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第三六話 黒沢明人の想い

次話投稿遅れて申しわけない><

プロットからちょっと横道…。

盗賊の討伐が終わって3ヶ月程経った。結局彼らは、黒沢明人の甘言とマルフ・フィルフェンドの決断により、自治都市ウェルデンの軍に編入された。これからはマルフを頭とした遊撃部隊の役割を担うことになる。それが最低限の彼らの譲歩だった。そして、団の名は白龍隊と名乗ることになった。

今や街で一番古い建物となった自治都市庁舎で黒沢明人とセイフ・ハーグマンは、デスクワークに追われていた。今街は空前の大発展を遂げていた。ウェルデンは好景気でかなりの売り手市場となっていた。今やどの都市で働くよりも多くの収入が得られると噂が流れ職を求めて大勢の労働者が訪れることになった。好景気のスパイラルだ。人間と亜人間の確執が無くなった訳でも無いので、稀に喧嘩は発生するが、警察という組織に取り締まわれることになる。

デルファリン商会は多くの商人で賑わい、リファ・デルファリンは表裏で巧みに活動していた。

最新の調査では人口は5万人を超えている。そしてほぼ全ての労働者が職を得ていた。

ディート・ウェルヘンのチームが開発したケーキ等を販売する甘味屋「ディートの甘味屋」は、いつも人混みに溢れていた。

城塞都市ウェルマンの店も大好評で、最近では、リファの協力を得て国中どころか他国にまで店を展開するに至っている。

そんな中、居酒屋にブロン・バーリエンスとロデ・カッテンそしてマルフが集まり、真昼間から酒を酌み交わしながら肉を摘んでいた。今日は三人とも休日である。

「なんやこの町の肉はえらい旨いな。経済とかゆうやつが良くなると飯まで旨くなるもんか?」

「わしもこんなに旨い肉は久方ぶりじゃよ」

マルフとロデは、肉料理に舌づつみを打った。

「旦那の話じゃ、海の近くに作っていた塩田からの収穫が落ち着いてきたって話でやしてね、少なくともこの町では、塩はかなり安くなったとの話でやす」

「なるほどのぉ」

「なんや、その旦那の話やけど、下痢に襲われた子供に塩水を与えると良くなるいうて店で売り始めたらしんやけど、あれ凄い良いらしいな」

「ああ、旦那はなんでも知っているかのようでやすな」

「わしとしては、あの無表情が気になるがの。プレッシャーでも抱えていなければよいんじゃが…」

「実はあっしも気になってたのですがね、最近飯が旨くなったと言って微笑みを浮かべたという噂を聞いているんでやすがね」

「欲の少ない旦那の唯一の趣味が食とはのう」

「いや、しかし旦那は少食でやすからねぇ。炊事組には頑張ってほしいところでやすなぁ」

「そういや、なんや新自治都市庁が明日お披露目っちゅう話やけど、実際今のボロ庁舎からどれくらい変わるもんなんや、あれ以下はありえへんやろ」

「そうでやすねぇ。もう取り掛かってから半年以上過ぎてやすしね」

「あとなぁ、旦那の嫁候補ってやつが気になっててな。実を言うとわいの部下の女に人気があるのが気にくわん。あいつら強い男に弱いからな、わいの立場、壁に張り付いてからどん底やで」

