、これで私の四連勝ですね!」
王宮に滞在して一週間。
やたら擦り寄ってくる貴族のご息女やら、廊下を歩く度に集まるメイド達の視線やら、やたら模擬戦を申し込んでくる近衛兵達やらをいなして過ごした一週間。
あまりにアレなのでここ今日くらいはとマールと一緒に部屋に引き篭っている。
娯楽の少ない世界だからね、引き篭ってすることといえばアレとかソレなわけだが、お付きのメイドさん達の目があるので明るいうちからマールとイチャつくわけにもいかない。
そうして伸びていたところ、マールがメイドさんに申し付けてボードゲームのようなものを持ってこさせた。
所謂チェスとか将棋みたいな知的ゲームだ。ブリッツというらしい。やはり魔法の概念があるので、少しばかり勝手は違う。
俺はこの手のゲームが強いわけではない、それは自覚していた。
だが、マールは強い、強すぎる。手も足も出ない。
「くそぅ…いつか負かしてやる」
「ふふ、楽しみにしてます」
マールがブリッツの駒を丁寧にケースに仕舞い、メイドさんに返す。
この駒もかなり高級そうなもので、最初は触るのにちょっとビクビクした。
なんでも高等な魔物の牙で作られた一品らしい。
「あの駒一式で金貨10枚くらいしますね」
「なにそれこわい」
マールにプレゼントしたミスリルショートソードと同額である。上流階級の嗜好品ってのはホント凄いな。
さて、時間が余ってしまったな。どうするか。
「いい加減暇だな、なに不自由しないが、刺激が足りん」
「メイドさんにイタズラをするとかどうですか!」
「げっへっへ、それもいいかもしれんなぁ」
そう言って俺とマールは応接室の扉の傍に控えているメイドさんを見る。
メイドさんは必死に無表情を装っているが、俺とマールがゲスい笑い声をあげながら見ているうちに汗が垂れてきた。
「冗談だ、すまん」
「いえ、滅相もございません」
そういうメイドさんの表情は無表情を装っていながらも、どこかほっとした雰囲気を放っていた。
違う、メイドさんいじめをしている場合ではない。
かといって訓練場に行くのもなぁ。
大概近衛兵の方々が訓練をしていて、俺を見つけるなり我先にと模擬戦を申し込んでくる。
なんでも勇者と剣を交えるのは誉れなんだとかなんとか。
実際に剣を交えて何か気に入られたのか、それとも恨まれたのか知らんけどヘトヘトになるまで相手をする羽目になるのだ。
それはそれで時間を忘れられるのだが、生憎俺はドMではないのでそう頻繁に何度もやりたくない。昨日もやったしな。
しかしどうするか。ブリッツで多少時間はつぶせたものの、まだ昼にもなっていない。
そうだ、いい事を思いついた。
「マール、頼みがあるんだが」
「なんですか?」
「俺に色々教えてくれ」
一時間後、俺とマールはカレンディル王国立魔法学校へと赴いていた。
無論、俺達だけで王城から出たわけでなく、王城の近衛兵に送ってもらったのだ。
魔法学校には大貴族の子弟なども通っているため、警備は厳重。校内に居る限りは安全であろうという判断が下された。
「やっぱり勉強をするなら学校ですよ!」
「うん、まぁ」
一週間前には足を運ぶことなどあるまい、と思っていたのだが何がどう転ぶかわからん世の中である。
俺達はこの魔法学校の教頭であるといういかにも魔法使い然とした衣装の老人に連れられ、魔法学校の敷地を歩いていた。
校舎は三階建ての石造り。
門から校舎まで続く道も石畳で、綺麗に整備された芝生や花壇が続いている。
途中分かれ道があり、分かれた先には綺麗に整地された広大な空き地があった。
そこには魔法学校の生徒らしき男の子や女の子達が走っていたり、あるいは魔法をぶっ放していたりする。
ぶっ放している、とはいってもレベル1魔法だったが。流石にやたら爆発するピンク髪のヒロインみたいなのはいないようである。
「こちらが大図書館になります。お帰りの際は司書にお申し付けくだされ」
「はい、ありがとうございます」
俺がそう言って頭を下げるとおじいちゃん教頭は満足げに頷いて去っていった。
「凄い本の量だな」
「そうですね。史書さんに教科書の在り処を聞いて早速始めましょう!」
そう言ってマールは意気揚々と司書の座るカウンターへと歩いていく。
そちらはマールに任せ、俺は図書館の内部を改めて見回していた。
本、本、本、本である。
元居た世界の図書館に勝るとも劣らない凄まじい蔵書量だ。
クロスロードで過ごしていた時、買い物のついでに書店を覗いたことがある。
本の価格は安いものでも銀貨2枚はしていたはずだ。
恐らくこの世界では活版印刷技術がまだ無いんだろう。提案することはできるだろうが、そのうちに自然発生するだろうからわざわざ干渉しようとは思わない。
第一、そんなことをしたら異世界の情緒というか、そういうものが失われてしまうような気がするのだ。
少なくとも、今はありのままのこの世界を堪能したい。
「タイシさん? どうしたんですか?」
そんなことを考えているといくつかの本を抱えたマールが不思議そうな顔で俺を見ていた。
「いや、なんでもない。それよりも授業を始めようか、マール先生」
「そうですね、タイシ君」
お互いにそんなことを言って笑いあう。
あの声なんぞクソ食らえだ。俺はこの世界で自由気ままに生きてやる。
授業内容は多岐に渡った。
まずは簡単な地理だ。
この世界の名はエリアルドと言うらしい。
