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第十話 「奴隷」その2

実は、矛盾なんかがあったりして、修正しているので、キチンと理解したい方は、再度読み返すことをオススメします。

って、そこまでのファンはいないかなw

黒沢明人は、暫く歩いてからフェイ・アルディオーネの縄を解いた。

「逃げても構わんぞ」

明人が言うと、フェイは微笑を浮かべ、

「ウェルデンに行くんでしょう?願っても無い話だわ。第一逃げ出して捕まったら、下手したら殺されるわよ」

そう言って微笑を浮かべたまま肩をすくめた。なんとも言えない妖艶さがある。

「そうだったな」

そうチラっとフェイを見、答えながらもすぐに黒沢明人は奴隷達を流し見始めた。

「ちょっと聞いていい?」

「なんだ?」

「どうして私を選んだの?」

黒沢明人は足を止め、奴隷達から目を放し、フェイに振り返った。そして目を見ながら簡素に答えた。

「目が死んでなかったからだ」

「目が?」

「目の死んだ奴隷はただの人形だ。俺は人形を探しに来た訳では無い」

「そう…私は諦めていなかった、だけどついてたようね」

運もあるが彼女の立場であれば、望みを捨ててなかったのは僥倖だったと言えよう。

黒沢明人は再び歩きだし奴隷の物色を始めた。

「あとは用心棒が欲しいのだがな」

「そうね。ウェルデンに行くのなら城塞都市ウェルマンに入って東門をでてまっすぐ東へ、そこからグラープスの3つの森を抜けないとダメなんだけど、その辺はもう知っているのかしら?」

「3つの森?」

フェイ頷いた。

「そう、3つの森。一つ目の森はエディ・グラープス、二つ目の森がワナ・グラープス、最後の森がティル・グラープスよ」

「何か違いがあるのか?」

「エディ・グラープスには魔獣はいないわ。代わりに野盗が跋扈してるの。頭を使う分、魔獣より質が悪いかも知れないわね。そして、ワナ・グラープスだけど、魔獣が出るわ。まあ、こっちもこっちで厄介なのだけど。彼らは年中空腹に苦しんでいるわ。だから命を惜しまないの。で最後のティル・グラープスはちょっと変わっているわ。古代遺跡があるって話だけど、奥地に行けば行くほど強力な魔獣がいるの。何より問題なのがあの最高位の魔獣、ドラゴンが棲んでいるってことよ。炎のブレスを吐く真っ赤なドラゴンよ」

「饒舌だな」

黒沢明人は、内心感心し、良い情報を手に入れたと喜びつつ、ほんの少し弄ってやりたいと思うくらいに気に入ってしまった。

聡明だな、と思う。

「茶化さないで下さい。貴方が無知なの。とにかくそういうことだから護衛はたっぷり必要よ。で、今何人いるの?」

黒沢明人は、平然と答えた。

「女2人だ。君を含めると3人だな。そして俺だ」

フェイは、愕然とした。

「それは死ねってことなの?」

「そう悲観するものでもない。俺は強いぞ」

フェイは開いた口が塞がらなかった。本気で言っているのかしら…妙な服に背中の剣らしきもの。かなり怪しい人物だし、ひょっとすると能力者かも知れない。バレたら奴隷?

「あんまり軽はずみなことはしないようにお願いしたいわ」

「まあ、街の中ではな。ところで護衛は一人で良いと考えているのだが、良い情報は無いか?」

フェイは悩まず答えた。

「もちろん竜神人(たつのかみびと)でしょうね。一人で普通の熟練兵士5人分くらいの実力はあるわ。高いわよ」

「そうか、では見つけたぞ」

そう言うと黒沢明人は一つの檻を指差した。竜神人とプレートに書かれていた。


黒沢明人は、一人の竜神人の檻に近づいた。竜神人は、両手両足に枷をハメられていた。普通の人間なら動けないだろう。

しかし、その竜神人は、全く気にしていなかった。それに何より目が爛々としているのだ。

そこへ奴隷商がやってきた。

「如何なご要件で?」

「強い奴隷を探している。それも一番のだ」

「そういう話でしたら、貴方様が先ほど見ていた奴隷が一番ですね。ただ、あの竜神人は、前の主人を殺しているので、ちょっと扱いを間違えると命の保証は致しかねますが…」

「面白い。いくらだ」

「そうですね。正直私も扱いに困っているので、デューク銀貨12枚で如何ですか?」

「ふむ…、まあよいだろう」

「約束の木は使いますか?」

黒沢明人は、その初めての単語に困惑した。そしてフェイにこそこそと聞いてみた。

「要するに、奴隷が暴走したり襲ってきたりしたら、対になる枝をフルと、激痛で動けなくなるという仕組みです。私たちにしてみれば呪いの木ですよ」

とフェイは、こそこそと説明した。

黒沢明人はなるほどと頷き、要らん、と答えた。

「しかし、あの竜神人は、取り分け危険なんですが…いいんですか、正直、命の保証は無いですよ」

黒沢明人はどこまでも冷静だった。

「構わん出せ」

そう言うと、デューク銀貨12枚を渡した。

奴隷商人は、諦めたように檻の扉を開けた。

「お前の新しい主人だ」

そう言うと、足枷、手枷を外した。

竜神人は立ち上がって「旦那、あっしは自分より弱い奴の下に就くつもりはないですぜ」、そう言いながら檻から出てきた。

「ほう、では試して見たらどうだ?」

「旦那、それは端から承知の上。では行かせてもらいやす!」

そういうと竜神人は一気に間合いを詰めてきた。並みの速さではない人間には不可能な速さだ。だが黒沢明人にはそれらがスローモーションのようにゆっくりと感じた。

竜神人は、間合いを詰めた後、一見無防備に見える黒沢明人の顔をめがけて強烈に右ストレートは放ったきた。が、黒沢明人は敢えてギリギリ避けた。

しかし、それは想定済みだったのだろう。体を下げて左足での回し蹴りが黒沢明人を襲う。しかし、黒沢明人は素早いバックステップでそれをかわす。

次は黒沢明人が動いた。竜神人に対して一気に間合いを詰める。竜神人は慌てて右ストレートを放つが、黒沢明人は、それを左手の手の平で受けて、右腕でブローを腹にねじ込んだ。竜神人は、ぐっ、と唸って地面にしゃがみこんだ。

全ては一瞬の出来事であり、それを見切った者はいなかった。

黒沢明人は、無表情で言い放った。

「まあ、そこそこ合格だ。そういえば聞いてなかったな、名前は?」

竜神人は喘ぎながらなんとか答えた「ブロン・バーリエンス…宜しく旦那」。

奴隷商人は呟いた。

「竜神人を素手で倒すなんて、なんて方だ…」

フェイ・アルディオーネに至っては言葉も無い。


黒沢明人は、ちょっと考え、まあ正直に話すのがどちらにとっても良いことだと結論づけた。

奴隷市場を離れ、中央広場向かう道すがら、どうにも我慢できなくなったのだ。

「フェイ、ブロン。あまり言いたく無かったのだが、なんだ、お前らちょっと臭いな」

真っ先にフェイが反応した。

顔を真っ赤にしながら、「もう何ヶ月も水浴びしていないんです。ずっと檻の中だったんですから!」

ブロンが答えた。「まぁ、あっしも同じ口で…」

黒沢明人はどうしたものか悩んだが。公共の風呂なんかないものかと周囲を見渡す。が、そう都合よく見つかるものでもなく。宿に戻ってディートと相談することに決めた。


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