今私の目の前にあるのは、扉だ。3つ。3つの扉がある。この中のどれかに。私の恋人か居る。なぜそう思っているのかはわからない。直感だ。
「こういうのは大抵真ん中だよね。」
私は変な確信を持って、真ん中のドアのノブを回した。キィッという声を上げてドアは開いた。
「羊・・・」
ドアの向こうには、羊が10匹居た。こっちを見ている。なぜ羊なのかはわからない。
「寝てるって事?これは夢って事か。」
羊を数えると本当に眠りにつくことができる私に、夢は、これが夢だと教えてくれているのだろう。
「じゃあ、右かな。右利きだし。」
また、変な確信を持って今度は向かって右側のドアのノブに手をかけ、ゆっくりと回した。さっきよりも少し重い。これだ。と思った。
「・・・かえる。」
かえるが3匹居た。
「かえるぴょこぴょこみぴょこぴょこ・・・。馬鹿にしてんの?」
グワグワ鳴いていた。
「あ、明日は雨って事?」
夜かえるがやかましく鳴いていたら、次の日は雨だと昔教えてもらったことがある。親切にもこの夢は明日の天気を教えてくれた。
「もう、左しかないじゃん。」
迷うことなく最後のひとつ、左側のドアのノブに手をかけ、回した。さっきよりもさらに重かった。
「・・・は?傘?」
赤色の少し小さめの傘があった。
「あ、雨だから?なんだ。どのドアにも居ないじゃん。明日傘忘れるなって?はいはい。」
私は傘を手にとり、ため息とともに肩をがっくりと下げた。
「お嬢さん。終点ですよ。」
気が付くとそこは、いつも利用している電車の中だった。
「あ、ありがとう・・・ございます・・・。」
まだ夢と現実の区別が付いていない状態で、起こしてくれた老人にお礼を言った。
改札を出ると、目の前には見覚えのある顔があった。ずっと探していた顔だった。
「どのドアにも居ないなんて、ずるいよ。」
「・・・は?何言ってんの?」
恋人は、ねぼけてんのか、と言って大きな手を私の頭に置いた。駅を出ると、今にも雨が落ちてきそうな空が広がっていた。そしてすぐにそれは落ちてきた。
「お前、傘持って行ってなかったから。」
そう言って恋人は、赤色の少し小さな傘を広げた。
「え、これこんなに小さいの?2人は入れないじゃん。」
失敗したという顔をして、私の肩に腕を回した。
「濡れるぞ。ちゃんと入れ。」
私はまだぼーっとしていた。彼はずっと喋り続けていた。今日は楽しいことがあったらしい。その最中私は何も聞いていなかった。あの夢のことをずっと考えていた。
2人で帰る家の近くまで帰ってところでかえるの鳴き声が聴こえた。下を見ると、かえるが3匹居た。小さな小さなかえるの顔をはっきりと見ることができるわけではないが、3匹とも笑っているようだった。
2人で同じ家に帰って、同じベッドに入った。
「お前、羊数えると眠れるんだろ?一緒に数えてみようか。」
そう言われて、私と彼は2人で数え始めた。
10匹あたりで、私は眠りについていた。
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