過去に何度も文明が興っては滅び、それを繰り返してきたと言われている。
今は新神暦2203年の11月3日で一年は365日、一日は24時間。この辺りは不思議と元の世界と同じだった。あまり異世界情緒が無い。
新たなる神々が旧神から世界の統治を任されてから2203年の月日が流れているという。
「え? いますよ?」
「え? いるの?」
神なんて実在するのかよ、という言葉が聞こえたらしいマールが当たり前だろうという顔でそんなことを言うので思わず聞き返してしまった。
「はい、時折降臨して神託を授けたり、奇跡を起こしたり、魔法道具を授けたりします。確か去年の暮れに酒神メロネルが第二大陸にあるサンドレイス帝国の地方都市に降臨して、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをしたそうですよ」
なんという地域密着型の神様なんだ。
この世界の宗教というのは確かに存在する神が居て、神託を通じて直に信者達を導いているものらしい。
「ん? じゃあ例の宝珠で神託をくれるのもそういった神なのか?」
「いえ、神託の宝珠は言い伝えによると旧神より賜ったものだそうです」
「その旧神ってのはどうなったんだ?」
「新神達に世界の統治を任せて眠りについたとも言われていますし、自らの存在を引き裂いて新神を生み出したために亡くなったとも言われています」
バリバリ絶好調で出歯亀してるよ、うん。
脱線したので、地理の勉強に戻る。
今俺達が居るカレンディル王国や、マールの故郷であるミスクロニア王国があるこの大陸の名はピート大陸。あるいは第一大陸とも呼ばれている。
全体的に温暖かつ穏やかな気候で、実りも多く過ごしやすい大陸なのだそうだ。
その分魔物の繁殖も盛んで、未開の地域もまだまだ多い。
カレンディル王国はピート大陸の中央部に位置する伝統ある王国で、広大な平地と森に恵まれている。
平地は開拓が進んでおり、ピート大陸の食料庫と言われるほどの食糧生産量を誇る。主な産業は勿論農作物だ。
基本的に豊かな国なのだが、海に接していない上に岩塩なども採れないため、塩は輸入に頼らざるを得ない。
また、森林は多いが魔物に支配されている場所が多いため森林資源の開発はあまり進んでいないらしい。
次にマールの故郷であるミスクロニア王国だ。
ピート大陸の南東部に位置する王国で湖や川などの水資源が豊富。また海にも接しているために海産物にも恵まれている。
ピート大陸は勿論のこと、第二大陸とも呼ばれるプラム大陸の国とも交易を行っており、王都リバースには世界中のありとあらゆる品が集まるという。
各国に向かう船便も多く出ているので、旅人の集まる国とも呼ばれる。
ただ、湖沼や河川には水棲の魔物が多く潜んでおり、水の恩恵も多いが危険も多いのだとか。
農産物としては稲作が盛ん(!)で、パンが主食のカレンディル王国とは違い、米飯が主食らしい。
カレンディル王国の輸入する塩の供給元で、力関係としてはミスクロニア王国のほうがカレンディル王国より上なのだとか。
「だから基本的にミスクロニア王国には頭が上がらないんですよ」
「それで王様は顔面蒼白だったのか」
後はマールの嫁ぎ先となる予定だったゲッペルス王国。
大陸東部の大草原にある国で、綿花の生産や馬や牛、羊などの牧畜が盛んに行われている。
また、魔物の生息数が他地域に比べると非常に少ない。ピート大陸で最も魔物の少ない国である。
農業も盛んで、また海にも面しているため様々な食材を豊富に使った料理が有名だ。
ただ、草原に住む半人半馬の亜人であるケンタウロス達の部族と長年小競り合いをしており、魔物が少ないのに治安はあまり良くない。
ピート大陸にある国はあと二つ。
一つは北西部の山岳地帯にあるドワーフ達の王国マウントバス。
山岳地帯から採掘される豊富な金属を武器や装飾品として加工し、輸出しているらしい。
ドワーフ達の作る作品はどれも高品質なため、かなり重宝されるのだとか。
食料に関してはカレンディル王国からの輸入品も多いが、山岳を切り開いて棚田を作り農作物も生産している。
また、ピート大陸に流通するお茶の殆どはこのマウントバス産だということだ。
しかし山岳地帯は寒暖の差が激しい上にワイバーンやグリフォンなどの強力な魔物も多く、稀にドラゴンが現れることすらあるため、ドワーフ以外には住みにくい地域なのだそうだ。
最後の一つは国、という枠組みで治めるのは少々難しい。
ピート大陸北部に広がる大森林だ。
ここには様々な亜人やエルフ達の集落が点在しており、各部族がお互いに尊重しあって生活している。
旧神時代や、さらに遡る文明の遺跡も多く点在していると言われているが、強力な魔物達が潜む大森林の奥に足を踏み入れて帰ってきたものは殆ど居ない。
大森林の各部族は森の恵みや、点在する遺跡からの発掘品、あるいは森を維持するために間引いた木材などを細々と取引して暮らしているのだそうだ。
「とまぁ、ピート大陸の簡単な地理と国々についてはこんな感じですね! どこか興味の沸く国はありましたか?」
「ミスクロニア王国」
「えっ」
「ミスクロニア王国」
「ほ、本当ですか!?」
「本気だ、本当に本気で本気だ」
ミスクロニア王国に行けばコメが食える。
いや、パン食も決して悪くないんだけども、悪くないんだけどもやっぱりコメが食いたい。
肉は好きだ、好きだが! 銀シャリに塩焼きの魚でメシを食いたい!
