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第十四話 セリヨン・ハーネスト

いやぁ、仕事が忙しいのなんの。現実逃避的に書きました(笑

「私の名は、セリヨン・ハーネストと言います。どうぞセリヨンとお呼びください。これといった拠点を持たないしがない旅の商人です」

商人の自己紹介に黒沢明人も答えた。

「俺の名は、黒沢明人だ。明人と呼んでくれ。人探しの旅をしている」

「ほう人探しですか、大変ですな。ところで、アキトとは、珍しい名前ですね。どこの出身ですか?」

「遠い遠い国だ。もう帰ることもできない程にな」

黒沢明人はそうぼかすと、

「仲間を紹介しよう。右から、ブロン・バーリエンス、見ての通り竜神人(たつのかみびと)だ。次にリーナ・サーリエント、能力者だ。ディート・ウェルヘン、ただの人間だ。フェイ・アルディオーネ、見ての通りエルフだ」

「ただの人間だ、は酷いですよ、アキト様」とディート。

「この国では、そうの方が都合が良いのだろう。立派な能力だ」

「能力ですかねぇ…」

ディートは、納得しかねつつ唸った。

「それはそれは、変わった組み合わせですね。しかしよく竜神人を従えていますね。とてもプライドの高い種族と聞いていますが…」

それにブロンが答えた。

「あっしも最初は、そう思ったんでやすがね。旦那に、素手であしらわれて、それで、まあ、取り敢えずこの旦那を見てみよと思ったんでやす。しかし短い旅で旦那の凄さが解りやしたよ。この先何をしていくのか側で見たくなったんでやす」

「なるほど信用されていますね」

セリヨンの声には若干の驚嘆が含まれていた。

「しかし素手で竜神人を負かすとは、アキトさんも能力者でしょか?」

「人間では無いがこの世に似た者はいない。しかし、まあ能力も確かにあるので能力者でも構わんよ」

「さようでございますか」

セリヨンは、黒沢明人の戦いを目の当たりにしている。まるで鬼神の如きだ。決して敵に回してはいけない御仁だろう。

「さて、夜までにはまだまだ時間もありますし、城塞都市ウェルマンへ向かいましょうか」

「そうだな。俺達が先導する」黒沢明人が答えた。

「宜しくお願いします」

黒沢明人は考えに耽った。この世界で能力者や亜人間は、嫌悪の対象とされている。

しかるにセリヨンの態度からは、まったくそれを感じなかった。俺と同じような考え方の人間なんだろうか。拠点を持っていないと言っていた、根無し草か知識も豊富そうだ。普通の人間とはまったく経験の度合いが違うからなのかも知れないな。

結局、今日はそれから何も無かった。

夕暮れ時のまだ明かりのある内に野営の準備が始まった。


食事が始まり、多少の酒もふるまわれた。

その席において、黒沢明人が疑問を口にした。

「そういえば、城塞都市ウェルマンへの道は、それほど危険だとは聞いていなかったが」

黒沢明人はさりげなくセリヨンに質問した。

「それは、ほんの昔の話ですよ。今この国は戦争中ですからね、治安維持に兵を廻す事が出来ず悪化しているのです」

「なるほど、それでは山賊が跳梁跋扈してもおかしくないな。

しかし、そうなるとウェルデンへの道、1つ目の森はかなり危険なのではないか?」

その問にセリヨンが答えた。

「ウェルデンへの街道を通る商人は少ないんです。だから収益を上げることはできないでしょう。

そんな状態で人数を増やすのは、恐らく無理でしょうね。彼らの主な収益は副業ですし」

「副業?」

「ええ、そうです」

「山賊の副業というと、麻薬関連か?」

「いえ、そんな物騒なものではありません。それが護衛なんですよ」

「護衛…、なるほど。それはうまく考えたものだ」

つまり、山賊の手の者に護衛を頼まないと山賊に襲われるというわけだ。どっちにこけても山賊の儲けになる。

首領は、なかなかの知恵者だな。黒沢明人は感嘆した。

そして黒沢明人は、一番疑問に思っていたことを聞いてみた。

「ところでウェルデンへ行くには、護衛代も高くつくし貧しい自治領だと聞いている。そんなところへ行って商売になるのか?」

セリヨンは少し間を開けて答えた。

「売れるのはもっぱら薬ですし、実のところ、赤字です。行き掛けの駄賃にこっそり村人を誘拐して奴隷として売る商人が多いですな。村の代表は実態を把握しているのか、どうしようもないのか、いずれにしろ未来は暗いですな。なんとかしなければなりません。とは言え私は商人です。私にできることは限られていますしね」

黒沢明人は、最大に広がった疑問を口にした。

「セリヨン殿、何故そこまでウェルデンに肩入れする」

セリヨン殿は、少し黙り込み、そして答えた。

「まあ、色々ありましてね。ところでアキトさんは、どうしてウェルデンへ?」

黒沢明人は、素直に答えた。

「人探しだ。ダナ・ハーグマンを知っているか?」

「先代の代表ですな。戦争で武勲を立てて、辺境で不毛とは言え自治都市を立ち上げた偉大な人ですよ。画期的でしたね。人間も能力者も亜人間も公平に扱う特殊な都市です」

「先代は死んだと聞いたが」

「もう20年前も話ですよ。今は同じ能力を持つ娘が代表をしています。が無学で経験が少々足りないですね」

「同じ能力というだけで俺には何倍もの価値があるがな」

黒沢明人は、少々楽観的であるが未来の希望が見えた気がした。

セリヨンは首を捻った。


その後の三日間の旅路は、魔獣の大群に一回だけ襲われただけですんだ。

この戦いでは商人付きの護衛は、護衛に徹し、黒沢明人の鬼神の如き活躍とそれには劣るがブロンも大活躍をした。

ある護衛が聞いた。

「アキト殿、そのブレードは一体どういうブレードですか?」

「この世に斬れない物は無い、といった代物だ」

「はぁ、それは凄いですね…」

無駄の無い動き、異常な速さ、そして斬れない物の無いブレード。

最初の2つだけで十分だと言うのに、底抜けの強さだ。

聞いたことの無い強さだなと護衛は思った。

だが心強い、仲間になってくれて大感謝だな。

収入は多いが、死ぬ確率も高い。俺の腕は大したことない。

自分の身を守るように心掛けよう。

優秀な人材は、皆戦争に行っているのだった。

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