第十六話 自治都市ウェルデンへその1
なんかまた都市名が混乱していた…
やべ、実はまだ地図が無いんだ…おいおいXD
城塞都市ウェルマン周辺の素晴らしい畑風景を横目に、この町はこれからもそこそこ栄えそうだなと思う黒沢明人だが、だが、肝心なものが無いように感じた。それは恐らく特産品だろう。食料はどこでも生産できる。然るに食料が国に行き渡り過ぎると一気に経済が悪化する。この世界でもなんらかの対策をしているのだろうか?
城塞都市ウェルマンをでて一時間程であろうか、一つ目の森はエディ・グラープスの入口付近に何やら竹でできた長い棒が一本1m程の高さで横に固定されていた。その横には雨露をしのげる程度の小屋が建てられているのが見えてきた。恐ろしくボロい。
そこに、若干錆びている武具といい、そして統一感の無い武具をまとった集団。間違いなく山賊だろう。
最初に発見したのは、黒沢明人だった。その気になれば普通の人間の数百倍の視力を持つ。視覚レーダーが捉え、部分的にズームしたのは、これは基本装備みたいなものだからだ。切ることもできるが、何かと便利なのでそのままにしていた。
黒沢明人は「山賊がいるな」とリーナに訪ねた。
リーナ・サーリエントも山賊を捕らえていた。
「『今日は獲物がこないなぁ』
『まだ早いからな。寝てろ』
そんな会話をしていますね。人数は28人います」
ブロン・バーリエンスが感嘆な呻きを上げた。
「あっしにはまだ何も見えないですがね。つーかリーナさんはつくづく恐ろしいお方ですね。見えもしないことがわかりやすとは」
転寝をしていたフェイが、すくっと目を覚まし起き上がった。実際には起きる前に少し覚醒していたのだろう。話の内容に飛び込んで来た。
「え、ちょとちょと何よ。私にも見せなさい!」そういうとフェイ・アルディオーネは、馬車の前の幕をどけて前方を見た。
「…エルフの私にすら見えないなんて…」
そういうとガックリと椅子に座り治した。「私のプライドはいったい…」
そんなフェイにブロンが後を向いて話しかけた。
「このお二方が異常でやんすよ。そう落ち込むこともでやす」
そして、ディートに至っては「私なんてただの人間よ。何も無いのよ!」と叫んだ。
がしかし、隙かさずブロンがフォローを入れた。
「常識を持っていて、文字の読み書きができて計算までできるんでがしょ?」
「うん、まあ、そうねぇ。これも立派な能力なのかなぁ…」
そして、うんうんと頷いた。
暫く馬車を走らせていると、ブロンが叫んだ「アレでやすか!いやはや、これは、ちょっと見えないでがしょ」
フェイも頷いた「いくらエルフの目とは言え、あの距離はねぇ」
等と色々感想やら述べているうちに、ついに横倒しになったバーの前に着いた。
すると割りかし真っ当な格好の割と年配の男が黒沢明人に話しかけた。
「ふむ、旦那は竜神人を従えているのか?」
「従えているというより、俺がこいつよりも強いという証しみたいなもんだ。奴隷として買ったがね」
「ほう、ということは旦那も真っ当では無いようですね」
「どうだろうな、この国(この世界)では本気を出したことは無いがな」
「そうですか、因みに馬車の中は、誰が入っているのでしょう。確認して良いですか」
「ああ、構わんよ」黒沢明人は、いつでも攻撃態勢を取れるように腰のナイフに手を当てた。
だが意外な結果が帰ってきた。
「ほう、手錠も足枷も約束の木すら無い。逃げないのには訳が?」
「旅の仲間だ。俺は人身売買やら奴隷が嫌いでね。まあ、そういう教育を受けている訳だ。尤も奴隷を買ったので商人に儲けと、今後の商売に希望を持たせる者ども一員になってしまったわけだが…」
「そのような教育をする国は、近辺にはないですね。よっぽど長い旅だったのでしょう。その不思議な柄の服の謎もとけるというものです」
黒沢明人は、これといって興味無さ気に「まー、いろいろあるな」と簡素に答えた。
「ところで後の商人風の男とキャラバンを組んでいるのか?」
「ああ、主に薬が商品だと聞いている」
「では調べさせてもらいます」
年配の男はそう言うと、セリヨン・ハーネストの幌馬車へと向かった。
「おお、セリヨン」ではないか、年配の男は驚きすぎてむせてしまった。
「大丈夫かグラーゼン!?」
「いやいや、タダでさえ心の臓が弱っているのに、俺を殺す気か、そういや何年振りなんだ?」
そう言って、地面に座った。セリヨンも並ぶ。
「いや、私は年に二回ほど街道を通っているがね」
「巡回表でズレたか。見直してもらうとしよう」
「そうか、また薬を売りに来たのか。しかし、赤字だろ?これではいつまでたっても金がたまらんぞ」
「最近、製紙工房に投資してな。手元にかなりあるんだよ。だから多少の赤字は全く問題無い」
「そうかそうか、何にしても良いことだ。逢えて嬉しいよ。帰りに寄ってくれるか?」
「ああ、いいとも酒を買ってくれ」
そういうと二人で呵々と笑った。
そしてグラーゼンはすっと立ち上がり「ちょっと待っててくれ」そう言って小屋に入り、赤い布をも持ってきた。
「これを目立つ所に着けるんだ。それで一つ目の森はエディ・グラープスは無事通り抜けられる」
「それはありがたい」とセリヨンは丁重に預かった。
「しかし、この護衛の数で二つ目の森ワナ・グラープスを抜けられるのか?」
「威圧感が無いと、魔獣どもが喜んで殺しに来るぞ」
グラーゼンは心配気にキャラバンを見渡した。少し心配げな顔をした。
「心配無い、彼、アキトの強さは半端じゃないし、隣りの竜神人もかなりの使い手だぞ」
「そうか、なら良いのだが…」
「では行こう!自治都市ウェルデンへ!」
黒沢明人の合図を号令に、一行は一路自治都市ウェルデンへ向かって一つ目の森エディ・グラープスに入って行った。
指を動かすだけで首が落ちる…カッコイイ!
魔界の雷帝でいつも思ったものだが、理屈が解らない…。
なにか方法は無いか…