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第八話 城塞都市ウィニック

みなさん、感想を待ってます。

ってほど読める程の量は無いか…あはは。


黒沢明人は、生まれて初めて馬車というものに乗った、外の景色を観たいのでたずなを握るディートの横に座っていた。最初は楽しめたのだが、いい加減飽きてきた頃には、うんざりとなっていた。道路が平ならここまで酷くは無いのだろうが、全く整備されていないのだから、もうどうしようもない。木製の車輪が壊れないよう鉄を巻いただけの車輪では、如何ともしがたいものがある。揺れが激しく細かく時に大きくガタガタいうのだ。時期が来たらサスペンションを開発しようかと真剣に思い悩んだ。

黒沢明人達一行は、朝の5時に村長の馬車でひっそりと村を出てきた。ディート・ウェルヘンが別れが辛いから、とお願いしたのだ。黒沢明人は快諾した。これからどんなことが起こるのか解らない村に気の優しい村人を残していくのだ。気持ちを察することができるような気がしたのだ。


今、馬車に乗ってかれこれ、もう5時間である。流石の黒沢明人も辟易しているのに、客席の中を覗くとリーナは、椅子に寝転がってグーグーと寝息を立てている。強者がいる、明人はあきれ果てた。実際のところは、自分だけ客車の中に入っているのが気に食わず、ふて寝をするしかなかったのだ、それにしても慣れたものである。

怪我ならすぐに治せるのだが、この尻の痛さは怪我では無い。それでも偶に楽になることがあるということは、本当だったら尻の皮が剥がれるのかも知れないと嫌な想像をした。

「俺独りなら空を飛んでいくところなんだが…」

「何か仰いました?アキト様」

「いや、次の街…城塞都市ウィニックだったか。後どのくらいかかるのだ?」

「この丘を登ればみえてきますよ」

「ほう。ではもうすぐ着くということか?」

「そうですね。後20分程です」

黒沢明人は、安堵の息を吐いた。そしてふと気にかかった。

「ディー、この世界の1日は何時間なんだ?」

「23時間ですが…?」

「そうか、まあそういうこともあるだろう」

ディートは暫く首を傾けていたが、何か引っかかると思いつつ、どうしても思い出せないようだ。そして結局あきらめたらしい。

その時、リーナが馬車から顔を出した。

「起きたのか、どうした?寝疲れたか?」

黒沢明人が答うと、「喧騒が聴こえてきたので、と不思議なことを言った」

「ん?俺にはまだ何も聞こえないが…。

ディーは聞こえるか?」

「私もアキト様と同じですね」

「なるほど…、リーナ。お前の能力を過小評価していたようだ」

「え、そうですか!ありがとうございます、アキト様!」

リーナにとって能力を評価されるなんてことは生まれて初めての体験だったのだろう。そして、それを褒めてくれたのが、崇拝する明人なのだ、望外の喜びだったに違い無い。リーナは思った。私は能力者で良いのだ!


やがてディートが予想したとおり、20分くらいで到着した。城門の橋を渡ると、兵士に止められた。

「男、珍しい服を着ているな。どこの国の服だ?商売で来たのか?」

「遠い国です。商人ではない。買い物をしたいだが…」

黒沢明人は、笑顔を作り答えた。

「私はセイレス村の村長の娘です。父は最近死にましたが…」

ディートはどこか遠い場所を見るように答えた。まだ心の整理ができていないのかも知れない。

兵士は興味のなさそうに「そうか」と答え、次に馬車の中を見分させろと言ってきた。

中にはリーナが乗っている。あからさまに能力者を見せるべきか?あの額の宝石は目立つぞ…。

黒沢明人は、念のためにと用意していたデューク銀貨を手に持ち、

「兵士の仕事は大変だろう。ちょっとでも多く貯金を残さないと家族が路頭に迷う。

尊敬します」

そういうと馬車を降りて握手を求めた。そして目で合図する。

兵士は、ああ、と頷き握手してデューク銀貨を預かった。

そしてそれを見て驚くような顔をした。デューク銀貨一枚と言ったら6人家族を一ヶ月養える程の価値がある。

「実はちょっと急いでまして、そろそろ、よろしいでしょうか?」

兵士は、黒沢明人が馬車の御者席にのるのを待って答えた。

「行っていいぞ。良い思い出を」

そして、手を振った。


街に入ってから黒沢明人は、真っ先に髪飾りを買う提案を出した。

リーナの額の宝石を隠す為だ。

ディートは、髪飾りの店の前で、馬車を止めた。

黒沢明人は、馬車から降りたディートにイギル銅貨を一枚渡し「ディー用とリーナ用の2種類を買ってくると良い」と言った

。イギル銅貨は、10枚でデューク銀貨に匹敵する。銅貨の中でも特別貨幣価値が高いのだ。

10分程経ってディートが店から出てきた。ホクホク顔である。

そして馬車に乗ると「こっちのがリーナので、こっちが私のだけど、異論は無い?遠慮なく言ってね」と物のやり取りを始めた。

別段リーナには解らないこともあって、当初通りお互いのリボンを胸に抱いた。

ちょっとの間を置いて、「さて、リーナ。前髪につけてあげる」とディート。

「お願いします」とリーナ。

作業はあっという間に終わった。

リーナは御者台に顔を出すと、「どうです?アキト様」と嬉しそうに返事を待っているようだ。

「ああ、可愛いよ」と黒沢明人が答えると、「キャー」と嬉しさのあまり悲鳴をあげて引っ込んだ。

そして、ディーナも同じ行動を取った。

さて、宿でも探すか。黒沢明人は、周囲を見渡した。


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