「それは哀れだのう」

「そうでやすなぁ、あれはねぇ。いやいや、そうでやすねぇ、リーナ・サーリエントやディート・ウェルヘン、フェイ・アルディオーネのお三方が有力候補と思ってやすがねぇ」

「ほほう、美しいフェイ殿とは何度も顔を会わせてるがのう。リーナ殿はあの小くて可愛らしいお嬢さんのことかのう。ディート殿は残念ながら誰のことか分からんのう」

「わいは知ってるで、ええ菓子作ってる店の総元締めのことやろ?ディートの甘味屋のディートやろ」

「よくご存知でやすねぇ」

「ほほう、言われてみれば聞いたことがあるのう」

「よっしゃ、女三人ナンパして、一緒に三時のオヤツや!」

「げほげほ、マジでやすか?」

「ほほほ、それは面白のう」

尤も真昼間から酒の臭いを漂わせている三人に、美味しい思いは訪れないのだが。


そのころ、どこか遠くを見つめていたリーナは、ふと我に返ったような顔をして、視線を黒沢明人に合わせた。

「アキト様、あの3人ナンパに出かけましたよ」

「ん、なんだあの3人って?」

「ブロンとロデ爺とマルフだよ」

「ぼーとしていると思ったらそんなものを見ていたのか?

まあ、なんだ三人とも有名人だし、マルフはかなりの男前だからな。うまく行くことだろう」

「もし明人さまがあの中に居たら、一緒にナンパしてた?」

「場のノリもあるしな。断って一人帰るのは男としてどうかと思うが…」

黒沢明人がそう言いかけると、リーナは、腰に手をやり椅子に座している明人に若干腰を曲げて、瞳を覗き込んだ。

セイフと同じ珍しい黒い瞳に自分の顔が写っていているのを眺め、鼻息を出した。

「この町でアキト様に逆らう人はいません。アキト様は皆の憧れなんです。だから、ナンパはダメです。卑怯です」

「ああ、そうなのか?」

「そうです。だからそういう相手は私が全部請け負います」

「はは、そうか…。俺が女性に声を掛けて、連れ立って歩いたら、リーナには全てお見通しか…」

「そうですよ。お見通しです。まあ、ディートとフェイとは一緒に行動を共にしてもいいけど、一線を越えてもいいのは私だけです」

「そうか、しかし俺が元居た世界にはロリコンという言葉があってだな。子供に手を出すのは犯罪なんだ。何より周囲に気持ち悪いと思われる。つまり、リーナはまだ幼過ぎてロリコンになってしまう」

「ええっ…、うっ…」

苦しい息を吐き、リーナは絶句し苦悶の表情をしたが、数秒と待たずに元の表情に戻った。そしてにっと笑い、

「それは、アキト様が元いた世界の話ですね。この世界では関係ありません」

と言い切った。

黒沢明人は苦笑したが、すぐに真面目な表情に返った。

「俺の能力は知っているな?」

「はい。一瞬で大勢の人を殺せたり、知らない力を使ったり…。亜人間の中にもそんな常識はずれな人はいません」

「そうだ。なぜ俺がその能力を伏せているか理由は解かるか?」

リーナは、困惑した顔で首を傾げた。

「俺の能力を使えば、例え相手が数千の軍隊でも一瞬で抹殺できる。

つまり、俺一人がいれば軍隊は必要無くなる。

だからといって、ではそのようにすれば良いのか?」

「…解らないです」

「俺は何れ元の世界に帰る予定だ。

もし俺に依存した世界を作ったら、俺が消えることで、多くを失う。

だから、俺はこの世界に最小限の力を加えるだけで、世界を変える。

俺がいなくなったら使えない知識は、使わない。忘れてはいけない重要な縛りだ」

「アキト様は、元の世界に帰るのですか?」

「ああ、そのつもりだ。尤もまだ方法を見つけていないのだがな」

「私は連れて行って貰えないのですか?」

「安全な方法であれば考える。だが、恐らく命の保証はできないだろう。俺が死ぬことは無いにしてもだ」

「アキト様が女性を近づけないのは、そういう理由なんですね。

でも何時帰られるか解らないのでしょう?

その時までずっと一人なのですか?」

「ああ、そうだ」

リーナは、それは悲しい生き方だ、と思った。例え別れが確実でも良い。今を楽しく過ごしたいのだ、と思うのであった。



スランプ対策の為、もう一つ小説を書き始めました。

http://ncode.syosetu.com/n8388bb/

→西のリッチー☆東の無鬼</a>

を宜しくです。

尤もこっちの小説がメインなんですけどね。

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