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第十九話 自治都市ウェルデンへその4

すみません、今回ちょっと短いです。

安全な森の話だったので、書くことが無くて…。

黒沢明人一行は、橋をさっさと渡り、最後の森ティル・グラープスに入った。

「で、この森はどうなんだ、フェイ?」

フェイ・アルディオーネは、ちょっと首を傾げ、

「街道沿いが危険って話は聞いたことが無いわね。まあドラゴンが現れたら話は別だけど、ドラゴンは半ば伝説みたいなものだし。ただ森の奥深くまで入って行って帰ってきた人はいないって聞いてるわ」

「なるほど、では夜も近いし、ここらで野営するか。ブロン、止めてくれ」

「あいよ旦那。馬もへばっていやすしねぇ」

「そうか。あ、フェイ、セリヨン殿にここで野営をすると伝えてくれ」

「いいわよ、行ってくるわ」

との返事に、

「俺は少し森に入ってくる」

といって黒沢明人は、一人森に入っていった。

周囲をうかがっていた黒沢明人は、この森が他の森と違うことに気づいていた。一本一本の木がかなり太く、そして高い。

地面は、苔が生えていて、足の裏に硬い地面を感じることができない。

この森なら案外簡単なんじゃないだろうか、黒沢明人は、少しでも暗くなる前にやりたいことがあった。

暫く周囲を見渡していた黒沢明人は、岩を発見した。

軽く押してみた。動かない。

「これかな?」

黒沢明人は、一人呟くと、岩を引っ張った。ゴゴっと音を立てて岩が地面から抜き取られた。

そこには巨大な穴が出来上がった。黒沢明人は、岩を近くに置いて、穴の底をうかがった。

ゆっくり水が満ちていく。どうやら正解だったようだ。

暫く暇になりそうなので、黒沢明人は座りながら、何気に電気エネルギーを放出した。通常なら周囲に落雷するだけなのに、エネルギーは空中で渦巻いている。

電気を出すだけなら電気エネルギーで動いている黒沢明人にとっては、いくらでも無尽蔵(に近い)に出せる。だが操作をするとなると違う。黒沢明人は、最早生体部品が無い。擬似的なものならあるが、あくまで擬似的なものである。生体の体を失い発電能力は失ったが、操作する能力だけはどうにか残った。つまり、発電も操作も自由自在であるということだ。それこそ非科学的なまでに。

空中のエネルギーを濃縮するとプラズマ化した。更に凝縮し、自在に動かしてみる。今度は形を変えてみてた。弧を描いてみた。それを岩の角に向けて放ってみた。一瞬で岩の角が切り取られ、ずり落ちた。が、その先の木にも当たりそうになり、慌てて回避させる。

今度は、今度は岩の別は角に向けて放ち、角を囲む様に円状に操作した。そして、円の直径を一気に点にまで縮める。プラズマは消え、岩の角がずり落ちた。

紐状に伸ばし、指先でコントロールすることも試してみた。

いずれにしろかなりの集中力が必要だった。

やはり、戦闘には不向きか…。

そんな事を考えている間に穴は水で満たされていた。

「よし」

そう気合を入れると、ブレードを抜き放ち、水面に並行に向けた。ブレードから放たれる指向性のある高い周波数の電磁波が湯を温めていく、2分程ムラなく温めて40度程度のお湯にしてみた。

黒沢明人は、迷彩服を脱ぐと、足先からゆっくりと湯に浸かった。首だけ出してぷはーと息をはく。魔獣との戦いで全身返り血だらけだったのがゆっくり溶けていく。


リーナ・サーリエントは、まだ陽は落ちていないが何時までたっても帰って来ない黒沢明人を心配して、一人森に入った。

暫くするとパシャと水の跳ねる音がしたので、そっちに向かって行った。大きな岩がある。音がしたのはその向こう、リーナはい岩を回り込んだ。

黒沢明人は「そう言えば、体を拭く為のタオルが無いな」と失態に困っていた。そこえリーナがやってきた。

「アキトさま、何をしているのですか?」

「風呂だ」

「ふろ?」

「体を綺麗にできるぞ」

「本当ですか!?」

リーナは、屈んで手をそっと水につけてみた。ちょっと熱い。

「まるで料理されてるみたいですね…」

黒沢明人は、ははっと笑った。そういえばこの世界に来て初めて心から笑った気がする。

「ところでリーナ、実はタオルがなくてな、体を乾かすことができないのだが…」

「タオル?タオルってなんです?」

「体を拭く布みたいなものだ、あとブロンも呼んできてくれ」

「布ならありますね。持ってきます。ブロンさんも呼んできますね」

リーナはそういうと足早に去っていった。


「旦那、なんでやすってか何やってるんでやす?」

「風呂だ」

「全く旦那は貴族みたいな趣向を持ってやすね」

「俺の国ではあたりまえだ。お前も入れ、返り血で汚れているだろ」

「そうですね。ではあっしも風呂というものを試してみやす」

「じゃ、ここに布置いときます」

そう言うと、リーナは去っていった。

その後、何度か温めて結局全員が入ることになった。


「いやぁ、風呂というのもなかなか良いもんですなぁ」

セリヨン・ハーネストの言に全員が納得した。

「石鹸があればなおベストなんだが…。後タオルか、布はあまり水を吸収しないからな」

「ほう、せっけんとたおるですか?」

「石鹸は油を落とすことができる。タオルは水を吸収する為の布だ。どちらも作るのはそれほど難しく無い。こんど作ってみるか」

「それはそれは、その時は、是非私めに納入下さい」

「ああ、お願いする。もっともまだまだ先の話だが…」

「明日はいよいよ自治都市ウェルデンですわね」

そう言ったは、フェイだ。フェイの瞳が微かに濡れているように感じたのは、黒沢明人だけだろうか。


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