「あの、理由を聞いても良いですか?」
「コメが食いたい」
「流石タイシさん、わかってますね」
マールと手を取り合う。
この日、俺とマールの間に新しい絆が生まれたのは言うまでも無い。
ちなみに、魔法学校らしいところは入る時に見た運動場で魔法をぶっ放す学生くらいしか見れなかった。次回があればもう少し見学させてもらおう。
王城での食事は基本的に部屋に運ばれてくる。
初日だけは馬鹿でかいテーブルのある馬鹿でかい食堂で王様や王妃様、王子や姫達と食事をしたのだが、なんというかあまりにお上品すぎて食べた心地がしなかったのだ。
テーブルマナーとかもよく知らないしね、うん。
なので、翌日以降は頼み込んで応接室に運んでもらい、マールと一緒に食事を取ることにさせてもらった。
所詮は礼儀の知らない冒険者風情、俺はしがない一般人なのでああいう雰囲気には耐えられなかった。
そう、食事というのは美味しく食べなければならない。マナーやルールなどに縛られず、自由に食べる。それが大事だと思うんだ。
「ハムッ! ハフハフ、ハフッ!!」
「タイシさん、お行儀悪いですよ」
苦笑いするマール。
仕方ないだろう、約一ヶ月ぶりの白米だ。銀シャリだ。
ダメ元でメイドさんにリクエストを出してみたら大当たりだった。
マールの事を考えて米の用意はしてあったらしい。抜け目無いな。
おかずが塩振りのサンマではなくステーキなのは少々残念だが、それにしたって白いお米だ。
しかし箸が欲しい。ナイフとフォークでも食べられないことは無いが。そうだ、今度作ろう、そうしよう。
無心に食う。いや、食うという言葉では生温い、喰らう。
「そんなにお米が好きだったんですね…」
「ああ、ずっと米を食って育ってきたからな」
「タイシさんの故郷ってどんな所だったんですか?」
マールの言葉に手を止め、少し考える。
言って良いものだろうか? 言ったとしても信じられない部分も多いだろう。
政治形態や技術に関して漏らしてしまえば、ふとしたことからこの世界に影響を与えてしまうかもしれない。
俺は口の中のものを飲み込み、水を一口飲んでから口を開く。
「んー、前も言ったけど平和なところだったよ。魔物なんて居ないし、戦争もない。金を稼いで生活するのは大変だけど、食料が足りないなんてことはありえないところだった。金さえあれば好きな時に、好きなだけ食える」
エリアルドには二十四時間経営のコンビニなんてものはない。
ああ、冒険者ギルドは二十四時間経営だったか。
「へえぇ…なんだか夢みたいなところですね」
「さて、それはどうかな。ストレスや生活苦で年間に三万人近く自殺する国でもあったからな。夢のような場所、というのは違うような気がするな」
「さ、三万ッ!?」
マールの顔が驚愕に歪む。そりゃドン引きするよな。
「毎年そんなに自殺だなんて…国が滅んじゃいませんか?」
「俺の国の総人口が一億二千万人くらいだったと思うから、総数からすると微々たるものなのかね。まぁ、少子高齢化が問題にはなってたよ」
「いちおくにせんまん…桁が違いすぎますね」
確かこの王都の人口が全部で十万人くらいだったか。
一番人が集まる王都で十万人なら、総人口は多くても百万人を超さないんじゃないだろうか。
「歴史ある国でな。ずっとずっと昔から稲作が盛んで、主食は米だったんだ。パン食が多くなってきたのが多分六十年くらい前じゃないかな。今はパンもかなり食べられてるけど、やっぱ主食と言えばコメだったと思うよ」
できるだけ当たり障りの無さそうな話題を選び、食事を進める。
久々の白米に俺は大満足だった。マールも久々の故郷の味に満足できたらしい。
「いやー、食った食った。これだけデカい町なら白米を出す食堂とかあるかね」
「そうですね! 動けるようになったら一緒に探しに行きましょう!」
無かったら米だけでもなんとか入手して自炊だな。
隣国で生産されているなら市場で仕入れることもできるだろうし。
今回は情報量が多いので少し短めです。
そろそろ冒険者としての活動もしていきたいですね。