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短い話の集会所
作:藤田文人



秋晴れ散歩


 
 電車にゆらゆら揺られ車窓の景色を眺める。
 ゆっくりと流れる風景に妙な哀愁を感じながら目的地までの旅を楽しむ。
 朝夕のラッシュ時なら、そんな気持ちのゆとりなどとても持てそうにない。皆が登校・出勤を済ませた頃合いを見計らって電車に乗るから味わえる束の間の旅情。
 実際はたいした事の無いその一時も……考え様によってはちゃんとしたイベントに変わるのだ。

 秋晴れの車内は日が差し込むので穏やかな陽気に包まれている。厚着をしていると少し汗ばむくらいに陽の光が燦々と降り注ぐ。
 外に出れば冷たい風が冬の足音を聴かせてくれるが、建物の中にいる分にはまだ秋を満喫できる。
 短い秋を味わう事ができる。

 束の間の旅情は忙しない日々に一時の安らぎを与えてくれる。心休まる時間が限りなく短いこの世の中で、ほんの少しの心の休息は何物にも代え難い。
 本当にたいした事の無い日常の1ページに過ぎないのだが、そう思ってしまうのは何故だろう。
 それだけ日々の生活に心身共に疲れているのだろうか。
 ふと、そんな事を思う。

 冷たい風が身に染みる今日この頃。
 秋晴れの空の下、強い日差しを浴びながら道を歩く。
 こんな日もたまには良い。気持ちに余裕が出て日々の疲れを癒やしてくれる。
 日常に垣間見た旅情に頬を弛ませ、いつものより軽い足取りで家路に向かう。

 短い秋だから。
 この一時を満喫しようといつもよりも景色を楽しみながら帰路に着いた……。

















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